短答式試験 徹底分析とその必勝法

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短答式試験
徹底分析とその必勝法
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〇短答式試験合格に向けて、最低限何点とる必要があるか
(1)合格点の推移
図1は、平成15年度から平成28年度までの短答式試験の合格点の推移を示しています。最
低合格点は36点、最高合格点は41点、合格点の平均は 38.5点です。短答式試験の合格基
準は、平成25年度の短答式試験から変更されましたが、合格点自体には大きな変更はありません
でした。しかしながら、合格基準が「60点満点に対して65%の得点」である以上、今後、合格点が
39点未満になる可能性は低いと考えられます。
図1
短答式試験の合格点(推移)
旧基準
新基準
42
41
40
39
38
37
36
35
34
33
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
平成25年の弁理士試験受験案内によると、短答式筆記試験の合格基準は以下のとおりであ
る。
満点に対して65%の得点を基準として、論文式筆記試験および口述試験を適正に行う視点から工
業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。
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〇短答式試験で合格するためにどのような学習が必要か
(1)合格者に習え!
図1に示したように、平成28年度の弁理士試験では、短答式試験の合格点は39点でした。短
答式試験で、効率的に39点を得点するためには、合格者の正答率が高い39問を確実に正解で
きるようにすることが大切です。
表1は、年度ごとに合格者正答率が高い順に問題を並べたときに、上から「合格点」番目となる
問題の合格者正答率をまとめたものです。たとえば、平成28年度は、合格点が39点なので、上か
ら「39番目」に合格者正答率が高い問題の合格者正答率を示しています。表1には、その他、上
から「40番目」、「45番目」に合格者正答率が高い問題の合格者正答率も示しています。
表1によれば、平成28年度の場合では、合格者正答率が68%以上の問題をすべて正解する
ことができれば、短答合格です。また、合格者正答率が約62%の問題をすべて正解することができ
れば、45点をとることができます。
表1
合格者正答率(%)
年度
合格点
40点
45点
23
71.8
71.1
67.3
24
70.7
67.6
60.0
25
67.0
67.0
60.6
26
67.0
64.2
56.6
27
67.9
69.7
49.5
28
68.0
68.0
62.0
短答合格のためには、合格者正解率の低い問題、すなわち難易度の高い問題まで完璧に解け
るようにする必要はありません。難易度の高い問題が解けることよりも、合格者の80%以上、または
50%以上が正解している「難易度の低い問題」を確実に解けるようにすることが、短答攻略のカギと
なります。
2
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(2)短答合格者と不合格者の「差」
表2は、平成28年度短答式試験において、短答合格者の正答率が60%以上、かつ、短答合
格者と不合格者との正答率の差が30%以上の問題をまとめたものです。なお、合格者正答率が
高い問題から降順に並んでいます。
表2
法域
問題
テーマ
合格者
商標法
第7問
商標権の更新・移転
93%
不合格者
正答率
60%
正答率の差
形式
33%
選択問題
不・著
第7問
不競法(商品形態模倣行為)
92%
57%
35%
選択問題
商標法
第5問
商標権の効力
90%
59%
31%
選択問題
条約
第8問
パリ条約
89%
53%
36%
選択問題
意匠法
第3問
意匠登録
86%
50%
36%
選択問題
特・実
第15問
相互主義
86%
57%
30%
穴埋め
商標法
第9問
審判及び登録異議申立
82%
47%
35%
個数問題
意匠法
第8問
意匠権侵害
81%
35%
46%
選択問題
条約
第7問
パリ条約
79%
48%
31%
個数問題
特・実
第13問
特許出願の要件等
78%
43%
35%
選択問題
特・実
第8問
特許出願の審査、出願公開
73%
36%
37%
個数問題
不・著
第8問
不競法(救済)
73%
38%
35%
選択問題
表2における12問の内訳は、特許・実用新案法3問、意匠法2問、商標法3問、条約2問、不
競法2問です。
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〇法域別分析
(1)特許・実用新案法
表3は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の特許・実用新案法の問題において、
(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上
30%未満の問題および(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正
答率の差が30%以上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表3
テーマ
(ア)差20%以上
(イ)差30%以上
総則
2
3
特許を受ける権利・職務発明
3
2
発明の新規性・喪失の例外
1
先願主義と29条の2
3
出願審査請求と特許要件
2
2
優先権
1
2
補正
1
2
分割変更
2
2
外国語書面出願
補償金請求権・公開
1
審判手続一覧
1
拒絶査定不服審判と前置
5
無効審判
1
4
訂正審判
3
2
訴訟・再審・不服申し立て
5
1
特許料の納付
1
特許権の効力と権利侵害
3
4
専用実施権と通常実施権
3
1
国際特許出願
2
1
罰則
実用新案
特許異議の申立て
2
4
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1
表3に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の特許・実用新案法の問題全体に対して、(A)拒絶査定不服
審判/前置審査、(B)訴訟・再審・不服申し立てに関する問題は、それぞれ5問です。すなわ
ち、これらの(A)、(B)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が大きいテーマと
考えられます。
また、(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の特許・実用新案法の問題全体に対して、(C) 無効審判 に関する問題および
(D)特許権の効力と権利侵害に関する問題は、それぞれ4問です。すなわち、これらの(A)
から(D)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が特に大きいテーマと考えられま
す。
表3(イ)によれば、(a)特許を受ける権利・職務発明、(b)先願主義と特29条の2、
(c)特許権の効力と権利侵害に関する問題、(d)専用実施権と通常実施権権に関する問
題が、いずれも3問と高い割合を示しています。特に、(c)特許権の効力と権利侵害に関する
問題は、表3(ア)においても高い割合を示しています。
したがって、これらの(a)から(d)までのテーマ、特に(c)のテーマについては、合格者と不
合格者の理解度に差が生じているテーマと考えられます。
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(2)意匠法
表4は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の意匠法の問題において、(ア)合格者
正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上以上30%未満
の問題および(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差
が30%以上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表4
テーマ
(ア)差20%以上
(イ)差30%以上
意匠登録の対象
意匠登録出願(補正)
1
意匠登録出願(分割)
1
1
意匠登録出願(その他)
5
2
登録要件(新規性・喪失の例外)
1
1
登録要件(先願)
4
4
特有の制度(組物)
2
特有の制度(関連意匠)
1
特有の制度(秘密意匠)
2
1
審判・再審・訴訟
2
3
意匠権
3
3
実施権
1
ジュネーブ改正協定に基づく特例
1
表4に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の意匠法の問題全体に対して、(A)意匠登録出願(その他)に
関する問題で5問、(B)登録要件(先願)に関する問題で4問と非常に高い割合を占めま
す。すなわち、これら(A)および(B)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が
大きいテーマと考えられます。
また、(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の意匠法の問題全体に対して、(B)登録要件(先願)に関する問題は4問と非
常に高い割合を占めます。すなわち、(B)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差
が特に大きいテーマと考えられます。
その他、(a)意匠権に関する問題も(ア)20%以上(イ)30%以上で3個と高い割合を
占めます。
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(3)商標法
表5は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の商標法の問題において、(ア)合格者
正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上30%未満の問
題および(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表5
テーマ
(ア)差20%以上
商標登録の対象
1
商標登録出願(3条、4条)
1
(イ)差30%以上
商標登録出願(その他)
3
1
商標登録出願(補正)
1
団体商標・地域団体商標
1
1
無効審判
3
異議申し立て
2
取消審判
1
1
商標権
1
4
商標権等の移転・更新
3
通常使用権・専用使用権
更新登録制度
1
マドプロ関係
3
2
訴訟
類似
表5に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の商標法の問題全体に対して、(A)マドプロ関係に関する問題
は3個と高い割合を占めます。すなわち、(A)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)
の差が大きいテーマと考えられます。
また、(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の商標法の問題全体は、(B)商標権に関する問題は4個、(C)商標登録出願
(3条、4条)に関する問題は3個、(D)無効審判に関する問題は3個、(E)商標権等
の移転・更新に関する問題は3個と高い割合を占めます。すなわち、これらの(A)から(E)の
テーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が特に大きいテーマと考えられます。
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(4)条約
表6は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の条約の問題において、(ア)合格者正答
率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上30%未満の問題お
よび(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が30%以
上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表6
テーマ
(ア)差20%以上
パリ条約(3原則)
3
パリ条約(優先権)
1
(イ)差30%以上
パリ条約(工業所有権の保護)
2
パリ条約(その他)
1
PCT(特許協力条約一般)
2
PCT(国際出願)
5
TRIPS協定
4
2
その他
表6に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の条約の問題全体に対して、(A)PCT(国際出願)に関す
る問題は5個、(B)TRIPS協定に関する問題は4個と非常に高い割合を占めることが特徴です。
すなわち、これら(A)および(B)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が大き
いテーマと考えられます。
また、(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の条約の問題全体に対して、(A)PCT(国際出願)に関する問題は2個、
(C) パリ条約(工業所有権の保護) に関する問題は2個と高い割合を占めます。すなわち、
(A)のテーマは、合格者と不合格者の知識(理解)の差が特に大きいテーマと考えられます。
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(5)著作権
表7は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の著作権法の問題において、(ア)合格
者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上30%未満の
問題および(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が
30%以上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表7
テーマ
(ア)差20%以上
著作者の権利
5
著作者隣接権
1
(イ)差30%以上
表7に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の著作権法の問題全体に対して、著作者の権利に関する問題は5
問と非常に高い割合を占めます。
すなわち、著作者の権利に関する問題は、合格者と不合格者の知識(理解)の差が大きいテ
ーマと考えられます。
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(6)不正競争防止法
表8は、平成24年度から平成28年度の短答式試験の不正競争防止法の問題において、
(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答率の差が20%以上
30%未満の問題および(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正
答率の差が30%以上の問題の個数をテーマ別にまとめたものです。
表8
テーマ
(ア)差20%以上
(イ)差30%以上
不正競争の定義
8
5
その他
1
3
表8に示すように、(ア)合格者正答率が60%以上、かつ、短答合格者と不合格者との正答
率の差が20%以上30%未満の不正競争防止法の問題全体に対して、不正競争の定義に関す
る問題は8問と非常に高い割合を占めます。また、(イ)合格者正答率が60%以上、かつ、短答
合格者と不合格者との正答率の差が30%以上の不正競争防止法の問題全体に対しても、不正
競争の定義に関する問題は5問と高い割合を占めます。
すなわち、不正競争の定義に関する問題は、合格者と不合格者の知識(理解)の差が大きい
テーマと考えられます。
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○まとめ
短答式筆記試験は、弁理士活動を行うに当たり、必要な基礎的知識を有するか否かを判定し、かつ
論文式筆記試験及び口述試験を適正に行う視点から許容できる最大限度の受験者を選別するために、
基礎的知識、法条の解釈及び理解を問う問題を出すものです(「弁理士試験の具体的実施方法につ
いて」より)。
基礎的知識ですから難しいことを知っている必要はありません。条文を理解していれば十分です。しか
し、苦手分野や知識の穴があるとあと1点で泣くことになるかもしれません。自分の知識の穴を把握して、
穴を埋めるような学習をこころがけてください。
以上
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