■ 建設機械 施工 技術・建設技術審査証 明報告 ■ 審査証明依頼者:神鋼建材工業株式会社 ライト工業株式会社 技術の名称:ハイジュールネット(高エネルギー吸収型落石・土砂防止柵) 上記の技術について(一社)日本建設機械施工協会建設技術審査証明事業(建設機械施工技術)実施要領に基づ き審査を行い、建設技術審査証明書を発行した。以下は、同証明書に付属する建設技術審査証明報告書の概要であ る。 1.審査証明対象技術 また、ハイジュールネットは崩壊土砂を捕捉することも 可能であり、設計衝撃力 100kN/m 2 、150kN/m 2、200kN/m 2 に ハイジュールネットは、スイス国のイソフェール社が 対応する 3 種類の型式がある。 ISO-STOP として開発した技術を基本としており、その適用 ハイジュールネットは、基部がピン構造の鋼製支柱と支 範囲を日本国内向けに拡張した落石対策工の一つである。 柱を支える保持ケーブル、支柱の上下部に張られた二重平 落石対策工には、発生源対策としての落石予防工と、発 行ケーブル(上下部ケーブル)、ブレーキエレメント(衝 生した落石による被害を軽減するための落石防護工がある。 撃緩衝装置)、さらに上下部ケーブル間に設置する格子状 ハイジュールネットは、発生源から落下終端に至る中間 のロープ(ケーブルネット)等より構成されたシステム全 地帯(斜面途中)に設けるもので落石防護工に分類され、 体で落石や崩壊土砂による衝撃を吸収する。また、ケーブ 一般の落石防止柵に比べて大きな落石エネルギーを対象に ルネットの網目より小さな落石は金網で捕捉する。 した高エネルギー吸収型の落石防止柵で、落石エネルギー の大小に応じ、防止柵の最大吸収エネルギーとして 250kJ、 ハイジュールネットの概要図および落石対策工法におけ る位置付けを図 1.1 および図 1.2 に示す。 500kJ、1000kJ、1500kJ、2000kJ、3000kJに対応する 6 種類の型式がある。 ブレーキエレメント 上部ケーブル ブレーキエレメント ケーブルネット 保持ケーブル サイドケーブル A 支柱 ブレーキエレメント 保持ケーブル用アンカー サイドアンカー 下部ケーブル ブレーキエレメント 金網 支柱 A ベースプレート 支柱基礎アンカー ゲビンデスターブ 断面 A-A 保持ケーブル ブレーキエレメント 上部ケーブル 支柱 サイドケーブル ケーブルネット ブレーキエレメント 金網 下部ケーブル 交点クリップ 図 1.1 ハイジュールネットの概要図 落石対策工法 落石防護工 落石予防工 きわめて大 落石 の持つエネ ルギー ワイヤロープ掛工 大 落石の 個別処理が 可能か 小 ア ン カ ー 工 Yes 根 固 め 工 除 去 工 No 接 着 工 落石・ 崩壊が予想 Yes される部分の切 土が可能か 切 土 工 No 排 水 工 編 柵 工 侵食・ 風化防止が 効果的か Yes 小 吹 付 工 落石 の跳躍 高 大 大 落石 小 の跳躍 高 張 工 No 従来型落石防護柵 ポケット式落石防護網 覆 式 落 石 防 護 網 ロ ッ ク シ ェ ッ ド 多段式落石防護柵 高エネルギー吸収型 落石防止柵 斜面の 抑止工が 効果的か 落 石 防 護 棚 落石防護網工+ ロックボルト工 落石防護土堤 ・ 溝 落 石 防 護 擁 壁 植 生 工 Yes 擁 壁 工 No 擁壁工+アンカー工 上記工種 で対策が 可能か No Yes 工種の決定 注).本図は落石対策便覧の図3-25に加筆・修正したものである。 図 1.2 ハイジュールネット(高エネルギー吸収型落石防止柵)の位置付け ハイジュールネットは、前述のとおりスイス国のイソフ ェール社が開発し、公的機関(スイス環境森林植栽局 としてハイジュールネットを開発した。 ハイジュールネットの基本技術は、上述のとおり (SAEFL)、スイス連邦森林降雪植栽研究所自然災害部(WSL)、 ISO-STOP であり、ISO-STOP は支柱間隔 10m として WSL によ スイス連邦雪崩落石専門家委員会(FECAR))において認証 り認証されている。ハイジュールネットでは、日本の山岳 された ISO-STOP( 落石エネルギーの範囲:250kJ、500kJ、 地 形 条 件 に 適 用 で き る よ う に 支 柱 間 隔 の 設 定 範 囲 を 5m~ 1000kJ、1500kJ、2000kJ、3000kJの 6 種類)を基本技 10m に広げることとした。また、ISO-STOP の 1000kJ および 術とした高エネルギー吸収型の落石防止柵である。 1500kJ は最小有効柵高 4.0m であり、2,000kJ および 3000kJ また、ハイジュールネットは崩壊土砂の捕捉も可能であ 2 2 り 、 そ の 設 計 衝 撃 力 の 範 囲 と し て 100kN/m 、 150kN/m 、 2 は 5.0m となっている。 一方、日本では「(社)日本道路協会 落石対策便覧」に 200kN/m の 3 種類の型式がある。 記載されている落石の跳躍量に関する規定により、最小有 以下に本技術の特徴を示す。 効柵高3.0mの落石防止柵が必要となるため、最小有効柵高 ( 1) ハ イ ジ ュ ー ル ネ ッ ト は 、 落 石 捕 捉 性 能 、 変 形 性 能 が ISO-STOP 標 準 仕 様 と 同 等 の 高 エ ネ ル ギ ー 吸 収 型 落 石 防 止柵である。 3mを含めることにより、ハイジュールネットの有効柵高の 範囲をISO-STOP仕様の75%~100%に拡張することとした。 表 2.2 にハイジュールネットの有効柵高を示す。 (2)日本国内の地形に適合した仕様で、適切な柵高、支柱 表 2.2 ハイジュールネットの有効柵高 間隔を選ぶことができる。 (3)落石を受けてネットの一部が破断した場合、現地にて 簡易な補修で機能を回復でき、維持補修にかかるコスト 落石の吸収 ハイジュールネット エネルギー(kJ) 有効柵高(m) 250 が軽減できる。 500 (4)部材が軽量のため、斜面上の施工が可能である。 (5)崩壊土砂を捕捉することができる。 (6)従来工法の落石防護用壁と比較して工事費が安価であ 4.0、 5.0 3.0、 4.0、 5.0、 6.0 1500 3.0、 4.0、 5.0、 6.0 3000 注. 3.0、 4.0 1000 2000 る。 2.開発の趣旨 3.0、 4.0 注. 5.0、 6.0、 7.0 4.0 注. 5.0、 6.0、 7.0 、 、 5.0m ×0.75= 3.75m を 丸 め て 4.0m と す る 。 また、近年多発している崩壊土砂による災害を防止する 表 2.1 に上記した WSL で承認されている ISO-STOP の吸収 ため、ハイジュールネットの適用範囲の拡大を図り、ハイ エネルギーごとの有効柵高を示す。 ジュールネットシステムを応用した供試体による実証実験 表 2.1 を行った。その結果、設計衝撃力 200kN/m2 の規模の崩壊土 ISO-STOP の有効柵高 落石の吸収 ISO-STOP エネルギー(kJ) WSL 許容範囲(m) 250 2.0~4.0(旧基準値)注 1. 500 3.0~4.5 注 2. 1000 4.0~6.0 注 2. 1500 4.0~6.0 注 2. 2000 5.0~7.5 注 2. 3000 5.0~7.5 注 2. 注 1.吸 収 エ ネ ル ギ ー 250kJ の 型 式 に つ い て は 、WSL 旧 基 準 に よ り 有 効 柵 高 は 4m ま で 認 め ら れ て い る 。 注 2.WSL 基 準 で は 試 験 に 合 格 し た 場 合 、最 小 有 効 柵 高 の 1.5 倍 ま で 認 証 す る こ と に な っ て い る 。 このシステムを日本に導入するにあたり、日本の山岳地 形条件に適合できるように、支柱間隔および有効柵高の設 砂は捕捉可能であることを確認した。 その実証実験の計測データを基に、土砂の衝撃力に応じ たハイジュールネット(高エネルギー吸収型土砂防止柵) を開発した。 3.開発の目標 ハイジュールネットの基本技術である ISO-STOP が日本 の山岳地形条件に適合するように、高エネルギー吸収型落 石防止柵では(1)、(2)、(3)、高エネルギー吸収型土 砂防止柵では(4)を開発目標とする。 (1)支柱間隔 5m~10m で、所定の落石エネルギーの吸収が 可能であること。 定範囲を広げ、様々な施工条件に対応できることと、施工 (2)有効柵高*3m~7m(ISO-STOP の 75%~100%)で、所 性、経済性の向上および維持管理が容易であることを趣旨 定の落石エネルギーの吸収が可能であること。 (3)ネットの部分補修が可能であり、かつその部分補修に より所定の機能が回復できること。 7.審査証明の結果 (4)支柱間隔 5m~8m、有効柵高 3m~6m で所定の衝撃力を 有する崩壊土砂を捕捉できること。 前記の開発の趣旨、開発の目標に照らして、1000kJ ハイ * ハ イ ジ ュ ー ル ネ ッ ト の 基 本 技 術 で あ る ISO-STOP の 最 小 有 効 柵 高 は 表 2.1 の ネ ッ ト 高 さ で あ り 、 WSL に お い て 認 証 さ れ て い る 。 この技術を日本に導入するにあたり、日本では「(社)日本道 路協会 落石対策便覧」に記載されている落石の跳躍量に関す る 規 定 に よ り 、 最 小 有 効 柵 高 3.0m が 必 要 と な っ て く る 。 そ こ で 、ISO-STOP の 最 小 有 効 柵 高 4.0m に 対 し 75% の 3m を 開 発することによって、ハイジュールネットの有効柵高の設定範 囲 を 3m~7m に 拡 張 す る こ と と し た 。 ジュールネットの実物大試験結果および基本技術である ISO-STOP の WSL 試験結果を併せて審査することにより、 250kJ から 3000kJ までのハイジュールネット技術全体が承 認された。 また、ハイジュールネットの国内における実スケール土 砂崩壊実験結果および基本技術である ISO-STOP の土砂用 1-・D 2 δ ハイジュールネット試験結果を併せて審査することによっ h h1 h h1 h0 δ 15° て、200kN/m 2 までの崩壊土砂に対する土砂用ハイジュール ネットの捕捉能力が承認された。 75° 支柱長さ:h m 落石跳躍量:h0=2.0 m 支間中央部でのたわみ量:δ m 対象落石幅:D m 有効柵高:h1=h-δ m 図 3.1 支柱長さ(h)、有効柵高(h1)、たわみ量(δ)の関係 (1)支柱間隔 5m~10m で、所定の落石エネルギーの吸収が 可能であることが認められた。 (2)有効柵高 3m~7m で、所定の落石エネルギーの吸収が 可能であることが認められた。 (3)ネットの部分補修が可能であり、かつその部分補修に 4.審査証明の方法 より所定の機能が回復できることが認められた。 (4)支柱間隔 5m~8m、有効柵高 3m~6m で所定の衝撃力を 各々の開発目標に対して、申請者が提出したハイジュー 有する崩壊土砂を捕捉できることが認められた。 ルネット(高エネルギー吸収型落石防止柵)性能確認試験 結果および基本技術である ISO-STOP の WSL 試験結果に基 8.留意事項および付言 づき、表 4.1(1)、 (2)、 (3)の審査項目について委員会が 確認する。また、設置状況を含めたシステム全体を目視に より確認する。表 4.1(4)の審査項目については「高エネ ルギー吸収型土砂防止柵実証実験結果」および「イソフェ ール社崩壊土砂用防止柵実証実験結果」に基づき、委員会 が 確認 し た 。開 発 目 標に 対 す る 確認 方 法 を 表 4.1 に 示 す 。 5.審査証明の前提 (1)審査の対象とする本技術は、所定の適用条件のもとで 適正な材料・機器を用いて施工されるものとする。 (2)審査の対象とする本技術に用いる機器は、適正な品質 管理のもとに製造され、必要な点検、整備を行い、正常 な状態で使用されるものとする。 (3)審査の対象とする本技術は、適正な設計、機器操作お よび施工管理のもとに行なわれるものとする。 6.審査証明の範囲 審査証明は、依頼者より提出された開発の趣旨・開発の 目標に対して設定した審査証明の方法により確認した範 囲とする。 本技術の実施にあたっては、施工条件を十分検討し、 「ハイジュールネット工法 行うこと。 設計マニュアル」を参考に 表 4.1 開発目標と確認方法 開発目標 審査項目 確認方法 (1)支柱間隔 5m~10m で、所定の落石エネル ギーの吸収が可能であ ること。 i)支柱間隔 5m~10m における落石 捕捉性能と変形性能。 1.支柱間隔 5m における重錘落下試験結果から下記に ついて確認する。 ①ネット上で重錘が停止すること。 ②ネットの破損がないこと。 ③重錘衝突時、ネットの制動距離が確保されている こと。 ④重錘衝突後、ネットの最低高さが確保されている こと。 2.WSL 試験結果を確認する。 (2)有効柵高 3m~7m で、所定の落石エネル ギーの吸収が可能であ ること。 i)有効柵高 3m~7m における落石 捕捉性能と変形性能。 1.支柱間隔 5m、有効柵高 3m における重錘落下試験結 果から下記について確認する。 ①ネット上で重錘が停止すること。 ②ネットの破損がないこと。 ③重錘衝突時、ネットの制動距離が確保されている こと。 ④重錘衝突後、ネットの最低高さが確保されている こと。 2.WSL 試験結果を確認する。 (3)ネットの部分補修が 可能であり、かつその 部分補修により所定の 機能が回復できるこ と。 i)補修ネットにおける落石捕捉 性能と変形性能。 補修したネットを用いた重錘落下試験結果から下記に ついて確認する。 ① ネット上で重錘が停止すること。 ② ネットの破損がないこと。 ③ 重錘衝突時、ネットの制動距離が確保されている こと。 ④ 重錘衝突後、ネットの最低高さが確保されている こと。 (4)支柱間隔 5m~8m、有 効柵高 3m~6m で所定の 衝撃力を有する崩壊土砂 を捕捉できること。 i)崩壊土砂に対する捕捉性能と 変形性能。 実証実験により下記について確認する。 ① 崩壊土砂をネット上で捕捉して停止すること。 ②ネットの破損が無く制動距離が確保されているこ と。
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