ワーキンググループにおける論点整理

資料1
科学技術イノベーションの基盤的な⼒に関する
WG(第4回)
H28.12.22
ワーキンググループにおける論点整理
【議題】
<第1回及び第2回>
・産業界の求める人材育成と大学等
<第3回>
・大学等における多様な資金の獲得方策
・大学発、研究開発法人発ベンチャーを生み出すための制度の見直し
【問題意識】
<ワーキンググループの共通した問題意識>
・科学技術イノベーションの中核を担う大学等の運営基盤を強化していくためには、国
からの運営費交付金等の公的資金のみならず、民間資金等による資金の多様化の必要
性が高まっている。このため、国としても大学等によるこのような外部資金獲得に向
けた取組を促進することが重要である。
<第1回及び第2回の議論における問題意識>
・また、科学技術イノベーションを促進するには、それを支える人材への投資が進み、
研究人材が流動化することが不可欠である。企業が求める人材や企業人材の大学等に
おける育成のための仕組み、研究開発の支援人材の育成、産学や国内外の人材の流動
化の促進や産学官の多様な場での若手研究者の活躍促進などが重要である。
<第3回の議論における問題意識>
・大学等による外部資金獲得のための方策の一つとして、クラウドファンディングの活
用等による個人寄附の拡大が有効と考えられることから、大学等への寄附を促進する
ための施策が重要である。
【第1回及び第2回の主な論点】
○民間資金とのマッチングによって、資金面も含め産業界と連携した学位プログラム
を創設することが有益ではないか。
○産学連携による学位プログラムの創設を実現又は促進するためにはどのような仕
組みとすればよいか。
※「学位プログラム」とは、大学等において、学生に短期大学士・学士・修士・博
士・専門職学位といった学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に
応じて達成すべき能力を明示し、それを修得させるように体系的に設計した教育
プログラムのこと。(中央教育審議会大学分科会(第 74 回)配付資料より)
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<産学連携による学位プログラムの創設ニーズ及び創設の際しての課題>
・優秀な学生を確保できる保証がある場合、企業の協力は得られやすい。
・社会人学生への支援の充実により、企業研究者・技術者の育成ニーズも掘り起こせる。
・産業界としては、投資対象としてのリターンの不明確さ、産業界の求める分野の教員
の不足や創設までのスピード感の不足に懸念。
・新たな専攻の立ち上げやカリキュラム作成は、作業量や調整(学内での合意形成)を
考慮すると、既存専攻内に設置すべき。
・寄附講座は、一企業単独での継続が難しい。また、大学の運営費の提供は、株主から
理解を得にくく、共同研究とのセットも一案。
・ステージゲートを導入した 10 年程度の長い支援が必要。継続的・長期的な財政確保
(奨学金、運営費)が課題。
<学位プログラムの創設を実現または促進するための仕組み>
・企業人へのインセンティブ。
・大学組織としてのコミットが必要。
(企業のニーズを踏まえた学位プログラムの企画、
品質保証。)
・執行部の意識と教員の意識とのギャップ解消が必要。
・税制優遇策。
・共同研究の直接経費による学生の人件費の支出。
・事業の定着が重要。大学独自の資金だけでなく、継続には民間資金の活用が鍵。
<産業界として大学に求める人材育成、望ましい分野>
・多様な技術人材の育成。基礎基盤的な技術力の担保。
・幅広い基礎学力、研究マネジメント能力、課題解決力、創造力、リーダーとしての意
識。
・カリキュラムや成績、スキルの透明性と客観性の確保。
・産業基盤として必須の学問領域の維持、創設と拡大。
・絶滅危惧学科(数は少なくなりつつあるが企業に必要な学科)の維持(化学工学、電
気工学、土木工学、冶金・金属工学、原子力工学、繊維工学など)。
・新しい分野や融合領域の創設と拡大(例えばAIなど)。
・各大学または学科ごとの専門性・得意分野の提示。
・学際的研究は学生の見方や考え方が広がり、企業も人材・資金を出しやすい。
<博士課程教育リーディングプログラム(リーディング大学院)について>
・学生の就業意欲が高く、実行力、発進力、交渉力に優れていることを企業担当者が高
く評価。
・博士人材の育成だけでなく、博士の価値や高度な知識・スキルをもつ人の価値向上に
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つながる。
・事業終了後の民間企業との連携が重要。
<その他>
・企業でリーダーとして活躍している人の教育履歴、博士卒と修士卒の学生の違い等、
データベースによる検証が必要。
・民間企業との関わりが、大学の在り方を変える契機になる。
・地方大学も含め、大学の個性・特色を大事にすべき。
・アメリカでは大学が学生に給与を出すので、再教育を受ける社会人が多い。
【第3回の議論の主な論点】
○欧米と比較して、我が国における大学等への寄附は捗々しくない。寄附を促進する
ために、どのような施策が必要なのか。制度的隘路は何か。
○寄附を受け入れる側の大学等において、どのような体制が必要か。
<欧米における寄附税制について>
・米国では、1980~90 年代にかけて大学に対する寄附がそれまでの約三倍に拡大。この
うち、半分以上が個人寄附であり、これには評価性資産による寄附に対する税制優遇
措置の寄与が大きい。
・評価性資産による寄附に対する税制優遇措置については、米国においても税の公平性
の観点から社会的批判の対象とされることもあった。
<日本の大学等への寄附の現状と促進に向けた課題>
・日本の寄附に対する税制優遇は既に欧米並みだが、国立大学への寄附に対する優遇に
は制限がある。
・寄附に対する税額控除は、公的資金の手当てが小さい組織(私立大学・NPO 等)に対
する制度であり、国立大学に対しては、経済困窮者への奨学目的等へ例外的に認めら
れているのみ。
・大学等が地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を活用するためには、また、自治
体側においてふるさと納税を活用するためには、自治体側に制度活用の認識を広げる
必要がある。
・個人寄附を集めるには、寄附対象の明確さが重要で、それにはある種の職人技が求め
られ、人材育成が必要。
・評価性資産による寄附は、それが運用される必要があり、制限緩和や運用するための
組織を整えることが重要。
・ファンドレイジングを行うための本部機能の強化が重要。
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・遺贈と通常の寄附を分けて考えるべきで、特に遺贈はキャピタルゲインに対する税制
面での優遇がインセンティブとなり得る。
・米国では、親族(利害関係者)が設立して運用する個人財団からの寄附が大学等にお
ける大きな資金源となっているのに対し、日本では税制面でのインセンティブが少な
く、役員の利害関係者の割合等に制約があり、認定基準が厳しい。寄附促進の観点か
らの財団の在り方も検討が必要。
・クラウドファンディングは個々の研究プロジェクトの理解促進手段として活用可能
で個人寄附拡大の糸口となり得る。
・現在の大学の寄附は専ら周年記念事業であり、特定の研究への募金を大学が行うこと
への理解が得にくい。
・卒業生へのフォローが十分でないと、卒業生も大学への帰属意識が高まらず、寄附が
集まりにくくなっている。同窓会の管理が重要。
・寄附集めは重要だが、ファンドレイザー等にコストがかかる。コスト計算の観点も重
要。
<研究開発法人における更なる産学連携等に向けた課題>
・クロスアポイントメント制度はエフォート以上に対象者に負担が掛かる。対象者にイ
ンセンティブを与えられるような制度構築の検討が必要。
・国立研究開発法人にとって、産学連携を推進していく上で、調達に係る制限(政府調
達基準、少額随契基準額)の緩和・撤廃が重要。
・現行制度上、国立研究開発法人からベンチャー企業への出資は、一部を除き認められ
ていないが、出資(金銭出資、現物出資)が可能となることで、国立研究開発法人の
成果を活用したベンチャーの創出が可能。
・ベンチャー企業への出資は少額でもよく、国立研究開発法人がコミットしているとい
う事実が重要。
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