平成28年12月21日 熊 本 地 方 気 象 台 る 気 象 ひとくちメモ 「気象ひとくちメモ」の再開について 今年4月におきた平成28年熊本地震以降、「気象ひとくちメモ」は掲載ができない状態が続い ていましたが、今回より再開をします。再開第1号は気象の内容ではありませんが熊本地震で見 られた地震活動の特徴を一例ですが紹介します。 熊本地震は図1に示す布田川断層帯と日奈久断層帯でおきた地震です。また、この地震によ り周辺の断層帯へも影響を及ぼす地震活動になりました。とくに熊本平野周辺では震源が広範 囲に広がり、現在もまだ活動が続いています。今回は、この熊本平野周辺でおきた地震について、 気象庁ホームページに公開されている初動発震機構解から地震を起こした断層の特徴を示しま す。 初動発震機構解は地震計で観測した地震波の初動(P波)の押し引きから地震を起こした断層 の形式と断層の動きを推定したものです。今回はこの情報から断層の形式を調べます。断層に は岩盤に加わる力によって3つの動き方があります。ひとつは押しの力による逆断層型で断層は 相手側の岩盤がのりあがるように動きます(巨大 地震を起こす海溝型の地震など)、次は引っ張る 力による正断層型で相手側の岩盤がずれ落ち る動きをします。最後は押しと引きの力が交差す るように働く場合で、相手側の岩盤が右や左の 横方向にずれ動く横ずれ断層があります。図2 に各々の断層の形式と模式図および記号を示 図 1 布田川断層帯・日奈久断層帯の位置 図2 初動発震機構解の記号と断層の形式 図3 初動発震機構解(2016年1月-12月12日) します。 図3は、今回の熊本地震の活動の中で初動発震機構解が決まった地震の震央と断層の形式 を記号で示したものです。この図からは、布田川断層帯と日奈久断層帯に沿って横ずれ断層型 の震央が並んでいることがわかります。しかし、熊本平野や布田川断層帯の北側では白い部分 が円の真ん中にくる正断層型の震央が拡がっています。 このことから、今回の地震の活動では熊本平野の周辺において横ずれ断層型と正断層型のふ たつの断層形式があることがわかりました。熊本平野は、別府-島原地溝帯の中にあり、同じ南北 に引っ張る力を受けながらも布田川断層帯・日奈久断層帯とは異なる断層の動きをしていると考 えられます。今後、より詳しい調査研究が発表されることを期待します。 最後に、地震活動は弱まりつつありますが、まだ継続していますのでご注意ください。 本件に関する問い合わせ先:熊本地方気象台 (096-352-0345) ※バックナンバーは熊本地方気象台ホームページに掲載しています。 (http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kishoumemo/kishoumemo.htm)
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