量 学IIおよび演習

11-1
量⼦⼒学IIおよび演習
名城⼤学
理⼯学部 材料機能⼯学科
岩⾕ 素顕
講義内容 • 多電⼦原⼦の解析⽅法
原⼦の周期律表
11-2
多電⼦原⼦:He以上の原⼦
(1s)1
(1s)2
多電⼦の場合は近似を使う
粒⼦の種類分け
11-3
フェルミ粒⼦:スピン⾓運動量の⼤きさがℏの半整数
(1/2, 3/2, 5/2, …) 倍の量⼦⼒学的粒⼦
反対称波動関数の粒⼦
・・・電⼦やクォーク
ボーズ粒⼦:スピン⾓運動量の⼤きさが ℏの整数倍の
量⼦⼒学的粒⼦である
対称波動関数の粒⼦
・・・光⼦やヒッグス粒⼦
パウリの排他原理(排他律)
• 2 つ以上のフェルミ粒⼦は同⼀の量⼦状態を占
めることはできない
Wolfgang Pauli
11-4
Heの場合:原⼦番号2
-q 電⼦
m0
11-5
1s軌道に2つの電⼦
⇒主量⼦数n=1
⽅位量⼦数l=0
磁気量⼦数ml=0
スピン量⼦数
1 1
ms   , 
2 2
+2q
-q
m0
電⼦
原⼦核(Heは3Heと4Heの同位体が存在)
3He:陽⼦2個 中性⼦1個 1
地球の⼤気中
4He:陽⼦2個
中性⼦2個
:
の存在⽐
100万
原⼦核の運動エネルギーは無視して、Heのハミルトン演
算⼦を書く。真空の誘電率をε0とする。
-q
r1
m0
r12
+2q
r2
-q
11-6
2q 2
2q 2
q2
2 2 2
2
ˆ
H 
1 
2 


2m
2m
4 0 r1 4 0 r2 4 0 r12
この系の波動関数をφabとする
m0
このハミルトン演算⼦を元にエネルギー固有値を計算する
11-7
Heのような多電⼦原⼦の解き⽅
を考える前に
良く使う近似法である
摂動法を勉強する
摂動法
11-8
例えば・・・
Hˆ 0 n  En n
⇒この時、エネルギー固有値はEn
このハミルトニアン演算⼦にâという新しい演算⼦を
⾜した時どうなるか?
Hˆ
0

 aˆ  n 
??
今までの解法
3-9
⽔素原⼦に⼀様な磁界Hを加えると?(ゼーマン効果)
Hˆ  Hˆ 0   B ˆl  B / 
Hˆ  (r ,  ,  )  Hˆ 0 (r ,  ,  ) 
Hˆ 0  En
 B Blˆz

 (r , ,  )
lˆz  ml 
 En  ml  B B  (r ,  ,  )
したがって、エネルギー固有値は
En  ml  B B
(ml=-l~lの整数)
11-10
演習; 下記の1次元ポテンシャルV(x)中に質量mの電⼦が閉じ込められて
いるとした時のエネルギー固有値を求めなさい。
1
V x   Cx 2  Dx
2
シュレーディンガー方程式を立てる
 2 d 2

 2 d 2 1 2








V
x

x

E

x



Cx

Dx



  x   E  x 
2
2
2
 2m dx

 2m dx

・・・①
2
ここで
D
1 2
1 
D  D2
と変数変換すると①は
なので、 x  x 
Cx  Dx  C  x   
C
2
2 
C  2C
 2 d 2 1
D2 
2
 Cx 

  x  E  x EをE1とE2に分けて E=E1+E2とすれば
2

2
2C 
 2m dx
 2 d 2 1
 D2 
2
 Cx  x  

  x  E1  x  E2  x
2

m
d
x
C
2
2
2




したがって、それぞれの固有値を求めれば
1
1 C


E1   n     n  
2
2 m


1  C D2

E  E1  E2   n  

2  m 2C

n  0,1,2,  
n  0,1,2,  
E2  
D2
2C
11-11
摂動法(近似法)
Hˆ
0

 aˆ  n 
• この場合、固有値が求まるとした時にどのよ
うな値が求まるか?
無限の量⼦井⼾におけるエネルギー固有値と波動関数は?
エネルギー
左図のような無限の量⼦井⼾に閉じ込められた質
量mの電⼦のエネルギー固有値と波動関数は?
∞
En
F
x

 2 k 2  2  n 



2m 2m  L 
L
F
L
2
nは整数
2
 n 
 sin 
 x
L
 L 
ここに微⼩な電界Fを加えたとすると?
エネルギー
0
(0)
 n(x)( 0) 
m
0
11-12
x
無限の量⼦井⼾におけるエネルギー固有値と波動関数は?
エネルギー
無摂動の場合のシュレーディンガー⽅程式は?
∞
2 d 2

  E
2m dx 2
F
m
x
L
0
11-13
摂動が加わった場合のシュレーディンガー⽅程式は?
エネルギー
 2 d 2

 
  E

qF
(
L

x
)
2
2
m
dx


F
これが摂動項
0
x
L
摂動法
11-14
(0)
(0)
(0)
ˆ
H 0 n  En  n
のような無摂動の固有値⽅程式が解かれているとする
(ここで、φとEnは算出済み)
Hˆ

ˆ  E 


H
0
n
n n
を計算する
摂動法は変化量が⼩さい場合に使⽤可能
摂動法
11-15
Enとφnをそれぞれlのべき級数(テーラー級数)に展開
n  n
(0)
En  En
  n    n
(1)
 En
(0)
(1)
2
( 2)
  En
2
 
 
(2)
( Hˆ 0  Hˆ ) n  En n (n  1,2,...)
代⼊


(0)
(1)
(0)
Hˆ 0 n   Hˆ 0 n  Hˆ  n  ...
 En  n
(0)
(0)

  En  n  En  n
(0)
(1)
(1)
(0)
 ..
摂動法
11-16
(0)
(1)
(0)
ˆ
ˆ
ˆ

H 0 n   ( H 0 n  H  n )  ...
 En  n
(0)
(0)
  ( En  n  En  n )  ..
(0)
(1)
(1)
(0)
λの同じべき乗ごとに連⽴⽅程式を⽴てる。
0乗
1乗
(0)
(0)
(0)
Hˆ 0 n  En  n
(1)
(0)
(0)
(1)
(1)
(0)
ˆ
ˆ

H 0 n  H  n  En  n  En  n
摂動法
11-17
未知の波動関数
n
(1)
規格直交関数系
を
 n (1)  c11( 0)  c2 2 ( 0)  .....   cii ( 0) と展開する。
i 1
1乗の式
Hˆ 0 n (1)  Hˆ  n (0)  E n (0) n (1)  E n (1) n (0) ..
に代⼊すると
( 0)
( 0) ( 0)
Hˆ 0  cii   ci Ei i .. であるから
i
i
 ci ( Ei
(0)
 En )i
(0)
(0)
(0)
(1)
(0)
 Hˆ  n  En  n
i
摂動法
 ci ( Ei
11-18
(0)
 En )i
(0)
(0)
(0)
(1)
(0)
 Hˆ  n  En  n
i
左辺と右辺に左から  n * を掛けて積分。
ディラックの記号を⽤いると
(0)
 c (E
i
i
(0)
(0)
(1)
(0)
( 0)
| Hˆ  |  n   En  n |  n 
規格関数系=1
直交関数系なのでn≠iならば0
n=iならば 係数のエネルギー差がゼロ
 En ) n
i
従って
( 0)
 n
(0)
( 0)
| i    n
(0)
(0)
(0)
(1)
ˆ

| H |  n   En
近似法 その1 摂動法
11-19
もとのシュレーディンガー⽅程式
( Hˆ 0  Hˆ ) n  ( Hˆ 0  Hˆ p ) n  En n (n  1,2,...)
⼀次の摂動エネルギー
En (1)   n ( 0) | Hˆ  |  n ( 0)    n ( 0) | Hˆ p |  n ( 0) 
⼀次の摂動を考慮した全エネルギー固有値
 En
(0)
 En  ( Hˆ p ) nn
E n  En
(0)
(1)
 En
( 0)
  n
(0)
(0)
| Hˆ p |  n 
この部分が加わる
波動関数φn(1)はどうなるか?
11-20
解くべき摂動系のシュレーディンガー⽅程式
( Hˆ 0  Hˆ ) n  E n n (n  1,2,...)
φnとEnをλで展開する
n  n
(0)
En  En
1乗
(0)
  n    n
(1)
 En
(1)
2
( 2)
  En
2
 
( 2)
 
(1)
(0)
(0)
(1)
(1)
(0)
Hˆ 0 n  Hˆ  n  En  n  En  n
無摂動系の正規直交完全関数系で展開し、代⼊
 n (1)  c11( 0)  c2 2 ( 0)  .....   cii ( 0)
 ci ( Ei
i
i
(0)
 En )i
(0)
(0)
( 0)
(1)
(0)
 Hˆ  n  En  n
 c (E
i
( 0)
i
 En )i
( 0)
i
( 0)
nk
*
左から  k (0) をかけて積分
 
(0)
k
| c j (E j
(0)
 En ) |  j
(0)
(0)
11-21
(0)
(1)
( 0)
 Hˆ  n  En  n
   k
とすると
(0)
(0)
(1)
(0)
| Hˆ  |  n   k | En |  n  0
(0)
j
ck ( E k
(0)
 En )    k
(0)
(0)
(0)
| Hˆ  |  n  0
ck  
n  n
(0)
  n
(1)
Hˆ 
Ek
( 0)
定数
kn
 En
(0)
 n (1)  c1 1 ( 0)  c 2 2 ( 0)  .....   c j  j ( 0)
j
ck  
Hˆ 
Ek
(0)
kn
 En
(0)
n  n
1次の摂動系の波動関数
( 0)

 ( E
j n
Hˆ kj
( 0)
k
 En
( 0)
)
j
( 0)
 n
(0)

 ( E
k n
( Hˆ P ) kn
( 0)
k
 En
( 0)
)
 k (0)
11-22
摂動法に慣れよう!
摂動法を使ってみよう⇒演習問題は当⽇配布予定