【資料3】個別資料 (PDF:1016KB)

第 5 回 旧弘道館保存活用計画策定委員会
資料3
1 孔子廟の公開方法について
1.孔子廟戟門が閉門している背景と現状の公開方法
孔子廟のある区域は,弘道館の聖域であり,神儒一致の建学
精神のもと鹿島神社と孔子廟が併置されている。
藩校当時,孔子廟は特別な行事や定例の日にのみ立入が許さ
れた場所と推測されており,歴史的背景を踏まえ,通常は戟門
を閉門している。また,戟門及び附塀は創建当時の建造物であ
り,日常の開閉を行うことが,材を損傷する恐れがあることも
閉門している理由の一つである。
現在は,イベントに併せて公開し,好評であることから,公開
戦前の孔子廟戟門
方法について検討を行う。
弘道館鳥瞰図(弘道館事務所所蔵)
2.課題
○ 文化財の管理:公開方法に際しては,防犯体制,門の開閉行為による文化財への損傷に
注意する必要がある。
○ 事務所の体制:孔子廟は無料開放区域であり,事務所の目の届かない位置にあるため,
公開した場合でも,防犯体制が現状と同水準を確保する必要がある。
3.公開方針
○ 常時公開を念頭に置きつつも,当面は集客が見込める時に公開していく。
○ 防犯カメラなどを設置し防犯体制を強化した上で,現在のイベントに併せた公開や
定期的な公開日を設定する。
○ 公開方法は,現在の特別公開の方法(戟門内の観覧,本殿内部公開)を基本とし,
定期公開を加えることにより,公開回数の増加を図ることを検討する。
※定期公開のイメージ 毎月第1土曜日など
1
第 5 回 旧弘道館保存活用計画策定委員会
2 八卦堂の公開方法について
1.現状の公開方法
徳川斉昭の名で公表された「弘道館記」の碑が納めら
れ,藩校当時は弘道館の敷地中央に位置していた。昭和
20 年の水戸空襲で八卦堂は全焼し,同 28 年に創建建造
物の実測図にならって復元された。東日本大震災では弘
道館記碑の一部が崩落したが,平成 25 年に修復が完了
戦前の八卦堂
している。
弘道館鳥瞰図では八卦堂の扉の一部が開いて描かれているが,藩校当時は特別な行事
の際にのみ開閉されていたと推測されており,戦前に撮影された写真は閉扉している。
現在は,歴史的背景や弘道館記碑の保存上,通常は非公開とし,年に数回の特別公開
を行っている。
弘道館鳥瞰図(弘道館事務所所蔵)
2.課題
○ 文化財の管理:公開に際しては,防犯体制,扉の開閉行為による八卦堂や弘道館記碑
(温湿環境)への影響に注意する必要がある。
○ 事務所の体制:八卦堂は無料開放区域であり,事務所の目の届かない位置にあるた
め,公開した場合でも,防犯体制が現状と同水準を確保する必要がある。
3.公開方針
○ 防犯カメラなどを設置し防犯体制を強化した上で,引き続き,年に数回の特別公開
を行う。
○ 公開は,弘道館記碑の重要性から特別公開とし,観覧者のニーズに併せて定期的な
公開を検討する。
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3 有料区域と無料区域の一体的な利用について
1.現状
重要文化財正庁,至善堂を中心とした築地塀に囲まれた有料区域と無料区域の 2 つの
区域に分けて公開している。塀に囲まれた有料区域だけが弘道館の敷地と誤解されない
よう,八卦堂などへ誘導し,更には県庁舎西側の土塁等への誘導方策が求められている。
現在,ソフト面では,料金所や有料区域内での,
「弘道館お薦め散策ルート」などによ
る八卦堂,孔子廟の案内を実施しているが,ハード面では,有料区域の出口(正門脇の
通用門)から孔子廟側への散策は遠回りとなるため,物理的な対策が必要となっている。
2.整備方針
○ 弘道館の本質的な価値は「弘道館は最大規模にしてしかも特色ある教育理念を掲げた
著名な藩校」であり,敷地全体を歩いてもらうことが重要(本質的価値)である。
○ 有料区域を囲む塀は,藩校当時に存在(※1)しており,既存通用門の活用を検討す
る。
○ 有料区域への入口は料金所のある現在の通用門のみとし,出口専用の導線を考える。
※1
築地塀のほか,建築物(校舎厨屋)で囲まれていた。
3.検討案
○ 孔子廟側へ抜ける門は 3 箇所あるが,西側(鹿島神社裏,孔子廟裏)については,高
さが 1.4m と低く,既存園路への接続が難しい。
○ 北側の通用門は高さが 1.8m ある上,既存園路との接続も容易であり,地形の改変が
大きく伴わず,コンクリート躯体を利用して「監視カメラ」,
「一方通行」を整備する。
北側(無料区域側)
既存の門(スロープ)の活用
南側(有料区域側)
孔子廟
八卦堂
正庁・至善堂
孔子廟方面は遠回り
築地塀
現在の出入口
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4 文館の整備について
1.現状
文館は明治元年(1868)の弘道館の戦いにより焼失し,現在は主に梅林,トイレ,藤棚
が整備されてきている。文館は学生が学問を学んでいた主要な建造物で,藩校として必要
不可欠な要素であり,また,文化財の保存・活用上必要な機能を確保する観点からも文館
を復元し活用することが期待されており,その整備手法について検討する。
2.文化資源以外の施設
文化資源以外の施設(本質的な価値を構成する諸要素以外)の取り扱いは以下のとおり
用
途
現 状
休養施設
将来
藤棚
藤棚の整備にあわせ,ベンチを設置し
休憩機能の確保
(S38)
休憩場所として提供していたが,浮浪
文館跡地であり,移設を検討
者対策として撤去された。
便益施設
トイレ
史跡内を散策する方々への利用
便益施設の確保
有料施設の料金徴収・管理
事務所機能の確保
弘道館全体の管理事務所
(事務室は別場所でもよいが,料
所蔵品の保管庫
金所は現在の位置とする)
館内の作業員休詰所
詰所機能の確保
(S39)
瓦材の保管庫
文館跡地であり,移設を検討
テニス場
無料で市民へ貸し出ししているが,老
廃止(第 2 回委員会にて決定済)
(S21)
朽化が著しい。
(S62)
管理施設
事務所
(S59)
作業員詰所
運動施設
3.文化財の保存・活用を図るための必要な施設(機能)
弘道館や水戸藩の学問・教育の伝統を伝えるため必要な施設は以下のとおり
用 途
目 的
ガイダンス施設
弘道館の概要を把握する機能を設け,訪れる人々へ文化資源の理解を促進させる。
講座室
弘道館や水戸藩の学問の理解を深めるための,講座室を設ける。
収蔵・展示機能
所蔵する資料の保管スペースや展示機能を設ける。
休憩等のサービス機能
講座,散策などを楽しむための休憩機能を設ける。
ボランティア待機所
弘道館の案内をするボランティアガイドは現在,外で待機しており,その待機場所
を設ける。
文館(復元)
史跡指定地内で弘道館の規模や文武一致の象徴を体感するため復元する。
跡地は梅が植樹され,梅の名所となっている。
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4.整備方針
文館の復元
・文館等の再現した施設の活用
・テニスコートの撤去
及び跡地整備
・公衆便所の建替え
・藤棚の撤去及び
跡地整備
・作業員詰所の移転検討
・公衆便所の改修
・管理事務所と倉庫の移転検討
・料金所の存続
①既存施設
廃止(テニスコート,藤棚)
存置(事務所,トイレ)
機能確保(保管機能,休憩施設,詰所機能)
②新たな機能(ガイダンス機能,講座室,ボランティア待機所など)
③文館の復元(内部の活用)
④文館の復元
本質的な価値の保存・活用上必要な機能を残すが,
(用途:弘道館に必要な機能)
⑤作業員詰所の撤去
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第 5 回 旧弘道館保存活用計画策定委員会
藩校当時になかった施設は,復元する文館へ集約する。
5.文館復元スケジュール(案)
文館(床面積 約 2,500 ㎡,木造瓦屋根,漆喰壁)の復元は期間を要することが想定さ
れるため,茨城国体や東京オリンピックを迎えるにあたり地下遺構や既存資料を調査し,
ICT技術を活用した情報提供や礎石による空間演出により認知度を向上させる。
復元ができるまでは,ガイダンス機能,講座室,ボランティア待機所などの機能につい
ては,既存の施設や周辺施設の活用し対応する。
短 期
H29
H30
埋蔵文化財調査
中期・短期
H31
礎石設置
CG作成
映像公開
既存機能の改修等
新規機能の付加 検討
例)
H32~
番所,お休み処,三の丸庁舎,偕楽園公園センター
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認知度向上
復元