今を未来へつないでゆくリーダー

提言
今を未来へつないでゆくリーダー
-変わらないリーダーの正しさ-
これからの時代に求められる経営やリーダーシップはどのようなものでしょうか。今号では、グローバルにビ
ジネスを展開する日本企業へのトップインタビューや、リーダーに関する調査研究から、リーダーについて考え
ることを試みました。
実践コーナーのNTTコミュニケーションズの事例では、長期的な視野でグローバルな市場にチャレンジして
いる企業として、社会やお客様のビジネスを変革していくだけではなく、自分たち自身が変わっていかなくては
いけない、これまでの枠組みを超えて、社会やお客様の想像を超えるものを打ち出していきたいという飛躍的
な進化へのトップの思いが語られています。また、リーダーとして大切にしていることとして、事業の継続性や
社会への貢献を前提としながら、組織の理念を受け継ぎ、次の時代に新しいことにチャレンジするための礎を
残すことを第一にあげられています。
不透明な厳しいビジネス環境においても挑戦を続け、その挑戦自体を楽しむことを大切にし、体現されてい
るトップのメッセージには非常に力があります。それは、メンバーの挑戦心をかき立て、仕事への姿勢を一段高
めようと思わせるような牽引力ではないでしょうか。不確定な環境においてもスピーディに意思決定してチャレ
ンジし、その結果からの学びを次のチャレンジにつなげていく、それを粘り強く続けることでしか、組織の進化
はないのかもしれません。そして、チャレンジに向かって組織を動かす力がリーダーには求められていることを
実感させられます。
探求コーナーのリーダーに関する調査研究では、私たちには、従来のリーダー像に近い人をリーダーにふさわ
しいと考えてしまう傾向があると指摘されています。「自分たちの組織や文化に合った最高のリーダーを発掘す
るためには、リーダーのあるべき姿に対する自分の先入観が間違っていることを受け入れる必要がある。」とい
う主張はやや極端に聞こえるかもしれませんが、私たちは変革が必要と考えながらも、これまでと同じような
リーダーを求めてはいないでしょうか。
ドラッカーの言葉に「マネジメントは物事を正しく行う事で、リーダーシップとは正しい事をすることであ
る」というものがあります。絶対的な真理がないビジネスの世界において、リーダーの正しさとは何でしょう
か。現場や市場を正確に捉える「正しさ」、的確な意思決定をする「正しさ」、倫理的な「正しさ」など、さま
ざまに思い浮かびますが、私たちがリーダーに求める何らかの「正しさ」は、自らの仕事への思いや覚悟を映す
鏡なのかもしれません。
最後に、無私のリーダーとして知られ、人として正しい言動を貫くことを求めたといわれる西郷隆盛の言葉を
紹介します。
「道を行う者は、固(もと)より困厄に逢うものなれば、如何なる艱難の地に立つとも、事の成否、身の死生抔
(など)に、少しも関係せぬもの也。・・・故に只管(ひたすら)道を行い道を楽しみ、若し艱難に逢うてこれ
を凌がんとならば、弥々(いよいよ)道を行い道を楽しむべし。」(西郷南洲遺訓二九)
編集長 西山 裕子
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