Case Study: 日立金属(ISO14001認証統一を経て

日立金属株式会社 高級機能部品カンパニー
日立金属株式会社
高級機能部品カンパニー
グローバルな水準での高付加価値提案を目指し
(東京都港区)
ISO14001 認証統一を経て、
http://www.hitachi-metals.co.jp/
すべてのマネジメントシステムの最適化へ
■ グローバルな環境要請に応えて ISO14001 認証を統一
材料開発・材料技術をベースに各産業に高機能材料を提
供する、日立金属株式会社。その 1 セグメントとして、高品
位な鋳造技術を背景に自動車用鋳物部品と配管機器を
製造販売する高級機能部品カンパニーの製品には、常に
安定した品質保証と環境基準への適合性が求められる。
このことから、高級機能部品カンパニーには、サイトごとに
ISO9001 認証の取得による品質マネジメントシステム(以
下、QMS)および ISO14001 認証取得による環境マネジメ
ントシステム(以下、EMS)、耐熱鋳鋼部品の設計・開発お
よび製造に関しては ISO/TS16949 認証取得による自動車産業品質マネジメントシステム(以下、TS)、海外拠点
では OHSAS18001 認証取得による労働安全衛生マネジメントシステム(以下、OHSAS)を運用してきた経緯が
ある。
2004 年には日立金属のカンパニー制移行によりガバナンスを一元化する必要が生じたことから、ISO14001 認
証をカンパニー内で統一する「認証統一(認証のマルチサイト化)」の取り組みが始められた。現在では、カンパニ
ー内で適用する QMS、EMS、TS、OHSAS すべてのマネジメントシステムの最適化を視野に入れている。
「それはひとえに、当カンパニーの前身が自動車機器カン
パニーであったことに起因します。ユニットとして付加価値
を提供できる他の部品と違い、当社はあくまで単一の高機
能材から、二酸化炭素の排出量や燃費効率にも影響する
“軽量化”という付加価値を、全世界の自動車メーカーに
向けて提供しています。より軽量化した製品をお客様に提
案するためには、設計はもちろんのこと、生産や営業も含
めて品質や環境面を総合的に俯瞰し、統一して運用でき
技術開発部 主管技師 板橋一彦氏
るマネジメントシステム(以下 MS)を構築する必要があるの
です」
高級機能部品カンパニー 技術開発部 主管技師の板橋一彦氏は、組織内の MS の最適化を目指す背景をそ
う概観する。
■ ローカルなルールを尊重したグローバル統合
低炭素社会への希求を背景に“環境に優しいクルマ”づくりが求められる中で、自動車機器カンパニーは、責任
ある部品サプライヤーとして ISO14000 シリーズ発行から 3 年後の 1999 年に、いち早く熊谷事業所で
ISO14001 認証を取得。以降、生産拠点ごとに ISO14001 を取得し、個別に EMS を運用してきた。
「サイトごとの EMS の運用で、ローカルなレベルでの基準対応や環
境目標の達成はクリアされました。そうなると次のステップは、グロー
バルに自動車部品を供給するメーカーとして、生産拠点にとどまらず
に営業や本社機能も含めて、トータルに環境マネジメントへと働きか
けていく責任が生まれてきます」
高級機能部品カンパニー 技術開発部 環境管理グループの早川
一夫氏は、2005 年から本格化した EMS 統一への契機を述懐する。
自動車機器カンパニーとして ISO14001 認証を取得することをゴー
技術開発部 環境管理グループ 早川一夫氏
ルに、各生産拠点・研究所・国内関連会社と本社から 1 名ずつ担当
者を出して認証統一への準備が進められていったが、一番苦心した点は各サイトの文化やルールとの擦り合わ
せだったという。
「統一を前提にゼロから EMS を構築するのであればスムーズに進んだのでしょうが、各サイトはそれぞれの組
織の状況に最適なルールを確立していましたし、そのルールに対して良い意味でのプライドを持っていましたか
ら、統一ルールを策定することに対しての折り合いはなかなかつけられませんでした。各サイトが適用するルー
ルをそのまま肯定しながら、グローバル統合のために最低限必要な共通要求事項を見出していかざるを得ませ
んでした」(板橋氏)
認証統一プロジェクトでは、認証統一に欠かせない「内部監査」と「環境管理」の側面からも統一が求められる
「環境影響評価」に関してのみグローバルなルールを設定し、各サイトのローカルなルールを尊重して二次マニ
ュアルとして適用することを前提に、本社機能とのインターフェイスを確立する統一マニュアルを策定していっ
た。
こうして 2007 年に自動車機器カンパニーとして ISO14001 認証を取得し、2013 年に高級機能部品カンパニーと
して組織が再編成された際に、配管機器カンパニーが加わり、EMS を統一。2014 年には、高級機能部品カンパ
ニー内の全サイトで統一マニュアルが適用された。
2016 年 9 月現在、高級機能部品カンパニーでは、本社、素材研究所、国内 4 つの生産拠点、全国の営業拠点、
海外(韓国)を含む 7 社の関連会社の全サイトにおいて、日立グループおよび日立金属グループの環境方針に基
づき“環境適合製品の高水準化を維持する”高級機能部品カンパニーの統一 EMS が機能している。
■グローバルに対応する第三者認証機関の選定
カンパニー全体で多数の人員を抱える大きな組織の認証
統一を果たすうえで、ネックとなるのは審査を担当する第三
者認証機関の統一性だ。
日立金属の場合、ほとんどのサイトが日立グループと関係
の深い認証機関で審査を受けていたので、認証審査ベー
スで考えれば EMS の統一はスムーズに進行したと評価で
きる。これにより、ISO14001 認証に関連する各サイトの認
証コストも 30~50%に圧縮されている。
しかし、グローバル統合を実効化する場合には、グローバ
ルな実績と対応力を持つ認証機関に審査を統一する必要性が生まれてくる。実際、自動車機器カンパニー時代
の ISO14001 認証は、海外に拠点を持たない国内の第三者認証機関が主管したものの、韓国の関連会社の審
査においては文化、言語、現地の法令対応に十分な対応を取ってもらえず苦労した。
「当カンパニーは、製品群ごとに分割された組織体系で国内拠点と海外拠点が統括されますから、グローバルで
一貫性ある審査をタイムリーに実施できる認証機関に移行する必要性を強く感じました」(早川氏)
高級機能部品カンパニーでは、グローバルに対応できる外資系認証機関の中から新たに委託する認証機関の
候補を選定。カンパニー内で適用する MS の統一・統合という可能性を考え、そのスコープも QMS、EMS、TS、
OHSAS と明確化していることから、それらの資格を同時に保有する審査員の数、審査費用、そして何よりも認
証統一・統合への実効性ある提案力を評価して、ビューローベリタスを選択するに至った。
■組織のビジネスに最適化された MS の統一・統合へ
高級機能部品カンパニーの MS 最適化の取り組みは、ビューローベリタスを認証機関に国内拠点と海外拠点の
「QMS の統一(マルチサイト化)」を図る次のフェーズも視野に入ってきた。
当然、そのプロセスには ISO 認証取得企業の目下の課題となる「ISO9001/14001:2015 規格への移行」も織り
込まれることになるが、その作業は MS 最適化の第 3 フェーズとなる「QMS と EMS の統合」にも有効に働きか
けるところとなる。
「2015 年版規格は、組織のビジネスに最適化された MS の構築を要求事項としていますから、2015 年版への移
行を経過した後の QMS と EMS の統合は、自然なかたちで進むのではないかと考えます」(板橋氏)
組織固有のニーズや戦略に合わせて、統一認証(マルチサイト化)と統合認証(複数規格の統合)を活用して組織
認証の最適化を図るビューローベリタスの提案力に、大きな期待が寄せられている。
組織に最適化された MS 構築のプロセスは、“安全・快適な社会の実現に向けてグローバルな視点から新たな
価値を提案する”日立金属 高級機能部品カンパニーの事業活動を力強く支えていくだろう。
認証機関ビューローベリタスの視点~MS 統一・統合に必要なこととは
MS の統合・統一にあたり、組織はその明確な方向性、及び得られるであろう成果をビジョンとして持つことから
始めるべきでしょう。
統一や統合という言葉は聞こえが良く、合理化され、洗練された MS が機能しているかのような響きがあります
が、それらは手法であって目的ではありません。
まずは組織が向かう方向性が、トップの方針の徹底なのか、仕事の無駄を省いてスピードアップしたいのか、な
ど組織が置かれる状況とシステムに込める意思を明確にすることが必要です。
その上で、手段・方法は内外の知恵を結集して考えます。特に認証機関から最大の協力を得ることは必須で
す。認定制度の中で運用する以上、認定基準を理解し、さらに、「統一されている/統合されている」とは制度上
どのような状態を指すのか、その諸条件を充たしているか、充たしうるのかを確認しましょう。
次に、組織内の協力を求める段階へと進みます。とりわけトップマネジメントの理解とリーダーシップが重要で、
ビジョン提示によりプロジェクトが前進することは間違いありません。また、現場の理解も重要で、「変化を受け入
れるだけの価値(*1~3)がある」と充分に説明することは欠かせません。
(*1) コストメリットのみではなく、現場だけでは解決できなかった問題を「組織全体の課題」として捉え解決するた
めの仕掛けの活用も現実的となるでしょう。
(*2) 他の事業所におけるベストプラクティスを取り入れることもできます。
(*3) さらには、いくつもの視点(品質、環境、情報セキュリティなど)を通してトレードオフを解消しながら、プロセス
を最適化することも可能となります。
明快な方針とやり抜く力が必ずや組織を一歩進んだステージへと導くことになるでしょう。
(2016 年 9 月 2 日取材)
ビューローベリタスのサービス:グローバル認証プログラム