工学系研究科 I T O 都市工学専攻 YUKIHIRO 伊藤 幸広 教授 「インフラ構造物の新素材および施工に係る製造装置・品質管理用装置の開発」 「インフラ構造物の維持管理装置・方法の開発」 [キーワード] 構造物,コンクリート,鋼,品質管理,維持管理,点検,診断 インフラ・ライフサイクルコスト削減への新提案 研究紹介 ◆研究概要 本研究室では,インフラ構造物の新素材および施工に係る製造 装置・品質管理用装置や構造物の維持管理装置・方法について研 究開発を行っています.開発した装置,方法の特許出願件数は 34 件を数え,うち外国出願も 4 件あります.数種類の装置は市 販されており,またオリジナルの計測方法は全国の現場で活用さ れています.ここではその一部についてご紹介します. ◆新素材 〇超高強度コンクリート 普通ポルトランドセメント,シリカフォーム,鉄粉などを使用 し,圧縮強度 362N/mm2 の超高強度コンクリートの製造に成 功しました.未公認ですが日本最高強度クラスのコンクリートと 考えられています. 〇超軽量モルタル 発泡ポリスチレンビーズなどを使用した水に浮くモルタルは, 以前より提案されていましたが,強度が低いという問題がありま した.当研究室で開発した超軽量モルタルは,微小中空材料を多 量に混合したモルタルで,密度 0.90g/cm3と水に浮き,さらに 圧縮強度 25.6N/mm2 と実用的な強度が得られました. 〇軽量高強度コンクリート 微小中空材料を混和したモルタルは,水に浮く超軽量タイプだ けではなく,軽量でかつ高強度タイプのモルタルも可能となりま す.特殊な製法により中空ガラスを体積で 47%混和することに より,密度 1.33g/cm3 で,圧縮強度 94.6N/mm2 という軽量 高強度モルタルを開発しました.この比強度(圧縮強度÷密度) の 71.1MPa/g/cm3 は,モルタルの比強度の世界最高記録と思 われます. ◆維持管理装置・方法 〇棒形スキャナ(右下写真) コンクリート構造物に穿孔した小径孔(約 25mm)に挿入し 回転させるだけで孔壁面の展開画像が取得できる装置です.高精 細なデジタル画像より,構造物内部のひび割れ,中性化深さなど の劣化状況を観察,計 測でき,各種診断に利 用できます. 産学・地域連携機構より 佐賀大学研究室訪問記 2016 右写真は,孔内にフェノール フタレイン溶液を噴霧すること により,中性化深さ,ひび割れ 幅・深さ,アルカリ骨材反応に よるゲルの発生を,一枚のデジ タルカラー展開画像より観察・ 計測した事例です. 〇ケーブル外観検査ロボット 斜張橋ケーブル保護管の外観を検査する装置として,ケーブル をガイドに自動で昇降するカメラを搭載したロボットと,ロボッ ト本体を無線により遠隔操作するコント ロールボックスを開発しました.本装置は 東名足柄橋の 80 本のケーブルの外観検 査に用いられました(右写真) . ロボット本体は一辺が 566mm の立方 体の形状で,質量は 32kg と小型軽量の 装置としました.これは橋面上の狭隘な場 所でも 2 人で運搬・設置ができるもので, 車線規制等の交通規制無しで検査が可能 です.撮影した画像を用いて,画像解析に よりケーブル保護管表面の損傷の形状,寸 法を計測することができます. 〇ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置およびスリット応 力解放法 照明やレンズ収差の調整が不要なラインセンサを用いて構造 物の表面のひずみ分布を撮影した表面画像から画像処理により 計測する全視野ひずみ計測装置です.ひずみ計測精度は,スト レインゲージとほぼ同等であり,撮影した画像内ならば任意の 点の全方向のひずみが解析できます.また,PC構造物にスリ ットを切削し,応力解放した際のひずみを同装置により計測 し,計測値を元に応力解放を再現したFEM解析を行う事で 作用応力を算出するという「スリット応力解放法」を開発しま した。現場での使用実績は100箇所以上を超えています. 掲載情報 2016 年 12 月現在 伊藤教授が開発したスリット応力解放法は, 国・自治体が進める橋梁を中心とした道路ネ ットワークの安全性の確保に貢献でき,予防 保全に基づくインフラのライフサイクルコス トの縮減に寄与することから社会的意義が高 いとの評価を受け,国土交通大臣より第 18 回国土技術開発賞 創意開発技術賞が授与さ れました. 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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