現代ファイナンス論 - 宿題 No.3 蛭川雅之 提出期限:2016 年 12 月 19 日(月)15:00(厳守) 注意事項 • 個人で答案を作成・提出してください。答案の最初のページに学籍番号と氏名 を明記してください。なお、ルールに違反して答案を書いた(例:本講義に履修 登録していない学生に助力を求める、他の学生の答案を丸写しする)場合、内 容の如何を問わず減点の対象となりますので注意してください。 • 答案は必ずタイプ打ちしてください。手書きの答案は受け取りません。 • 答案を作成する際には、忘れずに問題番号を記入してください。また、計算根 拠などをできるだけ具体的に説明してください。必要に応じて途中計算を書い ても構いません。なお、説明がなくただ結果だけが書いてある場合、その問題 の点数は零点とします。 • 答案は左肩にホチキス止めをした上で提出してください。また、提出期限を厳 守してください。いかなる理由があろうと、期限後に提出された答案は受け取 りません。 問題1 償還期限が1年後の社債への投資を検討している。この企業の持つ格付からデフォ ルト率は 0.125% と判断され、リスクフリー・レート(= 国債利回り)が 1.025% で あるとすると、この社債の利率は何% が妥当か? 1 問題2 残存期間 1∼5 年の割引債の価格が(額面金額 100 円に対し)以下のようであると する。 残存期間(年) 価 格(円) 1 2 99.500 98.675 3 97.500 4 96.250 5 95.000 このとき、以下の問いに答えよ。 (1) 1∼5 年物スポット・レートを計算せよ。 (2) (1) の結果を利用して、イールド・カーブを図示せよ。 (3) ある企業は以下のような条件で2種類の社債を発行することを検討している。 社 債 表面利率 期 間 A B 0.875% 1.000% 3年 5年 なお、いずれの社債も利払いは年1回、かつ満期一括償還とする。この企業が発行す る社債の信用度は (1)-(2) で考察した割引債と同程度と仮定して、社債 A・B の(額面 金額 100 円に対する)発行価額をそれぞれ計算せよ。各社債はオーバーパー発行か、 それともアンダーパー発行か。 (4) (3) の社債それぞれについて、単利および複利応募者利回りを計算せよ。 問題3 起業家 Xanadu 氏は、高級洋菓子を製造・販売する企業 Xanadu’s Yummy Zabaglione, Inc. (“XYZ”) を 2017 年 1 月に設立する計画を立てており、先頃その事業計画書を作 成した。同計画書によると、XYZ の 2017 年および 2018 年(いずれも暦年)予想損 益計算書(日本語訳の関係個所のみ抜粋)は以下の通りである。 2 2017 売上高 売上原価・人件費他 減価償却費 営業利益 支払利息 税引前当期利益 法人税 当期純利益 $5,000 3,500 500 1,000 300 700 280 $420 (×1,000) 2018 $7,000 4,900 800 1,300 300 1,000 400 $600 また、同計画書では、XYZ は 2017 年および 2018 年にそれぞれ 950 千ドルおよび 1,000 千ドルの設備投資を計画しており、さらに、運転資本が 2017 年初 100 千ドル、2017 年末-50 千ドル、2018 年末-100 千ドルと推移するものと予想している。 (1) XYZ の 2017 年および 2018 年フリー・キャッシュ・フロー (“FCF”) を計算せよ。 (2) ベンチャー・キャピタル Quants’ Venture Capital, LLC. (“QVC”) は XYZ への 出資を検討しており、手始めに XYZ の企業価値を評価したいと考えている。QVC は、 XYZ の事業計画書および周辺情報を総合した結果、以下のような前提で評価するの が妥当と判断している。 • 消費者の嗜好・市場規模等を総合的に判断すると、2019 年以降の FCF は年率 3% で成長する。 • 負債比率は D (有利子負債時価総額) = =1 E (株式時価総額) を維持する。 • 2019 年以降の支払利息額および実効税率は 2018 年の水準を維持する。 • リスクフリー・レート、マーケット・リスク・プレミアム、および財務内容が 類似する同業他社のレバード β はそれぞれ 5% 、8% および 1.8 である。 • 発行予定株式数は 1,000 株である。 QVC の前提に基づいて、XYZ のレバード株主資本コストを計算せよ。さらに、負債 コストを 8% と仮定して、WACC を求めよ。ただし、実効税率は予想損益計算書の該 当する部分から逆算して得られる数値を使用せよ。なお、この数値は 2017 年、2018 年とも同一である。 3 (3) QVC の前提に基づき、DCF 法を用いて XYZ の企業価値および理論株価を求め よ。【ヒント:前提から、株式時価総額は企業価値の 50% 相当額である。】 (4) QVC の前提に基づき、XYZ のアンレバード β およびアンレバード株主資本コ ストを計算せよ。ただし、アンレバード β を計算する際には、実効税率を含む公式を 使用せよ。 (5) XYZ の負債調達による税金控除額の市場リスクは FCF と同程度であると仮定 する。QVC の前提に基づき、APV 法を用いて XYZ の企業価値および理論株価を求 めよ。なお、期待倒産コストは 0 と仮定してよい。 問題4 チェダーチーズを生産する企業 Delicious Co.(“D 社”)は新たなチェダーチーズの 研究開発を行うため、外部資金$3,000,000 の調達を検討している。この研究開発事業 が成功した場合 D 社の企業価値は$6,000,000 に達し、一方、失敗に終わった場合同社 の企業価値は$2,500,000 となる。投資家は D 社に企業価値を上回る報酬を要求できな いものとする。一旦$3,000,000 の資金調達が完了すると、D 社の創業者は下記のいず れか一方だけを実行に移す。 • 基礎研究を行い、その結果を学術誌で刊行し、D 社を清算した上で大学に職を 得る。創業者はこの職に就く場合、現在価値に換算した将来所得$2,000,000 を 手にする。この場合、D 社の企業価値は$2,500,000 である。なお、創業者が債務 不履行に陥った場合でも、投資家は将来所得の支払を要求することはできない。 • 応用研究に専念し、創業者は大学に職を得ることはない。この場合、D 社の企 業価値は$6,000,000 である。 あるリスク中立的な投資家が D 社への投資を検討しており、この投資家は報酬率 0% を要求しているとする。従って、収益が平均的に$3,000,000 であればこの投資家 の収支は均衡する。 (1) D 社が株式調達を選択する場合、この投資家が収支を均衡させるためには何% の持分を要求すべきか。なお、この投資家は D 社が応用研究に専念するのが望まし いと考えており、持分をこの前提のもとに計算すること。 4 (2) D 社が 1 期の負債調達(ただし、中間の利払いなし)を選択する場合、この投 資家が収支を均衡させるためには何% の利率を要求すべきか。(1) と同様、この投資 家は D 社が応用研究に専念するとの前提で計算せよ。 (3) D 社が (1) の条件で株式調達を行う場合、創業者は投資家の希望通り応用研究 に専念すると予想されるか。 (4) D 社が (2) の条件で負債調達を行う場合、創業者は投資家の希望通り応用研究 に専念すると予想されるか。 (5) 創業者に応用研究を促すためには、投資家は D 社に対し株式・負債いずれの調 達方法を提案すればよいか。 5
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