1 土佐日記門出男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、する

土佐日記
あざれ合へり。
ふざけ合った（ふざけるのは「あざる」、「あざる」は魚肉の腐る意味だが、塩があるのに変なことだね）
。
門出
男もすなる日記といふものを、
二十三日。八木のやすのりといふ人あり。この人、国に必ずしも
女もしてみむとて、
二十三日。
男性も書くと聞いている日記というものを、女性である私も書いてみようと思って、
言ひ使ふ者にもあらざなり。
するなり。
それの年の十二月の二十日余り一日の日の戌の時に、門出す。
某年（実は承平四年だが）の十二月の二十一日の午後八時ごろに、
餞別をしてくれた。
ある人、県の四年五年果てて、
恥ぢずになむ来ける。
例のことどもみなし終へて、
住む館より出でて、
かれこれ、知る知らぬ、
送りす。
ほめているわけではない。
二十四日。講師、
年ごろよく
二十四日。
何やかやとしては、
一文字をだに
知らぬ者、しが足は十文字に踏みてぞ遊ぶ。
知らない者が、その足は「十」文字に千鳥足を踏んで遊び興じている。
夜が更けた。
平らかに願立つ。
和泉の国までは（せめて）、無事であるようにと神仏に祈願する。
藤原のときざね、船路なれど、
上・中・下、
童まで酔ひしれて、
身分の高い者も低い者もすべて、子供までがすっかり酔っ払って、「一」という文字をさえ
ののしるうちに、夜更けぬ。
二十二日に、和泉の国までと、
むまのはなむけしに出でませり。
国分寺の僧侶が、餞別をしにお出ましになった。
ありとある上・下、
別れがたく思ひて、日しきりに、とかくしつつ、
一日中、
餞別の贈り物（をもらったこと）によって
ほむるにしもあらず。
船に乗るべき所へわたる。
あの人この人、知っている人知らない人、みなが見送りをする。ここ数年とても
親しくつきあってきた人たちは、別れがたく思って、
これは、ものによりて
人目を気にせずにやって来た。これは、
解由状などを受け取って、住んでいた国司の官舎から出て、船に乗る予定の地へ移る。
くらべつる人々なむ、
心ある者は、
「今となっては（用もない）
。」と言って顔を出さないそうだが、真心のある人は、
ある人が、地方官の四、五年の任期が終わって、国司交替の事務引き継ぎなどもすっかりすんで、
解由など取りて、
国人の心の常として、
国司の人柄（
がよいため）であろうか、田舎の人の人情の常として、
「今は。」とて見えざなるを、
簡略にものに書きつける。
藤原のときざねが、
これぞ、たたはしきやうにて、
むまのはなむけしたる。守柄にやあらむ、
そのよし、
門出をする。その模様を、
いささかにものに書きつく。
二十二日に、
この人は、国司の役所で必ずしも
命じたり召し使ったりする人でもないそうである。この男が、いかめしく立派な様子で、
書くのである。
大騒ぎするうちに、
八木のやすのりという人がいる。
むまのはなむけす。
船路の旅であるのに、「うまのはなむけ（送別の宴）
」を開く。
酔ひ飽きて、
いとあやしく、
潮海のほとりにて、
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身分の上中下の者みなが、十分酔っぱらって、本当に変なことだが、塩辛い海のほとりで、

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