与 党 平成 29 年度予算編成大綱 平成 28 年 12 月 8 日 自由民主党 公 明 党 はじめに 安倍内閣が発足して 4 年、われわれは経済の再生を最優先課題として、 デフレからの脱却、アベノミクス「三本の矢」の推進を図ってきた。 これにより、GDPは名目・実質ともに増加し、有効求人倍率は史上 初めて都道府県で 1 倍を超え、実質賃金もプラスに転じ 8 ヵ月連続で上 昇している。地域によって温度差はあるものの、所得と雇用環境は改善 し、確実に「経済の好循環」が生まれつつある。 他方、個人消費や設備投資は地方を中心に未だ力強さを欠く状況にあ るほか、新興国経済に陰りが見え、英国のEU離脱等世界経済において は下振れリスクがあることにも留意する必要がある。 われわれはアベノミクスの実績を明確に示し、一昨年末の第 47 回衆 議院選挙と今夏の第 24 回参議院選挙、二つの国政選挙に連続で勝利し た。特に今年の参議院選挙では、自公の連立与党で目標の改選過半数を 大きく上回る議席を獲得し、より安定した政治基盤を構築することがで きた。 この参議院選挙では、第 2 ステージに入ったアベノミクスをさらに加 速させるために、「一億総活躍社会」の実現に向けて、「新・三本の矢」 (戦後最大の名目GDP600 兆円、希望出生率 1.8、介護離職ゼロ)を 全面に打ち出し、デフレからの完全脱却、全国津々浦々での景気回復の 実現を改めて国民に約束した。 安倍政権は地球儀を俯瞰する外交、経済の再生、さらに大胆な規制改 革など「結果を出す」との強い決意で一つ一つ確実な成果を挙げてきた。 国民の期待に具体的成果、結果でしっかり応えていく。来年度予算編成 にあたっても、この姿勢に全く変わりはない。 「一億総活躍社会」を実現し、日本全体の成長力を高めて行くために は、これまでの発想や仕組みを大きく転換していかなければならない。 イノベーション・構造改革や働き方改革をはじめとする諸政策に集中的 に取り組むことによって、「成長と分配の好循環」の確立に取り組んで 1 行く決意である。アベノミクスの効果を未だ十分に実感できていない地 方や中小企業事業者、家計等にもその効果を波及させるため力強く地方 創生を推進する。 来年度予算は極めて重要なものとなる。平成 29 年度予算の編成に当 たっては、引き続き「経済再生なくして財政健全化なし」の考え方を基 本とし、平成 32 年度の財政健全化目標を堅持し、 「経済・財政再生計画」 に沿って歳出改革を進める。 同時に経済構造改革によるGDP600 兆円の実現、一億総活躍のため の子育て・介護や成長戦略の鍵となる研究開発に加えて、働き方改革の 実現、国民の生命を守る防災・減災、国土強靭化、未来を拓き創造する 教育再生、国民生活の安心の実現などを最重要政策課題として、メリハ リを効かせた力強くメッセージ性のある予算編成を目指す。 8 項目から構成される平成 29 年度予算編成大綱の具体的な内容は以 下の通りである。 2 1.経済再生でGDP600 兆円社会の実現 経済構造改革の推進 戦後最大の名目GDP600 兆円を実現するためにも、わが国の経済構造改 革は必要不可欠である。この中で、地域経済の底上げ、ローカル・アベノミ クスの推進は大きな課題である。また、IoT、人工知能(AI)、自動走行 など、第 4 次産業革命は日本経済を新たなステージに引き上げるための大き なポテンシャルを持つ。特に、 「地域中核企業支援政策の新展開」と、わが国 における世界最先端の技術である「自動走行システム」の社会実装、「AI、 IoT、ロボットなどを活かした医療・介護革命」に重点的に取り組む。 (地域中核企業支援政策の新展開) 地域経済好循環の実現に向けて、新しい仕組みを導入する。具体的には、 地域ごとに、域外への販売が大きく、そのために多くを域内から調達する企 業を「地域未来牽引企業」 (仮称)と位置づけ、その企業の信用力を高めると ともに、新たな税制・補助制度(地方創生推進交付金の活用等)、金融などあ らゆる支援を重点投入し、圏域の中小・小規模企業等が一体として発展する ことを目指す。 このため、製造業、観光、スポーツ、農業などを総合的・重層的に支援す る「地域未来投資促進法」 (仮称)を早急に制定する。これまで以上に経済政 策の効果を引き上げ、アベノミクスの成果を全国隅々に行き渡らせる。 その前提として、RESAS(地域経済分析システム)等の活用により、 地域の中核企業を明らかにし、投資の重点化、地域内での調達・購入を後押 しするとともに、グローバル経済圏をローカル経済圏に組み込むことができ るよう支援施策を充実・強化する。 金融機関が「地域未来牽引企業」とその取引群の成長可能性を評価して積 極的な融資を行うよう金融機関の「目利き力」の強化等を促進する。 こうした取組みの一環として、地域における起業を促す必要があり、1700 兆円を上回る個人金融資産や企業の余剰資金を有効活用できるよう、エンジ ェル税制(個人・法人)の利用拡大に向け、潜在的なエンジェル投資家の掘 り起こしや認定ファンドの大幅な増加を図り、投資額の倍増を目指す。 これらの取組みによって、 「地域未来牽引企業」を中心に、地域に裨益する 波及効果の高い事業について優先的に支援することにより、今後 3 年程度で、 投資拡大1兆円、GDP5兆円の押上げを目指す。 3 ( 「自動走行システム」の世界最速の社会実装) 「自動走行システム」について、完全自動走行(レベル 4)での世界最速 の社会実装を目指す。高齢者の交通事故の激減、過疎や中山間地域等をはじ め地域における高齢者の生活の足の確保、暮らしの利便・安全安心の充実、 地方創生を実現するため、道の駅など地域の拠点を核とする自動走行システ ムについて、特区制度等を活用しつつ、2017 年度よりパイロット事業に着手 し、自動運転技術の社会実装について世界に先鞭を付ける。 また、近未来技術の社会実装に向けた取組みを強力に後押しする世界最高 水準のイノベーション環境を構築するため、規制改革等あらゆるアプローチ から社会実装に向けた政府内調整を一元的に行う「近未来技術社会実装実現 本部」 (仮称)の設置や、近未来技術の活用、実装について「規制ゼロのフリ ーゾーン特区」(仮称)を新たに設けることを検討する。 加えて、第4次産業革命の社会実装と地域活性化を同時に実現するため、 自治体と地域の産学官金等が一体となって取り組む革新的な施策について提 案募集等を行い、最も優れたものにパッケージで支援を行う仕組みについて も検討し、研究開発税制も活用してイノベーションの加速を図る。また、技 術面の精度を更に高めるための開発を促進するとともに、G空間情報など自 動走行システムのためのデータ利用環境の整備や、一定水準を満たす自動走 行車の普及に向けた取組みについても検討する。 (最先端技術を活用した医療・介護革命) 最先端技術を医療・介護の分野で実装し、日本の隅々まで質の高い医療・ 介護サービスが受けられるようにする必要がある。 医療分野においては、医療の質の向上・均てん化・診療支援や臨床研究等 に、ICT、人工知能(AI)、ビックデータなどの活用を推進し、過疎地の 医療水準の向上など日本の隅々まで質の高い医療サービスが受けられ、高齢 者が生き生きと暮らせる社会を実現する。 介護分野においては、最先端ロボットや高度センサー、人工知能の活用を 進めることで、介護の効率を上げることによって介護に携わる方々の処遇改 善・負担軽減を図り、介護の質の向上につながる好循環を生み出すべく、介 護ロボットの介護現場での実証や開発された機器を用いた効果的な介護技術 の開発など開発・普及の加速化を図る。 さらに、小児筋電義手等義肢装具の普及促進を図る。 4 イノベーションの推進 科学技術イノベーションは、安倍内閣が掲げる「新・三本の矢」の一つ、 「希望を生み出す強い経済」実現に資する重要な柱であり、潜在成長率を向 上させるため、研究開発への官民投資の強化、知財戦略の推進が喫緊の課題 となっている。 このため、第5期科学技術基本計画で目標とされた、政府研究開発投資対 GDP比 1%を目指し、オープンイノベーションの重要な担い手である大 学・研究開発法人を中核に人工知能・ビッグデータ解析技術やわが国が強み とするナノテクノロジー・材料技術などの先端基盤技術の強化、民間投資を 呼び込む研究開発や質の高い基礎研究の推進、優れた若手研究者等の人材育 成、世界最高水準の研究施設の整備・活用を促進する。さらに、 「組織」対「組 織」の本格的な産学官連携や科学技術イノベーションを通じた地域活性化等 を推進する。 また、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)および革新的研究 開発推進プログラム(ImPACT)の推進、自然災害に対する強靱な社会 やクリーンで経済的なエネルギーシステム、革新的医療技術の実現に向けた 研究開発等に取り組む。さらに、宇宙基本計画を踏まえたH3ロケット・衛 星等の宇宙・航空分野や海洋調査研究、戦略的重要性を増す北極を含む極域 研究等、国家の持続的な成長と安全保障の基盤となる基幹技術の研究開発を 推進する。 世界に先駆けた民間の未来投資の誘発 民間の未来投資を促すため、福島ロボット・テストフィールド等を活用し てのロボット・ドローン、自動走行、ものづくり技術とAIの融合、新素材、 ヘルスケア・健康経営などの重点分野での研究開発・実証・輸出展開を産学 官連携の下、推進するとともに、わが国の強みであるインフラシステムの海 外展開を進める。また、重要産業における制御系インフラのサイバーセキュ リティ対策を強化する。さらに、女性、ベンチャー等多様な人材・企業の活 躍を促進するとともに、世界市場を目指す地域の中核企業の成長を支援する。 世界経済不透明リスクの克服 英国のEU離脱投票以降の世界経済の内向き志向を打破するため、多国 間・二国間の貿易投資促進のための協力拡大やERIAの活用により、経済 5 連携・産業協力の加速を行う。また、海外の成長市場獲得のため、JETR O等による中堅・中小企業の海外展開や海外認証獲得支援、対内直接投資の 促進、農林水産物・食品の輸出促進等を行う。さらに、わが国の「質の高い」 インフラ輸出促進や産業人材育成による新興国市場の獲得を支援する。 ICTの高度化・利活用促進 わが国が直面する多様な課題の解決および持続的経済成長を実現するため、 経済・産業・生活を支えるICTインフラ(ブロードバンド、モバイル、無 料公衆無線LAN、放送ネットワーク等)の整備等を図るほか、医療、教育 等の様々な分野におけるICTの利活用、女性の活躍・高齢者・障害者等の 社会参加の促進や地方創生に資するテレワーク、質の高いICTインフラシ ステム・コンテンツの海外展開、G空間情報やビッグデータ等の利活用など を推進するとともに、IoTサービスの創出を支援し、IoT時代に求めら れる人材育成を図る。 また、第4次産業革命を実現するための人工知能(AI)や多言語音声翻 訳システムの研究開発・社会実装、第5世代移動通信システム(5G)、自律 型モビリティシステム(自動走行等)、4K・8Kなどを早期に実現するための 研究開発・実証、サイバーセキュリティの強化等を促進する。 さらに、自治体クラウド等による行政のICT化を推進するとともに、社 会保障・税番号制度を円滑に導入するため、一層の国民への普及啓発、情報 連携開始に向けた準備を着実に進め、安定的な運用に努める。マイナンバー カードについて、カードの無料化など、引き続き取得に係る負担の軽減や、 カードの利活用促進等により、広く普及を図るとともに、個人情報の保護お よび利活用の推進等のため、個人情報保護委員会の体制拡充を図る。 加えて、ビッグデータ等の新たな情報源の活用、新たな消費関連指標の開 発など、統計の更なる充実を図るほか、統計委員会を中心に、政府統計の精 度向上を図る。 戦略的・計画的な社会資本整備 戦略的・計画的な社会資本整備による生産性向上と民間投資の拡大を図る ため、ストック効果を重視し「賢く投資・賢く使う」取組みを推進する。ま た、安定的・持続的な公共投資による経済成長を図り、経済再生と財政健全 化の双方を実現する。 6 このため、三大都市圏環状道路や空港等へのアクセス道路、都市鉄道ネッ トワークの整備、首都圏空港や国際コンテナ戦略港湾等の機能強化、高規格 幹線道路、整備新幹線、リニア中央新幹線等広域的な高速交通ネットワーク の整備等を推進する。また、PPP/PFIの推進、土地情報の充実等によ る住宅・不動産市場の活性化、都市の国際競争力の強化、海洋資源・エネル ギーの開発等の推進、物流の生産性向上、ICT等を全面的に活用する i-Construction の推進、建設業・運輸業・造船業等の生産性向上や人材確保・ 育成の支援等に取り組む。 さらに、インフラシステムの海外展開を推進する。 G空間情報の活用 さらに、G空間情報を高度に活用した安全・安心な社会の実現を目指し、 準天頂衛星システム7機体制の確立やG空間情報センターを中核とした情報 流通の推進など、基幹インフラの構築を図る。またICTやAIを活用した 新しいG空間情報サービスを展開することで行政、防災、農林水産業、交通、 観光等の既存産業の高度化および新産業・新サービスの創出を図る。 エネルギー政策の再構築 エネルギー政策の再構築に向け、エネルギーセキュリティの強化、エネル ギー革新戦略の実行、エネルギーインフラの充実等に取り組む。具体的には、 JOGMECを通じた資源権益の獲得を強力に進めるとともに、石油・天然 ガスやメタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国内資源開発 に取り組む。また、低炭素化を実現するため、高効率火力発電の技術開発等 を推進する。 さらに、石油危機後並の大幅なエネルギー効率の改善に向けて、産業、家 庭、オフィス等における省エネ投資・住宅の省エネ化の促進、次世代自動車 の導入など徹底した省エネを推進する。また、太陽光や地熱、バイオマス、 風力、水力などの技術開発や導入支援等、再エネの最大限の導入拡大と国民 負担の抑制の両立、水素社会の実現に取り組む。 加えて、エネルギーの安心・安全な利用のため、国内製油所やSS(サー ビスステーション)の危機対応能力強化を進める。また、原子力発電はエネ ルギーミックス実現のために不可欠であり、原子力人材を維持・確保しつつ、 安全性の確認された原子力発電所の再稼働を進める。原子力立地地域への支 援については、引き続き、立地地域の実態に即したきめ細やかな取組みを進 める。 7 観光立国の推進 観光先進国の実現に向け、空港容量の拡大、CIQ体制拡充、安全・安心 なクレジットカード利用環境の整備など訪日外国人受入環境整備、地方誘 客・消費拡大に向けた訪日プロモーションや広域観光周遊ルートの形成、ク ルーズ振興、国際会議誘致等に取り組む。2019 年ラグビーワールドカップ、 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催も見据え、多言語 音声翻訳システムの利活用の実証、公共交通機関やスポーツ施設等の建築物、 道路、標識等のバリアフリー化等を推進する。 加えて、高齢者や障害者、訪日外国人のための情報アクセシビリティの向 上を図る。 公正かつ自由な競争による経済の活性化 国民生活に影響の大きい価格カルテル、入札談合等に対し厳正に対処する。 また、企業結合事案を迅速に審査し、あわせて透明性・予見可能性を確保す る。 中小企業の取引条件の改善を図る観点から、中小企業に不当に不利益を与 える優越的地位の濫用等の行為および下請法違反行為に厳正かつ効果的に対 処する。消費税の転嫁拒否行為に迅速かつ厳正に対処するとともに、違反行 為を未然に防止し、消費税の円滑かつ適正な転嫁を図る。 これら施策を着実に実施するため、公正取引委員会の執行体制を充実・強 化する。 コーポレート・ガバナンスと金融仲介機能の改善 企業の経営力を向上させるための実効的なコーポレート・ガバナンスの改 善を促進する。また、地域金融機関による取引先中小企業への事業性評価に 基づく融資やコンサルティング機能の強化を推進する。 8 2.すべての女性が輝く社会、働き方改革の実現 働き方改革の推進 一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革を推進する。 非正規雇用の待遇改善に向けた同一労働同一賃金の実現、最低賃金の引上げ と生産性の向上のための中小企業等への支援の拡充、長時間労働の是正に向 けた制度改正や監督指導の強化等を実施する。65 歳以降の定年延長等を行う 企業に対する支援や中高年の再就職支援の強化等により、中高年の希望に応 じた多様な就業機会の確保を図る。企業による人材育成や個人のキャリアア ップ、転職・復職の支援強化、職場情報の見える化の推進等により、労働生 産性の向上を図る。 (同一労働同一賃金) 同一労働同一賃金の実現に向けて、どのような賃金差が正当でないと認め られるかについて、ガイドラインを作って具体的に明らかにし、さらに、法 改正について躊躇なく行っていく。あわせて企業等に対する相談支援事業を 実施すること等により、非正規雇用労働者の待遇改善を強力に支援する。 (長時間労働の是正) 長時間労働の是正に向けた制度改正や監督指導の強化および勤務間インタ ーバルの導入などに取り組む中小企業への支援等を実施する。 (未来への人材投資プラン) 人材投資関連予算を倍増し、企業、個人、国による人材投資を抜本的に強 化・集中支援する。女性の活躍を支援するため、子育て中の女性のためのリ カレント教育や教育訓練給付を大幅に拡充するとともに、子育て等により退 職した者の復職を進める企業への支援を抜本拡充する。非正規雇用の若者等 のキャリアアップを支援するため、正社員化等に取り組む企業への助成を拡 充するとともに、資格の取得等を可能にする 1~2 年の長期訓練を新設・拡充 する。中高年の転職・再就職を支援するため、離職後早期に再就職して賃金 が低下した場合に雇用保険による支援を行うとともに、企業が中途採用を拡 大した場合や転職者に能力開発と賃金アップをした場合の助成金を創設・拡 充する。賃上げ企業を支援するため、生産性向上と賃金アップに取り組む企 業への助成を創設するとともに、非正規雇用労働者の処遇改善を進める。 9 さらに、生産性向上を図るための中小企業への新たな人材育成支援を実施 する。 女性活躍の推進 女性の活躍は、一億総活躍社会実現のための極めて重要な鍵である。すべ ての女性の力が日本再生の原動力となるよう政策を実行していく。 女性活躍推進のメインエンジンである女性活躍推進法を着実に施行する中 で女性活躍の流れが全国津々浦々で加速されるよう、地域の実情に応じた取 組みを支援する。 指導的地位に占める女性の割合を 30%とすることを目指し、あらゆる分野 における女性参画の拡大や将来に向けた人材育成を進める。また、政治の場 への女性参画を促進する。 性別に関わらず希望に応じて仕事・家庭・地域における活躍を進めるため、 働き方改革、男性の暮らし方・意識改革、仕事と子育て・家事・介護等の両 立支援を進める。また、マイナンバーカードに旧姓併記を可能とするよう準 備を進めるとともに、旅券・金融機関口座等の旧姓使用の現状と課題等につ いて調査を行い、必要な取組みを進める。 女性の新しいキャリアステージとしての起業支援、また、科学技術・理工 系分野の女性の育成に取り組む。 女性に対する暴力の根絶のため、DV・ストーカー被害者支援体制の強化、 性犯罪被害者等のためのワンストップ支援センターの整備促進、若年性暴力 被害者支援など安全・安心な生活基盤の整備に取り組む。 高齢者の就労支援 65 歳以降の継続雇用を強力に推進するとともに、全国の主要ハローワーク に「生涯現役支援窓口」を設置することや、シルバー人材センターの機能強 化を進めることにより、高齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保を図る。 10 3.地方創生こそ日本再生の鍵 地方創生の着実な推進 地方は人口減少や少子高齢化の進行が顕著であり、地方創生なくして「一 億総活躍社会」の実現はない。働き方改革をはじめ、地方創生と一億総活躍 の取組みを相互に連動させながら進めていく。また、防災・減災、国土強靱 化等、安全・安心に関する取組みとの調和を図りつつ、他の制度改革とも協 働していく。 地方創生は、昨年度までに国と地方の「総合戦略」の策定がほぼ完了し、 本格的な「事業展開」の段階に入った。東京一極集中や人口減少が進行して いる状況を踏まえ、地方の平均所得を向上させる取組みや遊休資産の活用等、 施策の一層の推進を行うとともに、地域特性に応じ、地方の取組みを支援し ていくことが重要である。 こうした認識のもと、引き続き、地方における先駆的な取組みを、地方創 生推進交付金による支援や、まち・ひと・しごと創生事業費による地方財政 措置と連携した支援を行い、人材面・情報面でも支援する。 今後も、地方で、 「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼 び込む好循環を確立し、その循環を支える「まち」に活力を取り戻すため、 以下に示すまち・ひと・しごとの創生に取り組む。 (1) 「しごとの創生」として、地域の「稼ぐ力」を高める観点から、地域資 源を活用した永続性のある企業化、地域中核企業の集中的育成、生業的な事 業の支援、都市部の企業の地方移転、事業承継の円滑化、地域商社等による 一次産品の販路拡大、道の駅等での販売促進、サービス業の生産性向上、5 G等地域の通信環境の整備の促進等を通じて、 「雇用の質」 および安定的な「雇 用の量」の確保・拡大を実現する。 (2)「ひとの創生」として、地方大学の振興、専門高校の実践教育の推進、 東京圏在住の地方出身学生等の地方還流や、地方在住学生の地方定着を目的 とした、 地元企業でのインターンシップの推進、 「生涯活躍のまち」の推進等、 地方への移住・定着を促進する取組みを進めるとともに、結婚から妊娠・出 産・子育てまで、切れ目のない支援等を実現する。また、東京一極集中の是 正等の趣旨を踏まえ、中央省庁等政府関係機関の移転の具体化に向けて必要 な取組みを着実に進める。 (3) 「まちの創生」として、小さな拠点の形成等中山間地域等での利便性の 11 高い地域づくり、都市のコンパクト化、広域的な都市間連携、大都市圏等の 高齢化問題への対応、医療、介護、福祉、教育等のサービス確保等、地域特 性に即した課題の解決と活性化を図る。 活力ある地域づくりを通じた新しい成長の実現 地方団体が、中長期観点から、一億総活躍社会の実現に向けた取組みを進 めるとともに、地域の実情に応じ、自主性・主体性を最大限発揮して地方創 生を推進することができるよう平成 29 年度地方財政計画においても、「ま ち・ひと・しごと創生事業費」について1兆円程度の額を維持するとともに、 地方が安定的に財政運営を行うことができるよう、平成 29 年度の地方交付税 等の一般財源総額について、平成 28 年度地方財政計画の水準を下回らないよ う実質的に同水準を確保する。また、東日本大震災の復旧・復興事業等につ いても、地方の所要の事業費および財源を確実に確保する。 地域経済好循環の拡大を図るため、地域密着型企業の立ち上げを支援する 「ローカル 10,000 プロジェクト」、地域エネルギー事業の立ち上げを支援す る「分散型エネルギーインフラプロジェクト」等に加え、地域への「ヒト・ 情報」の流れを創出する「ふるさとワーキングホリデー」をはじめ、 「チャレ ンジ・ふるさとワーク」等を推進する。 さらに、「集約とネットワーク」の考え方に基づく「連携中枢都市圏構想」 や「定住自立圏構想」の推進等により、活力ある社会経済を維持し、自立的 な地域経営を確立するとともに、地方への移住・交流推進や地域おこし協力 隊の拡充、人材育成や都市と農山漁村の交流の推進、過疎地域等における地 域運営組織を中心とした集落ネットワーク圏の形成による“地域で暮らして いける生活サービス”の維持・確保や地域における仕事・収入の確保、過疎 地域の遊休施設を活用した地域振興や地域間交流の推進等を支援し、活力あ る地域づくりを通じた新しい成長の実現を目指す。 中小企業・地域中核企業の活性化・稼ぐ力の強化 今後見込まれる団塊経営者の大量引退の影響を和らげるため、円滑な事業 承継への集中的な支援に取り組む。また、中小企業の経営基盤の整備に向け て、下請代金法の運用強化と合わせた下請取引の適正化、生産性向上・経営 改善に向けた資金繰り支援・信用補完制度の見直し、起業・創業時の融資円 滑化、よろず支援拠点を通じた経営相談、人材確保支援等を行う。 12 同時に、中小企業の稼ぐ力を更に強化するため、大学などの研究機関と共 同で行うものづくり・サービス開発、先端技術等に係る標準化、地域資源を 活用したふるさと名物の開発・販路開拓、商店街や中心市街地の活性化、小 規模事業者の経営強化に向けた取組み、創業への支援等を行う。 夢と希望の持てる「農政新時代」の創造 農林水産業の成長産業化と美しく活力ある農山漁村を実現するため、農林 水産業の従事者の所得向上等をしっかり図っていくことが必要である。この ことが地方創生を実現するためにも、環境保全の観点からも極めて重要である。 さらに、夢と希望の持てる「農政新時代」を創造するため、農業者が自由 に経営展開できる環境を整備するとともに、農業者の努力では解決できない 構造的な問題を解決していく必要がある。このため、生産資材価格の引下げ や、農産物の流通・加工構造の改革等、生産から流通・加工、消費まであら ゆる面について、農業者と意見を交わしながら精力的に検討し、今般「農業 競争力強化プログラム」を取りまとめたところである こうした考え方に立ち、平成 29 年度予算においては、「農林水産業・地域 の活力創造プラン」に基づき、次に掲げる主要施策等を展開するのに必要と なる十分な予算を確保する。 農地中間管理機構のフル稼働により担い手への農地集積・集約化を加速化 する。また、農政新時代に必要な人材力を強化するため、農業経営塾の本格 稼働、次世代人材投資を推進するとともに、生産現場のニーズに即し、現場 実装を視野に入れたAI、ICT、ロボット等の技術開発・活用を進める。 生産資材価格の引下げや生産者に有利な流通・加工構造の確立を推進する。 麦、大豆、飼料用米等に対する水田活用の直接支払交付金について、継続 的に措置する。また、収入保険制度の導入に向けて、加入申請や青色申告等 に関する相談体制づくり等を進める。 土地改良事業について、生産コスト削減に資する農地の大区画化、高収益 作物への転換に資する水田の畑地化・汎用化、防災・減災に資する水利施設 の維持・保全等を一層推進する。 畜産・酪農の競争力を強化するため、収益性の向上、国内飼料生産・利用 の拡大等を推進し、生産基盤を強化する。あわせて、畜産・酪農経営安定対 策を推進する。 また、野菜、果樹・茶、花き、甘味資源作物といった各品目の生産振興対 13 策を積極的に推進する。 「農林水産業の輸出力強化戦略」に基づき輸出体制の整備を進めるととも に、 「日本版SOPEXA」を創設する。さらに、6 次産業化による農産物の 高付加価値化や地産地消、インバウンドの推進等により国内外の新たな需要 を取り込むとともに、食育や食品ロスの削減を推進する。 家畜伝染病や病害虫の侵入・まん延防止を徹底し、安心できる営農環境を 守る。 農業・農村の有する多面的機能を発揮するため、地域の共同活動等を支援 する日本型直接支払を着実に実施するとともに、中山間地域とそこで営まれ る農業を元気にする施策を推進する。また、持続可能なビジネスとしての農 泊を推進するとともに、地域内発型産業創出のための施設整備等を通じて、 農村地域の雇用創出を促進する。さらに深刻な鳥獣被害への対策やジビエの 利活用、都市農業の機能発揮を促進するとともに災害対策に万全を期す。 加工食品の原料原産地表示の拡大に向けた環境を整備するとともに、チェ ックオフ制度の導入を検討する。 林業の成長産業化の推進 林業の成長産業化を実現するため、CLT(直交集成板)等の利用促進な どにより新たな木材需要を創出する。自伐林家を含む多様な担い手の育成・ 施業集約化を進めるほか、花粉発生源対策を推進する。間伐、路網整備、再 造林等の森林整備・保全による森林吸収源対策に取り組むとともに、山地災 害対策を推進する。 水産業の構造改革の推進 水産業の成長産業化の促進により国際環境の変化にも対応できる強い水産 業を実現し、新たな水産基本計画の実現を通じて、もって水産日本の復活を 図るため、平成 28 年度第 2 次補正予算において措置した漁船リース、水産基 盤整備等の施策を推進するとともに、来年度予算編成につなげる。 漁業者自らが漁業所得の向上を目指す「浜プラン」の着実な実行を支援す るため、同プランに基づく共同利用施設の整備等を推進する。また、漁船漁 業の構造改革や新規就業者等の担い手の育成・確保、持続的な水産業の基礎 となる資源管理・調査の着実な実施を推進する。加えて、国産水産物の国内 流通・消費の拡大や海外輸出を促進する。 また、漁業や漁村の多面的機能発揮や離島漁業再生に向けた漁業集落の活 動を推進するほか、消費者ニーズの高い魚種の種苗生産・放流技術の開発等 の増養殖対策、漁業環境の保全等を推進する。加えて、調査捕鯨を安定的に 14 実施するほか、輸出拠点となる漁港の衛生管理対策や水産資源回復対策、漁 港施設の長寿命化対策、漁港機能の集約化・有効活用や漁港・漁村の防災・ 減災対策を推進する。 活力ある地域の形成 アベノミクスによる地域経済の好循環実現と個性豊かな活力ある地域の形 成を目指し、地域の「稼ぐ力」等を引き出す地方創生を推進するとともに、 子育てがしやすく、子供から高齢者まで豊かに暮らせる生活環境の整備に取 り組む。 このため、都市機能の集約・再編等によるコンパクトシティの形成、景観 等を活かしたまちづくり、道路ネットワークの整備や地域公共交通ネットワ ークの充実・再編、地域交通のグリーン化、基幹集落に生活機能等を集めた 「小さな拠点」の形成と道の駅の活用、自転車利活用の推進、魅力ある観光 地域づくり等を推進する。また、質の高い住宅ストック形成促進のため、新 築戸建て住宅のネット・ゼロ・エネルギーハウス化ならびに長期優良住宅化 リフォーム事業や地域型住宅グリーン化事業を進める。このほか、空き家対 策、既存住宅流通・リフォーム市場活性化、三世代同居・近居がしやすい環 境づくり、スマートウェルネス住宅の実現、住宅確保要配慮者の入居・居住 継続を可能とするため家賃債務保証や家賃補助の強化等を含めた新たな住宅 セーフティネットの創設等に取り組む。さらに、離島・奄美群島・小笠原諸 島・半島・豪雪地帯等の条件不利地域の振興、積雪寒冷地域対策を推進する。 また、公共事業の効率的・円滑な実施を図るため、改正品確法の趣旨を踏 まえ、適正価格での契約や地域企業の活用に配慮しつつ適正な規模での発注 等に取り組む。 有人国境離島の振興 有人国境離島新法に基づき、有人国境離島地域の保全および特定有人国境 離島地域の地域社会維持のための施策を創設・推進する。 沖縄の振興 沖縄が日本のフロントランナーとして、またアジアの架け橋として経済再 生の牽引役となり、県民が暮らしの豊かさを実感できるよう、道路・空港・ 港湾の整備、沖縄振興一括交付金による事業の推進、産業振興、離島活性化、 沖縄科学技術大学院大学における国際水準の研究・教育の推進等をはじめと する沖縄振興策に取り組む。また、西普天間住宅地区跡地における国際医療 拠点形成など駐留軍用地跡地利用を推進する。 15 4.復興の加速 東日本大震災からの復興の加速化 東日本大震災の発災から 5 年 9 か月が経過し、津波被災地域を中心に復興 事業完了の見通しが立ちつつあるが、今なお多くの方々が仮設住宅等で暮ら している現実がある。原子力事故災害被災地域についても、避難指示解除準 備区域・居住制限区域については、来年 3 月までの避難指示解除に向けた道 筋がつきつつある。帰還困難区域については、与党は、本年 8 月、地元から の要望も踏まえて新たに復興拠点を整備する旨の提言を行ったところであり、 政府においてその具体化が進められている。たとえ長い年月を要するとして も、将来的に全てを避難指示解除するとの決意の下、着実かつ段階的に復興 拠点の整備に取り組む必要がある。 平成 29 年度は、 「復興・創生期間」の 2 年目であり、引き続き、復興のス テージの進展に伴う新たな課題に対応しつつ、 「新しい東北」の創造となる復 興の実現に向け、政府与党一体となって取り組む必要がある。まず、被災者 支援については、仮設住宅からの移転が進む中でも、引き続き、被災者支援 総合交付金により、長期避難者の心のケア、コミュニティ形成の支援や、仮 設住宅での避難生活から恒久住宅への移行までの一貫した支援を行う。 また、復興道路、復興支援道路の整備を推進し、多くが完成時期を迎える 住宅再建・復興まちづくりについては、これを着実に実施する。 さらに、まちの賑わいを取り戻すため、東北観光復興の取組みを引き続き 推進し、地域の基幹産業である水産加工業の販路回復・開拓などに取り組み つつ、被災地特に三陸沿岸部の企業の人材確保や風評の払しょくを含めた福 島農業の再生に向けた取組みを支援する。 (原子力事故災害からの復興) 原子力事故災害からの復興・再生については、引き続き廃炉・汚染水対策 を安全かつ着実に実施する。特に、これまでにない大きなチャレンジとなる 事故炉の廃炉については、国内外の英知を結集し、遠隔操作等のロボットの 開発を確実に進める。また、中間貯蔵施設の整備と除去土壌等の着実な搬入、 帰還困難区域における復興拠点の整備に必要な措置、放射性物質汚染廃棄物 の処理、放射線に係る住民の健康管理等を推進する。また、こうした対策の 16 加速化に向け、推進体制の一元化・充実のための組織改革を行う。 さらに福島再生加速化交付金等による早期帰還支援、新生活支援を通じ福 島の復興・再生を加速するとともに、浜通りの地域再生・新産業創生に向け、 引き続き、被災事業者の自立支援、福島イノベーション・コースト構想およ び福島新エネ社会構想の実現に政府与党一体となって取り組む。 また、避難指示解除された地域の帰還促進のため、魅力ある教育づくりに 取り組むとともに、医療体制再構築への支援、生活支援やコミュニティ再生 に取り組む。帰還困難区域については、帰還を望む地元住民の方々の強い要 望を踏まえ、復興拠点の整備に取り組むとともに、止むを得ず当面帰還でき ない住民の方々に対してはきめ細かな支援を行うよう取り組む。 17 5.確かな社会保障でつくる未来の安心 将来の安心を確保する社会保障制度 消費税財源を活用して実施する社会保障の充実のうち、保育・介護の受け 皿整備は予定どおり着実に進めるとともに、年金受給資格期間の 25 年から 10 年への短縮の円滑な実施を図る。また、「ニッポン一億総活躍プラン」に 基づく保育士・介護人材等の処遇改善について、アベノミクスの成果の活用 を含め財源を確保し実施する。その他の施策についても、優先順位をつけな がら重点化・効率化の効果等を見極めつつ、実現に向けて最大限努力する。 社会保障制度の持続可能性の確保や負担能力に応じた公平な負担等の観点 から、高額薬剤への対応や医療・介護保険の制度改正など、医療・介護分野 を中心に改革に取り組む。 「安心につながる社会保障」のため、介護人材の確保、健康寿命の延伸に 向けた予防・健康づくりのインセンティブの付与や高齢者のフレイル対策、 たばこ対策を実施するとともに、障害者、難病・がん患者等の就労支援など の各種支援を強化する。がん検診の受診勧奨、予防できるがんの予防拡充や 免疫療法の推進などがん対策を推進する。また、再生医療やゲノム医療実現 への取組みを強化する。また、 「地域共生社会」の実現を目指して、育児、介 護、障害、生活困窮など、世帯全体の課題を受け止めるため、多分野・多機 関協働による新しい包括的な相談支援システムを構築し、住民が主体的に地 域づくりに参画する仕組み作りに取り組む。 子育て支援の充実・強化 「夢をつむぐ子育て支援」のため、保育人材の確保・処遇改善や、保育所 や放課後児童クラブを含む多様な保育サービスの充実を図るとともに、妊娠 期から産後、子育て期を切れ目なく支援する子育て世代包括支援センターを 全国展開し、産後うつ対策や不妊治療への支援等を進める。医療的ケアを必 要とする児童に対する支援体制を整備する。児童虐待防止対策や社会的養育 を強化するとともに、ひとり親家庭を支援し、子どもの貧困への対応を図る。 また、女性・若者の活躍推進のため、改正育児・介護休業法の円滑な施行等 の仕事と家庭の両立支援、就職氷河期世代のフリーター等に対する就職支援 を強化する。 18 医療・保健の国際展開等 革新的医薬品・医療機器の実用化促進、安全対策を含む医療分野のイノベ ーション・ICT化を推進し、医療の国際展開やユニバーサル・ヘルス・カ バレッジの達成支援、国際保健政策人材養成の司令塔機能の整備、薬剤耐性 対策、輸入食品の監視体制の強化等に取り組む。 社会保障分野での基盤の整備等 地域医療構想に基づく病床の機能分化・連携、医師の地域・診療科偏在対 策等を推進するとともに、歯科口腔保健の促進を図る。健康サービスの向上 のため、健康情報を電子化・共通化し、利用者本人も閲覧可能とする健康情 報サービス基盤の構築を目指す。障害者について、地域移行・防犯を進める ための施設整備、充実した地域生活に向けた自治体での円滑な施策の推進、 文化芸術活動の推進をそれぞれ図る。また、依存症対策についても充実を図 る。水道施設の耐震化・広域化を推進するとともに、被災地の復旧・復興と 防災の強化に向け、健康・生活面での支援や雇用確保等の被災者・被災地支 援を継続する。戦没者遺骨収集推進法に基づき、戦没者の遺骨収集事業を推 進する。 19 6.暮らしの安全・安心 国土強靭化の推進 熊本地震や鳥取県中部地震、気候変動の影響等で広域化・激化する台風に よる豪雨など頻発する災害や切迫する巨大地震や津波等から国民の生命と財 産を守るため、災害復旧とともに、ソフト・ハードを総動員した防災・減災 対策や笹子トンネルの教訓を踏まえた戦略的なインフラ老朽化対策等の国土 強靱化の取組みを推進する。また、大災害は必ず発生するとの意識を社会全 体で共有し、これに備える防災意識社会への転換を図るともに、 「世界津波の 日高校生サミット」をきっかけに、国土強靱化の思想を世界中に浸透させる。 具体的には、被災施設の復旧、災害リスクを踏まえた緊急防災対策、IC T等を活用した災害の観測・監視体制等の強化や被害想定・リスク情報の共 有、河川堤防の嵩上げや構造の工夫、国際協力の推進等に取り組む。 さらに、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生に備え、道路啓開計画 の深化、公共施設の耐震化・液状化対策、避難施設、堤防の整備等を推進す る。加えて、路面下空洞調査を含む非破壊検査等の活用を含めた、インフラ の戦略的な維持管理・更新、密集市街地の改善、住宅・建築物の耐震化、ホ ームドアの設置などによる公共交通の安全・安心の確保、道路の無電柱化や 交通・放送の代替性確保のための広域的な基幹ネットワークの整備等を推進 する。 防災・減災対策 大規模地震・津波、火山災害、風水害等の多様な自然災害に対処するため、 被災者支援システムの構築の促進など事前防災・減災対策、応急対策活動、 被災者支援の強化等を行うほか、防災や被災自治体のサポートを担う人材の 育成、国際防災協力の推進等を行う。 熊本地震等を踏まえ、緊急消防援助隊、常備消防力、地域防災力の中核と なる消防団等の強化を図るとともに、火災予防対策の推進や消防防災分野で の女性の活躍促進、防災情報の伝達体制の整備、東京オリンピック・パラリ ンピック競技大会等の円滑な開催に向けた大都市等の安心・安全対策の推進 に取り組む。また、東日本大震災の被災地における消防防災体制の充実強化 を図る。 20 総合的な環境行政の推進・原子力防災の強化 パリ協定の締結を踏まえ、26%削減目標の達成に向けて、わが国の優れた 環境技術を活かし、環境アセスメントの迅速化を含めた最大限の再エネ導入 や徹底した省エネの推進、民生や運輸を始めとする各部門別の取組み、国民 運動の推進や代替フロン対策等の温暖化対策に取り組む。また、気候変動の 影響が顕在化しつつある中、適応策の一層の強化を図る。更に、JCM等の 活用により、日本の技術を広く展開し、世界経済を牽引しつつ、世界全体で の削減を推進するとともに、カーボンプライシングの検討など 2050 年 80% 削減も見据えた技術・社会構造のイノベーション等を推進する。 魅力ある自然の保全・活用やいきものとの共生を進めるため、国立公園満 喫プロジェクト、鳥獣管理、希少種保全、外来種防除、動物の適正飼養、森 里川海のつながりや森林吸収源の確保等を推進する。また、将来にわたり地 域や暮らしを支え、その安心・安全を確保するため、循環交付金等による一 般廃棄物処理施設や浄化槽の整備、災害廃棄物やPCB廃棄物対策、PM2.5 対策、土壌汚染対策、エコチル調査、水俣条約実施に向けた取組み等の化学 物質対策、水俣病や石綿健康被害等の公害健康被害対策、海洋ごみ対策等に 取り組む。 原子力災害対策については、避難計画策定、訓練や研修等の人材育成の体 制整備、避難経路の整備・予算確保等原子力防災の充実・強化を推進する。 また、原子力・放射線利用の更なる安全確保のための原子力規制委員会の体 制強化、人材の確保育成等に取り組む。 頼れる司法の確立 一億総活躍の前提となる国民の安全・安心な社会の実現、経済再生の加速化 および観光先進国を目指すためには、法務・司法の機能を充実・強化して法 の支配を実現するとともに、「司法外交」を積極的に展開することが不可欠で ある。 訪日外国人の急増や 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開 催に向け、入国審査官の増員を含む出入国管理体制の強化、犯罪・テロ対策 等を推進する。刑務所出所者等の就労支援や住居の確保等による再犯防止対 策の推進が必要であり、協力雇用主や更生保護施設、保護司への支援拡充を はじめ、職員の増員や施設の整備を含む治安関係部門の体制を充実・強化す る。 また、不動産取引の基盤や災害復興の下支えとなる地図の整備を含む、相 続登記の促進といった登記事務処理体制を強化する。加えて、就職・就学な どの機会が失われている無戸籍者問題の解決の促進、成年後見制度の担い手 21 の確保とともに、難民認定制度の改善を図る。子供の福祉の観点から、特別 養子縁組のあり方を見直すとともに、児童虐待防止における司法関与をさら に強化する。 国際紛争への対応を含む予防司法機能を強化し、コングレス 2020 年日本開 催に向けた準備や日本型法制度整備支援を推進する。加えて、共生社会の実 現に向け、ヘイトスピーチ問題対策や性的指向・性自認に関する正しい理解 の促進など、人権擁護施策を推進するための人材確保を図る。また、ストー カー・DV・性暴力等被害者支援の拡充を含む総合法律支援等の充実した施 策の実施を図るほか、性犯罪の重罰化を早期に実現する。薬物依存症の治療 や回復を支援するための体制強化も図る。さらに、司法修習生に対する経済 的支援を含む法曹人材確保の充実・強化を推進する。 また、事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の人的機構の充実、裁判 事務処理態勢の充実、裁判所施設の耐震化等を図る。 警察の体制整備 わが国の治安は、刑法犯認知件数が戦後最少であった昨年を更に下回るペ ースで推移しているなど改善傾向にあるが、一方で、厳しさを増す国際テロ 情勢をはじめ、地震その他の自然災害や悲惨な交通事故の発生等が国民に不 安を与えている。 こうした状況を踏まえ、テロ、大規模災害といった事態への対処能力の強 化を図るほか、サイバー空間の脅威への的確な対処、ストーカー・DV、性 暴力、児童虐待等の人身安全関連事案への的確な対処、安全な交通環境の確 保等、総合的な治安対策を強力に推進する。 また、死因究明等の着実な実施に努める。 消費者の安全・安心の確保 個人消費の喚起のためには、消費者被害の防止・救済の取組みを進め、消 費者の安全・安心の確保を図ることが重要である。このため、どこに住んで いても質の高い相談・救済を受けられる地域体制の整備・充実、多様な消費 行動に対応する新たな調査・研究機能の整備、倫理的消費の普及等の地方モ デルプロジェクトの始動、徳島県での消費者行政新未来創造オフィス(仮称) の設置、消費のグローバル化への対応、食品表示の充実等を進める。 会計検査機能の充実強化 会計検査機能を充実強化するため、検査体制等、検査活動、研究・研修体 制および国際業務活動の充実強化を図る。 22 7.未来を拓き創造する教育再生 学力と人間力を備えた人材の育成 「未来への先行投資」である教育再生関連施策を強力に推進し、学ぶ意欲 のある全ての子供・若者、社会人が質の高い教育を受け、だれもが活躍でき る「一億総活躍社会」の実現を目指す。 このため、 「次世代の学校・地域」創生に向け、教員の多忙化や学力格差克 服への取組み、障害のある児童生徒への「通級による指導」や外国人児童生 徒等教育の対象となる児童生徒の増加等に応じた教職員定数の拡充や教員の 資質向上など指導体制の強化、自然体験活動・文化芸術体験活動の推進、学 校・家庭・地域の連携・協働に向けた改革、切れ目ない支援体制構築に向け た特別支援教育の充実、文化・芸術、邦楽、道徳教育の充実、教育課程の充 実、いじめ・不登校対応等の強化、キャリア教育・職業教育の充実、教育の 情報化の推進、健康教育の推進、高大接続改革等を推進する。 また、国立大学等の改革・機能強化のための基盤の整備充実、改革に取り 組む私立大学への支援など私学の振興、海外子女教育や留学生交流などグロ ーバル人材の育成、帰国生や外国人など日本語に課題を持つ児童への支援、 専修学校の人材養成機能の向上等を推進する。 さらに、学びのセーフティネット構築のため、給付型奨学金制度の創設を 含む大学等奨学金事業の拡充、国立・私立大学等の授業料減免等の充実、高 校生等奨学給付金の充実、総合的な子供の貧困対策の推進、私立中学校等へ の支援の充実、各都道府県に最低一校の夜間中学設置の推進、幼児教育無償 化に向けた取組みの段階的推進、学校施設等の老朽化対策や、空調設置・ト イレ改修、電子黒板やパソコン活用の授業のICT化等の教育環境の改善、 耐震化、学校安全等を推進する。また、民間資金も活用し、留学支援・教育 資金の充実に努める。 「スポーツ・文化芸術の振興」の実現 スポーツ・文化芸術の振興を国家戦略として推進する。2020 年東京オリン ピック・パラリンピック競技大会やラグビーワールドカップ 2019 に向け、選 手強化、指導者の養成やドーピング防止とともに、スポーツの成長産業化や 参画人口の拡大、スポーツを通じた地域の活性化・国際貢献、健康づくり、 障害者スポーツの振興等を推進する。 文化力による国家ブランド向上と文化GDP拡大のため、伝統文化をはじ 23 め、マンガ・アニメ・ゲーム・音楽などポップカルチャー・食文化等の生活 文化やメディア芸術なども含めた文化芸術創造を戦略的に推進していくとと もに、文化財を活用した観光振興・地域経済の活性化や国際交流の促進、文 化の担い手の育成、日本遺産・文化プログラム等を通じた地域の魅力ある文 化芸術の取組み・文化芸術・邦楽教育への支援等を推進する。 24 8.主権を守る外交・防衛 国際社会を主導する外交の展開 北朝鮮の核開発・ミサイル発射、中国の東シナ海・南シナ海における海洋進 出および軍事力の増強、国際テロの脅威の増大等、わが国を取り巻く安全保障 環境や国際情勢が一層厳しさを増す中、安倍政権は「地球儀を俯瞰する外交」 を積極的に展開しており、平成 28 年度においては、G7 伊勢志摩サミットや TICADⅥの成功等の成果を出してきている。わが国の国益を増進するた め、安倍政権の掲げる国際協調主義に基づく積極的平和主義の考え方に立ち、 ODAも活用しつつ、外交を一層強化していくことが不可欠である。 海外に渡航・滞在する日本人がテロ事案等に巻き込まれる事案は世界のど こにおいても発生する可能性があり、テロその他の脅威から邦人の生命およ び財産等を守る安全対策は急務である。このため、海外の日本人学校、日本 の企業、国際協力事業関係者、在外公館等の安全対策を抜本的に強化すると ともに、国際テロ情報の収集能力・体制を拡充する。 領土・領海・領空・歴史認識・積極的平和主義を含めたわが国の「正しい 姿」の発信を拡充するため、民間との連携を図りつつ、戦略的対外発信をさら に強化するとともに、親日派・知日派の育成を推進する。 途上国の海上警備体制構築支援、テロ対策支援、難民、国際保健、気候変 動といったグローバル課題への対応、日本企業の海外展開支援や質の高いイ ンフラ投資をはじめとするアベノミクスを推進する取組み(国際経済紛争対 策を含む)などのため、経済連携協定や投資・租税協定の交渉推進を図ると ともに、国益に資するODAを拡充し、その広報を強化する。また、持続可 能な開発のための 2030 アジェンダの実施に取り組む。 外交実施体制の強化 2020 年を目処に、英国並み 6,500 人の体制構築に向けた定員の大幅増員お よび質の向上を実現するとともに、次の 10 年間で主要国並の在外公館数 250 を目指す。その際、既存の在外公館を小規模化することによって新たな公館 を設置するための「財源」とすることは、かえって外交力の弱体化につなが ることを認識し、量と質の増強を同時に図るべく、小規模公館化による「財 源」捻出について見直しを行う。 さらに、各国および地域における外交力強化のための予算措置を講じる。 同時に、在外公館施設の老朽化対策を推進するとともに、世界各地でテロ等 緊急事態が多発する中、在外職員の勤務環境・待遇を改善し、安全確保を強 化する。 25 揺るぎない防衛体制の確立 わが国を取り巻く安全保障環境はより一層厳しさを増している。北朝鮮に よる核実験の強行や過去に例を見ない頻度での弾道ミサイルの発射は、わが 国に対する直接的脅威であり、中国による透明性を欠いた軍事力の増強やわ が国周辺海空域における活動の更なる拡大・活発化等も行われている。また、 国際テロの脅威がグローバルに拡散するなど、一国・一地域で生じた混乱が、 直ちに国際社会全体の課題や不安定要因に拡大するリスクも高まっている。 これらを踏まえ、平成 29 年度防衛予算では、防衛大綱および中期防の 4 年目として、国民の生命・財産、領土・領海・領空等を断固として守り抜く ため、防衛力の「質」と「量」を確保した「統合機動防衛力」の構築に万全 を期す。 具体的には、海上優勢および航空優勢の確保や、機動展開能力の整備を重 視し、統合機能の更なる充実に留意しながら、警戒監視能力、情報機能、輸 送能力および指揮統制・情報通信能力(C4Ⅰ)や後方支援の能力を高め、周 辺海空域における安全確保、弾道ミサイル攻撃への対応、島嶼部に対する攻 撃への対応、宇宙空間およびサイバー空間における対応、大規模災害等への 対応、並びに積極的平和主義に基づく国際平和協力活動等への対応に必要な 防衛力を整備する。 その際、防衛装備・技術政策については、 「取得戦略計画」の下でのプロジ ェクト管理等を通じた最適な取得の推進や「防衛技術戦略」を踏まえた研究 開発の充実など、戦略的な取組みを進めるとともに、防衛生産・技術基盤を 維持・強化し、防衛装備・技術協力を推進していく。これに加え、精強性を 維持しつつ働き方改革を進めるとの観点から、優秀な人材の確保に努め、自 衛隊員の処遇改善も引き続き検討し、女性職員、女性自衛官の活躍を支える ための施策や、充足が喫緊の課題である予備自衛官等に係る施策を推進する。 また、日米防衛協力のための指針に基づき日米同盟強化を進め、アジア太 平洋地域における同盟の抑止力・対処力を高めるとともに、同盟国、友好国 との防衛協力を推進する。 さらに、基地周辺住民の方々の負担軽減、とりわけ沖縄の基地負担軽減を 実現するため、和解条項に則り政府は真摯に沖縄県と協議を行うとともに、 最終的な司法判断も踏まえ、 「日米合意」に基づく普天間飛行場の名護市辺野 古への移設等を推進し、在日米軍再編を確実に進める。 26 周辺海域の警備強化 わが国の主権と領土・領海を守るため、わが国周辺海域における戦略的海 上保安体制の構築や海洋調査の実施、遠隔離島における活動拠点の整備、国 際的な海上保安ネットワークの構築を推進する。 拉致問題の解決 拉致問題は、「対話と圧力」「行動対行動」の原則の下、対話の窓口は開き つつ、北朝鮮の挑発的行為に対して、制裁措置の厳格な実施とさらなる検討 も含めた対応を行っていく。 さらに、米国、韓国、国連等の関係国・機関との連携や働きかけを強め、 情報収集・分析体制を強化するなど、あらゆる手段を尽くして、拉致被害者 全員の即時帰国、真相究明、実行犯の引き渡しを実現する。 27
© Copyright 2024 ExpyDoc