公社債投資の税金

公社債投資の税金
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-1
公社債の種類
方法で分類できます。発行者によって分
利付債・割引債、償還までの期間によっ
けた場合は国債・地方債・政府関係機関
て分けた場合は、短期債・中期債・長期
債・社債などに分類できます。募集方法
債・超長期債にそれぞれ分類できます。
によって分けた場合は、公募債・非公募
さらに仕組債などもあります。
民間債
一部回収できた場合は回収できた金額に
募株式投信の譲渡損益と同様に、源泉徴
より譲渡したものとみなし(注)、全く回
収ありの特定口座で取引していれば、申
収できなかったの場合は後述の「特定管
告不要にもできます。
理株式等が価値を失った場合」に限り譲
特定公社債の償還損益は、譲渡損益と
渡損失とみなします。
同様に扱われます。発行会社の倒産等に
公募公社債投信についても、特定公社
より元本全額が償還されないケースでは
債と同様の課税方式に変更されています。
中分類
小分類(年限は発行例からの抜粋)
超長期国債(20年、30年、40年)、変動利付国債(15年)、
利付債 物価連動国債(10年)、長期国債(10年)、
中期国債(2年、5年)、個人向け国債(3年、5年、10年)
割引債
国庫短期証券(2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年)
ストリップス国債※
利子・配当・分配金
上場株式など
公募株式投信など
特定公社債
公募公社債投信など
譲渡損益
償還損益
配当所得として税率20.315%で源
泉徴収後申告不要
(確定申告し税率20%(所得税15
%★、住民税5%)の申告分離課税 譲渡所得等として税率20%(所得税15%★、住民税5%)の申
または総合課税を選択可)
告分離課税(源泉徴収ありの特定口座なら申告不要を選択可)
利子所得として税率20.315%で源
デフォルトによる損失については、一部回収できた場合は譲
泉徴収後申告不要
(確定申告し税率20%(所得税15 渡損失として扱い、全く回収できなかった場合は「特定管理
%★、住民税5%)の申告分離課税 株式等が価値を失った場合」(161ページ)に該当する場合、
譲渡損失として扱う
を選択可)
(※1)網掛けは、損益通算が認められている範囲を示します(未公開株式等や一般公社債の譲渡損とは損益通算で
きません。153ページ参照)。
(※2)この図表では、大口株主が受ける配当、未公開株式、一般公社債、世銀債等などは考慮しません。割引債お
よび割引債類似の債券には別途、償還時の源泉徴収の規定があります(155ページ参照)。
改正の結果、特定公社債および公募公
税方式は税率20%(所得税15%★、住民
社債投信の課税方式は、上場株式および
税5%)の申告分離課税(または源泉徴
公募株式投信の課税方式とほぼ同じにな
収後、申告不要)に統一されています。
りました。
また、所定の手続きを行っていれば、
割引金融債(1年)、利付金融債(1年〜10年)
上場株式・公募株式投信の配当・分配
源泉徴収ありの特定口座内で、確定申告
事業債(NTT債、電力債、銀行社債、一般事業債)、短期社債、
特定社債(特定目的会社発行の社債)、新株予約権付社債など
金について総合課税を選択する場合を除
を行わずにこれらの商品の利子・配当・
けば、上場株式、公募株式投信、特定公
分配金と譲渡損益・償還損益の損益通算
社債、公募公社債投信などであれば、課
をすることもできます。
地方債
公募地方債(5年、10年)、非公募地方債(銀行等引受債)
政府関係機関債
政府保証債(2年〜10年)、財投機関債
地方公社債
地方公共団体が設立した公社(地方住宅供給公社、地方道路公社、
土地開発公社)が発行する債券
金融債
事業債等
※ ストリップス国債は利付国債の元本部分と利子部分を分離して販売されるもので、正式には分離元本振替
国債、分離利息振替国債といいます。
券
●公社債(国内債)の種類
公共債
は譲渡損益に含まれます。上場株式や公
債
債、利息の付き方によって分けた場合は
国債
● 債券と税金
●上場株式・特定公社債・公募投信の課税の概要(平成28年1月以後)
公社債は、考え方によっていろいろな
大分類
■ 特定公社債の範囲
公社債に対する課税の概要
平成28年1月1日から、公社債税制は
5%)での源泉徴収後、申告不要とする
大きく変更されています。
か申告分離課税とするかを選びます。
「特定公社債」に該当する公社債(特
特定公社債の譲渡損益は、改正前は非
定公社債の定義は後述)の利子は、改正
課税でしたが、改正後は、税率20%(所
★
前は源泉分離課税でしたが、改正後は、
得税15% 、住民税5%)の申告分離課
税率20.315%(所得税15.315%、住民税
税となります。外貨建の場合の為替損益
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る公社債、証券会社や銀行などが発行す
られています。国債、地方債、外国国債、
る社債などが含まれます。
外国地方債のほか、公募・上場されてい
■ 特定公社債の課税の概要
146
特定公社債の範囲は、次のように定め
★印の付いている所得税については、別途復興特
別所得税の課税も行われます。復興特別所得税の
税率は基準所得税額の2.1%です。詳しくは45ペ
ージを参照してください。
(注)社債がデフォルト後の処理において、指名債
権となった場合の税務上の扱いは明らかに
なっていません。
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●特定公社債の範囲
● 債券と税金
■「株式等」
・
「上場株式等」の定義の変更
① 金融商品取引所または外国金融商品取引所に上場されている公社債
② 国債、地方債
③ 外国国債、外国地方債
④ 会社以外の法人が特別の法律により発行する社債(外国法人に係るもの並び
に投資法人債及び特定目的会社の特定社債を除く)
⑤ 公募公社債
⑥ 発行日の前9ヵ月以内(外国法人は12ヵ月以内)に有価証券報告書等(四半
期報告書、半期報告書を含む)を提出している法人が発行する社債
⑦ 金融商品取引所または外国金融商品取引所において公表されたプログラム(一
定の期間内に発行する公社債の上限額、発行者の財務状況等その他その公社債
に関する基本的な情報をいう)に基づき発行される公社債
平成28年1月1日から、税法上の「株
などは「上場株式等」に含まれます。
式等」および「上場株式等」の定義が変
「株式等」のうち「上場株式等」でない
更されました(株式等・上場株式等の定
ものを「一般株式等」と定義し、「上場
義は67ページ参照)。
株式等」と「一般株式等」で課税方式が
平成28年1月1日以後は、「株式等」
分けられます(一般株式等の課税方式は
の中に、公社債や公社債投資信託などを
後述します)。
含め、特定公社債や公募公社債投資信託
●株式等・上場株式等の定義
株式等
a 国内において売出しがされたもの
b 国内における私売出しの日前9ヵ月
(外国法人は12ヵ月以内)
以内に有価証券
報告書等
(四半期報告書、
半期報告書を含む)
を提出している法人が発行する社債
⑨ 次に掲げる外国法人が発行し、または保証する債券
a 出資金額または拠出金額の50%以上が外国の政府により出資または拠出さ
れている外国法人
b 外国の特別の法令の規定に基づき設立された外国法人で、その業務が当該
外国の政府の管理の下に運営されているもの
c 国際間の取極に基づき設立された国際機関が発行し、または保証する債券
(世銀債等)
⑩ 国内または外国の法令に基づいて銀行業または金融商品取引業を行う法人ま
たはその100%子会社等が発行する社債(発行時にその取得者が1人またはその
関係者のみであるものを除く)
⑪ 平成27年12月31日以前に発行された公社債(発行時に同族会社であった会社
が発行した社債を除く)
(注)これらに該当しても、預金保険法の対象となっている金融債および農水産業
協同組合貯蓄保険法の対象となっている農林債、平成27年12月31日以前に発
行され発行時に償還差益の源泉徴収を受けた割引債は「特定公社債」にも
「一般公社債」にもなりません。
株式等のうち上場株式
等以外のものを
「一般
株式等」
と呼ぶ
上場株式等
上場株式
(上場新株予約権などを含む)
日本銀行出資証券
信金中金等の上場優先出資証券
公募株式投信、ETF、REIT、ETN、ベンチャーファンド
公募公社債投資信託
上場新株予約権付社債
外国上場株式
特定公社債
公募または上場された社債的受益権
など
券
株式
(新株予約権などを含む)
出資
株式投信・公社債投資信託
公社債
(新株予約権付社債を含む)
特定受益証券発行信託の受益権
社債的受益権
外国法人に係る上記のもの
など
債
⑧ 国外において発行された公社債で、次に掲げるもの(取得後引き続き保護預
りがされているものに限る)
■ 特定公社債の利子等に対する課税 平成28年1月1日以後に支払われるべ
いずれかを選択できます。
き特定公社債の利子および公募公社債投
受け取った利子等につき確定申告を行
資信託の分配金については、税率20.315
うか否かは、原則として1回の利払いご
%(所得税15.315%、住民税5%)での
とに選択可能です(ただし、源泉徴収あ
源泉徴収が行われます。その後、確定申
りの特定口座内に受け入れた利子等につ
告を行わず申告不要とするか、確定申告
いては、当該特定口座内に受け入れた配
★
を行い税率20%(所得税15% 、住民税
当等と合わせて、1つの特定口座ごとに
5%)の申告分離課税の適用を受けるか、
申告の有無を選択します)。
利付債だけでなく、割引債も上記の要
の価額で発行された利付債には別途償還
件を満たせば特定公社債となり、譲渡損
時の源泉徴収の規定があります(153ペ
■ 特定公社債の譲渡所得等に対する課税
益や償還差益は税率20%(所得税15%★、
ージ参照)
。
特定公社債の譲渡損益は、税率20%(所
★
は、税金相当額を控除しないで受渡しが
住民税5%)の申告分離課税となります。
得税15% 、住民税5%)の申告分離課
行われます。
ただし、割引債や額面金額の90%以下
税の対象です。
特定公社債の償還損益は、譲渡損益と
なお、平成28年1月1日以降に利払日
同様に申告分離課税の対象です。
を迎える国内債券の経過利子について
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個人向け国債への課税
個人向け国債の課税はどのようになるのでしょうか?
金 利 型(10年 満 期 ) と、
中途換金は、口座を開設してい
固定金利型(3年満期、5年満期)
る証券会社等を通じて国に買い取
とがあります。
ってもらう方法により行います。
いずれも、額面金額100円につき
買取額は、額面金額に経過利子相
100円で発行され、購入できる単位
当額を加えた額から、直前2回分
(最低額面単位)は1万円です。半
の各利子(税引前)×0.79685を除
年毎に年2回利払が行われます。
いた金額となります。個人向け国
いずれも、2回目の利払日(発
債の取扱機関に口座を開設してい
行から1年経過)以降であれば、
る個人間の売買は、発行日以後、
原則としていつでも中途換金でき
いつでも可能です。
ます。ただし、災害救助法の適用
償還時には額面100円で償還され
対象となった大規模な自然災害に
ます。通常は発行時に額面で購入
より被害を受けた場合、もしくは、
するので、
償還差益は発生しません。
保有者本人が死亡した場合、上記
平成28年1月1日以後は「特定
期間経過前であっても中途換金が
公社債」として課税されます。
ABS
(債券型)
の税制
ABS(資産担保証券)のうち債券型のものはどのよう
に課税されるのでしょうか?
ABS(資産担保証券)と
債券として発行されるものがありま
は、企業等から資産(ロー
す。わが国の「資産の流動化に関す
ン債権、リース料債権、不動産等)
る法律」
(いわゆるSPC法)に基
を譲り受けたSPV(特別目的会
づき特定目的会社の社債として発行
社・信託等)が、譲り受けた資産の
されるものについては、公募発行さ
予想キャッシュ・フローを裏づけに
れたものなど一定の要件を満たせ
発行する証券をいいます。ABSに
ば、
「特定公社債」として取り扱わ
は出資証券として発行されるものや
れることとなります。
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申告分離課税を選択した特定公社債の
譲渡の方法が特定譲渡によるものに限ら
利子や公募公社債投資信託の分配金は、
れます。
「上場株式等」(149ページ参照)の譲渡
特定譲渡には、特定公社債の元本の償
損失と損益通算することができます。こ
還や公募公社債投資信託の解約請求・買
の「上場株式等」には特定公社債も含ま
取請求・償還が含まれますが、個人間の
れます。
相対取引による譲渡などは特定譲渡では
ただし、利子や配当等と損益通算を行
なく一般譲渡となります。
える「上場株式等」の譲渡損失は、その
●特定譲渡とは
①証券会社等への売委託による譲渡
②証券会社等への譲渡
③公募株式投資信託の解約請求・買取請求
④公募株式投資信託の償還
⑤一定のコーポレートアクションに伴う譲渡等
⑥単元未満株式の買取請求による譲渡
⑦端株の競売等による譲渡
⑧信託されている上場株式等の外国証券業者等へ
の売委託による譲渡
⑧信託されている上場株式等の外国証券業者等へ
の売委託による譲渡
⑨信託されている上場株式等の外国証券業者等へ
の譲渡
⑩特定公社債の元本の償還(買入れ消却を含む)
⑪公募公社債投資信託の解約請求・買取請求
⑫公募公社債投資信託の償還
⑬国外転出をする場合の譲渡所得等の特例による
みなし譲渡(※)
券
可能です。
■「上場株式等」の譲渡損失との損益通算 債
個人向け国債には、変動
● 債券と税金
※国外転出時みなし課税制度は住民税には適用されません。
■ 繰越控除 平成28年分以後の所得税の計算におい
損失から控除できる所得の内容は、次の
て、繰り越せる損失および繰り越された
通りです。
●繰越控除の対象
その年に発生し
た 損 失 の う ち、
将来に繰り越せ
るもの
「上場株式等」の譲渡損・償還差損
・上場株式の譲渡損
・公募株式投信の譲渡損
・特定公社債の譲渡損、償還差損
・公募公社債投信の譲渡損、償還差損
など
「上場株式等」の譲渡益・償還差益
・上場株式の譲渡益
・公募株式投信の譲渡益
・特定公社債の譲渡益、償還差益
過 去 か ら 繰 り 越 ・公募公社債投信の譲渡益、償還差益
し た 損 失 と 通 算 など
で き る そ の 年 の 申告分離課税を選択した「上場株式等」の配当等・利子
所得
・上場株式の配当
・公募株式投信の期中分配金
・特定公社債の利子
・公募公社債投信の期中分配金
など
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● 債券と税金
平成28年分以後の所得税の計算におい
過去から繰り越された損失と通算でき
税が適用されず、雑所得として総合課税
として選定した場合に当該公社債の利子
ては、その年に発生した損失のうち、将
る所得は、平成28年分以後の所得税の計
とされます。
の支払をした法人が同族会社に該当する
来に繰り越せるものは、「上場株式等」
算においては、特定公社債の譲渡益・償
同族会社の株主等に支払うものとは、
こととなるときにおける当該株主および
の譲渡損・償還差損です。すなわち、特
還差益、公募公社債投信の譲渡益・償還
「その支払の確定した日(無記名の公社
その親族・使用人等一定の者」に支払う
定公社債の譲渡損・償還差損および公募
差益、特定公社債の利子、公募公社債投
債の利子については、その支払をした日)
公社債投信の譲渡損・償還差損などが含
信の期中分配金など、
「上場株式等」に
においてその者を判定の基礎となる株主
まれます。
当たる譲渡益・償還差益、配当等・利子
なお、繰越控除および配当等との損益
です(こちらは、
「特定譲渡」によるも
通算の対象となる上場株式等の譲渡損
のに限られません)
。すなわち、未公開
は、「特定譲渡」(151ページ)によるも
株式等の譲渡益、私募株式投信の譲渡益
のに限られます。
などとは通算できません。
●一般株式等の課税方式と損益通算の範囲
利子・配当・分配金
未公開株式など
■ 一般公社債の課税の概要 一般公社債の利子に対する課税方式は
平成28年1月1日以後は、
「一般株式
税率20.315%(所得税15.315%、住民税
等」と「上場株式等」の損益は区分され、
5%)の源泉分離課税です。(後述の同
「一般株式等」と「上場株式等」との間
族会社の株主等に支払うものを除きま
で譲渡損益の損益通算はできません。
す)。
また、
「一般株式等」の譲渡損益と「一
◆譲渡損益に対する課税
般株式等」の利子、配当等との損益通算
「一般株式等」(未公開株式・一般公社
もできません。
債など)の譲渡損益は、平成28年1月1
ただし、
申告分離課税が適用される
「一
日以後、「上場株式等」の譲渡損益・償
般株式等」の譲渡損益・償還損益につい
還損益と同様に税率20%(所得税15%★、
ては、損益通算が可能です。
住民税5%)の申告分離課税です。
◆特定口座受け入れは不可
◆償還損益に対する課税
「一般株式等」は従来と同様、平成28
私募株式投信など
一般公社債 償還差損
償還差益
配当所得として税率20.42
%で源泉徴収後確定申告
し総合課税
(少額配当は申告不要を選
択可)…①
償還差益は
償還差損は
配当として
申告分離課
①と同じ課
(注2)
税
税
譲渡所得等として税率20
*
%( 所 得 税15% 、 住 民
税5%)で申告分離課税 譲渡所得等として税率20
%( 所 得 税15% *、 住 民
利子所得として税率
(注1)
税5%)で申告分離課税
20.315%で分離課税
(注3)
私募公社債投信など
償還差益は
償還差損は
利子として
申告分離課
②と同じ課
(注2)
税
税
利子所得として税率
20.315%で分離課税…②
(注1)同族会社の株主等が支払を受けるものは、源泉徴収の後、確定申告し利子所得として総合課税となります。
(注2)償還差損については、申告分離課税が適用され網掛け部分との損益通算が可能です。
(注3)同族会社の株主等が支払を受けるものは雑所得として総合課税の対象となり、網掛け部分との損益通算はで
きません。
(注4)網掛けは、損益通算が認められている範囲を示します(上場株式等の利子・配当・譲渡益とは損益通算でき
ません)。
(注5)割引債および額面の90%以下の価額で発行された利付債は、別途、償還時の源泉徴収の規定があります。
一般公社債の償還損益は申告分離課税
年以後も特定口座に受け入れることはで
の対象となります(後述する、同族会社
きません。
の株主等に支払うものを除きます)。
平成28年1月1日以後の
「一般株式等」
私募株式投信・私募公社債投信につい
の課税方式の改正をまとめると、次の図
ては償還差損のみ申告分離課税となりま
表に示されます。
す。一方、私募株式投信の償還差益は配
◆同族株主等に支払うもの
当として20.42%(所得税20.42%)の源
平成28年1月1日以後、一般公社債の
◆割引債の改正前の税制
っても、発行時の源泉分離課税で課税関
泉徴収が行われた後、少額配当の場合な
利子のうち、同族会社の株主等に支払う
割引債は、改正前は発行時に原則とし
係が完結しているため、償還時に課税関
どを除いて確定申告し総合課税となりま
ものについては、発行会社による税率
て税率18.378%(所得税18.378%)の源
係は生じません。
す。私募公社債投信の償還差益は利子所
20.315%の源泉徴収後、確定申告し利子
泉分離課税、譲渡損益は非課税でした。
所得として総合課税とされます。
◆経過措置(平成27年12月までの発行分)
◆償還時の源泉徴収
得として20.315%(所得税15.315%、住
民税5%)の源泉分離課税の対象となり
また、平成28年1月1日以後、一般公
平成27年12月31日以前に発行され発行
ついても特定公社債と一般公社債に区分
ます。
社債の償還差益のうち、同族会社の株主
時源泉徴収が行われた割引債について
され、特定公社債である割引債は特定口
等に支払うものについては、申告分離課
は、平成28年1月1日以後の償還であ
座に受け入れることができます。
152
16税金読本_p145-164_06.indd 152-153
券
◆損益通算は不可
譲渡損益
債
◆利子に対する課税
もののことをいいます。
割引債の税金
平成28年1月1日以後は、割引債に
153
16.10.31 4:54:00 PM
対象となります。
引債は、償還時に税率20.315%(所得税
特定口座において管理されている割引
15.315%、住民税5%)の源泉徴収が行
債については、発行価格(または取得価
われます。
額)が管理されているため、実際の償還
償還時の源泉徴収が行われるのは、割
損益に基づいて利付債と同様の課税が行
引債、分離元本公社債、分離利子公社債、
われます。
額面の90%以下の価額で発行された利
一方、特定口座で管理されていない割
付債です。国外発行の割引債で割引債の
引債の償還金については、実際の利益が
償還金が国内で支払われるもの、および
明確にならない場合が考えられます。そ
国内における支払の取扱者を通じて受け
こで、次の金額を償還差益とみなして源
取るものについても償還時の源泉徴収の
泉徴収が行われます。
簡易申告口座
発行から償還までの期限が1年超の割引債
および分離利子公社債
償還金額の25%
◆同族株主等に支払うもの
通算等の範囲が異なります。
一般公社債の償還差益のうち同族株主
ただし、平成27年12月31日以前に発
等に支払うものについては、雑所得とし
行され発行時源泉徴収が行われた割引債
て総合課税となります(源泉徴収あり)
。
の譲渡益については、平成28年1月1日
◆割引債の譲渡損益に対する課税
以後においても非課税となり、譲渡損失
平成28年1月1日以後の割引債の譲渡
についてはないものとみなされます。
については、利付債と同様に申告分離課
割引債の課税方式をまとめると、次の
税となります。すなわち、特定公社債で
表のようになります。
一般公社債
譲渡損益
償還差益
譲渡益
償還差益
なし
償還時にみなし
償 還 差 益 ×
20.315%源泉徴
収
要
要
なし
なし
償還時に実際の
実際の譲渡損益
償 還 差 益 ×
×20.315%源泉
20.315%源泉徴
徴収
収
なし
要
要
不要
不要
確定申告時の扱い
譲渡損益・
償還差益
実際の譲渡損益・
償還差益×20%
(所得税15%★、住
民 税5%) の 申 告
分離課税(注1)
償還時にみなし
償 還 差 益 ×
20.315%源泉徴
収
要
要
実際の譲渡損益・
償還差益×20%
(所得税15%★、住
民 税5%) の 申 告
(注2)
分離課税(注1)
券
償還金額の0.2%
16税金読本_p145-164_06.indd 154-155
一般口座
確定申告の要否
債
発行から償還までの期限が1年以内の割引債
(分離利子公社債を除く)
154
源泉徴収
源泉徴収口座
●みなし償還差益
あるか一般公社債であるかによって損益
●割引債の課税方式
特定公社債
平成28年1月1日以後に発行される割
● 債券と税金
(注1)平成28年1月1日以後、譲渡損益・償還差益については、特定公社債であれば「上場株式等」の譲渡所
得等として扱われ、「上場株式等」の譲渡所得等・配当等との損益通算、および繰越控除の対象となり
ます。一般公社債であれば、「一般株式等」の譲渡所得等として扱われ、「一般株式等」の譲渡所得等の
中でのみ損益通算ができます。
(注2)平成28年1月1日以後の償還金について、同族会社の株主等に支払うものは、申告分離課税の対象とな
らず、雑所得として総合課税となります。
(注3)平成27年12月31日以前に発行され、発行時に源泉徴収が行われた割引債については、平成28年1月1
日以後の償還であっても償還時の源泉徴収は行われません。この場合、発行時の源泉分離課税で課税が
完結しており、確定申告は行えません。
(注4)平成27年12月31日以前に発行され、発行時に源泉徴収が行われた割引債は、平成28年1月1日以後に
譲渡した場合についても、譲渡所得は非課税となります。
新株予約権付社債の税金
新株予約権付社債とは、新株予約権が付
い込むべき金額の払い込みに当てられま
いた社債です。新株予約権とは、発行会社
す(代用払込みといいます)
。投資家(社
の株式を、発行後一定の権利行使期間内に
債の保有者)は新たな払い込みをするこ
一定の行使価額を払い込むことで発行会社
となく、発行会社の株式を取得すること
から取得できる権利をいいます。新株予約
ができます。
権付社債の保有者が権利行使した場合、発
投資家は新株予約権付社債のまま保有す
行会社は新株を発行するか保有する自己株
ることも、売却することもできます。権利
式を譲渡することになります。
行使して株式を取得することもできます。
転換社債型新株予約権付社債(CB)
新株予約権付社債は、通常は利付債と
の場合、新株予約権の行使に際して払い
して発行されます。ただし、割引債とし
込むべき金額が社債の発行価額に等しく、
て発行されるものもあります。満期まで
権利行使時には必ず社債が償還され、払
保有すれば償還金額が支払われます。
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● 債券と税金
●他社株転換可能債の発行条件例
■ 利子・償還差益に対する税金 上場あるいは公募の新株予約権付社債
については、
「一般公社債」として取扱
であれば、「特定公社債」として取扱わ
われます。
①発行体
国内外の金融機関
れる一方、それ以外の新株予約権付社債
②転換対象株式
■ 譲渡益に対する税金 ③発行額
東証第一部上場会社発行の普通株式
新株予約権付社債は、新株予約権が付
所得等」
、
「一般公社債」として取扱われ
与されているなど株式の性格を持つこと
る場合には、
「一般株式等に係る譲渡所
から、譲渡益については株式と同様に申
得等」として、それぞれ課税されます。
告分離課税の対象とされます。新株予約
なお、
「特定公社債」に該当すれば特
権付社債が「特定公社債」として取扱わ
定口座への預け入れの対象となります。
れる場合には、「上場株式等に係る譲渡
数億円程度
④発行価額
額面の100%
⑤利子(クーポン)
年率6%から8%程度
⑥償還
債
発 行条件決定日の転換対象株式の株価(A)と、本債券償還日の10営
業日前(評価日)の同株式の株価(B)を比べ、A≦Bの場合は額面
券
新株予約権の権利行使期間満了時の課税
価額、A>Bの場合は転換対象株式でそれぞれ償還
それぞれ別途売買することができる新株予約権と社債が同時に発行され、
新株予約権が譲渡されないまま権利消滅した場合でも、その損失を株式等の
◆利子および譲渡益に対する課税
還差損(他社株転換可能債の取得価額と
譲渡による雑所得の必要経費等として控除することはできません。また、こ
他社株転換可能債の利子については、
償還された株式の時価との差額)が生じ
れを通常の雑所得の損失として他の雑所得との間で通算することなどもでき
20.315%の源泉徴収が行われます。特定
ます。まれに、株式での償還が決定した
ません。
公社債であれば申告分離課税、一般公社
後に株価が急騰し、償還差益が生じる場
債であれば源泉分離課税が適用されます。
合もあります。いずれの場合も、申告分
◆償還差損益・譲渡損益に対する課税
離課税の対象となります。
他社株転換可能債が「特定公社債」と
償還を受けた他社株式の取得価額は、
特殊な債券の税金
して取扱われる場合には、「上場株式等
償還日の時価となります。
償還された株式
債券の中には、いわゆる仕組債とよば
税務上も特別な取扱いがされることが多
に係る譲渡所得等」、「一般公社債」とし
を将来譲渡した際の譲渡損益は、申告分
れる特殊なキャッシュ・フローを持つ債
いので注意が必要です。
て取扱われる場合には、「一般株式等に
離課税となります。その際の譲渡所得は、
係る譲渡所得等」として、それぞれ課税
償還日の他社株式の時価と譲渡価額との
されますので、個別商品ごとに確認する
差額となります。
必要があります。
なお、特定口座を開設している証券会
券があります。そのような債券の場合、
■ 他社株転換可能債(EB)に対する税金 他社株転換可能債(EB)とは、対象
されることとなります。評価日の他社株
なお、償還時の課税は、①現金で償還
社の一般口座で取引していた他社株転換
となる他社株式の価格により、現金で償
式の価格が一定水準以上であった場合
される場合と、②株式で償還される場合
可能債の償還によって取得した上場株式
還されるか、他社の株式で償還されるか
は、現金で償還されます。
とで異なります。①現金償還の場合、額
については、当該特定口座に預けること
が決まる債券です。償還が現金となるか
面金額で償還されるため、通常、償還差
ができます(186ページ参照)。他社株転
他社株式となるかの決定方法にはいくつ
◆発行条件例
損益は生じません。
換可能債が「特定公社債」であれば、特
かの形態がありますが、一般的には、予
他社株転換可能債の一般的な発行条件
②株式で償還される場合は、通常、償
定口座に受け入れることができます。
め定められた評価日の他社株式の価格が
は以下の通りです。
一定水準を下回った場合には株式で償還
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● 債券と税金
■ 株価指数連動債に対する税金 して、償還金額や利子が変動する債券で
なら前回の利率に0.5%上乗せし、それ
す。償還金額が変動する債券には、例え
未満なら0.5%控除するといったような
ば償還条件決定日の日経平均株価が基準
アップダウン型など様々なものがありま
価額(例えば発行条件決定日の日経平均
す。ただし、利率が0%を下回ることは
株価の終値)を上回る場合に、額面金額
ありません。
にその超過割合をかけた分だけ償還金額
◆利子に対する課税
が増加し、下回る場合には、その下回る
株価指数連動債の利子については、
分だけ償還金額が減少するものなどがあ
20.315%の源泉徴収が行われます。特定
ります。なお、株価指数連動債の多くは、
公社債であれば申告分離課税、一般公社
償還金額の上限が額面全額の100%とな
債であれば源泉分離課税が適用されます。
っています。
◆償還差損益・譲渡損益に対する課税
一方、利子が変動する債券は、例えば、
株価指数連動債が「特定公社債」とし
利率の決定方法が、各利払い時点の日経
て取扱われる場合には、
「上場株式等に
平均株価が一定額以上なら3%、それ未
係る譲渡所得等」
、
「一般公社債」として
満なら0.1%となるようなデジタル型、
取扱われる場合には、
「一般株式等に係
各利払い時点の日経平均株価を一定額で
る譲渡所得等」として、それぞれ課税さ
割った比率を7%にかけ、そこから5%
れますので、個別商品ごとに確認する必
を引くといったようなレバレッジ型、各
要があります。
預貯金および金融類似商品等の税金
預貯金の利子はどのように課税されますか。また、金融
類似商品等はどのように課税されますか。
預貯金の利子は一律20.315
%の源泉分離課税の対象と
◇定期積金または相互掛金の給付補
てん金
なります。
◇抵当証券の利息
金融類似商品等とは、預貯金の利
◇金投資(貯蓄)口座の差益
子と同じく、20.315%の源泉分離課
◇外貨投資口座の差益
税の対象となる金融商品であり、
具体
◇一時払保険の差益
的には次のようなものが含まれます。
券
利払い時点の日経平均株価が一定額以上
債
株価指数連動債とは、株価指数に連動
金地金等の税金と支払調書
現物である金地金等(金・白金の地金、金貨・白金貨)の譲渡に対する税
金は、金融類似商品の金投資(貯蓄)口座の差益とは異なり、原則、譲渡所
得として他の所得と合わせ総合課税の対象となります。譲渡所得の金額につ
仕組債
いては、金地金等の譲渡益と金地金等以外の譲渡益の合計から譲渡所得の特
別控除額を差し引いたものとなります。なお、譲渡所得の特別控除の金額は、
その年の金地金等の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して
仕組債とは、一般的には、通常の利付債や割引債と異なり、特殊なキャッ
最高50万円となります。譲渡所得の計算方法については、23ページの図表を参
シュ・フローを持つ債券のことをいいます。
仕組債には、
多様なキャッシュ・
照してください。
フローを生み出すために、スワップやオプション取引等のデリバティブ取引
◆告知と支払調書
が組み込まれています。組み込まれているデリバティブには、金利・通貨・
金地金等を売買業者に譲渡し、譲渡の対価を受領する際には、原則として
株式関連のデリバティブ、クレジット・デリバティブ、商品関連のデリバテ
本人確認書類を提示し、氏名、住所等を告知しなければなりません。
ィブ等様々なものがあります。投資家が望むキャッシュ・フローと発行体が
金地金等の譲渡の対価を支払った売買業者は、氏名、住所、支払金額等を
望むキャッシュ・フローとが異なる場合は、スワップ取引等を用いて、これ
記載した支払調書をその支払の確定した日の属する月の翌月末日までに、そ
らを交換します。
の支払をする者の所在地の所轄税務署長に提出することとなっています。
キャッシュ・フローが特殊であるため、個別に課税方法を確認する必要が
ただし、譲渡の対価の受領額が200万円以下である場合は告知は不要で、
あります。
支払調書も提出されません。なお、平成28年1月1日以後に行われる金地金
等の譲渡からは、告知すべき内容に個人番号(マイナンバー)が追加され、
支払調書の記載内容にも個人番号(マイナンバー)が追加されます。
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支払調書等
◆利子の受領者の告知
の利子、公募公社債投信の利子、一般公
平成28年1月1日以後に支払うべき特
社債の利子のうち同族会社の株主等に支
定公社債の利子等については、支払調書
払われるものなど、「源泉分離課税が適
の対象となります。
用されない利子」を受ける際に、その支
また、平成28年1月1日以後、国内
払を受ける者は、金融機関等への氏名、
で公社債、公社債投資信託の受益権の譲
住所等の告知が必要となります。なお、
渡の対価(償還金、解約金を含む)の支
無記名の公社債の利子を受領する場合は
払をする金融機関等は、その年中に支払
告知ではなく「告知書の提出」の対象と
った対価の額等を記載した「株式等の譲
なります。
渡の対価の支払調書」
(111ページ参照)
もっとも、当該利子の支払を受ける者
を、支払確定日の翌年1月31日(1回の
が、当該公社債の保管委託契約時に、そ
支払ごとに作成する場合には翌月末日)
の者の氏名および住所を告知している場
までに、税務署長に提出します。
合は、利払い時の告知をしたものとみな
平成28年1月1日以後、支払調書に個
されます(みなし告知)。
人番号(マイナンバー)も記載されます。
平成28年1月1日以後、告知事項に個
なお、平成27年12月31日以前に発行
人番号(マイナンバー)が追加されます。
され発行時に源泉徴収が行われた割引債
については、平成28年1月1日以後の
◆譲渡の対価・償還金の受領者の告知
譲渡・債還であっても支払調書は提出さ
平成28年1月1日以後は、公社債の
れません。
譲渡の対価や償還金を受領する際に告知
が必要となります。もっとも、当該譲渡
◆支払通知書
の対価・償還金の支払を受ける者が、口
平成28年1月1日以後に特定公社債の
座開設時等に告知を行い、当該金融機関
利子等の支払事務の取扱いをする金融機
の帳簿に記載されていれば、譲渡の対
関は、その支払を受ける者に対して「上
価・償還金の受領の都度の告知をしたも
場株式配当等の支払い通知書」
(111ペー
のとみなされます(みなし告知)。
ジ参照)を交付します。
平成28年1月1日以後、告知事項に個
人番号(マイナンバー)が追加されます。
◆特定口座年間取引報告書
なお、平成27年12月31日以前に発行さ
平成28年以後、特定口座年間取引報告
れ発行時に源泉徴収が行われた割引債に
書の記載事項に、特定口座に受け入れた
ついては、平成28年1月1日以後の譲
特定公社債等の利子所得、特定口座内で
渡・償還金の受領の際も税務上の告知の
行われた特定公社債等の譲渡所得等の金
対象とはなりません。
額等が追加されます。この場合、支払調
(注)個人番号(マイナンバー)については、16章
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年間取引報告書には、個人番号(マイナ
ません。なお、税務署提出用の特定口座
ンバー)が記載されます。
特定管理株式等が価値を失った場合
平成28年1月1日以後、特定口座で管
座で管理されている必要はありません)。
理されている特定公社債について、清算
「上場株式等」の譲渡損失とみなされる
結了等の事実が生じて公社債としての価
ため、上場株式の配当、公募株式投信の
値を失った場合には、その損失は、「上
分配金、特定公社債の利子、上場株式の
場株式等」(149ページ参照)の譲渡損
譲渡益、公募株式投信の譲渡益・償還差
失とみなされます。
益、特定公社債の譲渡益・償還差益、公
なお、ここでいう公社債としての価値
募公社債投信の譲渡益・償還差益との損
を失った場合とは全く回収できなかった
益通算ができ、3年間の繰越控除の対象
ことを指し、一部でも回収できた場合は
にもなります。
上場株式等または一般株式等の譲渡損失
券
◆支払調書
書の提出および支払通知書の交付はされ
債
平成28年1月1日以後は、特定公社債
● 債券と税金
とみなします(一部回収の場合、特定口
を参照して下さい。
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