リンツでの中学生海外交流事業のさらなる発展と 民間レベルの交流の

リンツでの中学生海外交流事業のさらなる発展と
民間レベルの交流の実現を目指して
那須塩原市議会
山本 はるひ
■ 那須塩原の中学生をあたたかく受け入れていただき、ありがとう
このたびの視察訪問では、リンツ在住の日本人の方など多くの
みなさまに心温まるおもてなしを受けました。国際交流現地支援
員として案内、通訳などをしていただいた津也子さん・ヨハンご
夫妻、原谷完治さん、柴森睦子さん。また、ピアニストの滑川真
希さんと指揮者総監督のデイビス氏ご夫妻は州立劇場の本来は
見学できないところを快く見せてくださいました。そのみなさま
が、那須塩原からの言葉もコミュニケーションもままならない中
学生を12年間、苦労しながらお世話し続けてくださっているこ
とを知ったことが、今回リンツを訪問した一番の成果です。
姉妹都市提携のきっかけになったのは中学生の海外交流です
が、そもそもは、リンツ在住の日本人の方々と青木周蔵元外務大
臣の子孫のニクラス・サルム氏だったのではないかと思います。
リンツ市庁表敬訪問
国旗と市旗と市章
私は、親日家のサルム氏が中学生を歓待してく
ださっているお城でお茶をいただき、あらためて
感謝の気持ちでいっぱいになりました。現地の
方々が苦労を重ねた末に実現している中学生の交
流だということが、はっきりわかり、いまさらな
がらですが、本当にありがとうございます。
お世話になった原谷完治さんと
ニクラス・サルム氏
アントン・ブルックナーはリンツの作曲家
旧大聖堂で12年間、オルガニストを務め
たことは有名
リンツで通訳と案内をしてくださった
津也子さんとヨハンご夫妻
■ リンツとの民間交流を目指して
私は、市内の団体から「日本の伝統芸能を紹介したい」というメッセージを託されていた
のですが、それを届け、つなぐことができてほっとしています。さらに、リンツ在住の日本
人の方だけでなく、お会いしたリンツの方々に「多くの市民のみなさんに訪問してほしい、
お手伝いします」と言われ感激しました。
今年8月から市役所には、ウィーンからフロレンティーネ・ロンニガーさんが国際交流員
として赴任しています。ドイツ語が公用語のオーストリアですが、市役所の中にドイツ語も
英語も、そして日本語もわかる交流員が存在するということは本当に心強くうれしいこと
です。姉妹都市提携を契機に、今後は中学生の交流だけではなく、行政や産業の交流はもち
ろん、音楽や芸術、歴史、科学技術などについての交流も進めていくべきだと思います。本
市でリンツのお菓子やワイン、チーズなどの特産品の紹介や販売、また技術協力などができ
たら最高です。
リンツと那須塩原がお茶、お花や日本舞踊、和楽器演
奏などを通して交流の輪を広げることは可能だと確信し
て帰国しました。和太鼓などは喜ばれると思います。
また、リンツには音楽やデザイン、科学技術の大学や
専門学校があり、そこへの短期留学や入学も可能でしょ
う。アメリカやイギリスなど英語圏の国ほど身近ではな
かったオーストリアが身近になってきました。
■ 英語が通じるオーストリア
オーストリアの公用語はドイツ語ですが、ホテルや駅、
案内所などはもちろん、おみやげを買う
●ウィーン空港で水を買う
500cc で 1.89 ユーロ(220 円)
スーパーは 0.49~1 ユーロ(60~
115 円)●オーストリアの付加価
値税は 20%が基本 食品、本、新
聞、映画、観劇、公共交通、教育
などは 10%に減額
時や、スーパーマーケットやカフェでは英語が通じます。
市内の小学生や中学生のみなさんは、各学校にALTの先生がいて、授業はもちろん行事
などの時も英語でコミュニケーションをとる勉強をしています。中学生の海外交流だけで
はなく、機会を見つけてその力をためしに、ぜひリンツへ行っ
て見る、あるいは5月にリンツから来てホームステイしている
生徒さんと話してみる、というようなことを積極的に行えれば
いいなと思います。
ザルツブルク駅
出発時間と乗り場案内
英語表記「Departure」
切符の販売機
英語表記「Tickets」
■ 美しい街並みのリンツ
リンツはドナウ川の流れに沿った美しい街で、
かつてはザルツブルクからウィーンへ塩を運ぶ
拠点として重要なところでした。大きな橋を渡っ
た南側が旧市街地です。パステルカラーのかわい
い街並みで、花がいっぱいです。路面電車が石畳
の上を走っていて、バスと車と自転車が同じとこ
ろを通っています。右の写真はハウプト・プラッ
ツメイン広場で三位一体の塔(左奥)があります。
この塔は18世紀のトルコ軍との戦い、大火、ペ
ストがおさまったことに感謝して 1723 年に建立
されました。
市内はカラフルな電車やバスがたくさん走
っていて市民の足になっている
狭い路地を走る黄色の観光路面電車に乗っ
てみたかったけれど、時間がなく残念
■ 姉妹都市提携は市民レベルでの交流促進のチャンス
2019 年に日本とオーストリア修好 150 周年を迎えるとのことです。この記念すべき年に
姉妹都市リンツと那須塩原が何をすべきか、どのような交流でそれを祝うか、今から考えて
おくことも必要だと思います。
3年後のことですが、完成したばかりのリンツ州立劇場で、音楽でも舞台でも何か和をも
って演じることができたらいいなと思います。劇場見学の際、小さなホールやカフェスペー
スを見せていただき、誰でも音楽や演劇など規模に応じて使えることを確認してきました。
実現は団体や市民の本気度がどれだけあるか、費用以外に情報提供などで行政がどこまで
支援できるか、に尽きると思います。
おみやげは甘いものばかり、右の缶は「リンツァート
ルテ」世界で最も古いケーキと言われている
ミラベルのチョコレートとマナーのウエハース
■ リンツと那須塩原が「親しい友人」になることを願って
今後は「中学生の相互交流」と「海外都市産業交流促進事業」から、「市民レベルでの相
互交流」へ進めていくために行政は何をすべきか真剣に考えなければならないと思います。
姉妹都市提携により、教育委員会と商工観光課だけに任せた交流ではなく、都市交流係が中
心になってリンツとの積極的な交流を進めていく時がやってきたのです。
議員も含めて、今まで中学生の交流にかかわってきた方々以外の行政職員も市民も、実は
この12年間の中学生の交流がどのように行われてきたのか、本市とリンツの関係者のみ
なさまのお骨折りのことをほとんど知らなかったと思います。情報提供が積極的に行われ
ていなかったと言わざるをえません。
5年前の震災、原発事故当時のLISAと教
育委員会の記録の中に「子どもたちの健康被害
を考え、私たちは貴市の子どもたちをリンツに
招き、状況が落ち着くまで滞在していただきた
いと思います。子どもたちは家庭に滞在し、L
ISAに通わせることが可能です。これは教師、
保護者、生徒の代表者によって決まったことで、
それが何らかの助けになるのなら、即受け入れ
をいたします」という文章があります。LIS
ドナウ川は10か国を悠々と流れている
Aの先生と保護者、生徒のみなさんの心配と涙の出るような温かい心遣いのことを、派遣さ
れるまで私は知りませんでした。もっと早くわかっていたなら、6月の姉妹都市の締結の時
に、その方々を何が何でもご招待してほしいと強く申し入れたと思うのです。
リンツへ出かけて、少なくともLISAの保護者のみなさんが那須塩原に行って見たい
という気持ちがあること、また交流をした農業や商業の関係者の方々も訪問したいと思っ
ていることを知りました。ぜひ実現してほしいと思います。
姉妹都市提携は、市民に、世界へ目を向けて国際交流
をするチャンスを提供するものです。そのことが人生を
豊かにし、考えが広がり、違った国の人同士の相互理解
が深まって、世界が穏やかに平和になっていくことにつ
ながっていくものだと思います。時間はかかるかもしれ
ませんが、この提携をきっかけに那須塩原とリンツが
「親しい友人」となることを願ってやみません。
私は姉妹都市提携調印直後に議会代表でリンツ視察
に派遣されたのですが、公費での派遣ということの責任
の重さから大きな緊張の中での出発でした。視察の結果、
リンツでの中学生の様子を知ることができ、民間での交
流の可能性を探ることもできて、派遣されてよかったと
シュリアバッハ修道院の図書館
思っています。責任を果せて、ほっとしています。