特集の主旨 - 日本マーケティング・リサーチ協会

“新機軸市場”への挑戦者たち
出版委員会
青山 隆一
■特集の主旨
2016 年現在の家計調査(総務省)をはじめとした各
種データにおける消費支出や消費マインドを見れば、
総じて家計は節約志向にある。しかしながら、一方で、
今の生活者は自身の生活の質を充実させてくれるモノ
・
コトに対しては、むしろ積極的に支出しているようにも
見受けられる。節約型消費と高額帯消費の二極化がよ
り顕著になって、中間の
“ほどほどな消費”が消失しつ
つあるように思える。もしそうであれば、現在の日本社
会には、
“商品間の差異性をあまり認識せずに、厳しい
コスト意識で商品選別するマーケット”と
“生活者が自
身の生活の質を上げるために、より上質なものを求め
るマーケット”の二つの市場が存在するといい換えるこ
とができる。どちらのマーケットにおいても、生活者に
自社商品を選択・購入してもらうことはますますむずか
しい状況になりつつあると思われるが、事業会社がこ
のモノ余りの時代を生き残っていくためには、後者の
マーケットで、より高く売れる商品・サービスを開発し、
きちんと利潤を上げる仕組みを作っていくことが必要
になるのだと思う。
そこで今回の特集では、後者の
“生活者が自身の生
活の質を上げるために、より上質なものを求めるマー
ケット”
(このマーケットを
“新機軸市場”と呼ぶ)に着目
し、そのマーケットで商品を提供している事業会社は、
どのような視点で生活者心理を捉え、どのようなマー
ケティング上の工夫をしているのか? そして、この
マーケットにおけるマーケティング・リサーチはどうあ
ればよいのか? そのヒントを探ってみたいと考えた。
このテーマを語っていただくのにふさわしいのは、ま
さに自らがそのような商品を社会に投げかけて、新機
軸市場を切り拓いた方々をおいて他にあるまい。ビー
ルやスナックだけでなく、伝統産業やペットフードな
ど、一風変わった市場でチャレンジする方々も交えな
がら、各社の取り組みについて、存分に語っていただい
た。そして、本特集のトップには、このような消費トレン
ドを俯瞰して語っていただく立場として、博報堂 生活
総合研究所の上席研究員・夏山さんにお願いした。特
集の具体的な展開順としては以下の通りである。
①株式会社博報堂 博報堂生活総合研究所 上席研究員
夏山 明美 氏
②日本ペットフード株式会社 執行役員 研究開発部長
辻子 雅之 氏/同部 開発企画課 マネージャー
津々樂 仁美 氏
③株式会社和える 代表取締役 矢島 里佳 氏
④株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
井手 直行 氏
⑤株式会社ロッテ マーケティング統括部 第二商品
企画部 新商品企画室 マネージャー
犬飼 美穂子 氏
“新機軸市場”の開拓に求められることとは?
そこにはどんなマーケティング・リサーチが求められ
るのか?
皆様のこれからのお仕事に、少しでもヒントがあらん
ことを。
2016 No.131
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