買 主 か ら 提 示 さ れ る 秘 密 保 持 契 約 書 の ド ラ フ ト

は、売却の対象となる事業に関する技術情報、ノウハウ、顧客
A取引を検討する場合において、売主側から開示する情報に
際、まず最初に締結するのが秘密保持契約である。
特に、M&
手方に自社の一定の秘密情報を開示することが多いが、その
第三者との間で取引の可能性を検討する段階において、相
契約書のサンプルをベースに、当該サンプルの各条項につい
性が高い。
そこで、本特集では、買主から提示される秘密保持
れた秘密保持契約は買主側に有利な内容となっている可能
ラフトが提示されるケースが少なくないが、買主から提示さ
ある。
M&A取引においては、買主側から最初に契約書のド
て、M&A取引における売主と買主
のそれぞれの立場からどのような意
向 が 働 く か、 図 表 2 で 大 ま か な イ
メージを掴んでいただきたい。
M&A取引の検討に際し、通常、相
めにし、また相 手 方に厳 格な秘 密 保
売 主としては、秘 密 情 報の範 囲は広
手 方に開 示 する情 報が圧 倒 的に多い
取引を担当される方の実務対応の一助になれば幸いである。
をするという実践的なスタイルを採用した。
本特集が、M&A
情報、取引情報等の営業秘密、さらに契約書や資産情報等、 て、検討する際の留意点や具体的な修正案について順次解説
売主にとって競争力の源泉となっている重要かつ秘密性の高
・狭くしたい
「秘密情報」
の範囲
・広くしたい
「秘密情報」
の特定方
法
・大量に情報を提供
・
「秘密」
と記載された
するので、特定方法
ものに限 定 するな
が厳格だと煩雑にな
ど、対象を明確にし
り漏れが出るリスク
ておきたい
がある
「秘密情報」
の例外
・例外は狭くしたい
・例外は広くしたい
・例外であることの立 ・例外ではないことの
証責任を相手方に 立証責任を相手方
負わせたい
(立証で に負わせたい
(立証
きなければ例外では できなければ例外で
ないことになる)
あることになる)
秘密情報保持義務の内容
・例外として開示でき
る第 三 者の範 囲は
第三者への開示・漏
限定したい
えいの禁止
・第三者には必ず守
秘義務を負わせたい
・例外として開示でき
る第三者に、あらか
じめプロジェクト関
係者
(弁護士、公認
会計士、税理士、ア
ドバイザー、投資家
等)を入れておきた
い
・事前通知がほしい
法令等の要請に基づ
・開示は最小限の範
く情報開示
囲にとどめてほしい
・法令等の違反となら
ないよう、速やかに
適切な範囲の情報
を開示できるように
しておきたい
秘密情報の利用・複 ・相手方に厳格な義 ・厳格な義務を負いた
製等の制約
務を負わせたい
くない
秘密情報の返還・消 ・相手方に厳格な義 ・厳格な義務を負いた
去・廃棄
務を負わせたい
くない
ないようにしたいという意向が働く。
囲を限定的にし、過度な義務を負わ
る立 場に立つ買 主は、 秘 密 情 報の範
く。 これに対し、主に情報を受領 す
持 義 務 を 負わせたいという 意 向が働
い情報が含まれるため、秘密保持契約の役割は極めて重要で
「秘密情報」
の特定
買主から提示される
秘密保持契約書のドラフト
図 表 1の 買 主 か ら 提 示 され る 秘 密
保持契約書のサンプルは、売主が子
会社を株式譲渡により売却するケー
スを想定したもので、主に情報を受
領する立場に立つ買主側に有利な内
容としている。以下、当該サンプル
・開示する情報が圧
・開示する情報が少
倒的に多い
ない
→主として相手方に
→主として秘密保持
秘密保持義務を負
義務を負う立場
わせる立場
基本的な立場
買主側の意向
売主側の意向
利害が対立する項目
を
「買主サンプル契約」
という。
M&A取引におけ
る秘密保持契約の
主要な検討項目に
対する当事者の意
向
まず最初に、秘密保持契約におい
て検討対象となる主要項目につい
(図表2) 秘密保持契約における検討項目
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経理情報●2016.12.10(No.1465)