第 14 回日本胎児治療学会学術集会 開催のご挨拶 この度、第 14 回日本胎児治療学会学術集会を 2016 年 11 月 18 日(金) 、19 日(土) 、20 日(日)に、 聖隷浜松病院にて開催する運びとなりました。 本学会は、胎児を一人の患者さんとして治療を行うという“Fetus As a Patient”の主旨の元に、産 婦人科、新生児科、小児外科、麻酔科、小児循環器科、小児泌尿器科、小児脳神経外科など胎児の治療 に関連する各科の医師・看護師のみならず基礎研究者や技術開発者など多部門の方々が参加し、自由に 討論することで、胎児治療を取り巻く現況、診断技術、今後の予後の改善、新技術の開発、ならびに会 員相互の理解と連携を図ることを目的としています。 本学会は聖隷浜松病院としては 2 回目の開催となります。2006 年に第 4 回胎児治療学会学術集会を 聖隷浜松病院麻酔科小久保荘太郞副院長が学術集会長としてアクトシティ浜松で開催し、ちょうど 10 年後の 2016 年に第 14 回の学術集会を聖隷浜松病院講堂で開催します。この 10 年間で胎児治療の技術 も大きく発展し予後を劇的に改善した疾患もありますが、残念ながら遅々として進まない技術や分野も 存在します。本学術集会のテーマを『胎児治療の最先端』『胎児治療における技術の伝承』とし、幹細 胞移植や細胞シート、再生医療、人工子宮など今後期待される最先端の胎児治療と、胎児鏡下胎盤吻合 血管レーザー凝固術や胎児胸腔羊水腔シャント術など確立された技術をいかに後進に伝えていくかを 中心に討論を行いたいと思っています。 一般演題は 52 題とたくさんの応募を頂きました。その中からシンポジウム「胎児治療の新技術」と して 7 題を、ワークショップ「シャント術の適応と問題点」として 8 題を採択させて頂きました。それ ぞれ、深いディスカッションが出来ることを楽しみにしています。また、特別講演として 2 つのセッシ ョンを設け、 「胎児治療のパイオニア:技術革新と伝承」として、かつて国立循環器病センターで胎児 治療の黎明期に活躍された千葉喜英先生と小林秀樹先生にそれぞれ「胎児治療の黎明期」と「シャント チューブ開発を振り返って思うこと」をご講演いただき、「胎児治療の最先端」として、フィラデルフ ィアこども病院の Alan W. Flake 先生に「Extracorporeal support of the premature infant – Extending fetal physiology beyond the womb」と題して人工子宮の現在についてご講演いただく予定 です。また、Alan W. Flake 先生からは、シンポジウムにおいても Key Note Lecture として「The cutting edge of fetal therapy: Surgical, Cellular, and Genetic Therapies for the Fetus」のご講演を頂きます。 新しい試みとして学会前日である 11 月 18 日(金)に胎児治療のハンズオンセミナーを開催する予定 です。胎児臍帯輸血や胎児胸腔羊水腔シャントなどの技術の解説とファントムを使った実習を行うこと で参加者が子宮内の胎児侵襲的手技のトレーニングが行える機会としたいと思います。また、モーニン グセミナーおよびランチョンセミナーでは、超音波検査のライブデモも施行予定です。 学会参加者にとって参加して良かったと心から思える学会を開催できるよう、張り切って準備を進め てきました。浜松は地方都市として特に目立った特徴はないのですが、気候は温暖で、うなぎや餃子の 他にも遠州灘の新鮮な魚介類や日本酒なども美味しく頂けます。浜松での胎児治療学会を楽しんでいた だける様に、スタッフ一同出来る限りのおもてなしを心がけています。昼も夜も熱い議論で盛り上がり ましょう! 第 14 回 日本胎児治療学会学術集会 会長 村越 毅 (聖隷浜松病院 産婦人科・総合周産期母子医療センター 部長) 1 第 14 回日本胎児治療学会学術集会 ご案内 『胎児治療の最先端 胎児治療における技術の伝承』 メインテーマ: 期:2016 年 11 月 18 日(金) 、19 日(土) 、20 日(日)※11 月 18 日(金)ハンズオンセミナー(定員制) 会 会 場:聖隷浜松病院 医局管理棟(地下 1 階) 受付:医局管理棟 地下 1 階でご登録の上、参加証を付けてご入場ください。 【受付時間】11 月 19 日(土)8:30~18:00 11 月 20 日(日)7:30~15:00 クローク:医局管理棟 地下 1 階 【開設時間】11 月 19 日(土)8:30~19:00 11 月 20 日(日)7:30~15:30 参加費: 事前参加登録費 当日参加登録費 (2016 年 10 月 31 日まで) 会員 10,000 円 11,000 円 非会員 12,000 円 13,000 円 非医師(看護・助産師など) 5,000 円 医学生・看護学生 無料 抄録集:日本胎児治療学会会員の皆様には事前にお送りしますので、ご持参ください。非会員の方には 会場で販売します(一部 2,000 円)が、数に限りがありますのでご了承ください。 研修会出席証明書:後日の発行はできません。必ず、当日にお申し出ください。 ●学会単位 10 点 ●機構専門医単位 学会参加 ハンズオンセミナー シンポジウム 特別講演Ⅰ モーニングセミナー ワークショップ 3 単位 1 単位 (11 月 18 日) 1 単位 (11 月 19 日) 1 単位 (11 月 19 日) 1 単位 (11 月 20 日) 1 単位 (11 月 20 日) 本学術集会では、 「e 医学会カード」による参加登録も行いますので、日本産科婦人科学会会員の 皆様は「e 医学会カード」を持参してください。参加登録受付時にカードを提示してください。係 の者がカード裏面のバーコードをリーダーで読み取り、参加登録を行います。 カードをお持ちでない方は(カード忘れも含む) 、氏名と所属をお知らせください。 2 ●日本産婦人科医会 研修シール ●日本周産期・新生児医学会 2 単位 幹事会:2016 年 11 月 20 日(日)12:00~12:45 ※場所につきましては、別途ご案内いたします。 総 会:2016 年 11 月 20 日(日)13:00~13:15 講堂(大会議室) 企業展示・ドリンクコーナー:医局管理棟 地下 1 階 講堂(大会議室)横 懇親会: 【日時】2016 年 11 月 19 日(土)19:30~21:30 【場所】はままつ地ビール工房 マイン・シュロス 静岡県浜松市中区中央 3 丁目 8-1 TEL. 053-452-1146 浜松駅北口より徒歩約 7 分 【参加費】無料 お問い合わせ:総合病院 聖隷浜松病院 学術広報室 〒430-8558 静岡県浜松市中区住吉 2-12-12 Tel:053-474-2753 Fax:053-474-8227 e-mail:[email protected] 3 交通のご案内 会 場:聖隷浜松病院 医局管理棟 〒430-8558 静岡県浜松市中区住吉 2-12-12 公共交通機関をご利用のうえご来場、ご参加ください。 病院駐車場は受診者の利用を優先しておりますので、学会参加者による病院駐車場の利用はご遠慮願い ます。また無料駐車券(当日認証済駐車券)の配布・発行は行いません。 ●バスでお越しの方 JR 浜松駅北口 バスターミナル 14 番のりば 〔8〕せいれいまわり 富塚じゅんかん 〔51〕せいれい浜松 泉 高丘 「せいれい病院」バス停で下車(所要時間約 15 分) ●タクシーでお越しの方 運転手に「聖隷浜松病院まで」とお伝えください。 浜松駅からであれば約 15 分です。 聖隷浜松病院より会場までの道順 会場は聖隷浜松病院医局管理棟となります。 聖隷浜松病院より下図の矢印に従ってお越しください(所要時間約 3 分) 医局管理棟に着きましたら、入って正面の受付にお越しください。 4 会場のご案内 地下 1 階 企業展示 ドリンクコーナー 受付・クローク 講堂 (大会議室) PC 受付 入口 ※本建物は聖隷浜松病院の施設で、本学会開催中も業務を行っております。 地下 1 階以外の階への立ち入りはご遠慮ください。 日程表 日程表.xlsx※日程表(18 日)を入れてください 11月18日(金)ハンズオンセミナー 13:00 13:10 13:30 あいさつ IUT/PUBSレクチャー IUT/PUBSデモ 13:40 IUT/PUBS実技(グループごと) 15:00 15:20 TA-shuntレクチャー TA-shuntデモ 15:30 TA-shunt実技(グループごと) 16:50 18:00 質疑応答 懇親会 村越 宮下 中田 中田 岩垣 高橋 石井 中田 岩垣 全員 毅 進 雅彦 雅彦、石井 重紀、芹沢 雄一郎 桂介、笹原 雅彦、石井 重紀、芹沢 桂介、小澤 克典、住江 正大 麻里子、松下 充 淳 桂介、小澤 克典、住江 正大 麻里子、松下 充 5 日程表 11月19日(土) 講堂(大会議室) 日程表.xlsx(19 日・20 日)を入れてください 9:20 開会の挨拶 村越 毅 シンポジウム:胎児治療の新技術 Keynote lecture 9:30-12:30 『The Cutting Edge of Fetal Therapy: Surgical, Cellular, and Genetic Therapies for the Fetus』 Prof. Alan W. Flake(Children’s Hospital of Philadelphia) 休憩 ランチョンセミナー・ライブデモⅠ 胎児治療における超音波診断装置の使い方: 12:45-13:30 特に、侵襲的胎児治療(胎児胸腔羊水腔シャント・臍帯穿刺・羊水注入) でのコツ 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科) 岩垣 重紀(長良医療センター 産科) 休憩 14:00-14:35 SessionⅠ 一般演題:胎児貧血・輸血 座長:室月 淳 14:35-14:56 SessionⅡ 一般演題:心臓 座長:与田 仁志 15:00-15:42 SessionⅢ 一般演題:双胎 座長:市塚 清健 休憩 16:00-16:42 SessionⅣ 一般演題:双胎間輸血症候群1 座長:高橋 雄一郎 座長:左合 治彦 座長:金山 尚裕 座長:馬場 一憲 16:45-17:20 SessionⅤ 一般演題:双胎間輸血症候群2 休憩 特別講演Ⅰ 胎児治療のパイオニア:技術革新と伝承 『胎児治療の黎明期』 17:30-18:30 千葉 喜英(千葉産婦人科 院長) 『シャントチューブ開発を振り返って思うこと』 小林 秀樹(福津中央ウィメンズクリニック 院長) 座長:中田 雅彦 座長:石井 桂介 19:30-21:30 懇親会 11月20日(日) 講堂(大会議室) 7:45-8:45 9:00-9:45 9:50-10:11 モーニングセミナー・ライブデモ ファントムを使用した胎児治療デモ(PUBS/TAS) 宮下 進(獨協医科大学病院 総合周産期母子医療センター産科部門) 石井 桂介(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 特別講演Ⅱ 胎児治療の最先端 『Extracorporeal Support of the Premature Infant - Extending Fetal Physiology Beyound the Womb』 Prof. Alan W. Flake(Children’s Hospital of Philadelphia) 座長:松下 充 座長:北川 博昭 SessionⅥ 一般演題:LUTO 座長:坂井 清英 10:15-10:36 SessionⅦ 一般演題:胸部疾患 座長:米倉 竹夫 休憩 11:00-11:42 SessionⅧ 一般演題:外科疾患・その他 座長:田口 智章 休憩 ランチョンセミナー・ライブデモⅡ 胎児治療における術前・術後超音波診断:何をどう見るのか? 座長:田中 守 中田 雅彦(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) 住江 正大(福岡市立こども病院 周産期センター) 12:00-12:45 幹事会 ※場所につきましては、別途ご案内いたします。 休憩 13:00-13:15 総会 座長:川鰭 市郎 座長:前野 泰樹 13:20-15:00 ワークショップ シャント術の適応と問題点 15:00 6 閉会の挨拶 村越 毅 演者・座長の皆さまへ 座長の皆さまへ 1. 座長はセッション開始 30 分前までに受付を済ませていただき、次座長席でお待ちください。 2. 今回は、プログラムがタイトなため出来るだけ時間厳守でお願いします。セッションの進行は座長 に一任します。 演者の皆さまへ 1. 演者はセッション開始 30 分前までに PC 受付で登録を済ませてください。 2. 発表時間は、一般演題 7 分(発表 3 分+質疑 4 分) 、シンポジウムは 17 分(発表 12 分+質疑 5 分)、 ワークショップは 10 分(発表 5 分+質疑 5 分)です。シンポジウムとワークショップでは総合討論の 時間も設けてあります。一般演題およびワークショップでは出来るだけ多くのディスカッションを行い たいため、発表時間は短くなっています。疾患の一般的な概要などは既知のものとして飛ばしていただ き、直接本題に入ってください。 3. シンポジウムのスライドは英語で作成してください(発表は日本語でもかまいません)。 4. 発表形式: ●PowerPoint による PC プレゼンテーションのみといたします。プロジェクタの解像度は 1280×800 です。4:3 で作成された場合は左右に黒い縦帯が映写されます。 ●当日発表に使用するパソコンは Windows7 です。PowerPoint 2007、2010 に対応いたします。 ●Macintosh ならびに動画がある方は、PC 本体をお持ち込みください。電源ケーブル、ミニ D-sub15 ピン変換コネクタ、バックアップデータも併せてお持ちください。 ●発表時のスライドの送り(戻り)は、演台上のマウスで操作してください。レーザーポインタも演台 上に用意してあります。 5. 質疑応答: ●ご質問される方は予めマイクの前でご用意ください。 ●スムーズなプログラムの進行にご協力のほどお願いいたします。 7 プログラム 11 月 19 日(土) 9:20 開会の挨拶 第 14 回会長 聖隷浜松病院 産婦人科・総合周産期母子医療センター 村越 毅 9:30-12:30 シンポジウム:胎児治療の新技術 座長:左合 治彦(国立成育医療研究センター 副病院長、周産期・母性診療センター長) 金山 尚裕(浜松医科大学 産婦人科) Keynote lecture “The Cutting Edge of Fetal Therapy: Surgical, Cellular, and Genetic Therapies for the Fetus” Prof. Alan W. Flake Children’s Hospital of Philadelphia S-1 1,25(OH)2D3 を用いたラット先天性横隔膜ヘルニアモデルに対する胎児治療の可能性 伊藤 由美子(名古屋大学大学院 医学系研究科 産婦人科学教室) S-2 ヒト羊水幹細胞がマウス皮膚創傷治癒に与える影響 福武 麻里絵(慶應義塾大学医学部 産婦人科) S-3 胎仔脊髄髄膜瘤モデルに対する細胞スフェロイドを用いた再生医療 渡邊 美穂(The Department of Surgery and Children’s Center for Fetal Research, Children’s Hospital of Philadelphia) S-4 胎児内視鏡を用いた二分脊椎症手術の現状と可能性:手術方法から小児期神経予後まで 石井 陽一郎(German Center for Fetal Surgery & Minimally Invasive Therapy, University Hospital Giessen-Marburg 群馬大学医学部附属病院 小児科) S-5 High intensity focused ultrasound (HIFU)における焦点ナビゲーション、高フレームレート 撮像でのキャビテーション可視化および、胎児観察に関する基礎的検討 瀬尾 晃平(昭和大学横浜市北部病院 産婦人科) S-6 胎児発育不全に対するタダラフィル投与の安全性 久保 倫子(三重大学附属病院 産科婦人科) S-7 新規胎児オキシメータを用いた胎児管理 川合 健太(浜松医科大学 産婦人科) 8 12:45-13:30 ランチョンセミナー・ライブデモⅠ 座長:馬場 一憲(埼玉医科大学総合周産期母子医療センター 母体胎児部門) 胎児治療における超音波診断装置の使い方:特に、侵襲的胎児治療(胎児胸腔羊水腔シャント・臍帯穿 刺・羊水注入)でのコツ 高橋 雄一郎、岩垣 重紀(長良医療センター 産科) SessionⅠ 14:00-14:35 一般演題:胎児貧血・輸血 座長:室月 淳(宮城県立こども病院 産科、東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座) 1 出生後にαサラセミアの診断に至った胎児高拍出性心不全を呈した一例 太崎 友紀子(福岡市立こども病院 産科) 2 Rh 不適合に対する胎児輸血後に児由来血球が検出されなくなった1症例 佐藤 由佳(九州大学病院 産科婦人科) 3 妊娠 16 週のパルボウイルス B19 感染胎児に対して胎児輸血を行った一症例 浅井 一彦(長良医療センター 産科) 4 当院における PUBS-IUT 症例の検討 野口 翔平(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) 5 一絨毛膜二羊膜双胎における一児胎児死亡後の胎児輸血症例の予後 神田 昌子(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) SessionⅡ 14:35-14:56 一般演題:心臓 座長:与田 仁志(東邦大学医療センター大森病院 新生児科) 6 興味ある胎児循環症例〜Fetal Critical Aortic Stenosis〜 助川 幸(順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科) 7 診断時には左心低形成症候群への進行の予測が困難であった胎児大動脈弁狭窄の 1 例 加地 剛(徳島大学病院 産婦人科) 8 胎児重症大動脈弁狭窄に対する胎児バルーン大動脈弁形成術の適応・施行時期についての検 討 森根 幹生(四国こどもとおとなの医療センター 産婦人科) SessionⅢ 一般演題:双胎 15:00-15:42 座長:市塚 清健(昭和大学横浜市北部病院 産婦人科) 9 中大脳動脈最高血流速度が異なる推移を示した twin anemia polycythemia sequence の 2 例 住江 正大(福岡市立こども病院 周産期センター) 9 10 当院で扱った Twin reversed arterial perfusion(TRAP) sequence に関する検討 寺田 周平(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) 11 興味ある胎児循環症例~ TTTS Stage I であるが、心筋症を来した TAPS、受血児の一例~ 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科) 12 双胎間輸血症候群の受血児における UV flow volume 低下例の心機能 中村 紀友喜(国立成育医療研究センター 周産期母子医療センター) 13 双胎間輸血症候群の受血児における心室拡張能を表す指標の評価 小澤 克典(国立成育医療研究センター 胎児診療科) 14 TTTS, selective IUGR 症例における Dual gate Doppler 法を用いた E/e'の有用性に関する 検討 鷹野 真由実(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) SessionⅣ 一般演題:双胎間輸血症候群 1 16:00-16:42 座長:高橋 雄一郎(長良医療センター 産科) 15 当院にて開始した胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術 村田 晋(川崎医科大学附属病院 産婦人科) 16 当院で施行した胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の検討 鷹野 真由実(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) 17 双胎間輸血症候群における子宮内一児発育遅延合併の有無による予後への影響 今野 寛子(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) 18 当センターにおいて胎児鏡下レーザー手術を施行した Selective IUGR を伴う一絨毛膜双胎 の周産期予後 石井 桂介(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 19 Amniotic Fluid Discordance adjoining TTTS に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝 固術の臨床試験における児の長期予後 小澤 克典(国立成育医療研究センター 胎児診療科) 20 TTTS を発症した一羊膜双胎に対する FLP の経験 川口 晴菜(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 10 SessionⅤ 一般演題:双胎間輸血症候群 2 16:45-17:20 座長:中田 雅彦(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) 21 双胎間輸血症候群に対するレーザー焼灼術後の一児死亡の発症時期と関連する産科的因子 の検討 山下 亜貴子(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) 22 胎児鏡下レーザー凝固術後の卵膜損傷の頻度および予後との関連 山本 亮(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 23 一児の機能的肺動脈閉鎖指摘後に TTTS へと進行し,レーザー治療後に良好な新生児経過を 得た MD 双胎の一例 梅村 なほみ(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) 24 当院における胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術に対する脊髄くも膜下硬膜外麻酔と硬 膜外麻酔単独の比較 大場 翔太(聖隷浜松病院 麻酔科) 25 双胎間輸血症候群(TTTS)における胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)の術前 術後には正球性正色素貧血になりやすい 森川 守(北海道大学病院 周産母子センター 産科) 特別講演Ⅰ 胎児治療のパイオニア:技術革新と伝承 17:30-18:30 座長:石井 桂介(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 胎児治療の黎明期 千葉 喜英(千葉産婦人科 院長) シャントチューブ開発を振り返って思うこと 小林 秀樹(福津中央ウィメンズクリニック 院長) 懇親会 19:30-21:30 11 11 月 20 日(日) 7:45-8:45 モーニングセミナー・ライブデモ 座長:松下 充(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) ファントムを使用した胎児治療デモ(PUBS/TAS) 宮下 進(獨協医科大学病院 総合周産期母子医療センター産科部門) 石井 桂介(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 特別講演Ⅱ 9:00-9:45 胎児治療の最先端 座長:北川 博昭(聖マリアンナ医科大学 小児外科) “Extracorporeal Support of the Premature Infant - Extending Fetal Physiology Beyound the Womb” Prof. Alan W. Flake Children’s Hospital of Philadelphia SessionⅥ 9:50-10:11 一般演題:LUTO 座長:坂井 清英(宮城県立こども病院 泌尿器科) 26 胎児の腎機能障害が疑われたが膀胱羊水腔シャント術を施行した下部尿路閉塞の 1 例 笹原 淳(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) 27 胎児下部尿路閉塞症に対し胎児治療を施行した 4 例の検討 小島 有喜(国立成育医療研究センター 産科) 28 妊娠第 2 三半期早期までに診断された胎児巨大膀胱症例の転帰 山本 亮(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) SessionⅦ 10:15-10:36 一般演題:胸部疾患 座長:米倉 竹夫(近畿大学医学部奈良病院 小児外科) 29 胎児肺嚢胞性疾患の超音波診断と生後診断の比較と周産期予後 杉林 里佳(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科) 30 出生前診断した先天性右横隔膜ヘルニア症例の臨床的検討 甲斐 翔太朗(九州大学病院 産科婦人科) 31 我が国における先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児鏡下気管閉塞術の早期安全性試験 和田 誠司(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター) 12 SessionⅧ 11:00-11:42 一般演題:外科疾患・その他 座長:田口 智章(九州大学 小児外科) 32 脊髄髄膜瘤と脊髄披裂 神経機能予後に差異はあるのか 渡邊 美穂(Cincinnati children's hospital Medical center, surgery) 33 胎児仙尾部奇形腫に対するラジオ波焼灼術のタイミングの重要性を痛感した一例 岩垣 重紀(長良医療センター 産科) 34 腹壁異常における臨床像の差異はなぜ起きるのか?‐羊胎仔腹壁異常モデルを用いた検討‐ 大林 樹真(聖マリアンナ医科大学 外科学小児外科・病理診断科) 35 胎児診断されたリンパ管奇形 22 例の検討 渡邊 美穂(Cincinnati children's hospital Medical center, surgery) 36 上顎体による上気道閉塞が疑われた骨盤位の胎児に対して子宮体上部切開にて EXIT を施 行した 1 例 設樂 理恵子(東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科) 37 当院における胎児染色体異常症例の転帰について 遠藤 誠之(大阪大学産婦人科 大阪大学医学部附属病院胎児診断治療センター) 12:00-12:45 ランチョンセミナー・ライブデモⅡ 座長:田中 守(慶應義塾大学医学部 産婦人科) 胎児治療における術前・術後超音波診断:何をどう見るのか? 中田 雅彦(東邦大学医療センター大森病院 産婦人科) 住江 正大(福岡市立こども病院 周産期センター) 幹事会 12:00-12:45 総会 13:00-13:15 ワークショップ 13:20-15:00 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭 市郎(松波総合病院 周産期医療対策室長) 前野 泰樹(久留米大学 総合周産母子医療センター) W-1 当科における胎児胸水 92 症例の長期予後も含めた転帰について 松井 雅子(長良医療センター 産科) W-2 当センターにおける先天性胎児胸水に対する胎児胸腔羊水腔シャント術の成績 長谷川 瑛洋(聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科) 13 W-3 胎児胸腔羊水腔シャント術の予後に関連する超音波所見 須山 文緒(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター 胎児診療科) W-4 嚢胞羊水腔シャント術を施行した CPAM macrocystic type 10 例の検討 串本 卓哉(国立成育医療研究センター) W-5 肺分画症に合併した胎児胸水に対する胸腔羊水腔シャント術の施行経験 川口 晴菜(大阪府立母子保健総合医療センター 産科) W-6 胎児水腫を伴う CCAM に対し胸腔羊水腔シャントと母体ステロイド投与による胎児治療 と ECMO 下肺切除を施行した 1 例 高間 勇一(大阪大学 胎児診断治療センター、小児成育外科) W-7 TAS により胎児水腫改善を認めたが乳児期呼吸循環不全を来たし乳児死亡に至った原発 性胎児胸水貯留の 1 例 永井 立平(高知医療センター 産科) W-8 胎児胸腔羊水腔シャント術を施行し胎児水腫は改善したが Mirror 症候群に至った一例 武藤 愛(久留米大学 総合周産期母子医療センター 産科) 15:00 閉会の挨拶 第 14 回会長 聖隷浜松病院 産婦人科・総合周産期母子医療センター 14 村越 毅 特 別 講 演 11 月 19 日(土) 17:30~18:30 特別講演 特別講演Ⅰ 胎児治療のパイオニア:技術革新と伝承 特別講演 座長:石井桂介 胎児治療の黎明期 千葉喜英 千葉産婦人科 院長 竹村 晃という恩師がいた。研究者と言うより思想家といった方が良いかもしれない。若く して夭逝したので、その強烈とも言える個性を知る人も少なくなった。本人は胎児心拍数の 研究で世に認められたにも関わらず、いつまでもお脈拝見ではないだろう、と平気で言った りする。私に超音波の仕事を与えたにも関わらず、いつまで音にしがみつく、と言われた。 光は、インピーダンスは、核磁気共鳴はと世の中で注目を集めそうなものには必ず興味を示 す。パルスオキシメーター、体脂肪計、MRI ができる以前のはなしである。 阪大病院に ICU ができたとき、彼が言った、胎児の血圧は、胎児の中心動脈圧は、胎児血の 酸素濃度は、pH は、胎児の血液のサンプリングはできなくとも、絨毛間腔の採血ぐらいでき るだろう。1978 年第 1 回の産科婦人科 ME 懇話会が行われた年に彼は亡くなった。 Rodeck の 胎児血管内輸血の Lancet への論文は 1981 年だから、竹村 晃は胎児採血の時代は知らない。 この胎児 ICU の思想が、その後の私を胎児治療へと向かわせることになった。胎児血圧は胎 児動脈の血流波形で代用することは後に証明された。胎児の中心静脈圧も胎児の静脈系の血 流波形より推計できる。直接誘導の胎児心電図もモニタが可能、胎児の血液からおよそ全て の検査が可能となった。ヒトの ICU で行われる多くの検査が胎児に対しても可能となり、ヒ トに行うほとんどの治療が、胎児に対しても同じ科学的客観性をもって可能な時代となった。 その少し前に、私は国立循環器病センターへ赴任した。国立施設で初めて周産期科という名 称を使った。実は周産期科立ち上げに際して当時の小児循環器科から NICU の運営を断られ た。仕方がないので、NICU の運営を自分たちで行う事にした。実はこの周産期医療すべての 責任を一極に集中させた事が、その後に展開する実験的胎児治療を行いやすくした。つまり、 その日の小児科の当直医に遠慮は発生しない。この時期国立循環器病センターには倫理委員 会はない。つまり、責任を転嫁させるところは全くなく、全て一つの診療科と医師個人の裁 量と責任で胎児治療を行った。責任の検証は全ての症例の科学的発表である。いまの時代、 当時と同じ環境を作ることは困難であろうが、実験的治療の責任を自らに課すことと、科学 的検証を必ず行うことは可能である。 16 特別講演Ⅰ 胎児治療のパイオニア:技術革新と伝承 特別講演 座長:石井桂介 シャントチューブ開発を振り返って思うこと 小林秀樹 福津中央ウィメンズクリニック 院長 わが国の周産期胎児治療の黎明期、確かに国立循環器病センター周産期治療科はオピニオン リーダーのひとつであったと思う。EBM やガイドライン制度等の、ある意味制約が無い中、 自由なカンファレンスを通じて、また個々の思いつきと言えるひらめきで、仮説を立て、実 証することに心血を注ぎ、喜びを覚えた。私の中の Chiba-era 12 年間の技術革新と伝承と 問われれば、シャントチューブ開発と臨床応用であろう。当時のボスも私も仲間も現在実地 医療を担い、胎児手術から離れているが、当時の時代背景の中から培い得られたこころざし は保たれている。 シャントチューブの臨床導入には超音波断層装置の工夫、穿刺針の工夫など支える基本手技 の充実が基盤となっているので当時の状況を解説する。 また equipment としてのシャントチューブ形状開発経過を振り返り、procedures としての 必要条件、試行錯誤の経過などを改めて明らかにし、何をどう考え、どのように険阻を乗り 越えたか、振り返りたい。 胎児治療に導入できる可能性のある新しい tool が、日々色々な分野で導入されている今、 明日あるいは近い将来に革新的な治療法を開発する皆様の間接的ひらめきの一助になれば幸 甚である。 17 11 月 20 日(日) 9:00~9:45 特別講演 特別講演Ⅱ 胎児治療の最先端 特別講演 座長:北川博昭 Extracorporeal Support of the Premature Infant – Extending Fetal Physiology Beyond the Womb Prof. Alan W. Flake Children’s Hospital of Philadelphia Advanced tertiary neonatal care has improved survival of extremely preterm infants, but there is still a substantial burden of long-term morbidity that stems from multi-organ dysfunction. Survival rates improve with each additional week of gestation; while overall infant survival at 23-24 weeks is ~5-60%, survival at 25-26 weeks increases to ~70-90%. Improved survival rates however have resulted in increased prevalence of major disability among survivors. Around 25% of survivors are diagnosed with a major neurodevelopmental disability, with half of affected infants developing more than one condition. 20-90% of survivors develop chronic lung disease. Infants experience delayed oral feeding due to the risk of necrotizing enterocolitis and difficulties with temperature and metabolic control. The abrupt departure from the environmentally-controlled uterus triggers major physiological changes in these extremely preterm infants. Late preterm infants being more physiologically mature make the ex-utero transition more successfully. The key to improving long-term survival following extremely preterm birth thus lies in the ability to simulate the in-utero environment as closely as possible to facilitate continuing fetal maturation. The artificial womb provides a stable environment with strict oxygen, temperature and nutritional control that aims to facilitate continued physiological development from extreme prematurity until the infant has completed approximately 27-28 weeks of gestation at which the risk of major long-term disability is decreased. Here, we describe the various iterations of this novel technology in our journey to creating the ideal life support for an extremely preterm infant. 18 シンポジウム 11 月 19 日(土) 9:30~12:30 シンポジウム シンポジウム 胎児治療の新技術 Keynote lecture 座長:左合治彦 金山尚裕 The Cutting Edge of Fetal Therapy: Surgical, Cellular, and Genetic Therapies for the Fetus Prof. Alan W. Flake Children’s Hospital of Philadelphia Advances in prenatal diagnosis have led to the prenatal management and treatment of a variety of congenital diseases. Surgical treatment has been successfully applied to specific anatomic defects that place the fetus at risk of death or life-long disability. The indications for fetal surgical intervention are now relatively well defined and evidence based. The purpose of this review is to describe the current status of maternal fetal surgery, with a focus on the congenital anomalies most commonly treated by intervention before birth, and to highlight the key areas for further research in this evolving surgical specialty. In contrast, prenatal stem cell and gene therapy await clinical application, but have tremendous potential to treat a broad range of genetic disorders. If there are biologic advantages unique to fetal development that favor fetal stem cell or gene therapy over postnatal treatment, prenatal therapy may become the preferred approach to the treatment of any disease that can be prenatally diagnosed and cured by stem cell or gene therapy. In this talk, I will review the field including recent progress toward clinical application including impending clinical trials for cellular and gene therapy. 20 シンポジウム 胎児治療の新技術 S-1 座長:左合治彦 金山尚裕 1,25(OH)2D3 を用いたラット先天性横隔膜ヘルニアモデルに対する 胎児治療の可能性 伊藤由美子 名古屋大学大学院 医学系研究科 産婦人科学教室 【共同演者】 津田弘之、三浦麻世、平光志麻、今井健史、中野知子、小谷友美、吉川史隆 【目的】 妊婦のビタミン D(VD)欠乏により、出生児の喘息、呼吸機能低下、新生児呼吸窮迫症候群 (RDS)の発症が増加するとの報告があり、VD は肺発達と成熟を促進する可能性が考えられ る。今回、我々はニトロフェン誘発ラット先天性横隔膜ヘルニアモデルを用いて、母体への VD 投与による胎児治療の可能性につき検討した。 【方法】 妊娠 9 日目の SD ラットを対照群(C 群)、ニトロフェン群(CDH 群)、ニトロフェン+VD 群(VD 群)の3群に分けた。ニトロフェンは 100mg/day を経口投与し、VD はニトロフェン投与後に カルシトリオール 0.03μg/kg/day を浸透圧ポンプに充填して、皮下へ埋め込み持続投与し た。妊娠 21 日目に帝王切開にて各群の胎仔を娩出し、出生5分で全血を採取後、CDH の有無 を確認したのち肺組織を採取した。呼吸機能の評価として出生5分時の血液ガス分析を施行 した。また、肺組織は HE 染色および EVG 染色を行って肺胞構造・肺血管壁肥厚を評価し、免 疫組織染色にて肺成熟および血管リモデリングを評価した。 【結果】 CDH 群と VD 群で胎仔の肺重量体重比に変化は見られなかったが、血液ガス分析では、CDH 群 に比して VD 群で pH, pCO2, pO2 の有意な改善を認めた。また、組織学的評価において、肺胞 化の指標である Radial saccular count および肺動脈リモデリングの指標である medial wall thickness の有意な改善を VD 群で認めた。肺動脈における免疫染色では、CDH 群に比して VD 群で VEGF および ET-1 の発現が低下し、血管リモデリングの改善が示唆された。 【結論】 今回のモデルにおいて、母体への VD 投与が胎仔の呼吸機能および肺胞構造・肺動脈中膜肥厚 を改善し、胎仔肺低形成を改善した。CDH における肺低形成ならびに肺高血圧に対し VD が有 効な胎児治療となる可能性が示唆された。 21 11 月 19 日(土) 9:30~12:30 シンポジウム シンポジウム S-2 胎児治療の新技術 座長:左合治彦 金山尚裕 ヒト羊水幹細胞がマウス皮膚創傷治癒に与える影響 福武麻里絵 慶應義塾大学医学部 産婦人科 【共同演者】 落合大吾,升田博隆,大谷利光,秋葉洋平,池ノ上学,春日義史,松本直,宮越敬,田中守 【目的】妊娠 24 週以前の胎児皮膚は瘢痕を形成せず速やかに完全再生する。その機序は胎児 皮膚など内的因子と羊水など外的因子に大別されるが、外的因子の寄与に関しては不明であ る。我々はヒト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell: hAFS)が瘢痕化のない皮膚 創傷治癒を促すとの仮説に基づき、hAFS がマウス皮膚創傷治癒に与える影響を検討した。 【方法】倫理委員会承認および患者同意のもと、当院で羊水検査目的に採取した妊娠 15〜17 週のヒト羊水の一部より hAFS を分離・培養した。(1) BALB/c マウスに皮膚全層欠損創を 2 箇所作成し、一方は治療群、他方を対照群とした。治療群では hAFS(1x106 個)の PBS 懸濁液 を、対照群では PBS を創部周囲に局所注射した。(2)肉眼的創部面積、および各種染色法(HE 染色、Masson’s trichrome 染色、Elastica-van-Gieson 染色、Picrosirius Red 染色)を用 いた組織学的評価により、再上皮化、肉芽形成、コラーゲン組成を両群間で比較検討した。 【結果】(1)hAFS は処置後 4〜14 日目の間、肉眼的創閉鎖を促進したが、処置後 21 日目には 両群とも完全に創閉鎖した。(2) hAFS は処置後 14 日目の再上皮化を促進した。処置後 7 日 目および 14 日目において、肉芽形成に有意差は認められなかった。また,処置後 21 日目の 再生皮膚では、両群のコラーゲン組成は異なっていた。 【まとめ】hAFS はマウス皮膚創傷治癒を促進した。hAFS 投与により再生した皮膚は、コラー ゲンⅠ型/Ⅲ型比が低下する胎児再生皮膚の特徴に類似していた。hAFS は瘢痕化のない皮膚 創傷治癒を促す可能性が示唆された。 シンポジウム 胎児治療の新技術 S-3 座長:左合治彦 金山尚裕 胎仔脊髄髄膜瘤モデルに対する細胞スフェロイドを用いた再生医療 渡邊美穂 The Department of Surgery and Children’s Center for Fetal Research, Children’s Hospital of Philadelphia 【共同演者】 中山功一 2) Alan W Flake1) 1) The Department of Surgery and Children’s Center for Fetal Research, Children’s Hospital of Philadelphia 2)佐賀大学 医学部 臓器再生医工学 【目的】脊髄髄膜瘤は神経管閉鎖不全による先天性疾患であり、一生にわたり患部レベル以 下の両下肢の運動障害、感覚障害、膀胱直腸機能障害を呈する。羊水による神経損傷が非可 逆的に進行する以前の妊娠中期に行われる開腹髄膜瘤閉鎖手術により運動機能の改善と脳室 ―腹腔内シャント必要率の低下が示された。現在は更なる神経予後の改善を目指して、胎児 早期に施行可能な低侵襲な治療法の確立が期待されている。 【方法】EZ SPHERE culture dish を用いて細胞スフェロイドを作成した。初めにレチノイン 酸誘導ラット胎仔脊髄髄膜瘤モデルを用いて、In vitro でラット間葉系幹細胞スフェロイド ブロックを作成し脊髄髄膜瘤部分に貼布したグループと、細胞スフェロイドを脊髄髄膜瘤部 分に直接注入したグループを作成し、胎仔の評価を行った。その後、手術的に作成した羊胎 仔脊髄髄膜瘤モデルを用いて、羊線維芽細胞スフェロイドを脊髄髄膜瘤部分に注入し長期間 観察を行った。 【結果】ラットモデル、羊モデルともに、細胞スフェロイドは低酸素低栄養の羊水環境内に おいても、生存可能で、一塊になった組織として認められた。スフェロイドブロック、注入 した細胞スフェロイドどちらも、胎児組織と癒合していた。スフェロイド周囲には新生血管 再生を伴う表皮細胞の進展を認め、脊髄髄膜瘤はほぼ新生組織で覆われていた。コントロー ルに比べ残存脊髄の損傷の改善を認めた。 【考察】胎児脊髄髄膜瘤の露出脊髄上に細胞スフェロイドを用いて組織再生を誘導すること が出来、残存脊髄を温存できる可能性を示した。スキャフォルドを用いず細胞のみで再生誘 導する方法は新規であり、自己細胞を用いれば組織拒絶もなく、超音波下もしくは胎児鏡下 に注入すれば低侵襲であり、今後大きく発展する有用な方法と考えられる。 23 11 月 19 日(土) 9:30~12:30 シンポジウム シンポジウム 胎児治療の新技術 S-4 座長:左合治彦 金山尚裕 胎児内視鏡を用いた二分脊椎症手術の現状と可能性:手術方法から 小児期神経予後まで 石井陽一郎 German Center for Fetal Surgery & Minimally Invasive Therapy, University Hospital Giessen-Marburg 群馬大学医学部附属病院 小児科 【共同演者】 トーマス・コール 【はじめに】二分脊椎症は最も発生頻度の高い神経管障害であり、開放性二分脊椎症(spina bifida aperta: SBA)は非致死的疾患であるが、障害部位による運動、神経発達障害、膀胱直 腸障害、脳幹ヘルニアに関連する水頭症により長期にわたる医療介入を要する。2011 年に報 告された Management Of Myelomeningocele Study(MOMS trial)により、胎児期に診断・治 療介入を行うことにより、出生後修復と比べて予後を改善することが示された。本邦におい ては SBA 胎児期手術の臨床症例はないが、世界的には修復手術報告が相次いでいる。 【目 的】German Center for Fetal Surgery & Minimally Invasive Therapy (DZFT)におけ る出生前診断を受けた SBA に対する内視鏡的胎児 SBA 閉鎖手術(fetoscopic SBA repair: FSBAR)について詳細を報告する。 【方 法】2010 年 7 月から 2015 年 12 月の間に 110 例が FSBAR を受けた。SBA 症例に対する 周術期管理方法、手術手技、出生後結果について検討した。 【結 果】110 例中に術後母体死亡、重症母体肺浮腫、術中胎児死亡症例は認めなかった。 母体入院期間は中央値 6 日で、術後陣発 2 例(1.8%)、胎盤早期剥離、母体輸血症例をそれぞ れ 1 例(0.9%)に認めた。術後 2 週間以内の絨毛羊膜炎を 4 例(3.6%)、胎児死亡を 1 例認めた。 出生新生児 109 例のうち 92 例(85%)は、在胎 30 週以降の分娩であった。破水による羊水流出 は 97 例(88%)で起き、週数は平均 29.0 週であった。分娩週数は 33.0 週で、出生後の新生児 死亡を 6 例(5.5%)に認めた。 25/109 例(22%)で出生後の外科的介入を必要としたが、直近 60 例ではわずか 5 例(8.3%)と著 名な改善を認めている。出生後 1 年以内の脳室腹腔シャントを必要とした症例は 45%で、神 経学的予後評価として出生後 2.5 年時の下肢機能は、24/28 例(86%)で解剖学的欠損レベルか ら予想されるものより良好であった。 【結 語】当院における SBA に対する FSBAR は周術期母体安全性、小児長期予後双方につい て有効である。出生後の外科的介入に関しては、管理方法についての教育が必要で今後はさ らなる減少が予想される。内視鏡的修復手技に関しては症例を集めラーニングカーブを経験 する必要があり、日本での施行に適すると考えられる。 24 シンポジウム 胎児治療の新技術 S-5 座長:左合治彦 金山尚裕 High intensity focused ultrasound (HIFU)における 焦点ナビゲーション、高フレームレート撮像でのキャビテーション可視化および、 胎児観察に関する基礎的検討 瀬尾晃平 昭和大学横浜市北部病院 産婦人科 【目的】HIFU での胎児治療を行う際、生体内の各種構造物により HIFU が屈折し得るという 影響や、胎動に伴うターゲットのずれ、及び皮膚表面の熱傷などが問題となる。熱傷発生の 1 つの要因として皮膚表面でのキャビテーションの発生が考えられる。安全にかつ高精度治 療を行うことを目的として焦点を可視化する技術、皮膚表面に発生するキャビテーションを 可視化する基礎的検討を行った。 【方法】HIFU トランスデューサーを用い、照射対象としてトリ胸肉を使用した。照射条件は 定常波、Sequential 照射とした。1.焦点ナビゲーション。脱気水中に対象とトランスデュー サーを固定し照射を行った。0.2msec の短時間 HIFU 照射を行い、焦点位置の予測ナビゲーシ ョンを行った。複数の照射角度で照射しそれぞれ得られた画像と、切り出し標本の比較を行 った。2.キャビテーションの可視化。臨床照射と同等の条件にすべく、水で満たしたエコー カバー内にトリ胸肉を封入し脱気水槽の中にトランスデューサーとともに固定し HIFU 照射 を行った。照射中のトリ胸肉表面の変化を Verasonics を用いて観察した。高輝度像が描出さ れた時点で HIFU 照射を中止および数秒照射継続した。3.高フレームレート撮像での胎児観 察。キャビテーションを可視化可能な Verasonics での高フレームレート撮像での胎児の観察 を行った。 【成績】1.焦点ナビゲーション。HIFU を短時間照射することで、焦点が超音波で高輝度像と して描出可能であり焦点予測のナビゲーションとして有用であることが確認できた。得られ た焦点の超音波画像と、照射後切り出した組織の焼灼された形態はほぼ一致していた。対象 に対して HIFU の入射角が大きくなるに従い焦点のずれが大きかった。2.キャビテーションの 可視化。Verasonics を用いること対象表面上の高輝度像としてキャビテーションが可視化可 能であった。表面に高輝度像が出現した時点で HIFU 照射を中止したところ対象表面上に変 性は確認されなかった。一方、数秒継続したものでは表面に変性を認めた。3.高フレームレ ート撮像での胎児観察。B モード、カラードプラ共に、胎児体内の構造物の把握や、血流の 位置などを把握するには十分な精度の超音波画像を得ることが出来た。 【結論】短時間照射で照射部位を大きな損傷なく超音波画像で可視化可能であることから焦 点を予測できることが可能になった。キャビテーションが起き始めてから数秒で熱変性を認 めたことからキャビテーション発生直後に HIFU 照射を中止することで熱傷を防ぐことが可 能と思われた。高フレームレート撮像モードでも、B モード、カラードプラ共に、胎児体内 の構造物の把握や、血流の位置などを把握するには十分な精度の超音波画像を得ることが出 来た。 これらより、位置決め、実照射、合併症の予防に関して、これまで以上の安全性に寄与でき ることが示唆された。 25 11 月 19 日(土) 9:30~12:30 シンポジウム シンポジウム 胎児治療の新技術 S-6 座長:左合治彦 金山尚裕 胎児発育不全に対するタダラフィル投与の安全性 久保倫子 三重大学附属病院 産科婦人科 【共同演者】 田中博明、二井理文、田中佳世、村林奈緒、梅川孝、大里和広、神元有紀、池田智明 【目的】 胎児発育不全(FGR)は、胎外治療以外に有効な治療法は確立されていない。現在、ホスホジ エステラーゼ 5 阻害薬;タダラフィルを使用した FGR に対する胎内治療の第Ⅰ相試験 験を行っており、安全性について報告する。 【方法】 対象は、胎児体重基準値の-1.5SD 以下の FGR、妊娠 22 週以降 34 週未満、単胎とした。FGR 診断後より 3 例コホート法で、タダラフィルの経口投与を開始した(投与量;10、20、40mg/ 日)。タダラフィルは、分娩または 37 週まで継続した。安全性は、有害事象についてタダラ フィルとの関連性を評価し、最大耐容量を決定した。効果については、投与前 2 週間(投与 前)と投与開始から 2 週間(投与後)の推定体重の増加について比較した。本研究は、三重 大学倫理委員会の承認を得ている。 【結果】 登録は 14 例で、開始週数は中央値 30 週(24 週-33 週)、推定体重標準偏差は、中央値-2.0 SD(-1.6SD- -2.5SD)であった。有害事象は、母体は主に頭痛、潮紅で、タダラフィルと関連 していたが軽症と判断された。児は、新生児一過性多呼吸、呼吸窮迫症候群などがみられた が、タダラフィルとの関連性はないと判断された。子宮内胎児死亡が 1 例あったが、臍帯因 子と判断され、タダラフィルとの因果関係は否定された。推定体重の増加については、投与 前:8.5±5.0g/day、投与後:19.5±4.0g であった(P=0.011)。 【結論】 FGR に対するタダラフィル投与は、母体、胎児について安全性が確認された。いずれの用量 においてもタダラフィルに関連する重篤な有害事象はなく、最大耐容量は 40mg/日とした。 また、胎児発育についても投与後の有意な増加が示された。第Ⅰ相試験終了後、第Ⅱ/Ⅲ相 試験(ランダム化比較試験)を行う予定である。 26 シンポジウム 胎児治療の新技術 S-7 座長:左合治彦 金山尚裕 新規胎児オキシメーターによる胎児管理 川合健太 浜松医科大学 産婦人科 【共同演者】 内田季之、向麻利、金山尚裕 【目的】 指接着型胎児オキシメーターを用いて内診時に胎児脳組織酸素飽和度(tSO2)を測定し、臍帯 動脈血 pH と相関することを報告した。分娩 II 期に測定し臍帯動脈血 pH 低値症例を異常と定 義、tSO2 のカットオフ値を設定し、胎児心拍数モニタリング(CTG)を補完できるかを検討し た。 【方法】 倫理委員会に胎児オキシメーターを分娩時使用する臨床研究は承認された。2014 年 4 月から 2016 年 2 月までに同意の得られた妊娠 36 週以降、頭位経腟分娩を試みる妊婦を対象とした。 分娩 II 期に CTG と同時に tSO2 を複数回数測定した。分娩後の臍帯動脈血の血液ガス分析を 行い、pH7.15 未満を異常と定義した。正常症例、異常症例の平均 tSO2 値を求めた。カット オフ値は Receiver Operating Characteristic (ROC)曲線から Youden Indeex により算出し た。pH 値より CTG 偽陽性率を求め、CTG 異常(レベル 3–5)でも胎児オキシメーターが正常 であれば胎児評価は陽性としないとどれだけ偽陽性率を下げるかを検討した。 【成績】 測定可能症例は 91 例で臍帯動脈血 pH 異常は 9 例、正常は 82 例であった。正常例の平均 tSO2 は 54.6%、異常例の平均 tSO2 は 37.0%であった(p<0.05)。ROC 曲線で AUC は 0.828 (95% 信頼区間 0.676-0.980, p=0.001)、tSO2 のカットオフ値は 42.0%であった。CTG 陽性は 43 例あり(異常症例は 6 例)偽陽性率は 86.0%であった。tSO2 正常症例を除くと偽陽性率は 50%まで低下した(p=0.0497)。CTG 正常症例(48 例)中 3 例に異常症例があり 3 例とも平均 tSO2 は 42%未満であった。 【結論】 胎児オキシメーターは CTG の偽陽性、偽陰性を減少させることが示唆され CTG と併用するこ とでより優れた分娩管理が期待できる。 27 ワークショップ 11 月 20 日(日) 13:20~15:00 ワークショップ ワークショップ W-1 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 当科における胎児胸水 92 症例の長期予後も含めた転帰について 松井雅子 国立病院機構 長良医療センター 産科 【共同演者】 高橋雄一郎、岩垣重紀、千秋里香、浅井一彦、森崇宏、古井裕子 【目的】 胸腔-羊水腔シャント術(TAS)施行症例を含めて当科で管理した胎児胸水症例の概要と転帰に ついて報告する。 【方法】 2005 年 4 月から 2015 年 11 月までに当科で管理した症例の中で胎児胸水を認めた症例を対象 とし、それぞれの症例に関する情報を診療録より後方視的に収集した。また、生存出生した 症例に関して児の長期予後について調査した。 【結果】 胎児胸水を認めた症例は 92 例で、その内、子宮内胎児死亡が 7 例、妊娠を中断した症例が 16 例であった。分娩となり診断がついた胎児胸水の原因としては乳び胸水 47 例、一過性骨 髄異常増殖症(TAM)3 例(いずれも 21 トリソミー)、肺分画症 1 例、縦隔腫瘍 1 例、心疾患 2 例であった。染色体異常は 21 トリソミーが 7 例(10%)であった。43 例に胸腔穿刺を施行 しその内 TAS を施行した症例は 36 例であった。生存出生の分娩週数の中央値は妊娠 34 週 1 日で、早期新生児死亡となった症例は 18 例であった。生存出生した症例および TAS を施行し た症例における生後 28 日での生存率はそれぞれ 70%(47/67)、72%(26/36)であった。長 期予後としては胎児胸水を認めた症例の内、1 年以上生存した症例は 36 例(55%)であった。 TAS を施行した症例で 1 年以上生存した症例は 22 例(61%)であり、脳性麻痺が 1 例、6 例が 運動発達または精神発達に遅延を認めリハビリを行っていた。また在宅酸素療法が 1 例で施 行されていた。 【結論】 当科での TAS 施行症例の生存率はこれまでの報告と同様の結果であった。染色体異常や合併 奇形のない症例の多くは重篤な発達遅延や呼吸器合併症を呈することなく比較的良好な予後 を呈している。 30 ワークショップ W-2 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 当センターにおける先天性胎児胸水に対する胎児胸腔羊水腔シャント術の成績 長谷川瑛洋 聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科 【共同演者】 松下充、野口翔平、今野寛子、伊藤崇博、山下亜貴子、神農隆、松本美奈子、鈴木貴士 村越毅 【目的】 胎児胸水は胸腔内に胸水が貯留することで胎児の肺低形成を引き起こす原因となる。胎児胸 水に対しては胎児胸腔羊水腔シャント造設術(thoraco-amniotic shunting:TAS)が施行さ れ、新生児予後を改善するという報告がされてきた。当センターにおいて TAS を施行した胎 児胸水症例の周産期予後、合併症について後方視的に検討した。 【方法】 2006~2015 年の 10 年間に当院で胎児胸水穿刺をした 29 例のうち胸水の再貯留を認め TAS を 要した 18 例を対象とした。これらに対し周産期予後、合併症について検討した。 【結果】 胎児胸水症に対して胎児胸腔羊水腔シャント術を施行した症例は 18 例であった。両側胸水は 15 例、片側胸水は 3 例であった。胎児水腫を伴った症例は 16 例であった。TAS 施行週数は 20 週 1 日から 34 週 1 日、シャント回数は平均 1.5 回であった。前壁胎盤は 3 例に認めた。 子宮内胎児死亡例は 2 例(11.1%)であった。新生児予後は日齢 28 日以上生存例が 12 例 (66.7%)、死亡退院例が 4 例(22.2%)であった。また染色体検査で 21 トリソミーを 3 例(16.7%) に認めた。TAS による合併症は前期破水を 4 例、34 週までの早産を 5 例、シャント胸腔内脱 落を 2 例、母体迷入を 1 例、羊水腔内脱落を 2 例に認めた。 【結語】 当院における再貯留をきたす胎児胸水に対する胎児胸腔羊水腔シャント造設術は先行研究と 同等程度であり、有効と考えられた。周術期母児合併症が発生しており症例の選択と TAS 施 行については慎重に行う必要がある。 31 11 月 20 日(日) 13:20~15:00 ワークショップ ワークショップ W-3 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 胎児胸腔羊水腔シャント術の予後に関連する超音波所見 須山文緖 国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター 胎児診療科 【共同演者】 小澤克典、杉林里佳、和田誠司、左合治彦 【目的】 胎児胸腔羊水腔シャント術 (以下 TAS) は、胎児の心臓や肺を圧迫している大量の胸水を取 り除くことで、胎児胎盤循環の改善と肺低形成の予防を目的とした胎児治療法である。TAS が奏功しない症例も少なからずあるが、予後の推測は難しい。当院で TAS を行った症例にお いて、術前後の超音波所見と児の予後との関係を検討した。 【方法】 対象は 2004 年 8 月から 2016 年 3 月に当院で TAS を行った原発性胎児胸水 48 例。新生児生存 を生存群、新生児死亡および子宮内胎児死亡を死亡群に分類し、術前と術後 1 日目の超音波 所見を後方視的に二群間で比較した。 【結果】 新生児生存は 24 例 (50.0%)、子宮内胎児死亡は 13 例 (27.1%)、新生児死亡は 11 例 (22.9%) であった。TAS 前の所見は、胎児水腫は生存群で 19/24 (79.2%)、死亡群で 23/24 (95.8%)で あった (p=0.08)。両側胸水は生存群で 18/24 (75.0%)、死亡群で 23/24 (95.8%)と死亡群に 多くみられた (p=0.04)。TAS 前の肺胸郭面積比 (LT ratio) は生存群で中央値 0.193 (0.07 ~0.29)、死亡群で 0.190 (0.11~0.28) と差を認めなかったが (p=0.78) 、術後 1 日目の LT ratio は生存群で 0.275 (0.15~0.46)、死亡群で 0.208 (0.14~0.32) と生存群で有意に高 かった (p=0.02)。 術前に胎児水腫があった 41 例を対象とすると、生存例は L/T ratio 0.2 未満で 2/11 (18.1%)、 0.2-0.3 で 9/20 (45%)、0.3 以上で 8/10 (80%) と、術後 1 日目の LT ratio が高いほど生存 例の割合が高かった (p for trend=0.013)。 【結論】 TAS を施行した胎児胸水において、術後 1 日目の LT ratio は予後と相関しており、予後予測 の指標として有用である可能性が示唆された。 32 ワークショップ W-4 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 嚢胞羊水腔シャント術を施行した CPAM macrocystic type 10 例の検討 串本卓哉 国立成育医療研究センター 【共同演者】 福谷梨穂、赤石理奈、杉林里佳、小澤克典、和田誠司、左合治彦 【目的】 congenital pulmonary airway malformation(CPAM)は気管支の増殖を伴う多嚢胞性肺腫瘤 が特徴的な非常に稀な疾患である。CPAM は胎児水腫を伴うと予後が極めて不良である。CPAM volume ratio(CVR)が 1.6 以上の胎児は約 75%で胎児水腫に至るため、CPAM macrocystic type のうち胎児水腫を伴うもの、もしくは CVR >1.6 で急速な増大傾向を認めるものを嚢胞羊水腔 シャント術の適応としている。CPAM に対し嚢胞羊水腔シャント術を行った後の肺の超音波所 見と予後について検討を行った。 【方法】2002 年 3 月から 2016 年 7 月までの期間に当センターで嚢胞羊水腔シャント術を施 行し分娩した 10 例を対象とした。シャント施行時及び分娩前の CPAM volume ratio(CVR)及 び contralateral lung to thorax transverse area ratio (L/T 比)と児の予後を診療録より 後方視的に検討した。 【結果】 初診時週数は 20.9 週(20.4-25.3)であり、初診時の CVR は 2.60 (1.44-3.58)、L/T 比は 0.108(0.086-0.123)であった[値を median (interquartile range)で示す)。シャント術は 25.4 週 (23.2-28.4)に施行し、シャント施行時の CVR は 2.67 (2.07-4.24)、L/T 比は 0.081(0.064-0.118)であった。全例帝王切開術を行い分娩週数は 37.1 週 (36.0-38.6)で分娩 前の CVR は 1.72 (0.50-3.00)、L/T 比は 0.113(0.108-0.157)であった。胎児水腫はシャント 時には 5 例に、分娩時には 3 例に認めた。児は全例で出生後早期に呼吸状態増悪のため肺葉 切除術が施行され、術後病理診断では CPAM typeⅠであった。10 例中 8 例が生存退院し、早 産 と な っ た 2 例 が死 亡 し た 。シ ャ ン ト施 行 時 の L/T 比 及び CVR は 各 々 、 死 亡 例 で 0.077(0.062-0.093) 及 び 4.48 (4.24-4.71) 、 生 存 例 で は 0.067(0.042-0.081) 及 び 2.46 (2.07-2.86)であり、分娩前の L/T 比及び CVR は、死亡例で 0.130(0.108-0.152)及び 3.09 (3.00-3.17)、生存例では 0.107(0.095-0.113)及び 0.83 (0.40-2.38)と CVR はいずれも死亡 例で大きい傾向にあった。分娩前の CVR が 2.5 未満の 7 例は全例生存し、2.5 以上の 3 例の うち 2 例が死亡した。 【結論】 CVR は CPAM において嚢胞羊水腔シャント術を施行した後も予後と関連することが示唆され た。 33 11 月 20 日(日) 13:20~15:00 ワークショップ ワークショップ W-5 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 肺分画症に合併した胎児胸水に対する胸腔羊水腔シャント術の施行経験 川口晴菜 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 【共同演者】 石井桂介 1)、金井麻子 1)、笹原淳 1)、金川武司 1)、光田信明 1)、塚田遼 2)、臼井規朗 2) 1)大阪府立母子保健総合医療センター 産科 2)大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科 【緒言】 肺分画症による胸水、胎児水腫に対し胸腔羊水腔シャント術(TAS)を施行し有効であったと思 われる症例を経験したので経過を報告する。 【症例】 36 歳の経産婦で、自然妊娠成立後他院で管理されていた。妊娠 24 週の超音波検査にて胎児 胸水を指摘され、妊娠 26 週に紹介となった。胎児の左胸腔内に下行大動脈からの栄養動脈の ある腫瘤 4.4×3.7×3.0 ㎝(CVR=0.94)を認め、左側胸水にて心臓は右方に偏位し、両側肺は 圧排され、腹水と皮下浮腫を認めた。左肺葉外肺分画症(BPS)に関連する胎児水腫を疑い、胎 児左胸腔穿刺を施行し、胸水を 88ml 除去した。胸水は淡黄色透明で、細胞数 38/μl(単核球 32)、糖 99mg/dl、アルブミン 0.6g/dl であり漏出性胸水と判断した。穿刺後 1 週間で再貯留 を認め、TAS を施行した。カテーテルが児の胸腔内に脱落したため、2 本目を挿入した。術後 1日より胸腹水の減少および皮下浮腫の軽減を確認し、術後6日には、胸腹水と皮下浮腫は 消失した。以後、胸水や皮下浮腫の出現は認めず、CVR は 0.6~0.9 で推移した。妊娠 38 週 に自然経腟分娩となった(3038g の男児、Apgar スコア 8/9、臍帯動脈血の PH7.337, BE-2.8)。 カテーテルは児の左前胸部にあり、出生後抜去した。造影 CT にて、左横隔膜上に 4×3×3 ㎝の腫瘍性病変と下行大動脈から流入する 2 本の動脈を認め、左肺葉外肺分画症と診断した。 しかし、腫瘍からの静脈は確認できなかった。2 生日より胸水の再貯留を認め、3 生日胸腔ド レナージを施行し、約 30ml/日の漏出性胸水を認めた。9 生日に、胸腔鏡下左分画肺切除術お よびカテーテル摘出術を施行した。術後には胸水は減少し経過良好である。 【結語】 TAS にて速やかに胸水および胎児水腫の改善を認めた。分画肺からの還流静脈を認めず、静 脈還流障害による漏出性胸水の可能性が考えられた。 34 ワークショップ W-6 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 胎児水腫を伴う CCAM に対し胸腔羊水腔シャントと母体ステロイド投与による 胎児治療と ECMO 下肺切除を施行した 1 例 高間勇一 大阪大学 胎児診断治療センター 小児成育外科 【共同演者】 田附裕子 1)2)、遠藤誠之 1)3)4)、荒堀仁美 1)4)、野口侑記 1)2)、中畠賢吾 1)2)、山中宏晃 1)2) 上野豪久 1)2)、和田和子 1)4)、奥山宏臣 1)2) 1)大阪大学 胎児診断治療センター 2)大阪大学 小児成育外科 3)大阪大学 産婦人科 4)大阪大学 総合周産期母子医療センター 妊娠早期の胎児水腫を伴った CCAM の予後は不良とされており,胸腔羊水腔シャント,母体ス テロイド治療の胎児治療が考慮される.自然経過や胎児治療により改善する例が多い中,妊 娠後期に再増悪を認め,出生後に ECMO を含めた集学的治療を要した症例を経験したので報告 する. 【症例】 在胎 19 週時に左胸腔内に病変を指摘され,在胎 23 週 1 日に紹介受診.胎児左 CCAM を認めた. 病変は 5×4×7cm で,内部に 3cm 大の嚢胞を認め,CVR=3.74 の macrocystic CCAM と診断し た.胎児水腫も認めた.嚢胞穿刺を施行し内容を除去し嚢胞腔は縮小した.再貯留を認めた ため 23 週 4 日に胸腔羊水腔シャントを留置し嚢胞腔はほぼ消失したが,CVR=2.27 と依然重 症であり,microcystic な病変が残存し影響していると考え,在胎 23 週 5 日から母体ステロ イド投与を 2 日間施行した.その後,CVR=1.5 程度まで改善し経過したが,在胎 36 週頃より CVR=2.5 程度へ再増悪したため,再度の母体ステロイド治療を施行した後,在胎 38 週 0 日, 出生体重 2824g で予定帝王切開により出生した.出生後,胸腔ドレン留置し HFO,NO 吸入下 に呼吸管理を行った.高炭酸ガス血症と血圧低下が改善せず,日齢 1 に ECMO 導入した.日齢 2 に ECMO 下に左 CCAM の部分切除を施行し,呼吸状態と縦隔偏位が改善したので,日齢 4 に ECMO 離脱した.その後,日齢 14 に病変の全切除のため左肺下葉切除を施行し,日齢 29 に抜 管した.日齢 58 に退院し,現在大きな後遺症認めず経過している. 【まとめ】 自験例では,macrocystic 病変に対し胸腔羊水腔シャント,microcystic 病変に対し母体ステ ロイド投与の胎児治療を施行し,出生後は ECMO 下に肺切除を施行した.胎児期から周産期に かけての集学的治療により重症の CCAM を救命し得た. 35 11 月 20 日(日) 13:20~15:00 ワークショップ ワークショップ W-7 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 TAS により胎児水腫改善を認めたが乳児期呼吸循環不全を来たし乳児死亡に 至った原発性胎児胸水貯留の 1 例 永井立平 高知医療センター 産科 【背景】 原発性胎児胸水は約 10000 分娩に 1 例と比較的稀な疾患である。胎児水腫を伴った児の予後 は不良とされているが近年では胎児胸腔羊水腔シャント術(TAS)が施行され児の予後を改善 することが確認されている。一方で TAS では予後改善を認めない報告も散見される。TAS 施 行後胎児期の状態は改善し生児を得たが出生後呼吸循環不全を来たし乳児死亡した症例を経 験したので報告する。 【症例】 35 歳初産婦。妊娠 32 週の胎児超音波検査で胎児両側胸水貯留と胎児皮下浮腫を指摘され原 因精査目的に当院へ紹介となった。胎児超音波検査で胎児両側胸水、高度皮下浮腫を認めた が心収縮能は保たれており原発性胎児胸水貯留を疑い胎児胸水穿刺吸引を施行、感染症や染 色体異常は否定され乳糜胸水を確認したため診断確定とした。胸水穿刺吸引を 2 回施行し皮 下浮腫軽減したが胸水再貯留を認めたため TAS の適応と考え 32 週 3 日に右胸腔へ TAS を施行 した。その後皮下浮腫はほぼ消失し右胸水は減少したが、対側の左胸水も減少した。胎児胸 水量は変化せず推移したが羊水過多を来たしたため胎児循環の羊水腔への流出による胎児循 環虚脱に注意して経過観察を行った。妊娠 35 週 1 日に繰り返す遅発一過性徐脈を認めたため 母体外での治療方針とし児娩出とした。胎児呼吸、循環は保たれていたが胸水ドレナージや 内科的治療では胸水量のコントロールが困難だった。また生後 2 ヶ月頃より胸椎の湾曲変形 と X 線での骨菲薄化を認め骨融解・吸収が疑われた。緊張性気胸を繰り返し皮下浮腫増強を 認め呼吸循環維持困難となり日齢 121 日に永眠された。 【考察】骨融解と胸椎変形、リンパ系の異常から Gorham 病が疑われた。TAS は有効な治療方 法だが、本症例のように根治困難な基礎疾患を合併した場合 TAS だけでは対応出来ない可能 性を認識して治療方法を選択する必要がある。 36 ワークショップ W-8 シャント術の適応と問題点 座長:川鰭市郎 前野泰樹 胎児胸腔羊水腔シャント術を施行し胎児水腫は改善したが Mirror 症候群に 至った一例 武藤 愛 久留米大学 総合周産期母子医療センター 産科 【共同演者】 堀之内崇士、久保沙代、深川知明、宋邦夫、宮原通夫、井上茂、品川貴章、上妻友隆 吉里俊幸、堀大蔵、牛嶋公生 Mirror 症候群は胎児水腫に伴い母体に全身浮腫、貧血、低蛋白血症を来し、重症例では母 体死亡に至る病態である。今回我々は、胎児水腫の症例で胎児胸腔羊水腔シャント術を行い 胎児水腫は改善したが、Mirror 症候群のため早産となった一例を経験したため報告する。 症例は、28 歳 0 経妊 0 経産。妊娠 30 週 1 日に前医で胎児皮下浮腫を指摘され、精査目的 に妊娠 30 週 5 日に当科に紹介となった。胎児超音波断層法では、皮下浮腫と両側胸水を認め た。母体は血圧:128/80mmHg、尿蛋白:陰性、下肢浮腫を認め、4 日間で 2kg 体重が増加し ていた。妊娠 31 週 1 日に胎児胸水穿刺を施行したが、胸水は再貯留し、皮下浮腫の改善もな かった。胸水性状はリンパ球が主体であった。妊娠 31 週 5 日に胎児両側胸腔羊水腔シャント 術を施行した。左側シャントチューブは胸腔内に脱落してしまったが、胎児の皮下浮腫は徐々 に改善し、妊娠 32 週 0 日には消失した。しかし、妊娠 32 週 1 日に母体の胸水貯留および心 嚢液貯留による呼吸困難感が増悪し、貧血および低蛋白血症を認めた。以上より Mirror 症候 群と診断し、同日緊急帝王切開術を施行した。母体の術後経過は良好で、胸水や心嚢液も減 少し、術後 9 日目に退院となった。児は 1661g の男児、アプガースコア 5 点/7 点、臍帯動脈 血 pH7.370、B.E. -1.2 であった。両側胸腔ドレーンを留置し、ステロイドやオクトレオチド による薬物治療が行われたが効果を認めず、ミノサイクリンによる胸膜癒着術を行い、胸水 は減少し 74 生日に退院となった。 胎児治療により胎児水腫の改善がみられた症例では、Mirror 症候群も改善するとの報告も あるが、今回の症例では母体状態の悪化を認めた。胎児水腫では、母体の Mirror 症候群の発 症に留意すべきと考えられた。 37 一 般 演 題 11 月 19 日(土) 14:00~14:35 一般演題 Session Ⅰ(胎児貧血・輸血) 淳 1 2 出生後にαサラセミアの診断に至った胎児高拍出 性心不全を呈した一例 Rh 不適合に対する胎児輸血後に児由来血球が 検出されなくなった1症例 太崎友紀子 佐藤由佳 福岡市立こども病院 産科 【共同演者】 道脇理恵 1)、北代祐三 1)、住江正大 1)、中並尚幸 1) 月森清巳 1)、漢伸彦 2) 1) 福岡市立こども病院 産科 2) 福岡市立こども病院 新生児科 αサラセミアは胎児期に重症貧血から胎児水腫 を呈し、児の予後は非常に不良である。 26 歳未経妊未経産、本人・夫ともに在日ベトナ ム人であり、既往歴・家族歴に特記事項はなし。自 然妊娠が成立し、妊娠 32 週 1 日の妊婦健診で胎児 心拡大・心形態異常を指摘され、当科を初診した。 心形態異常はなかったが、総心横径 43.5mm、心胸 郭断面積比 53.2%と著明な心拡大を認めた。また、 心拍出量が増加しており、上大静脈の拡張、右房・ 右室優位の心拡大であったため、上半身の動静脈シ ャ ン ト を 疑 っ た 。 TEI index や Fractional Shortening は正常範囲内で経過したが、心拍出量 の増加とともに心拡大の増悪を認めた。臍帯動脈、 中大脳動脈、静脈管の血流波形は異常なく、中大脳 動脈最高血流速度は 0.7~1.4MoM で推移した。腔水 症や皮下浮腫はなかった。胎動減少、NST で基線細 変動の減少・一過性頻脈の消失を認め、胎児機能不 全の診断で妊娠 34 週 1 日に帝王切開術を施行した。 児は 1997g の男児で Apgar スコアは 4 点/7 点(1/5 分値)であった。 心拡大を来すような動静脈シャントは超音波断 層法・造影 CT 検査で検出されなかった。しかし、 出生直後より肝脾腫を認め、血液検査で溶血性の小 球性貧血、目視で標的赤血球を認めたことから、サ ラセミアが強く疑われた。その後の遺伝子検査にお いて、児には正常のα1・α2 グロビン遺伝子は存 在せず SEA 型のα0 サラセミア遺伝子が検出され、 Bart disease と診断された。定期的な輸血と鉄キ レート療法を継続し、1 歳頃に骨髄移植を行う予定 である。 サラセミアは日本では非常に稀な疾患ではあるが、 近年の国際化により、東南アジアなどからの人口移 入が増加しており、その人々には高頻度でサラセミ アを認める。高拍出性心不全を呈する胎児の鑑別疾 患としてサラセミアを念頭に置くことが望ましい と考えられた。 40 座長: 室月 九州大学病院 産科婦人科 【共同演者】 日高庸博 1)、田中幸一 2)、落合正行 2)、青木香苗 3) 山口恭子 3)、藤田恭之 1)、加藤聖子 1) 1) 九州大学病院 産科婦人科 2) 九州大学病院 新生児科 3) 九州大学病院 検査部 胎児輸血後に特異な新生児期経過をたどった 症例を報告する。36 歳の 1 回経産婦。前回妊娠 時に Rh(-)、抗 D 抗体既感作を指摘され、児は新 生児黄疸に対し加療を要した。胎児貧血のハイリ スクとして胎児中大脳動脈最高速度(MCA-PSV)の 測定を行った。妊娠 31 週時に MCA-PSV が 1.6MoM を超えたため臍帯穿刺(PUBS)を行ったところ、 Hb6.7g/dl の貧血を認め、児血液型は AB 型 Rh(+) であった。胎児輸血(IUT)後の目標 Ht40%として 輸血量 100ml と算出し、O 型 Rh(-)赤血球製剤を 用いて IUT を行った後、Hb10.6g/dl、Ht30.6%を 確認した。その後も慎重に管理し、妊娠 33 週時 に MCA-PSV1.6MoM と 再 上 昇 を 認 め 、 PUBS で Hb5.6g/dl と胎児貧血を認めた。同じ輸血製剤を 用いて IUT130ml を行い、Hb10.6g/dl、Ht30.8% を確認した。その後、MAC-PSV の上昇無く経過し、 胎児貧血のリスク回避のため妊娠 36 週 5 日に誘 発分娩を行った。出生児の血液検査で Hb7.8g/dl の軽度貧血を認めた。また、血液型検査で児由来 血球が検出されず、輸血赤血球 O 型 Rh(-)のみが 検出され、抗 D 抗体価 1024 倍と高値であった。 日齢 0 に免疫グロブリンを投与し、日齢 1 に A 型 Rh(-)の赤血球製剤を用いた輸血を行った。そ の後、T-bil2.8~8.6mg/dl、LDH250~350U/L と溶 血所見は乏しいものの緩徐に貧血が進行し、児血 球が検出されないままに経過した。日齢 28 に Hb7.0g/dl に対し同製剤で輸血を行い、日齢 83 で初めて児由来血球が検出された。その後、児由 来血球割合が次第に増加し、抗 D 抗体の陰性化を 確認できた日齢 146 には児の血球は約 85%まで 回復した。本症例において新生児から児由来の血 球がなかなか検出されなかった理由の1つとし て、高力価の抗 D 抗体の移行による溶血の遷延が 挙げられるが、溶血マーカーからみる同所見は決 して強くはなく、赤血球の産生自体が抑制された 可能性がある。胎児輸血後に出生する児では黄疸 が軽度でも貧血の進行に留意が必要である。 Session Ⅰ(胎児貧血・輸血) 座長: 室月 3 4 妊娠 16 週のパルボウイルス B19 感染胎児に対して 胎児輸血を行った一症例 当院における PUBS-IUT 症例の検討 浅井一彦 野口翔平 長良医療センター 産科 【共同演者】 高橋雄一郎、岩垣重紀、千秋里香、松井雅子 森崇宏、古井祐子 【諸言】 パルボウイルス B19(以下 PB19)は胎児赤芽球系 前駆細胞の細胞死を誘導し,胎児貧血から非免疫性 胎児水腫,胎児死亡の原因となるとされている.今 回,15 週で胎児水腫を発症し,妊娠 16 週および 19 週に胎児輸血を行い得た症例を経験したので報告 する. 【症例】 38 歳,1 回経産婦.凍結胚移植で妊娠成立した. 妊娠 10 週, 第 1 子が伝染性紅斑に罹患し,母体 PB19 抗体を検索すると IgM,IgG ともに高値だった.13 週 6 日当科初診,MCA-PSV 28cm/s.妊娠 15 週 6 日 の妊婦健診で腹水を認め,16 週 0 日に入院管理と した.MCA-PSV 52 cm/s,CTAR 32 %,汎収縮期の三 尖弁逆流も認めた.臍帯は胎盤の中央に付着してお り、付着部の静脈系はおよそ 2.6 mm だった.25G 子宮穿刺針を用いて経皮的臍帯血採取を行い,臍帯 血 Hb 2.3 g/dl だったため,O 型 Rh(D)陰性の血液 5.5ml を輸血した.翌日には MCA-PSV は 30 cm/s ま で低下し,腹水も減少した. 外来管理としたが,19 週 5 日の健診で MCA-PSV 49cm/s (2.0MoM)と高値となり,腹水も再び貯留し た.胎児貧血が再燃したと判断し,19 週 6 日に再 穿刺し 19ml 輸血した.このときの輸血前の臍帯血 は Hb 4.1g/dl,輸血後には臍帯血 Hb 12.3 g/dl ま で改善した.翌日には MCA-PSV 27cm/s (1.1MoM)ま で低下した. その後は外来管理としている.MCA-PSV は 21 週 に 39cm/s (1.4 MoM)だったが,これ以上の加速は なく,22 週には腹水の消失を確認した.軽度の三 尖弁逆流はあるものの,皮下浮腫および腔水症は認 めていない.その他の心負荷所見も認めない.本抄 録提出時点で妊娠継続中である. 【考察】 妊娠中期に 2 回の胎児輸血を行い,胎児貧血を改 善したことにより,胎児循環動態の安定化を得て妊 娠を継続した.また,本邦では妊娠 16 週で胎児輸 血を行った報告はなく,胎児輸血の成績を検討する 上で,本症例は大変貴重な一例である. 淳 聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科 【共同演者】 松下充、長谷川瑛洋、寺田周平、田中萌 今野寛子、山下亜貴子、松本美奈子、神農隆 鈴木貴士、村越毅 【背景】胎児貧血に対し、経皮的臍帯血採取 (PUBS)と子宮内輸血(IUT)での診断及び治療の有 効性が報告されている。投与する輸血量は Kauffman の式を参考に決定し、予測 Ht 上昇値を 算出するが、実際の Ht 上昇値と比較した報告は 多くない。今回当院で PUBS-IUT を行った症例に おいて、予測 Ht 上昇に対する実際の Ht 上昇度を 検討した。また、病態別に PUBS-IUT の実施につ いて異なる点があるかを検討した。 【方法】2008 年 1 月~2016 年 6 月の間、当院で の PUBS-IUT 施行症例における、母体背景・適応 病態・実施週数・実施回数・輸血量・予測 Ht 上 昇・実際の Ht 上昇・輸血前後の PCA-PSV(MoM)・ 有害事象・治療転帰を検討した。目標輸血量は、 Kauffman の式を参考にした。 【結果】対象期間で胎児貧血診断目的に PUBS を 施行した例は 10 例、内 IUT を施行したのは 8 例 であった。病態内訳は、胎児鏡下胎盤吻合血管レ ーザー凝固術術後での 1 児貧血 3 例、双胎間輸血 症候群 StageⅤでの生存児貧血 3 例、パルボウイ ルス B19 感染での胎児貧血 2 例であった。IUT 実 施週数 23 週(19-28)(中央値;範囲,以下同様)、実 施回数 1 回(1-5)、輸血量 31ml(5.5-41)、実際の Ht 上昇 18.8%(3.4-34.6)、実際ΔHt/予想ΔHt 0.99(0.75-2.49)、ΔMSA-PSV -0.43(-1.22-+0.7) であった。有害事象は認めなかった。治療後に IUFD を呈した例は無かった。IUT 施行回数は FLP 後胎児貧血症例と TTTS StageⅤ生存児貧血症例 では全例 1 回、パルボウイルス B19 感染での胎児 貧血症例は 2,5 回であった。パルボウイルスの 胎児水腫症例では、実際の Ht 上昇と予測値に解 離があった。 【結論】Kauffman の式での予測 Ht 上昇値と実際 の Ht 上昇はほとんど一致していた。1 絨毛膜症 例では、1 回の IUT 実施で改善を得たが、パルボ ウイルスによる胎児貧血では、複数回の IUT を要 した。胎児水腫により正確な体重が推定出来ない 病態では予想 Ht と実際の Ht にずれが出る可能性 が示唆された。 41 11 月 19 日(土) 14:00~14:35 一般演題 Session Ⅰ(胎児貧血・輸血) 5 一絨毛膜二羊膜双胎における一児胎児死亡後の胎 児輸血症例の予後 神田昌子 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 【共同演者】 石井桂介、中野嵩大、武藤はる香、太田志代 川口晴菜、山本亮、笹原淳、林周作、光田信明 【目的】一絨毛膜二羊膜(MD)双胎の一児胎児死亡症 例に対する子宮内胎児輸血(IUT)後の周産期予後を 明らかにする。 【方法】2010 年 4 月から 2016 年 6 月の期間に、一 児胎児死亡と判断した MD 双胎のうち、生存児に対 して IUT を施行した症例を対象とした後方視的検 討である。胎児死亡より 24 時間以内の症例に限り、 生存児の MCAPSV が 1.5MoM 以上となった症例で、臍 帯穿刺によって胎児貧血を確認された場合に IUT を施行した。施行に際して患者の同意を得た。母児 の診療録より周産期情報と児の神経学的異常(IVH、 PVL、CP、MR、てんかん、視力・聴力障害)の有無に 関する情報を収集した。 【結果】対象 9 例の背景疾患は Selective IUGR 4 例、TAFD2 例(胎児疾患 1 例含む)、TTTS3 例で、 診断時期は妊娠 18-25 週であった。MCAPSV 上昇の 確認から IUT までは中央値 3(1-7)時間で、輸血前 の 臍 帯 血 で は Hb6.8(4.3-10.8)g/dl 、 Hct21.8(14.0-34.8)%であった。いずれも IUT が可 能であり、輸血量は RCC19(10-30)ml であった。術 中術後の母体の重篤な合併症は無かった。自然流産 と人工流産が各 1 例で、早産は 5 例であった。妊娠 24 週の早産例(832g 出生)は修正 2 歳時点で CP、 MR、 てんかん、視力障害を認めた。妊娠 27 週早産例 (792g 出生)は修正 1 歳、妊娠 28 週の早産例(914g 出生)は修正 2 歳、妊娠 30 週の早産例(1550g 出生) は修正 2 歳、妊娠 34 週早産例(2640g 出生)は修正 1 歳で、それぞれ神経学的異常は無かった。2 例は正 期産に至ったが、それぞれ生後 1 ヶ月、2 歳 6 か月 時点で神経学的異常は無かった。 【結論】MD 双胎一児死亡後の IUT は 9 例において 施行できた。生産 7 例のうち 6 例は短期中期予後良 好であり、IUT は一定の効果があるかもしれない。 42 座長: 室月 淳 11 月 19 日(土) 14:35~14:56 一般演題 Session Ⅱ(心臓) 座長: 与田仁志 6 7 興味ある胎児循環症例 〜Fetal Critical Aortic Stenosis〜 診断時には左心低形成症候群への進行の 予測が困難であった胎児大動脈弁狭窄の 1 例 助川 加地 幸 順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科 剛 徳島大学病院 産婦人科 【共同演者】 山本祐華、熊谷麻子、北村絵里、村田佳菜子 村瀬佳子、矢田昌太郎、田中里美、田中利隆 三橋直樹 【共同演者】 早渕康信 2)、七條あつ子 1)、米谷直人 1) 遠藤聡子 3)、苛原稔 1) 【諸言】 胎児の重症大動脈弁狭窄症 (CAS)は、本 邦でも胎児治療が検討されている重症な先天性心 疾患である。胎児期の適切な管理により、2心室修 復が確立できる症例もあり、その際左心機能が重要 と考えられている。今回妊娠中期に CAS に伴う胎児 水腫の診断となったものの、経過中に大動脈弁狭窄 が軽快し、胎児水腫が改善した症例を経験したため 報告する。 【症例】 30 歳、2 経妊 1 経産タイミング療法で妊 娠成立し、妊娠 28 週に胎児スクリーニングにて羊 水過多、胎児腹水および心奇形が疑われ当院に紹介 となった。大動脈弁径 1.9mm (z-score= -6.8)、僧 房弁逆流(MR)158cm/s であり、著明な左房拡大を 認めた。また両側胸水および腹水貯留を認め、CAS に伴う胎児水腫の診断となった。臍帯動脈 RI 0.67, 中大脳動脈 RI 0.71, 静脈管 PI 0.77 であったが、 徐々に静脈管の拡張期逆流を認めるようになった。 妊娠 30 週に羊水過多に伴う切迫早産の診断で入院 し、子宮収縮抑制剤の投与と羊水除去を施行した。 妊娠 32 週に大動脈の順行性血流を認め(大動脈弁 径 1.8mm、MR 130cm/s) 、 左房の縮小と肺静脈血流 の改善とともに、胎児水腫が軽快した。現在妊娠 33 週であり、34 週以降で新生児手術が可能な病院 へ搬送し分娩予定である。 【考察】CAS が子宮内で自然軽快することは極めて 稀であるが、大動脈弁狭窄の軽減に伴う胎児血流の 変化や胎児水腫の軽快は胎児循環を理解する上で 興味深い変化である。Ebstein 奇形の拡張した右房 が循環不全を引き起こすように、拡張した左房の圧 迫により循環不全を引き起こし、胎児水腫に至るこ ともある。ただ心機能が維持できている場合では胎 児水腫は可逆性であり、CAS に対する胎児治療は胎 児水腫を軽快させる可能性があると言える。 胎内で大動脈弁狭窄(AS)が左心低形成症候 群(HLHS)に進行する例が存在することはよく 知られている。海外では HLHS への進行が予測 される症例には胎児治療が行われることがあ り、本邦でも検討されている。現在 HLHS 進行 への予測には大動脈弓血流、僧帽弁血流、卵円 孔血流といった超音波による血流評価が有効 とされている。今回妊娠 19 週の AS 診断時には これら血流所見がすべて正常であったにもか かわらず、急激に critical AS に進行し、その 後 HLHS に至った症例を経験した。 【症例】26 歳 G0P0 妊娠 19 週に胎児大動脈弁 輪部が狭いことを指摘され紹介となった。大動 脈弁輪径は 1.4mm と狭く、大動脈弁通過血流速 度は 1.7m/S と加速しており、AS と診断した。 この時点では左室の大きさ・機能はほぼ正常内 であった。また大動脈弓血流は順行性のみ、僧 帽弁血流は 2 峰性、卵円孔血流は右左と血流所 見は正常であった。その後約 2 週間毎に超音波 検査を行った。23 週に大動脈弓血流が両方向 性となり、25 週には心内膜弾性繊維症を伴っ た critical AS に進行した。この時点で大動脈 弓血流は逆行性となり、卵円孔血流は左右、僧 帽弁血流は 1 峰性を呈した。その後、徐々に左 室は低形成となり、出生後 HLHS と診断され Norwood 手術が行われた。 【考察】血流評価を用いても AS 診断時には HLHS 進行への予測はできなかった。一方、2 週間毎に超音波を行うことで AS の進行過程を 追うことができた。AS に際しては慎重な家族 への説明のもと、大動脈弓血流等に注意しなが ら密に経過を追うことが重要であると考えら れた。 1)徳島大学病院 産婦人科 3)遠藤産婦人科 2)徳島大学病院 小児科 43 11 月 19 日(土) 14:35~14:56 一般演題 Session Ⅱ(心臓) 8 胎児重症大動脈弁狭窄に対する胎児バルーン 大動脈弁形成術の適応・施行時期についての検討 森根幹生 四国こどもとおとなの医療センター 産婦人科 【共同演者】 中奥大地、近藤朱音、檜尾健二、前田和寿 【緒言】重症大動脈弁狭窄症(cAS)は左室流出路の 高度狭窄による後負荷不適合から心筋障害を来し、 胎児期に左心低形成へ進行する可能性のある疾患 である。近年、胎児バルーン大動脈弁形成術により、 出生後に二心室修復が可能な症例が存在すると報 告されているが、侵襲性や技術的問題もあり、未だ 本邦では行われていない。今回、心房間狭小(RFO) を伴う cAS と胎児診断した症例に対し、経時的な形 態・機能評価を行い、胎児治療の適応、時期につい て考察したので報告する。 【症例】31 歳の経産婦で、妊娠 27 週時に胎児心構 築異常が疑われ、紹介となる。胎児超音波検査では、 大動脈弁の開放は不良で、高度に狭窄しており (2.9mm)、大動脈弁上に順行性血流を認めるも、大 動脈弓から上行大動脈まで逆行性であった。卵円孔 は狭く(1.5mm)、左右短絡のジェット状血流を認め、 RFO を伴う cAS と診断した。僧房弁流入波形は二峰 性であるも、左室の壁運動は低下(FS 3.7%)してお り、高度な僧房弁逆流(Vmax 3.3m/s)、左房の拡張、 肺静脈の両方向性血流を認めた。以後、右心機能・ 発育は保たれていたが、左室の長軸・短軸径・僧房 弁輪径 Z-score の低下を認めた。生後早期の治療の ため、妊娠 37 週に予定帝王切開術にて娩出し、RFO に対し、直ちにバルーン心房中隔裂開術(BAS)を施 行した。日齢 2 に経皮的バルーン大動脈弁形成術 (BAV)施行するも、効果不十分のため、一心室修復 とする方針である。 【結語】本症例は出生後 BAV による左室流出路狭窄 解除を行ったにもかかわらず、左心機能の改善を認 めず、既に不可逆的な心筋障害が生じていたと考え る。また、胎内での左室発育も不良あったことから、 左心低形成へ進行していたと推測される。出生後の 二心室循環の獲得のためには、早期の診断、形態・ 機能評価を行い、胎児期での AS 解除を行う必要が あると考える。 44 座長: 与田仁志 11 月 19 日(土) 15:00~15:42 一般演題 Session Ⅲ(双胎) 座長: 市塚清健 9 10 中大脳動脈最高血流速度が異なる推移を示した twin anemia polycythemia sequence の 2 例 当院で扱った Twin reversed arterial perfusion(TRAP) sequence に関する検討 住江正大 寺田周平 福岡市立こども病院 周産期センター 【共同演者】 道脇理恵、北代祐三、太崎友紀子、中並尚幸 月森清巳 【はじめに】 Twin anemia polycythemia sequence (TAPS)は出 生前には中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)を用 いて一児が 1.5multiple of median(MoM)より大き く、かつもう一児が 1.0MoM 未満の場合に診断され る。自然発生例もあるが、双胎間輸血症候群(TTTS) の胎児治療後に発症することも多い。今回 TTTS の 治療後に発症した TAPS で MCA-PSV が異なる推移を 示した 2 症例を経験したので報告する。 【症例経過】 症例 1 は妊娠 19 週 2 日に TTTS stageⅢのため内 視鏡的胎盤吻合血管レーザー焼灼術(FLP)を施行 した。 術後 14 日目に両児の MCA-PSV 値が 1.66/0.76 MoM と乖離を認めるようになり、TAPS と診断して以 後フォローした。その後も一児は 1.5MoM 以上、も う一児は 1.0MoM 未満で経過した。妊娠 30 週で分娩 となり、両児の出生時ヘモグロビン値は 3.7/24.9g/dl と stageⅤの TAPS であった。 症例 2 は妊娠 18 週 2 日に TTTS stageⅢにて FLP を 施行し、 術後 6 日目に 両児の MCA-PSV 値が 1.85/0.95 MoM と乖離を認めて TAPS と診断した。 しかし、術後 8 週間目に Donor の MCA-PSV は 1.5MoM を下回り、最終的には 1.0MoM 前後であった。 Recipient は 0.6〜0.9MoM で推移した。TAPS の自然 軽快と考えていたが、出生時のヘモグロビン値は 11.0/23.9g/dl であり、結果的には stageⅡの TAPS であった。 【結語】 一旦 TAPS の診断基準を満たした場合にはその後 MCA-PSV 値のフォロー中で改善したように思えて も、実際にはヘモグロビン値に差がある場合がある ため注意が必要である。 聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科 【共同演者】 松下充、田中萌、野口翔平、長谷川瑛洋 今野寛子、山下亜貴子、神農隆、松本美奈子 鈴木貴士、村越毅 【緒言】twin reversed arterial perfusion(TRAP) sequence は、健常児(pump 児)から、心構造を 持たないもしくは痕跡的な心臓しか持たない無 心体への、AA 吻合を通じた逆行性血流を認める ものをいう。一絨毛膜双胎の 1%に発症し、pump 児は心不全、羊水過多、早産に至り、50-75%に周 産期死亡をきたす予後不良な疾患である。その一 方で、TRAP sequence の一部の症例では自然血流 遮断となりその後の妊娠経過が良好な群が存在 することが知られている。 【目的】TRAP sequence と診断された症例のうち、 自然血流遮断に至った群と自然血流遮断しなか った群で、その背景および予後を比較する。 方法 2000 年から 2015 年までに当院で無心体双 胎と診断した 28 例を対象とし、診療録を後方視 的に検討した。 【結果】TRAP sequence 28 例のうち、自然血流 遮断が 8 例(自然遮断群)あり、自然血流遮断週 数(中央値)は 16.5 週(11.0-20.0 週)だった。 自然血流遮断しなかった 20 例(非自然遮断群) のうち 15 例に対してラジオ波焼灼術(RFA)を施 行した。自然遮断群と非自然遮断群において、一 絨毛 膜一羊膜( MM )双胎の割 合( 50% vs 5%, p=0.007)、TRAP sequence 診断確定週数(12.0 週(10.5-15.3) vs 17.5 週(12.5-21.8), p=0.03)、 および分娩週数(38.5 週(32.5-39.0) vs 33 週 (27.5-36.0), p=0.04)に有意差を認めた。一方 で、生存率(6/8(75%) vs17/20(85%), p=0.54) 、 お よ び 児 の 出 生 体 (2374g(1626-2844) vs 2047g(1007-2465), p=0.23)に有意差を認めなか った。また、自然血流遮断後に子宮内胎児死亡と なった 2 例はいずれも MM 双胎で、臍帯相互巻絡 を認めた。 【考察】MM 双胎症例、および妊娠のより早い時 期で診断された TRAP sequence 症例において自 然血流遮断となりやすい可能性が示唆された。し かし、MM 双胎では自然血流遮断後も臍帯相互巻 絡による胎児死亡のリスクが依然としてあるた め、臍帯切断などの胎児治療も検討が必要と考え られた。 45 11 月 19 日(土) 15:00~15:42 一般演題 Session Ⅲ(双胎) 座長: 市塚清健 11 12 興味ある胎児循環症例 ~TTTS Stage I であるが、 心筋症を来した TAPS、受血児 の一例~ 双胎間輸血症候群の受血児における UV flow volume 低下例の心機能 高橋雄一郎 中村紀友喜 長良医療センター 産科 国立成育医療研究センター 周産期母子医療センター 【共同演者】 岩垣重紀、千秋里香、浅井一彦、松井雅子、森崇宏 古井裕子 【緒言】TTTS は循環血液量のバランスの破綻によ り、受血児 R では容量負荷から内分泌負荷をきたす ことが推測されており、FLP はこれを断ち切ること ができる。今回我々は R の心筋症を呈した TAPS,多 血から TTTS を発症した例での循環評価での興味深 い変動を捉えたので報告する。 【症例】症例は 26 歳の 1 経産婦で、自然妊娠の MD 双胎。既往歴、家族歴などに特記すべき点はな い。当院にて初期より管理を開始。妊娠 22 週頃よ り羊水の不均衡を認め、R が多血、D が貧血傾向に ある TAPS の発症が示唆され、入院管理を行った。 妊娠 24 週に徐々に R の心筋負荷が増大、Tei index(TI)の異常高値をきたした。(lt 0.64→0.85 , rt 0.78→1.00) B-mode 上も心筋の動きの異常を認 めた。MCA-PSV 上は 0.5Mom と多血を呈し、UVFV は R/D 101 /105 ml/min/kg で両児とも正常であった。 MVP14/1.8cm で TTTS と な っ た た め stage I + cardiomyopathy の診断に妊娠 24 週 4 日 FLP 施行。 前壁胎盤で約 12 本の AV 吻合を凝固し完遂した。皮 膚の色調からは R は多血、D は貧血を確認した。そ の後 D1 には両児生存、R の心筋負荷、特に心筋の 動きも改善、TI も劇的に改善を認めた。TAPS は手 術時の自然輸血の形が働き、自然に軽快していっ た。現在、妊娠 30 週であるが、両児とも経過良好 で妊娠継続している。 【考察】 R では多血による hyperviscpsity の影 響下に容量負荷が加わったと推定される病態で心 筋の動きが悪化した状態を同定し得た。単なるドッ プラーの指標のみではこの重症度を判定し得なか ったため、予期せぬ胎内死亡をきたした可能性があ ると同時に、FLP の有効性も確認された。心機能、 心筋症から見たダウンベクトルは既存の stage に 併記すべき異常所見の可能性がある。 46 【目的】UV flow volume ( UVFV ) は、胎児循 環血漿量を反映する指標として報告されてい る。双胎間輸血症候群 ( TTTS ) の受血児は 循環血漿量が増加するため、通常 UVFV は上昇 するが、症例によっては UVFV が低下している。 今回、UVFV の低下している受血児の心機能の 特徴について検討を行った。 【方法】2014 年 6 月から 2016 年 7 月までに妊 娠 16 週~27 週に当院で UVFV を計測した TTTS の受血児 97 例を対象とした。三胎は除外した。 FLP 施行前の受血児の UVFV が 100 ml/min/kg 以上と 100 ml/min/kg 未満の二群において、 Myocardial performance index ( MPI ) 、CHOP score を比較した。また、UVFV と MPI、CHOP score の相関分析をおこなった。 【結果】TTTS97 例で計測を行い、その内訳は Quintero の stageⅠが 25 例、 stageⅡが 13 例、 stageⅢが 48 例、stageⅣが 11 例であった。評 価時の妊娠週数の中央値は 20 週 6 日 ( 16 週 6 日~27 週 4 日 )であった。 UVFV が 100 ml/min/kg 以上の 69 例と 100 ml/min/kg 未満の 28 例の比較では、右室 MPI は そ れ ぞ れ 0.68 ± 0.19 vs. 1.04 ± 0.59 ( p<0.01 ) 、左室 MPI は 0.58±0.11 vs. 0.64 ±0.14 ( p=0.04 ) 、 CHOP score は 4.2±2.7 vs. 6.5±4.1 ( p<0.01 ) と両者で有意差を認め た。pearson の相関係数は、UVFV と右室の MPI に 0.31 の負の相関 ( p<0.01 ) を、左室 MPI と 0.21 の負の相関 ( p=0.03 ) を、CHOP score と 0.21 の負の相関 ( p=0.04 ) をそれぞれ認 めた。 【結論】TTTS 受血児において UVFV の低い症例 は、MPI、CHOP score が高値であった。TTTS 受血児の心機能が UVFV に反映されていること が示唆された。 Session Ⅲ(双胎) 座長: 市塚清健 13 14 双胎間輸血症候群の受血児における心室拡張能を 表す指標の評価 TTTS, selective IUGR 症例における Dual gate Doppler 法を用いた E/e'の有用性に関する検討 小澤克典 鷹野真由実 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 国立成育医療研究センター 胎児診療科 【共同演者】 【共同演者】 杉林里佳、和田誠司、左合治彦 【目的】双胎間輸血症候群(TTTS)の受血児は心機 能が低下するが、特に心室拡張能が早期に低下する と考えられている。等容拡張時間(IRT)や心室流 入時間は心室拡張能を表す指標であるが、TTTS の 受血児の心機能評価における有用性は定まってい ない。本研究では、現在 TTTS の受血児の評価に用 いられている静脈管(DV)の血流異常や CHOP score と、心室拡張能を表す指標との関係を検討した。 【方法】2014 年 9 月~2016 年 7 月に当センターで FLP を実施した TTTS のうち、FLP 直前に pulse Doppler による等容拡張時間/駆出時間(IRT/ET) 、 心室流入時間(%)を計測した受血児 53 症例を対 象とし、左心室(LV)と右心室(RV)を各々評価し た。各項目において DV 逆流の有無によって分けた 2 群の比較をおこない、また、連続変数である DV の PI 値、および CHOP score との相関解析をおこな った。統計解析は t 検定、および pearson の相関解 析(IBM® SPSS® Statistics Ver.22)を用いた。 【結果】DV 逆流は 16/53 例(30.1%)にみられた。 DV 正常群と DV 逆流群で IRT/ET は LV 0.30±0.06 vs. 0.32±0.07 (p=0.27)、RV 0.36±0.09 vs. 0.42 ±0.12 (p=0.10)と有意差を認めなかったが、心室 流 入 時 間 ( % ) は LV 34.3 ± 3.7 vs. 31.3 ±3.6 (p=0.01)、RV 32.2±4.4 vs. 25.9±6.2 (p<0.01) と有意差を認めた。 DV の PI 値と IRT/ET の相関係数は LV 0.26 (p=0.06) 、RV 0.24 (p=0.12)と相関を認めなかっ たが、DV の PI 値と心室流入時間(%)の相関係数 は LV 0.35 (p=0.01)、RV 0.65 (p<0.01)と有意な 負の相関を認めた。CHOP score と IRT/ET の相関係 数は LV 0.15 (p=0.27)、RV 0.20 (p=0.19)と相関 を認めなかったが、CHOP score と心室流入時間(%) の相関係数は LV 0.51 (p<0.01)、RV 0.71 (p<0.01) と有意な負の相関を認めた。 【結論】DV 血流や CHOP score の悪化に伴って心室 流入時間が短縮した。心室流入時間は TTTS の受血 児の病態の悪化を反映する可能性がある。 中田雅彦 1)、梅村なほみ 1)、長崎澄人 1)、上山怜 1) 大路斐子 1)、前村俊満 1)、片桐由起子 1)、与田仁志 2) 森田峰人 1) 1) 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 2) 東邦大学医療センター大森病院 新生児科 【目的】 超音波断層法を用いた胎児期の心機能評価とし て E/e'の報告が散見されるが同一の心周期で評 価したものは存在しない。今回、2 ヶ所の ROI の ド プ ラ 波 形 が 同 時 に 観 察 可 能 な Dual gate Doppler(DD)法を用いて、新たに同一の心周期 で胎児の E/e'を測定し、胎児鏡下胎盤吻合血管 レーザー凝固術(レーザー手術)を施行した TTTS および selective IUGR(sIUGR)症例において心 拡張能の評価に有用かどうかを検討した。 【方法】 2015 年 12 月から 2016 年 7 月にレーザー手術を 行った TTTS および sIUGR 15 例を対象とした。 E/e'は、胎児心臓の四腔断面像を描出し、DD 法 を用いてパルスドプラ法で得られる E 波と組織 ドプラ法で得られる e'波を同時に測定した。 E/e'の測定は術前 24 時間以内、術後 24 時間以内、 術後 4-7 日目に行った。参考値として、先行研究 で得られた同一の測定法による正常単胎 53 例の 値を用いた。本研究は倫理委員会の承認の元、イ ンフォームド・コンセントを得て施行した。 【結果】 受血児もしくは Larger twin において、右室 E/e' は術前の値が正常単胎より高い傾向を認め、術後 4-7 日目に有意に減少した(p=0.009)。受血児の 左室 E/e'も同様に術前に高い傾向を認めたが、 術後の値は一定の傾向を認めなかった(p > 0.05) 。供血児もしくは Smaller twin は両側 E/e' ともに術前と術後で有意な変化を認めなかった。 【結論】 DD 法による胎児期の E/e'の測定は比較的簡便で 安定していた。 TTTS の受血児では、術前の右室 E/e'が正常より 高値を呈し、レーザー術後約1週間の経過で有意 に減少しており、これは術前の受血児の心室拡張 障害の存在とレーザー治療による病態改善を示 唆する所見と考えられた。 47 11 月 19 日(土) 16:00~16:42 一般演題 Session Ⅳ(双胎間輸血症候群 1) 15 16 当院にて開始した胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー 凝固術 当院で施行した胎児鏡下胎盤吻合血管レーザ ー凝固術の検討 村田 鷹野真由実 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 晋 川崎医科大学附属病院 産婦人科 【共同演者】 鈴木聡一郎、松本良、松本桂子、羽間夕紀子 杉原弥香、佐野力哉、石田剛、潮田至央、村田卓也 中井祐一郎、中村隆文、塩田充、下屋浩一郎 【はじめに】双胎間輸血症候群(TTTS)に対する胎 児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)が本邦 で開始されて 10 数年が経過し、治療成績は海外と 同等、または上回るものとなった。FLP 開始時は先 進医療との位置付けであったが、2012 年より保険 収載となったことで、医学的根拠を有する手術法と 認識された。さらに、FLP 開始当初は 26 週未満の TTTS のみが対象であったが、安定した治療成績が 担保された事で 28 週未満の TTTS、selective IUGR にも手術適応が拡大されつつある。そのような中、 当院でも 2015 年 10 月から筆頭演者が FLP を開始し たため、治療成績を提示する。治療成績の集積、検 討に関しては当院倫理委員会にて承認済みである。 【対象および成績】2015 年 10 月から 2016 年 7 月 まで 13 例が手術目的に紹介となり、9 例で FLP を 施行した。手術前診断は TTTS8 例、selective IUGR1 例であった。手術は基本的に modified sequential 法で行い、solomon 法が可能な症例には適宜追加し た。TTTS の Quintero 分類は stage1:1 例、stage2:3 例、stage3:2 例、stage4:2 例であった。Selective IUGR の 1 例は type2 であった。手術は全例で完遂 できた。術中、術後に母体の重篤な合併症は認めな かった。Stage2 の 1 例で供血児が術後 1 日目に胎 児死亡となった。9 例中 6 例は分娩となったが、6 例中 1 例のみ、流産徴候が顕在化し希望にて人工妊 娠中絶を行った。他 5 例は全例 32 週以降の分娩で あった。 【考察】手術開始後 9 症例の FLP を施行したが、中 国四国における本疾患の発生頻度を考えると、多く の症例に対応できていると考えられた。現時点では 重篤な問題点はなく手術が施行できている。今後も 症例を追加し検討を行っていく予定である。 48 座長: 高橋雄一郎 【共同演者】 中田雅彦 1)、梅村なほみ 1)、長崎澄人 1)、上山怜 1) 大路斐子 1)、前村俊満 1)、片桐由起子 1)、与田仁志 2) 森田峰人 1) 1) 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 2) 東邦大学医療センター大森病院 新生児科 【目的】当院で胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー 凝固術(FLP)が開始され、約半年が経過した。 今回、当院で FLP を施行した症例の治療成績を 検討した。 【方法】東邦大学医療センター大森病院で 2015 年 12 月から 2016 年 6 月に FLP を施行し た双胎間輸血症候群(TTTS)と selective IUGR (sIUGR) 14 例を対象とし、診療録を元に後 方視的に検討を行った。 【結果】他施設からの紹介が 14 例中 11 例であ った。治療施行週数の中央値は 23.4 週(16 - 29 週)であり、 Quintero の stage 分類では、stage Ⅰ 4 例、stageⅡ 1 例、stageⅢ donor 3 例、 stageⅢ recipient 2 例、sIUGR typeⅡ 4 例で あった。手術時間の中央値は 58 分(29 - 80 分)で、術中の母体への有害事象を認めず、全 例で治療完遂が可能であった。術後、recipient の胎児死亡を 2 例、smaller twin の胎児死亡 を 1 例に認めた。TTTS の再発や TAPS 所見、一 児胎児死亡後の acute feto-fetal hemorrhage は認められなかった。現在、周産期転帰が判明 している症例は 7 例で、全例(7 例中 7 例)で 少なくとも1児以上の生存が得られ、7 例中 5 例で両児生存となった。現時点で、出生児に神 経学的後遺症を認めていない。残り 7 例は妊娠 継続中である。 【考察】当院の FLP 施行症例での検討では、既 存の報告と遜色ない治療成績であり、問題なく 治療が施行できていると考えられた。今後も症 例の蓄積を行っていく必要がある。 Session Ⅳ(双胎間輸血症候群 1) 座長: 高橋雄一郎 17 18 双胎間輸血症候群における子宮内一児発育遅延合 併の有無による予後への影響 当センターにおいて胎児鏡下レーザー手術を 施行した Selective IUGR を伴う一絨毛膜双胎 の周産期予後 今野寛子 石井桂介 聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 【共同演者】 山下亜貴子、松本美奈子、松下充、神農隆 鈴木貴士、村越毅 【共同演者】 山本亮、武藤はる香、太田志代、川口晴菜 【目的】双胎間輸血症候群(TTTS)の双胎では、子 宮内一児発育遅延(sIUGR)を合併している症例と 合併していない症例とが存在するが、その予後につ いて比較検討した研究はこれまでにない。胎児鏡下 胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)を施行した TTTS の双胎における sIUGR 合併の有無が、その短 期予後、特に子宮内胎児死亡に影響を与えるか検討 する。 【方法】2005 年~2010 年に当院で FLP を施行した TTTS の双胎のうち、出生時までの経過を確認でき た 133 例を対象とし、後方視的に検討した。治療前 の smaller の推定体重が-1.5SD 未満であるか、ま たは smaller と larger の推定体重差が 25%以上の ものを sIUGR 合併症例とし、それらを discordant (D)群、25%未満のものを normal(N)群とした。 それぞれの群における、子宮内胎児一児死亡 (sIUFD)の有無、子宮内胎児両児死亡(dIUFD)の 有無、分娩方法、分娩週数、出生体重、Apgar score につき、統計学的に解析を行った。また、sIUGR の type 毎にも同様の解析を行った。 【結果】N 群 36 例(27%) 、D 群 97 例(73%)であり、 sIUFD の有無、dIUFD の有無、分娩方法、分娩週数、 出生体重、Apgar score、いずれにおいても両群間 に統計学的な有意差を認めなかった。また、sIUGR の type 毎にも同様の検討を行ったが、いずれも統 計学的な有意差を認めなかった。 【結論】FLP を施行した TTTS における治療前の sIUGR 合併の有無は、その type に関わらず、治療 後の両児の出生までの経過には影響を与えないと 考えられた。 【目的】Selective intrauterine growth restriction(SIUGR)を伴う一絨毛膜双胎のう ち、小児に臍帯動脈血流異常と羊水過少を伴う 重症例に胎児鏡下レーザー手術(FLP)を施行し た症例(早期安全性確認試験の対象を含む)の 児の周産期予後を報告する。 【方法】妊娠 26 週未満で一児の推定体重が -1.5SD 以下の SIUGR を伴う一絨毛膜双胎のう ち、SIUGR 児が臍帯動脈拡張期血流の途絶・逆 流および羊水過少を伴う重症例を対象として FLP を施行した。FLP は TTTS に対する方法に準 じて行ったが、必要に応じて大児に人工羊水注 入を行った。児の生後 28 日時点での生存と神 経学的異常(3 度以上の脳室内出血と脳室周囲 白質軟化症)を後方視的に検討した。施設の倫 理委員会の承認を得て、患者からは文書同意を 得た。 【成績】2014 年 6 月より 2016 年 5 月までに、 22 例に対して中央値妊娠 20 週(16-24)に FLP を施行した。全例に羊水注入を要したが、手術 は完遂され、術中の母体の重篤な有害事象は無 かった。分娩時期の中央値は 33 週(19-39)で、 1 例が流産に、2例が妊娠 26 週の超早産にな った。小児は 11 例が胎児死亡(流産 1 例)と なったが。生産 11 例の出生体重は中央値 932g(432-1902)で、神経学的異常は無かった。 大児は 2 例で胎児死亡となった(流産 1 例)が、 20 例の生産例の出生体重は 1919g(654-2972) で、神経学的異常は無かった。2 児生存は 11 例、1 児生存は 9 例、0 児生存は 2 例で、少な くとも一児の生存は 20 例であった。全児にお ける生存率は 70%であった。2 児生存症例にお ける胎盤吻合血管の遺残は無かった。 【結論】重症 SIUGR に対して FLP を施行した 22 例では、小児の半数と大児の 9 割の短期予 後は良好であった。今後は児の長期予後の検証 が望まれる。 林周作、光田信明 49 11 月 19 日(土) 16:00~16:42 一般演題 Session Ⅳ(双胎間輸血症候群 1) 19 20 Amniotic Fluid Discordance adjoining TTTS に 対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の臨 床試験における児の長期予後 TTTS を発症した一羊膜双胎に対する FLP の経験 小澤克典 川口晴菜 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 国立成育医療研究センター 胎児診療科 【共同演者】 杉林里佳 1)、和田誠司 1)、住江正大 3)、石井桂介 4) 中田雅彦 5)、村越毅 6)、伊藤裕司 2)、左合治彦 1) 1) 2) 3) 4) 5) 6) 【共同演者】 石井桂介、武藤はる香、山本亮、林周作 光田信明 国立成育医療研究センター 胎児診療科 国立成育医療研究センター 新生児科 福岡市立こども病院 産科 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 聖隷浜松病院 産婦人科 【目的】現在、羊水過少かつ羊水過多を満たす一絨 毛膜二羊膜双胎(MD 双胎)を双胎間輸血症候群 (TTTS)として胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固 術(FLP)の適応としている。また、一児の MVP が 3cm 以下、もう一児の MVP が 7cm 以上である MD 双 胎を Amniotic Fluid Discordance adjoining TTTS (AFDaTTTS)と定義すると、AFDaTTTS に臍帯動脈の 血流異常を伴うと生後 6 か月時の両児生存率は 42%、両児合わせた生存率は 58%、後遺症なき生存 率は 47%であると報告されている。今回、血流異常 を伴う AFDaTTTS に対する FLP の臨床試験を実施し たため、児の 3 歳時の予後を報告する。 【方法】臨床試験(UMIN000004165)の対象は妊娠 20 週~25 週の MD 双胎で、臍帯動脈の血流異常のあ る AFDaTTTS である。Primary Outcome は FLP の完 遂と母体の安全性である。児の 3 歳時の発達評価は 可能な限り新版 K 式を実施し、DQ 70 点以下で異常 ありと判定した。 【結果】登録症例は全 11 例で、Discordant rate が 25%以上の症例は 9/11(82%)であった。全例で FLP を完遂し、母体の重篤な合併症はなかった。 Donor の生後 6 か月時の生命予後は生存 3 例、IUFD 7 例、新生児死亡 1 例であり、生存児に神経学的異 常を認めなかった。Recipient の生後 6 か月時の生 命予後は全例生存であったが、神経学的異常を 2 例(片麻痺)に認めた。3歳時の発達評価は8例 (donor 3/3 例、recipient 8/11)で施行可能であ り、recipient においてさらに 1 例の神経学的異常 (発達の遅れ)を認めた。両児合わせた生存率は 14/22(64%)、後遺症なき生存率は donor で 3/11 (27%) 、recipient の生後 6 か月時は 9/11(82%) 、 3 歳時は 6/8(75%)であった。 【結論】AFDaTTTS に FLP を施行した今回の臨床試 験では donor の生存率は 27%と低く、3 歳時の両児 合わせた全生存率は 64%であり、後遺症なき生存率 は 47%であった。 50 座長: 高橋雄一郎 【緒言】TTTS を発症した一絨毛膜一羊膜(MM) 双胎に対する FLP を経験したので経過を報告 する。 【症例】29 歳初産婦で、排卵誘発にて妊娠成 立した。妊娠 13 週の超音波検査にて MM 双胎と 診断した。両児の臍帯の胎盤付着部(CI)は近接 し、かつ臍帯相互巻絡を認めた。妊娠 17 週、 羊水ポケット(AFP)は 6.5 ㎝で、一児の膀胱は 小さかった。妊娠 20 週 5 日 AFP は 8.5 ㎝で、 両児の膀胱サイズに差を認め、TTTS を疑った。 妊娠 21 週 1 日の AFP は 8.7 ㎝で、一児の膀胱 は拡張し、もう一児の膀胱は描出できず、臍帯 動脈血流異常を認めたため、TTTS stage III に相当すると判断した。CI が近接しており、 手術が完遂できない可能性があったが、患者の 文書同意を得て、妊娠 21 週 5 日に硬膜外麻酔 下に FLP を施行した。 CI は近接していたが個々 の吻合血管は同定可能であり、10 組の吻合血 管を凝固した。臍帯相互巻絡により胎児鏡操作 は煩雑であり、CI 間に存在した太い AV 吻合と VV 吻合の凝固に難渋したものの、手術時間 49 分で FLP を完遂できた。同時に羊水除去を施行 した。妊娠 28 週より管理入院としたが、妊娠 33 週 6 日に両児徐脈を認め、胎児機能不全に て緊急帝王切開術を施行した。元供血児 (1646g、女児、Apgar スコア 7/8、臍帯動脈 PH7.191・BE-7.2)と元受血児(1900g、女児、 Apgar スコア 8/9、臍帯動脈 PH7.182・BE-9.1) を娩出した。血性羊水を認めたが、胎盤早期剥 離は認めず、臍帯相互巻絡と元受血児の臍帯頚 部巻絡を認め、胎児徐脈は臍帯因子によるもの と考えられた。胎盤吻合血管の遺残は無かっ た。生後 1 ヶ月時点で両児は経過順調である。 【結語】MM 双胎における TTTS の症例で、CI が近接していたものの FLP が可能であった症 例を経験した。 11 月 19 日(土) 16:45~17:20 一般演題 Session Ⅴ(双胎間輸血症候群 2) 座長: 中田雅彦 21 22 双胎間輸血症候群に対するレーザー焼灼術後の一 児死亡の発症時期と関連する産科的因子の検討 胎児鏡下レーザー凝固術後の卵膜損傷の頻度 および予後との関連 山下亜貴子 聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科 山本 【共同演者】 今野寛子、松下充、神農隆、松本美奈子、村越毅 【共同演者】 石井桂介、武藤はる香、川口晴菜、金井麻子 林周作、光田信明 【緒言】双胎間輸血症候群に対する胎盤吻合血管レ ーザー焼灼術(FLP)後の一児死亡は約 10~20%に起 こりそのうち 60%ほどが術後 1 週間以内の死亡であ ると報告されている。 【目的】一児子宮内胎児死亡と生後 28 日以内の新 生児死亡を Single Demise(SD)と定義し FLP 術後 の SD 発症時期と関連する因子を抽出する。 【方法】2007 年から 9 年間に当センターで FLP を 行った 1 絨毛膜 2 羊膜双胎 145 例のうち、経過をフ ォローアップできなかった 4 例を除いた 141 例を対 象とした。早期 SD(E-SD)を FLP 後 14 日未満に SD に至った例、晩期 SD(L-SD)を FLP 後 14 日以降に SD に至った例とした。それぞれに関連する産科的因子 について Donor と Recipient に分けて比較検討し た。統計学的手法は多重ロジステッィク回帰解析を 用いた(SPSS Ver16)。 【結果】SD は 34 例(24.1%)でありそのうち E-SD 群は 25 例(73.5%) 、L-SD 群は 9 例(26.5%)であ った。両児生存は 104 例(73.8%)、両児胎児死亡と 流産を double demise (DD)と定義したがその全 3 例(2.1%)とも流産であった。多重ロジスティック 回帰解析の結果、Donor の E-SD と関連があったの は 胎 盤 の 動 脈 - 動 脈 吻 合 ( odds ratio(OR)11.1, (95%CI, 2.7-45.9); P=0.001) 、Donor の臍帯辺縁 付 着 ( odds ratio(OR)4.7, (95%CI, 1.3-17.5); P=0.022)であった。Donor の L-SD と関連があった のは FLP 実施週数(odds ratio(OR)0.5, (95%CI, 0.3-0.9); P=0.025)と術後の Donor の臍帯動脈拡 張期逆流(UAREDV) (odds ratio(OR)120.0, (95%CI, 3.9-3686.7); P=0.006)であった。Recipient との 関連因子は E-SD、L-SD ともに抽出されなかった。 【結語】発症時期に関わらず Donor で胎児死亡に至 る例が多かった。Donor の E-SD と関連する因子は 胎盤の動脈-動脈吻合の存在と Donor の臍帯辺縁付 着であり、L-SD と関連する因子は FLP 実施週数が 早いこと、術後の Donor の UAREDV であった。この ように FLP 後の Donor の SD に関しては発症時期で 関連する因子が異なることがわかった。 【目的】 胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)による卵膜損傷 に伴う異常の頻度と、異常を生じた症例の妊娠 経過を明らかにする。 【方法】 2010 年 10 月から 2015 年 6 月の期間に、当 院にて双胎間輸血症候群に対して FLP を行っ た症例を対象とした後方視的研究である。羊膜 絨毛膜剥離(CMS)と両児間隔膜の穿破(iMM)の 頻度を調べ、それぞれの有無で妊娠転帰と児の 短期生命予後を比較した。また 32 週未満の前 期破水と早産に対する調整オッズ比をロジス ティック回帰分析で算出した。 【結果】 対 象 134 例 の 手 術 時 期 は 中 央 値 20 週 (17-27)であった。分娩時期は中央値 33 週 (18-40)であり、6 例 (6.5%)が 22 週未満の流 産、 114 例 (85%)が 37 週未満の早産であった。 128 例 (96%)で少なくとも 1 児が生産であり、 108 例 (81%)は両児生産であった。CMS の頻度 は 28%(38 例)であり、CMS の症例では 32 週未 満 の 前 期 破 水 / 早 産 が 多 く (34 % /14 % , P=0.006/53%/25%, P=0.002)、調整オッズ比は それぞれ 3.78 (95%信頼区間:1.45-10.1)、3.78 (95% 信 頼 区 間 :1.61-9.17) で あ っ た 。 10 例 (26%)で CMS が消失したが、32 週未満の前期 破水/早産の頻度は、CMS が持続した症例と同 等 で あ っ た (20 % /39 % , P=0.44 / 50%/53%, P=1.00)。iMM の頻度は 9.6%(13 例)であり、 iMM の有無で妊娠転帰と児の短期生命予後に 差は無かった。5 例に臍帯相互巻絡を認めた が、胎児死亡は無かった。また 1 例に偽性羊膜 索症候群を認めた。 【考察・結論】 FLP 後に CMS を認める症例は前期破水や早産 のハイリスクであり、CMS が消失した症例にお いても注意を要する。一方、iMM は予後への影 響は明らかでは無かった。 亮 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 51 11 月 19 日(土) 16:45~17:20 一般演題 Session Ⅴ(双胎間輸血症候群 2) 座長: 中田雅彦 23 24 一児の機能的肺動脈閉鎖指摘後に TTTS へと進行 し,レーザー治療後に良好な新生児経過を得た MD 双胎の一例 当院における胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー 凝固術に対する脊髄くも膜下硬膜外麻酔と硬 膜外麻酔単独の比較 梅村なほみ 東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 大場翔太 聖隷浜松病院 麻酔科 【共同演者】 【共同演者】 鷹野真由実1)、大路斐子1)、前村俊満1)、片桐由起子1) 入駒慎吾、松下充、村越毅、小久保荘太郎 中田雅彦1)、與田仁志2)、森田峰人1) 1)東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 2)東邦大学医療センター大森病院 新生児科 TTTS の受血児では肺動脈狭窄や三尖弁逆流といっ た心合併症を伴うことが知られており,これらは循 環容量負荷と右室血流の減少,特異な内分泌環境に よって生じると推察されている.今回我々は,一児 の機能的肺動脈閉鎖を認めた後に TTTS となり,FLP 後に血流異常が改善し両児生存を得た一例を経験 したので報告する.症例は 29 歳,0 経妊 0 経産, 自然妊娠.MD 双胎のため妊娠 8 週より当院で外来 管理をおこなった.2 週間毎の健診では,妊娠 26 週までの経過に異常を認めなかった.妊娠 28 週 6 日,一児の静脈管逆流と肺動脈弁逆流を認めたが, 羊水過多/過少はなかった.翌日(妊娠 27 週 0 日) , MVP10.0 ㎝/1.3 ㎝と羊水量不均衡が出現し TTTS stageⅢと診断した.患者,家族,新生児科医と協 議の上で FLP を施行し,22 組の吻合血管を凝固し た.術後第 1 日に静脈管逆流の消失を,第 5 日に肺 動脈弁逆流および三尖弁逆流の消失を確認した.元 供血児に‐1.8SD の FGR を認めた他は,TTTS や血流 異常の再発などはなく経過した.切迫早産に対して 子宮収縮抑制薬の投与を継続し管理したが,妊娠 35 週 5 日(術後 47 日目)に母体肺水腫のため全身 麻酔下で緊急帝王切開術をおこなった.元受血児は 2093g で出生し,生後第 1 日までの人工呼吸管理を 要したが,循環器系および中枢神経系の異常を認め ず,生後 30 日目に自宅退院した.元供血児の出生 後経過に異常を認めなかった.TTTS では,循環容 量 負 荷 と paradoxical に 変 化 す る Renin Angiotensin-Aldosterone System により受血児の 心機能不全をきたすと言われている.今回,心不全 を初発症状として TTTS に進行した症例を経験し, 羊水過多/過少を認めていなくても胎児心機能低下 を呈することがあり,妊娠全期間を通じて注意深い 管理を要すると考えられた.また,本症例において は,迅速な治療介入が心合併症への進展回避に寄与 したと考えられた. 52 【背景】胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP) は、双胎間輸血症候群(TTTS)に対する治療法であり、 妊娠 26 週未満の TTTS に対する第一選択である。FLP では母体の鎮痛、母体の不動化が必要とされるが、施 設毎にその方法は異なっている。当院では以前、硬膜 外単独による麻酔法を採用していたが、膀胱留置カテ ーテルの挿入に対する鎮痛を図るために、現在は脊髄 くも膜下硬膜外麻酔(CSEA)を選択している。今回我々 は、FLP に対する CSEA の合併症に関して検証し、硬 膜外単独と比較した。 【方法】 2008 年 1 月から 2013 年 6 月まで当院にて 硬膜外麻酔単独で管理した FLP の症例および、2013 年 7 月から 2015 年 12 月までに CSEA にて麻酔管理し た FLP の症例を対象とした。抽出項目としては、主に 母体の年齢、身長、体重、FLP を施行した週数、TTTS stage、穿刺部位、使用薬剤、麻酔合併症を電子カル テおよび手術部記録より抽出した。硬膜外麻酔単独群 では Th12 近辺から硬膜外カテーテルを挿入し、0.75% ロピバカイン 4-7mL を投与した。CSEA 群は L2/3 もし くは L3/4 の 1 カ所穿刺法を選択し、0.5%ブピバカイ ン 4-8mg、フェンタニル 10-25μg、生理食塩水を併せ て合計 2mL をくも膜下腔に投与した。 【結果】研究期間中の硬膜外単独群は 103 例、CSEA 群は 33 例であり、全て重篤な合併症なく終了した。 母体の年齢の中央値は硬膜外単独群で 31 歳(19―42 歳)、CSEA 群で 32 歳(17 歳-40 歳)であった。BMI の中央値は硬膜外単独群で 22.1(17.7-31.8)、CSEA 群で 21.5(17.3-25.8)であった。最も多い麻酔合 併 症 が 低 血 圧 で あ り 、 硬 膜 外 単 独 群 で は 24 例 (23.3%)、CSEA 群では 9 例(27.3%)で認められた が、エフェドリン 0.4mg もしくはフェニレフリン 0.1mg の反復投与により十分な昇圧が得られた。その 後は、33 例中 21 例(63.6%)において硬膜外腔に挿 入したカテーテルより適宜局所麻酔薬を追加投与し た。 【結語】 TTTS に対する FLP において、CSEA は硬膜 外麻酔単独と同様に重篤な合併症を起こすことがな く、膀胱留置カテーテル挿入の際の鎮痛を図ることも 可能である。 Session Ⅴ(双胎間輸血症候群 2) 座長: 中田雅彦 25 双胎間輸血症候群(TTTS)における胎児鏡下胎盤吻 合血管レーザー凝固術(FLP)の術前術後には正球 性正色素貧血になりやすい 森川 守 北海道大学病院 周産母子センター 産科 【共同演者】 山田俊、細川亜美、中川絹子、馬詰武、千葉健太郎 小島崇史、石川聡司、山田崇弘、水上尚典 【目的】TTTS に対する FLP の術前術後には母体貧 血を認めることが多い。その貧血が出現しやすい TTTS 症例の特徴や貧血の FLP の術後管理への影響 を明らかにする。 【対象・方法】当科において FLP を施行した TTTS の 30 症例(全例で FLP による明らかな子宮出血な し)を対象とし、血算の術前日/当日(Pre)と術後 1 週間以内の最低値(Post)を用いて後方視的に検 討した。Pre でヘモグロビン値(Hb, g/dL)<10.0 を「貧血群」 、それ以外を「正常群」とした。 【結果】全例で妊娠初期には貧血を認めなかった (12.7 [11.0-14.0]) 。Hb は、Pre(9.9 [7.9-12.6]) に比べ Post(8.4 [6.9-10.4])で有意に低かった。 Pre と Post には正の相関を認めた。貧血の頻度は、 Pre では 16 例(53%) 、Post では 28 例(93%)であ った。 貧血群(16 例)と正常群(14 例)において、FLP 施行週数、TTTS 進行期、羊水過多の最大羊水深度、 術後肺水腫の発症頻度、術後胎児・新生児死亡の出 現頻度には差がなかった。術後の Hb は 2 群とも緩 徐に改善し、術後 3 週間では 2 群間に有意差がなか った。 なお、MCV 値は Pre では 2 群間で差を認めなかっ た(89 [76-99] vs. 92 [88-95], P=0.079)が、Post では貧血群(89 [76-100])で正常群(93 [89-96]) に比べ有意に低かった(P=0.046)。また、MCHC は Pre(33 [32-34] vs. 33 [33-36], P=0.478)なら びに Post(33 [32-34] vs. 34 [33-35], P=0.107) で 2 群間に有意な差を認めなかった。 【結語】TTTS では母体正球性正色素貧血になりや すく、FLP を施行するとその母体貧血は進行しやす い。その貧血は母体予後には影響を与えず、FLP 後 3 週間程度で改善する。 53 11 月 20 日(日) 9:50~10:11 一般演題 Session Ⅵ(LUTO) 54 座長: 坂井清英 26 27 胎児の腎機能障害が疑われたが膀胱羊水腔シャン ト術を施行した下部尿路閉塞の 1 例 胎児下部尿路閉塞症に対し胎児治療を施行し た 4 例の検討 笹原 小島有喜 淳 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 国立成育医療研究センター 産科 【共同演者】 石井桂介、山本亮、金川武司、光田信明、矢澤浩治 白石淳、山本勝輔 【共同演者】 杉林里佳、串本卓哉、中村紀友喜、小沢克典 和田誠司、左合治彦 【緒言】胎児の下部尿路閉塞(LUTO)に対する膀胱羊 水腔シャント術(VAS)は、胎児の腎機能障害がない ことを前提として行われてきた。しかし今回、胎児 腎機能障害が疑われたが、生命予後改善を目的とし た VAS を施行した LUTO 症例を経験したので報告す る。 【症例】28 歳の妊婦で、前児は妊娠 17 週の死産後 の病理解剖にて後部尿道弁と診断された既往があ る。今回は他院で妊婦健診を受けていたが、胎児の 巨大膀胱を指摘され妊娠 20 週に精査目的に初診と なった。初診時は羊水量正常であり、key-hole sign を伴う拡張した膀胱を認めた。妊娠 24 週時に羊水 過少および胎児の胸郭低形成、左腎欠損と右水腎症 を認めた。胎児腎機能評価のため妊娠 25 週 4 日に 施 行 し た 胎 児 膀 胱 穿 刺 ・ 胎 児 尿 検 査 で は Na 108mEq/L、Cl 95mEq/L、Ca 9mg/dL、浸透圧 235 Osm/L、β2-microglobulin 2.0mg/dL であり、腎機 能障害が疑われた。十分なカウンセリングを行った 上、ご夫婦の強い希望のもと倫理委員会の承認を得 て、妊娠 25 週 6 日に VAS を施行した。術後 3 日目 にカテーテル近位端の腹腔内への迷入が確認され た。以降無羊水となり、胎児尿腹水は増加した。再 シャントは医原性腹壁破裂等を考慮し施行しなか った。胸郭の圧迫および難産の予防を目的に尿腹水 除去を 2 回施行して経過観察していたが、妊娠 36 週 2 日に経腟分娩となった(2,856g、男児、Apgar score 1/5) 。児は挿管され NO 吸入療法が行われた。 気胸により生後 4 日目まで胸腔ドレナージを要し たが、生後 10 日目には抜管となった。生後 2 日に 膀胱皮膚瘻が造設された。 出生時の血清 Cre は 0.49 mg/dL であり、生後 5 日目に 3.6mg/dL まで上昇し たが、その後は緩徐に低下し生後 40 日目以降は 1.0mg/dL 以下で推移している。しかし、eGFR は 20ml/mim/1.732m2 と慢性腎臓病 stageG4 である。 【結論】腎機能障害の疑われる LUTO 症例に対し救 命目的の VAS を行ったが術後早期にシャントトラ ブルとそれに続く無羊水を合併した。新生児期の呼 吸管理は可能であったが、将来的に腎代替療法が必 要となる可能性が高い状態である。 胎児下部尿路閉塞(LUTO)は,腎機能障害や羊 水過少に伴う肺低形成を生じる.胎児治療として 膀胱羊水腔シャント術(VAS)や胎児鏡下治療が 試みられているが,適応や施行時期,効果につい て一定の見解はない.今回,当院で胎児治療を施 行した 4 例を報告する. 症例 1 は 31 歳.妊娠 17 週の膀胱穿刺による尿 検査結果から胎児の腎機能は良好と判断し,妊娠 18 週で VAS を施行した.シャント脱落のため妊 娠 20 週,25 週にも VAS を施行し,複数回の膀胱 穿刺も行い胎児腎機能を確認しながら経過観察 した.シャント不全による羊水過少のため妊娠 31 週に帝王切開を行い,2432g の男児を分娩し た.児は HFO を開始し日齢 7 に SiPAP となった. 腎機能は正常であった.出生後の精査で巨大膀胱 短小結腸腸管蠕動不全症が疑われている. 症例 2 は 33 歳.尿検査結果から胎児腎機能は 良好と判断し,前部尿道閉鎖に対し妊娠 19 週に レーザーを用いた胎児鏡下前部尿道閉鎖解除術 を施行した.術後 3 日目に子宮内胎児死亡となっ た.原因は臍帯因子と考えられたが StageⅢの絨 毛膜羊膜炎も認めた. 症例3は 30 歳.妊娠 17 週に VAS を施行したが, 22 週から羊水過少が持続した.妊娠 27 週からは 胸郭低形成も認め,39 週に経腟分娩としたが, 日齢 1 で肺低形成のため新生児死亡となった. 症例 4 は 34 歳.妊娠 19 週の尿検査結果から胎 児腎機能は良好と判断したため 20 週で VAS を施 行.シャントトラブルはなく前医に転院した.妊 娠 24 週以降に水腎症を認めたが著明な悪化はな く経過し,妊娠 37 週に分娩となった.児に呼吸 障害や腎不全の所見は認めなかった. VAS は,周産期生存率の改善に寄与することが 示される一方、長期的な腎機能障害の予防効果に 関しては期待できないといわれている。後部尿道 弁に対しては胎児鏡下治療により生存率の改善 と腎機能障害の予防が報告されているが、症例数 が少なく、出生前に後部尿道弁と正確に診断する ことは難しい。LUTO に対する胎児治療の新しい アプローチが求められている. Session Ⅵ(LUTO) 座長: 坂井清英 28 妊娠第 2 三半期早期までに診断された胎児巨大膀 胱症例の転帰 山本 亮 大阪府立母子保健総合医療センター 産科 【共同演者】 石井桂介、中野嵩大、笹原淳、金川武司、光田信明 【目的】妊娠第 2 半期早期までに診断された、胎児 巨大膀胱症例の転帰を明らかにする。 【方法】2002 年 1 月から 2016 年 6 月の期間に当院 で分娩となった症例のうち、妊娠 20 週以前の胎児 超音波検査にて巨大膀胱と診断された症例を対象 とした。母体背景、妊娠転帰および児の予後につい て診療録を用いて後方視的に検討した。 【結果】対象 37 例(うち双胎妊娠は2例)におけ る、巨大膀胱の診断時期は中央値 15 週(12-20 週) であった。巨大膀胱の出生後診断は下部尿路閉塞が 25 例、総排泄腔遺残が 5 例、Prune Belly 症候群が 3 例、慢性偽性腸閉塞症が 1 例、原因不明が 3 例で あった。下部尿路以外の構造異常が把握された症例 は 11 例(30%)であり、鎖肛 4 例、肺分画症 1 例、 片腎無形成 3 例、心室中隔欠損 1 例、VATER 連合 1 例および 21 トリソミー1 例であった。妊娠転帰は 妊娠中絶が 21 例(57%)、胎児死亡が 6 例(16%)、新 生児死亡が 2 例(5.4%)、生産が 8 例(22%)であった。 妊娠 22 週未満に羊水過少を呈した 24 例(65%)で は、妊娠中絶が 17 例、胎児死亡が 4 例、新生児死 亡が 1 例、生産が 2 例であった。妊娠 22 週未満に 羊水量が正常であった 12 例では、妊娠中絶が 4 例、 胎児死亡が 1 例、新生児死亡が 1 例、生産が 6 例で あった。妊娠 25 週および 26 週に膀胱羊水腔シャン ト(VAS)が行われた 2 例を含む生産 8 例のうち、4 例は尿路変更術を要し、うち 2 例は慢性腎不全であ った。 【結論】胎児診断された巨大膀胱の半数以上は妊娠 中絶となったが、そのうち妊娠 22 週未満に羊水過 少が無い症例においても 3 分の 1 で妊娠中絶が選択 された。早期羊水量正常例の反数は生産であった。 一方、VAS を施行した症例は少数であり、予後に与 える影響は不明である。 55 11 月 20 日(日) 10:15~10:36 一般演題 Session Ⅶ(胸部疾患) 29 30 胎児肺嚢胞性疾患の超音波診断と生後診断の比較 と周産期予後 出生前診断した先天性右横隔膜ヘルニア症例 の臨床的検討 杉林里佳 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科 甲斐翔太朗 【共同演者】 和田誠司、福谷梨穂、串本卓哉、赤石理奈、小澤克典 左合治彦 【目的】胎児肺嚢胞性疾患は超音波検査で胸腔内嚢 胞性病変の存在や縦隔偏位により出生前に診断さ れる機会が増加している。しかし出生前診断と生後 診断は必ずしも一致せず、胎児期に予後の推定が困 難である症例も経験する。胎児肺嚢胞性疾患と診断 した症例の出生前診断と生後診断を比較し周産期 経過について検討した。 【方法】2010 年 1 月より 2016 年 7 月までに当院で 周産期管理を行った胎児肺嚢胞性疾患 55 例を対象 とし、診療録より後方視的に検討した。出生前診断 は胎児超音波検査において、肺嚢胞性疾患が大動脈 よ り 栄 養 さ れ て い る も の を 肺 分 画 症 (Bronchopulmonary sequestration: BPS) 、肺動脈 より栄養されているものを Congenital pulmonary airway malformation (CPAM)とし、CPAM のうち最 大径 20mm 以上の嚢胞を有するものを macrocystic type 、 嚢 胞 の 最 大 径 が 20mm 未 満 の も の を microcystic type とした。 【結果】出生前に BPS と診断した 10 例は、全例生 後診断も BPS であった。出生前に CPAM macrocystic type と診断した 17 例のうち、出生後も CPAM であ った症例が 12 例、気管支閉鎖(Bronchial atresia: BA) 2 例、BPS、前縦隔奇形腫、気管支肺前腸奇形 が各々1 例であった。生後診断が CPAM の症例は診 断が異なった 5 例と比較し分娩前の CVR が有意に大 き か っ た (p=0.0098) 。 出 生 前 診 断 が CPAM microcystic type であった症例は 28 例で、生後診 断は BA 21 例、CPAM 4 例、BPS 3 例であった。 生後診断が CPAM であった 16 例は胎児期に 10 例 (63%)でシャント術を施行し、全例新生児期に肺葉 切除術を行い、4 例(25%)が新生児死亡に至った。 BA 23 例のうち新生児期に肺葉切除術が施行された 症例は 2 例のみで、1 例(4%)が乳児死亡に至った。 BPS 14 例は全例予後良好であった。 【結論】胎児期に CPAM と診断した症例で最大嚢胞 径が 20mm 以上であるもののうち 71%が CPAM で、 20mm 未満の症例の 75%が BA であった。超音波によ る最大嚢胞のサイズのみでは正確な診断は困難で あった。CPAM では胎児治療が行われていても予後 不良な症例が存在した。出生前に BPS と診断した症 例は全例 BPS で予後良好であった。 56 座長: 米倉竹夫 九州大学病院 産科婦人科 【共同演者】 城戸咲 1)、日高庸博 1)、佐藤由佳 1) 蜂須賀正紘 1)、藤田恭之 1)、加藤聖子 1) 三好きな 2)、田口智章 2) 1)九州大学病院 産科婦人科 2)九州大学病院 小児外科 【目的】先天性右横隔膜ヘルニア(右 CDH)は左 CDH と比べて頻度が低く、まとまった数の報告は 本邦では少ない。当院で出生前診断した右 CDH 症例の胎児期所見と生後予後を検討した。 【方法】 2008 年 4 月から 2016 年 7 月の間に当 院で出生前診断及び周産期管理を行った右 CDH 症例を対象として、合併形態異常や染色体異常の 有無、分娩直前の肺胸郭断面積比(LTR)、肺断面 積児頭周囲長比(LHR)の o/e 値、生後の人工換 気・酸素投与日数、退院時生死について、診療録 をもとに後方視的に検討した。また孤発例に限っ て、胎児期超音波指標や生後予後を同時期の左 CDH 症例と Mann-Whitney U 検定及び Fisher の正 確確率検定を用いて比較した。 【結果】 対象症例は 8 例であった。4 例に合併 異常を認め、臍帯ヘルニアが 2 例、右肺欠損と先 天性二分脊椎の合併が 1 例、トリソミー18 が 1 例であった。8 例中 4 例(50%)が死亡退院となり、 うち 1 例が弧発例であった。合併形態異常がない にもかかわらず死亡した症例の LTR は 0.03、o/e LHR は 34.8%であり、生存弧発例 3 例の LTR が 0.11、0.13、0.06、o/e LHR が 87.3%、94.3%、60.0% あったのに比して低値であった。孤発例に限って 左 CDH と比較すると、o/e LHR が右 CDH で有意に 高値((73.7% (34.8 - 94.2%) vs 33.2% (2.8 62.6%), p=0.02))であったが、生存退院率(3/4 vs 25/29)、生後の人工換気・酸素投与日数について は両群間で有意差を認めなかった。 【結論】 右 CDH では高率に合併形態異常を有 し、合併形態異常を有するものや LTR・o/e LHR が低値のものでは予後が不良である傾向にあっ た。孤発性のものでは左 CDH との間で生後予後に 差を認めなかったが、肺低形成がさほど高度でな い症例が多く含まれたことがその要因である可 能性がある。 Session Ⅶ(胸部疾患) 座長: 米倉竹夫 31 我が国における先天性横隔膜ヘルニアに対する胎 児鏡下気管閉塞術の早期安全性試験 和田誠司 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 【共同演者】 杉林里佳 1)、小澤克典 1)、遠藤誠之 2)、左合治彦 1) 1) 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 2) 大阪大学 産婦人科 先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の重症例は予後不 良 で あ り , 胎 児 鏡 下 気 管 閉 塞 術 ( Fetoscopic Endoluminal Tracheal Occlusion: FETO)による予 後の改善が期待されている.FETO は胎児の気管を バルーンで閉塞することにより,肺胞液が肺内に貯 留し,肺の発育を促進させる.欧州では FETO の有 効 性 が 検 討 さ れ , ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 (TOTAL trial)が行われている.本邦では 2013 年 10 月よ り FETO の早期安全性試験が開始された. 早期安全性試験での治療対象は,Kitano の胃の 位置による分類 G3(胃の位置が正中より右)かつ 肝挙上例で,o/e LHR が 25%未満の重症例では妊娠 27 週 0 日~29 週 6 日,o/e LHR が 25~44%の中等 症例では妊娠 30 週 0 日~31 週 6 日に FETO を行い, 妊娠 34 週 0 日~6 日にバルーン抜去術を行う.バ ルーン抜去術は予定で行う場合は経母体的に超音 波ガイド下もしくは胎児鏡下での方法,それらが不 可能な場合もしくは緊急で行う場合は EXIT や出生 後の気管支鏡を用いた方法が選択される. 2016 年 7 月末までに 11 例を登録した.気管内バ ルーン挿入は全例で完遂し,母体に重篤な有害事象 はみられなかった. バルーン抜去術は胎児死亡と なった 1 例を除き 10 例に分娩前に施行できた.内 訳は超音波ガイド下 2 例,胎児鏡下 6 例,分娩時の EXIT 下で 2 例であった.2016 年 9 月末で早期安全 性試験の登録が終了する予定である. 57 11 月 20 日(日) 11:00~11:42 一般演題 Session Ⅷ(外科疾患・その他) 32 33 脊髄髄膜瘤と脊髄披裂 るのか 渡邊美穂 座長: 田口智章 神経機能予後に差異はあ Cincinnati children's hospital Medical center, surgery 胎児仙尾部奇形腫に対するラジオ波焼灼術の タイミングの重要性を痛感した一例 岩垣重紀 長良医療センター 産科 【共同演者】 【共同演者】 Foong-Yen Lim、 Karin Bierbrauer 【目的・方法】開放性二分脊髄は、脊髄液が腹側ク モ膜下腔に貯留し神経板が突出した脊髄髄膜瘤 (Myelomeningocele) と神経板プラコードが皮膚と 同レベルで平坦な脊髄披裂(Myeloscisis)に分類 される。これまでこの二つはしばしば混同して用い られ、臨床学的差異の可能性を指摘されながらも明 らかにされていなかった。今回、当院 10 年間で経 験した 160 例の開放性二分脊髄の内、現在まで経過 観察出来た 77 例を下記のとおり分類し(A 群;脊 髄髄膜瘤 A-1 生後手術群 A-2 胎児手術群、B 群; 脊髄披裂 B-1 生後手術群、B-2 胎児手術群)、後方 視的に生後神経機能を比較した。 【結果】77 例の内、 A 群 58 例(75%)、 B 群 19 例(25%) であった。A 群の内、生後手術を 45 例(78%)に (A-1)、胎児手術を 13 例(22%)に(A-2)、B 群では 生後手術を 13 例(68%)に、胎児手術を 6 例(32%) に施行した。胎児診断時、プラコードレベルは A 群で Th―S4、B 群で L2-S2 であった。キアリ奇形は A 群で 97%に B 群で 100%に認め、奇形度はそれぞ れ 2.64、2.89 であった。プラコードの大きさは A 群が 17.86x10.33 ㎜、B 群が 12.85x8.85 ㎜であっ た。いずれの結果とも A 群 B 群間で有意差は認めな かった。生後 VP シャントは A-1 群 89%(生後平均 46 日)、B-1 群 92%(54 日)、A-2 群 54%(288 日)、 B-2 群 50%(170 日)に施行された。間欠導尿は A-1 群 89%、B-1 群 100%、A-2 群 62%、B-2 群 67%で 導入された。30 か月時以上の患児の内、30 か月時 自立歩行可能であった症例は A-1 群 53%B-1群 45%A-2 群 55%B-2 群 100%であった。 いずれも A-1 群 B-1群間、B-1 群 B-2 群間で有意差を認めなかっ た。又、生後神経機能脊髄レベルを徒手筋力テスト により評価し、生直後、1 歳児、2 歳児で比較した ところ、A-1 群 B-1群間、B-1 群 B-2 群間で有意差 を認めなかった。 【考察】脊髄髄膜瘤 (Myelomeningocele) と脊髄披 裂(Myeloscisis)間で神経機能予後の差異が指摘 されていたが、当研究において生後下肢機能、自立 歩行、排尿機能、VP シャントの必要性に関する統 計学的差異は認めなかった。 58 高橋雄一郎 1)、千秋里香 1)、浅井一彦 森崇廣 1)、古井裕子 1) 、杉江茂幸 2) 1) 、松井雅子 1) 1)国立病院機構長良医療センター 産科 2)朝日大学歯学部附属 村上記念病院 病理診断科 【緒言】胎児の仙尾部奇形腫(SCT)に対するラジオ 波焼灼術(RFA)の有効性の報告は散見されるが、そ の適切なタイミングに関しては一定の見解はない。 今回増大する SCT に対して RFA を施行し、一定の効 果を得られたものの救命ができなかった一例から、 適切な治療介入のタイミングに関して考察をした。 【症例】31 歳一経産婦。妊娠 20 週に胎児の臀部に 長径 6cm の腫瘤を指摘されその後増大傾向を認め妊 娠 24 週 1 日に当科紹介となった。AAPSS 分類Ⅰ型の 仙尾部奇形腫と診断し、その長径は 12cm と増大して いた。AFI31 と羊水過多を認めたが心負荷を疑う所 見は認めなかった。その後も腫瘍は増大傾向を認め、 妊娠 25 週 5 日に心拡大の増悪と三尖弁逆流、僧帽弁 逆流、皮下浮腫、心嚢水を認めた。combined cardiac output (CCO)は 884ml/min/kg と増加し 中大脳動脈 の収縮期最高血流速度は 2.7MoM と加速を認めた。貧 血の増悪、高拍出性の心不全が疑われたため妊娠 26 週 0 日に RFA および胎児輸血を施行した。腫瘍内の 血流は完全に遮断することはできなかったが、CCO が減少傾向を示し、皮下浮腫の軽減を認めた。妊娠 26 週 3 日に 2 回目の胎児輸血、妊娠 27 週 0 日に 2 回目の RFA と 3 回目の胎児輸血を行った。入院時よ り増加傾向を認めた母体血清 hCG 値は 2 回目の治療 後には減少傾向に転じたが、Mirror 症候群の増悪を 認めた。羊水過多に伴う切迫早産兆候、母体の腹部 膨満症状が増強し、妊娠 27 週 3 日に羊水除去を行っ た。その後常位胎盤早期剥離を発症したため、緊急 帝王切開を施行し、2129g の女児を Apgar score:0/2 にて出産した。児は生後 61 分で新生児死亡となっ た。剖検の結果腫瘍重量は約 1.6Kg であった。マク ロ所見では腫瘍の約 50%が変性・壊死しており、組 織学的には未熟奇形腫が確認された。 【考察】本症例は児の心負荷所見が出現した時点で 胎児治療に踏み切ったが、結果的に腫瘍の増大、母 児の状態悪化を来たし複数回の治療を必要とした。 SCT の増大を認める場合は、児の超音波所見の進行 を待たずに胎児治療に踏み切る必要性が示唆され た。 Session Ⅷ(外科疾患・その他) 座長: 田口智章 34 35 腹壁異常における臨床像の差異はなぜ起きるの か?‐羊胎仔腹壁異常モデルを用いた検討‐ 胎児診断されたリンパ管奇形 22 例の検討 大林樹真 聖マリアンナ医科大学 外科学小児外科・病理診断科 渡邊美穂 Cincinnati children's hospital Medical center, surgery 【共同演者】 田中邦英 1)、関保二 1) 、長江秀樹 1)、眞鍋周太郎 1) 【共同演者】 大山慧 1)、KC Pringle3) 、小池淳樹 2)、高木正之 2) Belinda Hsi Dickie 北川博昭 1) 1)聖マリアンナ医科大学 外科学小児外科 2)聖マリアンナ医科大学 病理診断科 3) Wellington School of Medicine, Department of Obstetrics and Gynecology 【目的】腹壁異常で側弯症を認める Body Stalk Anomaly の側弯症発生の機序が腹直筋切離による 左右のバランスによるか、脱出臓器の牽引による か、動物モデルで検証し ヘルニア門の位置や脱出 臓器の差で肺成熟や骨格異常の出現を検討した。 【方法】羊胎仔 25 例で、胎生 60 日の胎仔の上腹部 横切開で左右の腹直筋切開を施行した胎仔を A 群、 一側腹直筋を切開し腹部左外側に施行した胎仔を B 群とし妊娠満期に帝王切開で娩出させ腹壁異常 モデルを作製した。また出生後に肝脱出を認めた胎 仔を C 群、認めなかった胎仔を D 群とした。正常満 期胎仔 12 例を E 群とした。頭殿長、体重、肺容量、 Radial alveolar count(RAC) 、Ⅰ型肺胞上皮細胞 とⅡ型肺胞上皮細胞の比(AT1 ratio = Ⅰ型肺胞上 皮細胞 / Ⅱ型肺胞上皮細胞)を計測して検討した。 また側弯症の発生も評価した。統計学的解析は t 検定およびχ2 検定を行い、P 値を 0.05 とした。 【結果】25 例中 12 例が生存し 11 例に腹壁破裂を 認めた。A 群が 5 例、B 群が 6 例、C 群が 4 例、D 群が 7 例であった。E 群は 12 例すべてが生存した。 A 群、B 群および E 群の比較では側弯症を A 群 3 例 に認めたが、B 群および E 群では認めなかった(p < 0.01) 。頭殿長、体重、肺容量、RAC、AT1 ratio で は有意差を認めなかった。C 群、D 群および E 群の 比較では側弯症を C 群 3 例に認めたが、B 群および E 群では認めなかった(p < 0.01) 。頭殿長、体重、 肺容量、RAC、AT1 ratio では有意差を認めなかっ た。 【結語】腹壁異常において肺成熟はヘルニア門の位 置や脱出臓器に因らなかった。ヘルニア門が正中 で、肝が脱出していると側弯症合併のリスクが増加 する可能性が示唆された。 【目的・方法】胎児診断技術の発達によりリンパ管奇 形は胎児期の診断が可能である。しかし稀少であり、 重症度に幅があり、Sirolimus が新規に導入され、標 準化された治療管理方針がなく各施設の経験により 異なっている。当院 5 年間で経験した 22 例を後方視 的に 4 群に分類検討し(1群;単嚢胞、2群;頭頸部 多嚢胞、3 群;頭頸部以外の多嚢胞、4 群;瀰漫性) リンパ管奇形の管理方法を提案する。 【結果】リンパ管奇形は在胎 24 週に診断され、胎児 成長に比例しリンパ奇形は増大した。胎児診断精度は 87.5%であり、生後リンパ管奇形でなかった 3 症例は 全て 1 群で、胎児期奇形は縮小した。通常胎児超音波 上嚢胞内血流は認めなかったが、血流を認めた 3 症例 は全て毛細管静脈リンパ管奇形であった。1 群は胎児 期合併症を認めず全例が生存、生後 80%の症例にお いて経過観察可能であった。2 群では羊水過多 (42.9%)早期産(28.6%)を認め、全例が帝王切開 もしくは EXIT を要し、生後 71.43%で呼吸管理を必 要をしたが全例生存した。3 群では羊水過多(16.7%) 早期産(66.67%)周産期死亡(33.33%)を認めた。 4 群 は 羊 水 過 多 (100 % ) 、 胎 児 ド ッ プ ラ ー 異 常 (66.67%)、心エコー異常(66.67%)を認め、全例が 周産期死亡であった。生後、2・3 群では長期間の集 学的治療(薬物療法、複数回の硬化療法、部分切除術) を必要としたが、全例で残存病変を認めた。生後早期 (2.75 か月)に Sirolimus を導入した症例では、サ イズの縮小、リンパ液漏出の改善、凝固能の改善を認 め、手術治療を先延ばし手術範囲を縮小化する事が出 来、手術療法を幼児期に施行した症例に比べて機能的 合併症が少なく美容的満足度も高かった。 【考察】リンパ管奇形の症状は多岐にわたり、サイ ズ・部位・分布により、妊娠管理・分娩法・症状・予 後・管理治療法が異なる。特に多嚢胞リンパ管奇形は 生涯に渡る集学的治療を要する。これらを考慮した多 分野の専門科による胎児カウンセリングが必要であ る。 59 11 月 20 日(日) 11:00~11:42 一般演題 Session Ⅷ(外科疾患・その他) 座長: 田口智章 36 37 上顎体による上気道閉塞が疑われた骨盤位の胎児 に対して子宮体上部切開にて EXIT を施行した 1 例 当院における胎児染色体異常症例の転帰につ いて 設樂理恵子 東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 遠藤誠之 大阪大学産婦人科 遠藤誠之 大阪大学医学部附属病院遠藤誠之 胎児診断治療センター 【共同演者】 佐山晴亮、中山敏男、入山高行、小松篤史、永松健 藤井知行 【緒言】Ex Utero Intrapartum Treatment (EXIT) は、出生直後より高度の気道閉塞が予測される症例 に対して行う治療の総称である。我々は出生前より 上顎体を診断し、出生後の気道確保困難が予測され た骨盤位の児に対して、子宮体上部切開にて EXIT を施行したので報告する。 【症例】34 歳初産婦、前医で妊娠 26 週に羊水過多 が指摘され、妊娠 28 週 2 日に精査・加療目的に当 院へ母体搬送となった。超音波・MRI では胎児の口 腔内~中咽頭を占拠し、鼻腔より体外へ突出する腫 瘤を認めた。中咽頭の腫瘤は径 4cm、背側から気管 を圧排しており、奇形腫(上顎体)と診断した。AFI は 45-50 程度で経過し、母体の腹部膨満の軽減のた め羊水除去を 7 回施行した。関係各科(新生児科、 小児外科、産婦人科、麻酔科)で検討を行い、妊娠 34 週 0 日に EXIT を行う方針とした。胎児は経過中 一貫して骨盤位であり、また上顎体の存在のため頸 部が伸展していた。子宮切開部位は子宮体上部、腫 瘤の位置と大きさを考慮し、気管挿管は試みず臍帯 切断前に気管切開を行う方針とした。全身麻酔下に 子宮を十分に弛緩させ、術中超音波で胎児・腫瘤の 位置を確認し子宮体上部切開、破膜、児頭を子宮外 へ娩出、子宮内腔への羊水注入および針心電図とエ コーによる胎児心拍のモニタリングを行いつつ、小 児外科医により気管切開術を施行、チューブ留置後 に臍帯切断し出生となった。新生児は出生後に段階 的に腫瘍切除を行った。 【考察】本症例は、上顎体の存在により気管切開に 時間を要したことから、EXIT を施行しないで出生 後に気道確保を行う方針では救命が困難であった と考えられた。EXIT では母体への負担を考慮し子 宮下節横切開を行うことが多いが、今回は骨盤位の 状態のままであっても EXIT を行うことが有用と考 え、子宮体上部切開の方法をとった。 【結論】出生後の気道確保に時間を要する症例で は、EXIT が有用であり、胎位の状況により子宮下 節横切開以外のアプローチも可能であった。 60 【目的】 当院における主な胎児染色体異常の転帰につ いて検討する。 【方法】 2007 年1月から 2015 年 12 月までの 9 年間に 当院で妊娠・分娩管理を行った胎児染色体異常 症例(特に 13、18、21 トリソミー)について、 診断時期による転帰の違いについて評価した。 また、当院での人工妊娠中絶症例全体における 胎児染色体異常症例の傾向についても評価す る。 【結果】 調査期間中に当院で妊娠・分娩管理を行った胎 児染色体異常症例は、144 症例あった。その内 訳は、T13 が 7 症例、T18 が 61 症例、T21 が 76 症例であった。妊娠 22 週未満に診断された症 例が 68 症例(47%) 、妊娠 22 週以降に診断さ れた症例が 46 症例(32%) 、生後診断された症 例が 30 症例(21%)であった。 全胎児染色体異常症例の転帰は、胎内死亡 13 症例、人工妊娠中絶 64 症例、愛護的ケア 29 症例、積極的治療 38 症例であった。それに対 して、妊娠 22 週未満に診断された症例の転帰 は、54 症例(93%)が人工妊娠中絶となって いた。 当院での人工妊娠中絶症例は、検討期間中に 218 症例あり、年々軽度漸増傾向にあった。そ のうち胎児疾患と診断された症例が、179 症例 (82%)であった。そのうち胎児染色体異常は 全体の約 30%で、年々漸増傾向にあった。 【結論】 胎児染色体異常が診断される妊娠週数によっ て、その転帰は明らかに異なっていた。妊娠 22 週未満に診断された症例の転帰のほとんど が人工妊娠中絶であった。妊娠 22 週以降に診 断された症例では、愛護的ケアを選択する症例 が多く、生後に診断された症例では、積極的治 療が選択される症例が多かった。
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