美棹賞 蛸 高知学芸中学校二年 中村 耕也 ﹁蛸がおる!﹂ 妹が叫んだ 水面をのぞいた ﹁おった!﹂ そこには大きな蛸がいた 反射的に竿を出し、ルアーを投げた 蛸の目線の先にルアーが落ちる 蛸がルアーを睨み、抱きつく ﹁今や!﹂ ぐいっ 買ったばかりの竿がしなる 蛸が必死で岩にはりつく しかし、針が蛸にくい込んで逃さない ぐいっ 一瞬蛸がひるんで岩からはがれる ぐいっ 急いでリールを巻く ブシュッ 蛸がすみをはいて逃げようとする ぐいっ 手に汗がにじむ ぐいっ やっと水面に浮かんできた すかさずたも網に入れる 全身の力が抜けた その蛸は見たことのない大物だった 家でたこ焼きにして食べる 数時間前に対決した相手 その身はやさしい味がした 銀賞 無 前橋市立箱田中学校二年 にぎやかな声と 私の胸のこ動 どんとかまえる 大きな背中 ﹁はじめ﹂と鳴り響く 審判の低い声 夢中で技をかける 私 背中に背負う 重たいプレッシャー 私は今 ﹁無﹂の状態 背中が軽くなった 審判の一本という声が鳴り響いた 相手の大きな背中は とても小さくみえた 椛澤 帆香 銅賞 いなかの駅 前橋市立箱田中学校一年 原戸 健多 ガタンゴトン 一両列車がとまります。 発車ベルもならずに走りだす。 ゴーガタンゴトンゴーゴッガタン 特急列車が通ります。 だれもいないホームを いきおい良く通ります。 急行、快速列車も いきおい良く 通ります。 ここはいなかの駅 新幹線も通りません ガタンゴトンゴドンガッガーゴトンギギッ また一両列車がとまります。 一両列車のとなりを特急列車が通ります。 もう駅はありません。 でも僕の心の中には 一両列車がこの駅に とまっています。
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