介護保険サービス事業者等 における感染症発生時の 対応について 平成28年11月22日 松山市保健所 保健予防課 感染症担当 1 社会福祉施設での集団感染事例 2014.10 岡山県 介護老人保健施設 結核感染者 職員6名 入所者2名 2016.7 鹿児島県 児童養護施設 ノロウイルス 入所者12名 (調理員も感染) 2016.7 東京都 特別養護老人ホーム 腸管出血性大腸菌 O-145 入所者13名 2015.1 和歌山県 高齢者施設 インフルエンザ 入所者39名 (うち2名死亡) 2 施設の開設者および管理者の責務 (感染症法第5条第2項) 「病院、診療所、老人福祉施設等の施設の開設者 および管理者は、当該施設において感染症が発生 し、または、まん延しないように必要な措置を講ず るよう努めなければならない。」 発生状況の把握 感染拡大の防止 医療処置 行政への報告 関係機関との連携 3 行政への報告 厚生労働省老健局計画課長通知 「社会福祉施設等における感染症等発生時 に係る報告について」 施設長は、次のような場合、 社会福祉施設等主管部局に迅速に報告すること。 あわせて保健所にも終息に向けた対応を相談する インフルエンザ、ノロウイルスは感染症法上で 指定された医療機関のみ報告が義務付けられている。 【報告要件】 ①同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる 死亡者・重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合 ②同一の感染症や食中毒の患者、またはそれらが疑われる 者が10名以上または全利用者の半数以上発生した場合 ③通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、 特に施設長が報告を必要と認めた場合 4 発生状況の把握 収集した情報や対応は記録を‼ 厚生労働省老健局計画課長通知(老発第222001号/平成17年2月22日) 「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」 を要約 患者情報 の収集 ・ ・ ・ ・ 発症日(日付、時間) ・ 共通の食事の有無 症状の有無、症状の内容 ・ 患者との接触者 患者区分( 利用者 or 職員 ) 場所(発症場所、主な利用場所 等) など 状況の確認 ・ 重篤者の有無 ・ 集団感染や食中毒の可能性の有無 必要な措置 ・ 患者への措置(診断、検査、隔離) ・ 施設への措置(汚染場所の消毒) 連携 報告 ・ 主管課 ・ 保健所(保健予防課) ・ 協力病院等の医療機関 5 健康管理・報告体制の整備 報告体制の整備 施設内の感染症の発生を迅速に 把握できるように報告ルートや 基準について整備しましょう。 施設の衛生措置 施設長 行政、関係機関等へ報告 ・来訪者の健康チェック ・施設職員への衛生教育 健康チェック ・利用者 ・施設職員 必要に応じて 報告 適切に 指示 有症者の 報告 小さな異変 を逃さない (早めの対応) ミーティング等で報告 6 感染拡大の防止 施設長は、協力病院や主管課、 保健所に相談し、技術的な助言を や指示を仰ぎましょう。 感染症、食中毒の発生時 (疑い時含む) ・排泄物・嘔吐物の 感染拡大防止のため 適切な処理 速やかに対応を‼ ・感染した職員の出勤停止 ・感染した入所者の隔離 ・手洗いの徹底 ・マスクの着用 ・施設内の消毒 (範囲、消毒剤の選択、消毒液の 濃度、使用方法を検討すること) 7 感染症 感染伝播と発症 結核、麻しん等 インフルエンザ等 ■感染経路 (空気) 個室、密閉空間 (飛沫) 咳、くしゃみなど (接触) 主に手や器具等 への汚染拡大 ■潜伏期 病原体による ■感染期間 ノロウイルスなど 病原体による (発症する前から 感染性がある 場合が多い) 8 感染しても 発病しない人も います‼ ノロウイルスの特徴 大きさ 感染経路・感染力 直径約3万分の1mmの小型のウイルス (大きさ比較) ノロウイルスをピンポン 玉に例えると・・・ ・一般細菌は軽自動車 くらいの大きさ ・成人男性は日本列島 の本州くらいの大きさ ※手のしわ爪の間にも容易に入り込む 耐性 アルコール消毒や乾燥に強い ヒトのお腹の中でしか増殖しない ※トイレを中心に汚染が 拡がっていく‼(接触感染) 感染力が非常に強い(少量でも感染) 発症菌量:ノロウイルス10~100個 ※感染者のおう吐物・排泄物には 数千万個~数億個/g含まれている。 流行時期 特に冬季(11月~3月)に流行 (ただし年間を通して発生あり) 冬場に発生する感染性胃腸炎の 代表的なウイルス とにかく手洗いが大事‼ (特にトイレ後などは2回‼) 9 食中毒の可能性が 高い場合は速やかに 担当課へ連絡を‼ 調理従事者 が食品を汚染 10 ノロウイルスに感染すると・・・ ・潜伏期間は平均1~2日 ・症状が1~2日続いた後、治癒 (症状:嘔気、嘔吐及び下痢が主症状。) 症状回復後も糞便中にウイルス排出(2~3週間) ・治療は、対症療法。 (ノロウイルスに対する特効薬はない。) 吐き気止めや、整腸剤、水分補給が中心 ・元々他の病気がある等の要因がない限りは、 重症化して長期間入院を要することはまずない。 11 施設の 消毒 【下痢やおう吐等の症状のある 利用者がいる場合の対応】 《消毒する場所》 施設内の直接手で触れる機会がある場所すべて (例)手すり、ドアノブ、水道の蛇口、ベットの周り、机、イス、 車いすの押し手、引き出しの取っ手、各スイッチ など 特に、有症者がおう吐した場所、使用したトイレ ※職員が媒介になることも。事務室やロッカーなども要注意。 ※鉄などの金属は錆びることがありますので、消毒後10分以上 経過したら水拭きしましょう。 12 施設の 消毒 よく手で触るところ… 手すり(トイレや廊下) 照明スイッチ 扉 ロッカーの扉 ほかにもたくさんあります 。自分が普段どこを触って いるか、意識しながら歩い てみてはいかがでしょう。 水洗レバーや 便座のフタ エレベーター(ボタン) 13 汚物 処理 吐物・下痢便 の処理 汚物処理セットを いつでも 使えるように 準備しておく‼ ノロウイルスの流行期に吐物や下痢便を発見!! ①処理を行う職員以外の方を遠ざけること。 処理をする職員以外は少なくとも3mは離れること。 ②速やかに処理すること。 ※マスク・手袋・エプロン着用 時間が経つと吐物や下痢便が乾燥してその飛沫が舞い上 がり、感染が広がってしまう可能性がある。 ③汚物や便が付着したもの(オムツも!)は、密封し屋外へ。 ビニール袋で密封し、すぐに屋外へ持ち出すこと。 14 季節性インフルエンザ ■インフルエンザウイルスによる感染症 ・飛沫感染 (発熱の1日前から感染性あり) ・感染から発症まで(潜伏期)は1~5日 ・急激な高熱、咳、関節痛・筋肉痛などの症状 ・2~7日で治癒 ■抗インフルエンザウイルス薬による治療 ・発症後48時間以内に服用することで、罹病期間 が減少(合併症ない場合) ■ワクチンによる予防、重症化を防ぐ 予防接種について 15 予防接種について インフルエンザワクチン接種の主な目的は、 死亡者や重症者の発生を出来る限り減らすこと ■接種時期: 12月中旬までに接種を受けておくことが望ましい ■接種回数: ・13歳未満の人 : 2回 ・13歳以上の人 : 原則1回 (著しく免疫反応が抑制されている者は、2回接種しても差し支えない) ■接種料金:医療機関によって異なるので、要確認 ■高齢者インフルエンザ予防接種 詳細は、松山市ホームページをご覧ください。 (松山市HP 保健予防課 予防接種 平成28年度 高齢者インフルエンザ予防接種) 16 咳エチケット •咳・くしゃみが出たら、他の人にうつさないためにマス クを着用する •マスクを持っていない場合は、ティッシュなどで口と鼻 を押さえ、他の人から顔をそむけて2m以上離れる •咳、くしゃみを手で受けた時は、手を洗う •鼻汁・痰などを含んだティッシュはすぐにフタ付の専用 ゴミ箱に捨てる •咳をしている人にマスクの着用をお願いする 17 マスクのつけ方 (不織布マスクをお勧めします) ① ② ③ ④ 鼻、口、あごを覆う 鼻部分を鼻すじにフィットさせる ゴムひもで耳にしっかり固定する フィットするよう調節する ※マスク着脱時の注意点 • マスクの表面には、病原体がついている可能性が あるので、使用中はあまり触らないようにする。 • 触った手で、眼などをこすらないようにする。 • マスクを外す時は、ゴム紐から外し、表面を触らない。 18 インフルエンザ患者発生時の対応 •マスク着用の上、すみやかに個室等に移動。 •必要に応じて、医療機関受診。 マスクを着用した上で、受診をしましょう。 •感染の拡大に備え、重症化しやすい基礎疾 患を有する者等の感染防止策について検討 を。 •利用者も職員も、手洗いを徹底しましょう。 19 結核 結核は… 結核菌を吸い込むことで起こる感染症 人から人に感染する 【空気感染】 20 感染しても発病する人は 10人に1(~2)人程度。 感染して2か月~2年後までが発病リスク が高い。 21 「結核?! でも心配しないで」 財団法人結核予防会 より 発病とは・・・ • 結核菌が体の抵抗力に打ち勝つと増殖し 病巣が広がり始め、胸部エックス線検査 で影が表れはじめる。 • 免疫が弱ったときに発病しやすい。 (その他) 糖尿病患者/胃潰瘍や胃切除術後の人/ 塵肺患者/副腎皮質ホルモン剤や抗癌剤 を服薬中の人/強い精神的ストレスを受 けた人/HIV感染者 など 22 結核に ついて 高齢者の場合は、これら症状がなくても発症して いる場合があります。 年に1回はレントゲン検査を受けるなど早期発見を‼ 23 治療とDOTS (直接服薬確認療法) 標準治療 ⇒複数の薬を6ヶ月(180日)~9ヶ月(270日) 服薬する 重要なことは 毎日、確実に服用すること 飲んだり飲まなかったりを繰り返すと… 結核薬に対して「耐性」ができてしまう ※多剤耐性結核 24 施設において気を付けてほしいこと ●環境整備(部屋の換気、日当たり等) ※結核菌は日光など紫外線照射が殺菌になります。 ●健康管理 ・年に1度は胸部エックス線検査を 受けましょう(利用者、職員) ・日々の健康観察 (特に食欲低下、体重減少、倦怠感) ●プライバシー、人権の保護 25 まとめ 基本的な感染予防策を徹底する。 ・予防接種 ・正しい方法での手洗い ・咳エチケット(症状がある場合) 患者発生時の迅速な対応のため、 あらかじめ十分な準備、計画を行う。 ・汚物処理セット ・施設のマニュアル整備 ・連絡体制の確認 など 26 【参考資料】 厚生労働省ホームページ ①「高齢者介護施設」で検索、 ・『高齢者介護施設における感染対策マニュアル (平成25年3月)』 ②「ノロウイルスに関するQ&A」 ③「インフルエンザ総合対策」で検索、 『平成27年度今冬のインフルエンザ総合対策について』 ・『インフルエンザ施設内感染予防の手引き (平成25年11月改訂)』 ・『インフルエンザQ&A』 27
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