質量分析器による血液培養からの直接同定方法の検討

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質量分析器による血液培養からの直接同定方法の検討
◎山田 直輝 1)、原 祐樹 1)、川島 誠 1)、浅井 幸江 1)、井藤 聡美 1)、伊藤 守 1)
名古屋第二赤十字病院 1)
【目的】
【結果】
血液培養は、敗血症が疑われる患者の診断
検討した 72 件中 30 件がグラム陽性球菌、
と治療に大きく影響する重要な検査である。
6 件がグラム陽性桿菌、36 件がグラム陰性桿
また、敗血症の起炎菌を迅速同定することは、
菌であった。全体での一致率は 86%(62/72)
患者の適切な治療に貢献するとされる。当院
であった。グラム陽性球菌では 67%(20/30)
では、MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニク
であった。また、グラム陽性桿菌では 83%
ス)による迅速同定を実施しており、血液培養
(5/6)であった。一方、グラム陰性桿菌では
から直接菌を同定する場合、MALDI セプシタ
94%(34/36)と他の菌種に比べて一致率が高
イパー血液培養抽出キット(ブルカー・ダルト
かった。直接法でかかるコストは 1 検体あた
ニクス)を用いている。しかし、1 検体当たり
り約 92 円であったことから、従来法に比べて
の試薬コストが高く、全ての血液培養陽性検
約 700 円のコスト削減が可能であった。
体に用いることはコストの増加につながる。
【考察】
そこでコストが安く、特殊な試薬を用いない
今回の検討から直接法はグラム陰性桿菌に
方法(以下、直接法)を考案し、比較検討し
対しては良好な一致率を示し、グラム陰性桿
たので報告する。
菌に対しては有効であることが分かった。一
【対象と方法】
方、グラム陽性球菌に対しては一致率が低い
当院で 5 ヶ月間に血液培養陽性となった検
ことがわかった。
体 72 件を対象とした。直接法に使用する試薬
現在、球菌で結果一致率が低くなる原因につ
は、Vacutainer SST 採血管(べクトン・ディッ
いて検証を行い、球菌においても有用な前処
キンソン)、1.5µl マイクロチューブ、滅菌生
理について検討を進めている。
理食塩水と滅菌蒸留水である。陽性ボトルの
内容液を Vacutainer SST 採血管に 8.5ml 採取し、
3500rpm で 5 分間遠心する。上清を除去し、生
理食塩水 4ml を加えた後、1000rpm で 5 分間遠
心し、上清をマイクロチューブへ 1.5ml 分注す
る。マイクロチューブを 5000rpm で 1 分間遠
心し、上清を除去する。滅菌水を 1.5ml 加え、
5000rpm で 1 分間遠心する。遠心後、上清を除
去し、沈渣を爪楊枝でプレートに塗り、
MALDI Biotyper にて測定した。直接法による
同定結果と分離したコロニーを用いた同定結
果を比較した。
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