トランプ氏勝利後の相場動向と見通し

2016年11月17日
投資情報室
臨時レポート
(審査確認番号H28-TB220)
トランプ氏勝利後の相場動向と見通し
○○○○○○○○
大方の予想に反し、市場はリスクオンムードに
 大幅減税等共和党トランプ次期大統領の政策に対する期待感、上下両院議会を共和党が制
し、現在のネジレ状態(オバマ大統領は民主党、上下両院議会は共和党が過半を占める)
が解消されて新政権の政策遂行力が高まるとの見方等から、米国株式市場は急上昇。週間
(11月7日∼11日)上昇幅が過去最大の959ドルとなる中、NYダウは史上最高値を更新。
大方の予想に反し、市場はリスクオン(リスク資産への投資を積極化する動き)ムードに。
 トランプ氏のインフラ投資積極化等の政策は米景気を刺激するとの期待と、米財政赤字の
拡大をもたらすとの懸念等から金利が急上昇し、他の主要国の金利にも波及。日米金利差
拡大観測等から円安・米ドル高が進む。
 米金利上昇で利回り面での米国債券の相対的な魅力度が増し、資金が米国に還流するとの
見方等から新興国の通貨や株価が下落。
 株式市場では金利上昇の恩恵を受けるとみられる金融株等が上昇する一方、低金利下で利
回りの相対的な高さ等から買われてきた鉄道・電力等の公益株やリートが下落。
 トランプ氏の選挙期間中の主張を巡り銘柄選別が活発化。インフラ関連等オールドエコノ
ミー(重厚長大等従来型の産業)銘柄等が堅調、IT等新技術・新業態の銘柄等が軟調。
(1)米金利急上昇、世界の主要国に飛び火
 選挙期間中の主張である大幅減税(30年手つかずであった法人税を35%から15%に引き下
げ)やインフラ投資積極化(今後10年間で過去最大となる1兆米ドルの投資)は、米景気を刺
激する半面、米財政赤字の拡大につながる等の見通しから、米金利が急上昇。世界の主要国の
金利にも波及。尚、日本の金利上昇幅は相対的に小幅に留まる。
 日米金利差拡大観測等から円安・米ドル高が進む。
図表1:米10年国債金利と円・米ドル相場
(%)
図表2:主要国の10年国債金利動向
データ期間:2016年6月1日∼2016年11月11日(日次)(円)
112
2.4
(11月11日時点、11月8日比較)
米国10年国債金利(左軸)
2.2
円・米ドル(右軸)
国名
11月11日(%)
110
円安・米ドル高
米金利上昇
2.0
108
1.8
106
1.6
104
1.4
102
上昇幅(%)
(11月8日比)
米国
2.15
0.30
フランス
0.75
0.25
豪州
2.57
0.21
日本
-0.02
0.04
2.14
0.16
シンガポール
(※1)米国(10年国債金利)は11月10日時点(11日は休場)
(※2)11月8日は米大統領選挙投票日
100
1.2
6/1
7/1
8/1
9/1
10/1
11/1 (月/日)
出所)図表1∼2はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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(2)新興国の株式市場や通貨が軟調
 米金利上昇で米国債の相対的な投資魅力度が高まり、これまで米国から新興国に流れ込んでい
た資金が米国へ回帰するとの見通し等から、新興国の株安や通貨安(対米ドル)が進む。
 メキシコ国境に壁を作る(費用は全額メキシコ負担)、NAFTA(北米自由貿易協定)
(米・加・メキシコ3ヵ国の協定)を見直す等の主張を嫌気し、メキシコの株式や通貨(メキ
シコペソ)の下落率が相対的に大きい。
図表3:主要国の株価指数騰落率
図表4:主要通貨(対米ドル)騰落率
2016年11月11日時点(11月8日比較)
2016年11月11日時点(11月8日比較)
米国
米国:NYダウ
2.8
円
-1.4
ドイツ:DAX
ドイツ
1.8
日本:日経平均
日本
1.2
インドネシア:ジャカルタ総合
インドルピー
-2.0
メキシコ:ボルサ
インド
ユーロ
-1.6
米ドル高
各通貨安
インド:SENSEX
-2.8
ブラジル:ボベスパ
豪ドル
-2.8
インドネシア
-4.4
メキシコ
ブラジル
(%)
メキシコペソ
-11.9
-7.8
-10
ブラジルレアル
-6.5
-7.2
-8
-6
-4
-2
0
2
4
(%) -14
-12
-10
-8
-6
-4
-2
0
(3)米国株式市場でセクター別の騰落率に大幅なかい離が発生、リートが軟調
 米国株式市場では、金融株(金利上昇やトランプ氏の主張である規制緩和による業績の改善期
待)やヘルスケア(クリントン氏の敗北により同氏が提唱していた薬価の引き下げ圧力が緩和す
るとの期待)等が上昇する一方、情報技術(IT)(グローバル企業に対する税制面での締め付
けが厳しくなる等の見方)や、相対的な利回りの高さから債券代替資産等としてこれまで買われ
てきた公益株等が下落。従来型企業が含まれるNYダウの騰落率が、IT等新興企業が多く含ま
れるNASDAQ指数を上回った。
 金利上昇を嫌気し、公益株と同様に相対的な利回りの高さ等から買われていた米国リートが下落。
日本や豪州のリートも金利上昇を受けてほぼ同様の傾向。
図表5:米国株式の主要セクター別・指数別騰落率
図表6:日・米・豪リート指数の推移
2016年11月11日時点(11月8日比較)
データ期間:2016年6月1日∼2016年11月11日(日次)
115
日本
金融
8.3
豪州
105
2.8
ヘルスケア
米国
110
NYダウ
3.1
100
S&P500
1.2
95
情報技術(IT)
-1.4
90
(※1)日=東証REIT指数、米=NAREIT ALL-EQUITY REIT指数
-6.4
NASDAQ
85
0.8
公益
豪=ASX300 A-REIT指数 (すべて現地通貨ベース)
(※2)2016年6月1日を100として指数化
80
-8 -6 -4 -2
0
2
4
6
8 10
(%)
0
1
2
3
(%)6/1
7/1
8/1
9/1
10/1
11/1
(月/日)
(※)セクターはS&P500指数ベース
出所)図表3∼6はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
2/3
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
(4)日本の株式市場や債券市場の反応
 金利上昇の恩恵を受けるとみられる保険や銀行等が堅調。一方、公益セクターである電力・ガ
スやIT銘柄が含まれる情報通信等が軟調。ほぼ米国と同様な動き。
 イールド・カーブ(残存期間別国債金利の形状)はほぼ全年限で上昇。10年債の金利はほぼ
0%近辺まで上昇。
図表7:日本株式市場の主要セクター別騰落率
図表8:残存期間別国債金利の形状変化
2016年11月11日時点(11月8日比較) (%)
2016年11月8日と11日の比較
0.8
保険業
11月8日時点
銀行
6.8
証券・商品先物取引業
9.2
0.6
11月11日時点
6.4
不動産
0.4
3.0
0.2
電気機器
0.6
輸送用機器
0.0
-0.3
電気ガス
(※)東証33業種分類ベース
-1.5
-0.2
-3.0
情報通信
横軸は残存期間(Y=年)
-0.4
(%)
-4
-2
0
2
4
6
8
10
1Y 2Y 3Y 4Y 5Y 6Y 7Y 8Y 9Y 10Y15Y20Y30Y40Y
出所)図表7∼8はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
○○○○○○○○
軌道修正を始めたトランプ米次期大統領。先行きには不透明感が漂う
 側近人事で共和党に配慮した人事を行い、また政権移行チームの主要ポストを身内で固め
る等、トランプ次期大統領が安定した政権運営に向けて活動を開始。
 選挙期間中の過激ともされる主張の一部を軌道修正し、現実主義者的な側面もみせる。
 主張の中には実現が困難と思われるものもあり、今後の政策運営には不透明感が漂う。今
後、市場の変動が大きくなる可能性も。トランプ氏は米ドル高は米経済に打撃を与えると
の発言を行っており、足元の急激な米ドル高の動きには注意が必要。
∼
当面の相場見通し ∼
 選挙戦で対立した共和党主流派との協力体制を構築するため、共和党に配慮した側近人事を行
う等、トランプ米次期大統領が安定した政権運営に向け活動を開始しているようです。
 不法移民の強制送還は犯罪者等の一部に留めると発言したり、メキシコ国境の壁建設ではフェ
ンスの併用を認める発言を行う等、選挙期間中の過激ともされる主張について、その一部を修
正し始めており、現実主義者的な側面ものぞかせているようです。
 但し、状況等によってはトランプ氏が再度過激な発言や主張をし始めることも考えられます。
大幅減税やインフラ投資の財源をどのように捻出するのか等、政策には不透明感も漂います。
米国株式市場等はトランプ氏が唱える政策の良い面ばかりに注目しているようにもみえます。
足元で他の主要通貨に対して急激な米ドル高が進行していますが、トランプ氏は選挙期間中米
ドル高は米経済に打撃を与えるとの主張を行っています。トランプフィーバーに沸いていると
思われる市場が冷静さを取り戻せば、トランプ氏勝利で生じたセクターのかい離や急上昇した
金利の修正が起こる可能性もあると考えます。当面の金融・為替市場は振幅の大きい相場展開
になるものと思われます。
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
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収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
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資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
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