材料の医療応用を目指した生体適合性評価

材料の医療応用を目指した生体適合性評価
Keyword : バイオマテリアル、生体適合性、生体内分解特性
研究の背景
医療分野では治療・診断などに利用するために多種多様な材料が求められている。材料を
体内埋入デバイスとして用いるためには、まず材料の生体安全性や機能性を確認する必要
がある。また、生体内における材料の耐食性・分解特性を調べる必要がある。
研究の狙い
従来の動物を用いた安全性試験は、種差やコスト、さらに動物愛護の観点から問題があった。
人体内の状況を反映させたin vitro(試験管内)での簡易な試験法が開発されれば、新規医
用デバイスの開発において、有用である。
最先端研究トピックス
生体吸収性金属材料の生体内環境における電気化学測定
(a) 10000
6000
4000
0.1Hz
0
-2000
0
4000
•
•
•
12000
16000
細胞あり
細胞なし
20000
24000
100µm
15
10
20000
15000
CPEfilm
10000
5000
(c)
Mg2+ release(µg/mm2)
Rp (Ω·cm2)
文献
8000
Zre(Ω·cm2)
25000
100µm 細胞除去後
(黒線は細胞集落痕)
0.1Hz
1Hz
2000
(b) 30000
細胞染色後
(青色が細胞)
細胞あり_6h
細胞なし_6h
細胞あり_24h
細胞なし_24h
細胞あり_48h
細胞なし_48h
1Hz
8000
Zi (Ω·cm2)
マグネシウム合金試料上で細胞培養しながら電気化
学測定を実施することにより、細胞存在下では培養時
間の増加に伴い耐食性が低下すること(右図(a,b))、細
胞存在下の方がMg2+溶出量が多いことが判明した。ま
た培養後の合金試料表面観察により、細胞集落(コロ
ニー)下部の局部腐食発生が確認された(左下図)。
細胞培養により、生体内に近い環境下で材料の分解
特性評価が可能であり、またその機序の解明に有益
である。
CPEdl
Rsol
0
0
Rpore Rct
10
20 30 40 50
Incubation period (h)
5
0
細胞なし 細胞あり
A. Yamamoto et.al., Magnesium Technology 2014, TMS, Wiley(2014), pp.381-385.
B.M. Kannan, et al. Colloids Surf. B, 126, 603-606 (2015).
A. Witecka et al. Mater. Sci. Eng. C65(2016) 59-69.
まとめ
実用化の目標
 培養細胞を用いることにより、簡便に材料の生体適合性・
機能性評価が可能。
 種々の材料の医療応用に貢献
 培養細胞を用いて生体内環境を再現することにより、材料
の生体内分解特性評価が可能
 医療用金属材料への生体機能性の付与
 生体吸収性金属材料の評価法の標準化
機能性材料研究拠点
上席研究員 山本 玲子
E-mail: YAMAMOTO.Akiko●nims.go.jp
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