米国大統領選挙結果によるエネルギー 需給、産業への影響 (ショートコメント) 2016年11月17日 調査部エネルギー資源調査課 (海外事務所情報を基にとりまとめ) 1 原油価格 ・基本的に需給バランスが引き締まり、油価は2017年にかけて上昇に向かう趨勢。 足元ではOPEC生産調整観測などにより変動。 ・共和党政権による金利上昇観測は油価の下方圧力に。 ・市場取引規制(ボルカー・ルール)見直しに伴う企業資金調達への影響は要注視。 ・対イラン制裁解除の見直し等外交的な強硬姿勢が見られた場合、地政学的リスク 要因に伴う石油供給途絶懸念の高まりから油価上振れの可能性。 55 ドル/バレル 50 45 40 WTI 出所:NYMEX, ICE, Bloomberg Brent Dubai 2 天然ガス価格 ・足元の天然ガス価格は国内・季節要因に伴い、年初に比べ若干高いレベル で推移。 ・石炭との競合は市場の判断。 ドル/mmBtu 7 天然ガス価格の推移 6 5 4 3 2 10/21 10/24 10/25 10/26 10/27 10/28 10/31 11/1 米国 英国 11/2 11/3 11/4 11/7 11/8 11/9 11/10 11/11 11/14 11/15 出所:NYMEX、ICE、Bloomberg(一部推定) 出所:NYMEX, ICE, Bloomberg 3 エネルギー・環境政策 (1)海洋掘削・シェールを含む国内エネルギー開発進展 ①沖合鉱区開放拡大の可能性 ・国内エネルギー開発、輸出(インフラ整備を含む)促進の可能性 ②シェール開発促進の可能性 ・水圧破砕等に関する規制強化からの転換により事業者の環境対応コスト 懸念が低減するという見方もあるが、実際の規制権限は州政府にあるため、 規制は州毎に異なる。 ③LNG輸出促進の可能性 ・LNG輸出を推進する方向性を示しており、非FTA国向けの手続も修正・促 進・撤廃される可能性が高い。 ・一方で、保護主義のさらなる強まりにより、エネルギーの輸出に制限をか けるような方針転換には注意が必要。 4 エネルギー・環境政策 (2)Key stone XLパイプライン 建設承認の可能性とその影響 ①カナダのオイルサンドの米 市場への供給拡大の可能性 建設承認の場合、カナダのオイルサ ンド事業者にとり米市場への供給拡 大に ②米国向けの中東・中南米原 油輸出への影響の可能性 オイルサンドの供給増加で中東・中 南米など中重質原油貿易に若干の 影響が生じる可能性 キーストーンXLパイプラインシステム 5 エネルギー・環境政策 (3)気候変動、環境問題への対応の転換の可能性とその影響 ①Clean Power Plan(CPP)の撤回とパリ協定(COP21)、グリーン気候 基金(GCF)からの脱退の可能性 ・トランプ氏はCPPの撤回を公約しているが、議会の関与等、今後の詳細な段取り は引き続き要注視。 ②メタン排出規制強化見直しの可能性 ・米国環境保護局(EPA)は2015年5月に、新規及び改修された油ガス井からのメタ ンの排出に関する新規発生源業績基準(NSPS)を決定、公表。既存油ガス井への 規制拡大を検討しているが、見直しの可能性。 ③米証券取引委員会(SEC)によるカーボンリスク公開ルール廃止の 可能性 ・米SECがルール化を検討している気候変動規制が事業にもたらすリスク開示に ついて見直しの可能性 ④燃費規制緩和の可能性 ・11月10日、米自動車工業会は政権移行チームに燃費規制の緩和などを求める 要望書を提出 6 トランプ政権のエネルギーチーム (1)Harold Hamm/コンチネンタルリソーシズCEO ・トランプ大統領のエネルギーアドバイザーを務めており、次期エネルギー省 長官と目されている。・実現すれば石油ガスの富豪が初めて閣僚に。トランプ 氏の米国内資源の開発推進に賛同。 (参考)コンチネンタルリソーシズ社概要 2015年度生産量 原油:146.6千b/d、ガス:450.6Mcf/d、合計:221.7千Boe/d 2015年度売上高2,612百万ドル、純利益▲354百万ドル、年度末株式時価総額8,571百万ドル (2)Kathleen Harnett White/元テキサス環境基準委員会(TCEQ)委員長 ・トランプ政権のEPA(環境保護庁)長官候補との噂がある。 ・トランプ氏の経済政策顧問団のメンバーであり、トランプ氏の米国内資源の 開発推進に賛同。 (3)Kevin Cramer/ノースダコタ州選出下院議員 ・トランプ陣営によればエネルギー政策顧問団の一人とのこと。 ・気候変動懐疑論者を自認し、政権初期の100日間に多くのエネルギー関連 規制を撤廃することを示唆。 7
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