第19回 圧縮記帳 第19回 圧

平成28年10月
篠藤 敦子
第19回 圧
圧縮記帳
公認会計士・税理士 当社は、製造業を営む資本金2,000万円の青色申告法人です。このたび「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」
当社
(ものづくり補助金)500万円の交付を受けました。この補助金の対象となる1,000万円の機械を購入し、すでに使用を開始
(もの
しています。受け取った補助金は、法人税法上どのような取扱いになるのでしょうか。取得した機械の法定耐用年数は10年、
してい
当社は、機械装置の減価償却方法として定額法を選択しています。
当社は
ものづくり補助金のうち固定資産の取得に対する金額は、国庫補助金等に該当するものとして圧縮記帳の適用を受けるこ
もの
の
とができます。圧縮記帳を適用し、取得した機械の帳簿価額から補助金の額を減額したときは、その減額した金額を損金の
とがで
で
額に算入することができます。
額に算
圧縮記帳を適用すると、500万円の補助金は、交付された事業年度において一時に課税されず、減価償却費の減少を通じ
圧縮
て法定耐用年数10年間にわたり分割して課税されることになります。
て法定
解説
1 国庫補助金等の圧縮記帳とは
国又は地方公共団体から補助金や給付金等(以下、補助金等といいます。
)を受け取ると、補助金等の金額は原則として受け取った事
業年度の益金となり課税されます。しかし、補助金等を使って固定資産を取得しようとする場合、補助金等にそのまま課税されると、税
金の分だけ固定資産の購入に使えるお金が少なくなってしまいます。
そこで、補助金等に一度に課税せず、課税を繰り延べる「圧縮記帳」という方法が認められています。圧縮記帳とは、補助金等と同額
の圧縮損を計上することにより、補助金等(益金)と圧縮損(損金)が相殺されるように処理することをいいます。このとき固定資産の
取得価額は、圧縮損の分だけ減額されます。
圧縮記帳のイメージ
圧縮記帳を適用しない場合
機械
1,000万円
圧縮記帳を適用する場合
自己資金
500万円
減価償却の
基礎となる
取得価額
機械
1,000万円
補助金
500万円
減価償却の
基礎となる
取得価額
自己資金
500万円
圧縮損
500万円
補助金
500万円
補助金に対する税額
初年度補助金に課税される
初年度補助金に課税されない
各年の減価償却費 ▶ 100万円
(= 1,000万円 ÷ 10年)
各年の減価償却費 ▶ 50万円
(= 500万円 ÷ 10年)
圧縮記帳を適用すると各年の減価償却費が減少するので、10年
間を通じた課税所得は圧縮記帳を適用しない場合と変わらない
制度適用時の留意点
「国庫補助金等の圧縮記帳」を適用する場合には、補助金等の返還不要が確定していることと、確定申告書に明細書(別表十三(一))
を添付することが必要です。また、補助金等の交付を受ける事業年度よりも前の事業年度中に交付の目的に適合する固定資産を取得して
いる場合には、補助金等の交付を受けた事業年度において圧縮記帳を適用することができます。
本事例の検討
ものづくり補助金のうち固定資産の取得に対する金額は、法人税法上の「国庫補助金等の圧縮記帳」の対象となることが中小企業庁か
ら示されています。各事業年度の会計処理を示すと次のとおりです。
① 補助金受取事業年度
(借)現 金 預 金 500万円 (貸)補助金収入 500万円
補助金は課税されない
(借)機械圧縮損 500万円 (貸)機 械 装 置 500万円
(借)減価償却費 50万円 (貸)機 械 装 置 50万円
(注)機械を期首に取得・事業供用したものとして計算しています。上記のように圧縮損を損金経理する他、積立金方式で処理することもできます。
を損金経理する他、積立金方式で処理することもできます。
② 翌事業年度以降
(借)減価償却費 50万円 (貸)機 械 装 置 50万円
「国庫補助金等の圧縮記帳」は、法人税法で規定されている制度であるため、租税特別措置法上の特別償却や税額控
除を重複して適用することができます。この場合、計算の基礎となる固定資産の取得価額は圧縮記帳後の金額です。
取得した固定資産について圧縮記帳や各種の特別償却や税額控除を適用する場合には、適用要件と要求されている会
計処理を十分に検討し、自社の状況に合わせて最も有利と考えられる制度を選択できるようにしておくことがポイント
となります。
しの とう
あつ こ
篠藤 敦子(公認会計士・税理士)
著者紹介
名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成
年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成
北区堂島)開業。企業の監査役を兼務している。
年に篠藤公認会計士事務所(大阪市