検出電流を用いた多段 DFT による電流センサオフセット誤差補償法の実機検証 ◎西澤 慶信,西澤 是呂久,田村 浩志,伊東 淳一(長岡技術科学大学) 1. はじめに 近年の環境規制の強化を背景にハイブリット電気自動車 (HEV)が急速に普及している。低コスト化のために低精度な電 流センサを用いることでオフセット誤差が検出電流に重畳し トルクリプルが発生するといった問題がある。そのため電流セ ンサのオフセット誤差の補償方法が提案されている(1)。従来の 補償方法では電流センサのオフセット誤差推定用パラメータ を,繰り返しシミュレーションを行って取得する必要があった ため補償アルゴリズム設計に時間がかかった (2)。これに対し て,著者らは上記の問題を解決するため,検出電流に多段離散 フーリエ変換を適用することでオフセット誤差を推定する手 法を提案している(3)。 本論文では,定常状態におけるモータ駆動時において提案手 法の有用性を実機実験にて明らかにしたので報告する。 2. 制御方法 図 1 は提案手法の制御ブロック図である。永久磁石同期電動 機(PMSM)を電流フィードバック制御により駆動する際には, PMSM の相電流を電流センサから検出するが,検出値 ius,ivs, iws には電流センサのオフセット誤差 iuerr,iverr,iwerr が重畳する。 提案手法では,検出電流を多段離散フーリエ変換に適用するこ とで,検出電流に重畳するオフセット誤差を(1)式により推定 する。 N 1 iudx ius (n) N n 0 N 1 ----------------------------------------(1) ivdx ivs (n) N n 0 N 1 i i (n) N ws wdx n 0 ここで,ius,ivs,iws はそれぞれ UVW 相電流センサ検出値であ り,iudx,,ivdx,iwdx はそれぞれ UVW 相の電流センサオフセット 誤差推定値である。また N は 1 周期あたりのサンプリング数 である。抽出した推定値 iudx,ivdx,iwdx を検出電流値から減じる ことで補償を行う。 3. 実験結果 図 2 に提案法適用前後の U 相電流 iucp,U 相オフセット誤差 電流設定値 iuerr,U 相オフセット誤差電流推定値 iudx,トルク計 算値の波形を示す。運転条件は図 1 に示した。また各相のオフ セット誤差は定格電流の 5.0%より小さく設定した。提案法を 適用後,オフセット誤差電流推定値が 0.96A まで推定してい る。これにより電流センサ検出のフルスケールに対しての 0.2%まで推定できている。設定値に対して推定値に誤差が残る 原因は,電流検出値を A/D 変換した際の離散化誤差が影響す るためである。提案法を適用することで,トルクリプル計算値 が 0.82Nm(55%)低減している。 図 3 に提案法適用前後におけるトルク計算値の高調波解析 結果を示す。高調波解析結果の直流成分がモータの定常的な 平均トルクである。電流オフセット誤差によって生じるトルク リプルの基本波成分は,インバータの出力周波数と一致する ので 15Hz となる。提案法の適用することでトルクリプルの 基本波成分を 91%低減できている。以上の結果より,検出電流 値を用いた多段 DFT によるオフセット誤差補償法の有用性を 実機実験によって確認できた。今後は従来法と提案法の利点に 着目した,オフセット誤差補償法の切り替え手法について検討 する予定である。 + id* idcp iq* vd* + iqcp Voltage Source Inveter dq ACR vq* uvw ius ivs iws IPMSM Load - iucp dq + ivcp uvw + + - iwcp iudx - ivdx iwdx Moter Phase CS Offset error estimator experimental condition Offset Error Value iuerr:1.0A(0.05p.u.) iverr:-0.06A(0.03p.u.) iwerr:-0.04A(0.02p.u.) motor parameter Pn = 5.5k W Nn = 1500 rpm Vn = 400 Vrms In = 20 Arms Pairs of poles = 3 id*:0A iq*:4.0A(0.2p.u.) N*:300(rpm) Fig.1 Control block diagram of the proposed method. Estimation and compensastion start iucp[4.0A/div] 0 U-phase offset error[1.0A/div] iudx[1.0A/div] 0 1.5[Nmp-p] 0.68[Nmp-p] Torque ripple reduction 55% 0 Calculated torque [1.7Nm/div] [1s/div] N: 300[rpm] Fig.2 Waveforms of iucp,iudx and calculated torque. with proposed method Fig.3 Harmonic analysis result of torque. 参考文献 (1) Y.Uenaka et al.: IEEJ Trans.IA, Vol.131,pp.9, (2011) (2) H.Tamura et al.: EPE’13 ,ECCE-Europe pp.10, (2013) (3) H.Tamura et al.: IPEC’14,ECCE-Asia pp.7, (2014)
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