は じ め に 当研究所は,県民の健康と生活環境を守る科学的・技術的な中核機関として,感染症等の情報の 収集解析,試験検査,調査研究,保健所関係者等への技術指導・研修,情報提供を主な業務とする 試験研究機関です. 当研究所では,健康・環境危機事案への迅速な対応を目標の第一に掲げ,常に危機の発生を意識 しながら,日常業務を通じて技術の研さんと経験を蓄積しつつ,研究者間でスキルの伝達,伝承を 行うことで,危機への継続的な訓練としています.昨年度も,ノロウイルス食中毒やデング熱など 食中毒・感染症への対応はもちろんのこと,試買した危険ドラッグから麻薬成分を検出した事例, 養殖アユから使用が禁止されている動物用医薬品が検出された事例などの発生時には迅速な原因物 質の究明を行ったところです. 一方,研究面では,腸管出血性大腸菌 O 26 の迅速分子疫学解析法の検討,指定薬物等の識別方法 の確立,微小粒子状物質(PM2.5)の成分分析と発生源の解析,アレルギー物質検査法の開発など 広範な研究を行い,得られた成果の積極的な発信に努めているところです.調査研究は,国や県の 他の研究機関とも連携して取り組んでおりますが,特に岐阜薬科大学及び岐阜医療科学大学とは協 定を締結して研究教育面で協力体制を強化しているところです. 本年 4 月に改正感染症法が施行になり,検体採取など病原体に関する情報収集体制の強化が図ら れ,県の検査検体数に関する目標数の設定もあり,すでに昨年を大きく上回るペースでの検体の受 け入れを行っています.これは,予想されたことではあるものの人員・検査機器の強化もすぐには ままならないなか,岐阜市衛生試験所と協議して,県と市の枠を超えた地衛研間の協力・連携によ る効率的な検査体制を導入することにより,対応しつつあるところです.また,感染症情報センタ ーでは発生動向調査週報の発行に加えて,保育所,学校や福祉施設など感染症弱者ともいえる子ど もや高齢者が多い施設を対象に,感染症の流行状況や予防に役立つ情報を適時に提供する「ぎふ感 染症かわら版」を新たに発行するなど情報発信をはじめています. さらに, 念願でありました疫学情報部を新設し, 県民の健康診断に関する情報収集と解析を行い, 県民の健康づくり活動等の支援につなげようと健康疫学研究に着手しているところです.他方,検 査結果の信頼性確保が重要となっていることから, 同部では病原体等検査に関する精度管理を含め, 研究所の品質保証部門として検査の質の管理を担っていきます. これからも県民の健康と安心して暮らせる生活環境の実現を目指して,全職員が努力してまいり ますのでご支援をよろしくお願いします. ここに平成 27 年度の成果と業務概要を所報第 24 号として取りまとめましたのでご高覧賜り,ご 批判やご意見等をお寄せいただければ幸いに存じます. 平成 28 年 10 月 岐阜県保健環境研究所 所長 有川幸孝
© Copyright 2024 ExpyDoc