マイナンバーの取扱いの整理

1.概要
マイナンバーについては、およそ一年前に大きな話題となりましたが、実務
的な煩雑さから、この一年程度で大幅に簡便化されました。
収集管理につきましては、会社の事情に応じて煩雑な方法を取る場合もある
かもしれませんが、ここでは基本的に会社が取る簡便な方法について、年末調
整部分を中心に纏めさせていただきます。
なお、基本的に中小規模事業者を想定したものですので、あらかじめお含み
おき願います。
2.本人確認について
会社が従業員からマイナンバーを集める際に、免許証等で身元確認を併せて
行うのが原則ですが、番号法上、雇用関係にあることで人違いでないことが明
らかな場合には本人確認は不要とされています。
この点については、入社時に十分な身元確認を行っていることが前提となり
ますので、入社時に同等の身元確認を行う必要があります。
また、ある程度継続的に働くことが見込まれるなら、この際にマイナンバー
も収集してしまうのが望ましいでしょう。
3.保管方法について
保管方法については、主に以下の3つが考えられるでしょう。
①
現物で保管
②
社内サーバーに保管
③
クラウド等の外部に保管
必ずしもというわけではありませんが、それぞれの特徴は次のとおりです。
①
金銭的なコストが低く、シ
ステム面での検討も要しな
いので簡便である。
②
一般論としては現物よりセ
キュリティーレベルは高
く、スペースも取らない
③
適正な業者を選べば安全であ
り、細かい設計まで考える必
要も無く手間も省ける
専用スペースなど物理的な
手当てが必要となり、セキ
ュリティーレベルも比較的
低い
システム面でのコストや知
識を要する。
コストが高くなり、仕様や委
託先の変更が難しい
4.年末調整について
①扶養控除等申告書
原則は記載することとなりますが、平成 29 年分以降について、マイナンバー
に関する帳簿を備えている場合には、扶養控除等申告書に記載する必要はあり
ません。
また、帳簿については、扶養控除等申告書などに基づいて作成されている必
要があり、また、上記の取扱いが平成 29 年分からということですと、基本的に
平成 28 年分の扶養控除等申告書には記載するということになりますが、次のよ
うな場合には記載せずとも問題ございません。
●適正な方法で既にマイナンバーを収集・管理している
●従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバーについては給与支払者に提供
済みのマイナンバーと相違ない」旨を記載する
●既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除
等申告書に表示する
上記の一連の流れで、結果的に扶養控除等申告書にマイナンバーを書かず、
かつ、マイナンバーはデータ等で保管するのであれば、物理的な保管コストは
大きく下がります。
①廃棄可能な用紙で従業員からマイナンバーを取得
②帳簿の作成(データで保存)
①の用紙は廃棄
③平成 28 年分の扶養控除等申告書の収集
上記②と所定の手続によりマイナンバーの記載は不要
上記②の帳簿と紐づけて管理
④平成 29 年以降分の扶養控除等申告書の収集
③に基づく帳簿(結果的に②)により作成された帳簿を備えているので
マイナンバーの記載は不要
5.報酬・地代等の支払先のマイナンバー
基本的には回収する必要があります。
案内書面等を作成の上、郵送等でマイナンバー及び確認書類を回収するのが
無難な方法でしょう(確認書類は手元に保存する必要はありません)
。
6.源泉徴収票について
税務関係や社会保険関係の手続において記載する必要がありますが、源泉徴
収票については、あくまで税務署提出用にマイナンバーの記載が必要というだ
けで、従業員交付用にはマイナンバーの記載は行いません。
7.税理士や社労士とのやり取りについて
契約等があれば、特段の決まりは有りません。
メール等でも法律上不可ではありませんが、安全管理上、書面による受け渡
しが一般的と考えられます。
8.総括
マイナンバーの帳簿(台帳)を現物で保管するか、データで保管するかにつ
いては、その会社の諸事情によって異なるとは思います。
しかし、扶養控除等申告書にマイナンバーを記載した場合、扶養控除等申告
書をマイナンバーの保管レベルで保管しなければならないほか、扶養控除等申
告書の保管期間が過ぎた時に、結局はマイナンバーの記録を何かしら残すため
の帳簿を作ることになるので、扶養控除等申告書には記載しない方が良いでし
ょう。