ウェアラブル端末に向けた高効率な 電波式ワイヤレス給電・通信 東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 教授 楳田 洋太郎 1 新技術の概要 • ミリ波または準ミリ波帯のアレーアンテナを用 いることにより、電波方式ワイヤレス給電によ り、数m以上の遠隔からウェアラブル端末に、 従来にない高効率の常時給電を行う。 • 送信機部分に全ディジタル方式の包絡線パ ルス幅変調技術を適用することにより、高効 率かつ耐環境性の高い通信を簡易かつ均一 に実現する。 2 従来技術とその問題点 • ウェアラブル端末は小型の内蔵バッテリーにより 動作 ⇒ 頻繁に充電する必要あり • 近傍磁界を用いた非接触充電方法が実用化 ⇒ 充電可能距離はアンテナの大きさの数倍程度 ⇒ 充電中は端末の使用が制限される問題あり 3 従来技術とその問題点(つづき) • 従来の近傍磁界を用いた非接触充電方法では、 充電中は端末の使用が制限される問題あり ⇒ 遠くまで届く電波による常時給電が実現すれば 端末使用制限は解消可能 4 従来技術とその問題点(つづき) • 電波方式遠隔ワイヤレス給電・通信システムの構成例 ワイヤレス 給電用送信機 DC/AC変換 (アレーアンテナ 流 制御) アンテナ 1 ・ ・ ・ DC電源 高効率ビーム収束・ DC/AC変換 アンテナ 1 チャンネル情報 流 アンテナ 1 M ・ ・・ 送受信回路 電力 送受信回路 電力 ・ ・ ・ DC電源 整流回路 バッテリー ・ ・ ・ 基地局通信装置 ウェアラブル 通信端末 ・ ・・ N 高効率AC/DC変換 高効率ディジタル送信機 L 5 従来技術とその問題点(つづき) • 問題点: 電波による給電は効率が低い(1%程度以下) ⇒ 十分に充電するためには、ワイヤレス給電 用送信機の出力電力を大きくしなければな らないことが問題 6 従来技術とその問題点(つづき) • 別の問題: ウェアラブル端末内の通信用送信系中の電力 増幅器の電力効率が低い ⇒ 端末送信系の消費電力が大きい ⇒ さらにワイヤレス給電用送信機の出力電力 が大きいことが必要 7 従来技術とその問題点(つづき) • 従来のウェアラブル端末遠隔ワイヤレス常時給電の課題まとめ: • 電波方式ワイヤレス給電の電力効率が低い • 端末送信系の電力効率が低い • ワイヤレス給電用送信機は多くの電力を出 力することが必要 • 電波による遠隔ワイヤレス常時給電は利便 性は高いが、エネルギーの無駄が大きい 8 新技術の特徴・従来技術との比較 • 新技術: • 従来のウェアラブル端末の電波による遠隔ワイヤレ ス常時給電は、利便性は高いが、エネルギーの無 駄が大きい • ワイヤレス給電効率を飛躍的に高める • 端末送信系の電力消費を抑える • 電波による遠隔ワイヤレス常時給電に必要な給電 用送信機の送信エネルギーの無駄を抑える 9 新技術の特徴・従来技術との比較(つづき) • 新技術(つづき): • 電波による遠隔ワイヤレス常時給電に必要な給 電用送信機の送信エネルギーの無駄を抑える • 遠隔ワイヤレス常時給電による、充電不要かつ 省エネルギーなウェアラブル通信システムを実 現する 10 新技術の実現手段(1) • 問題点(1): • ウェアラブル端末等の小形端末ではアンテナサイズ も小形になる ⇒ アンテナ利得が低下 ⇒ 給電効率が低下 • 解決策(1): • アンテナの高利得化: – 高周波化 ⇒ アレーアンテナの多素子化 ⇒ ビーム 収束性能向上 ⇒ ミリ波帯多素子平面アレーアンテナの使用 11 新技術の実現手段(1)(つづき) • ミリ波多素子平面アレーアンテナを用いたウェアラブル 端末への電波式無線電力伝送系の一例 アレーアンテナの諸元 素子アンテナ 方形MSA 素子辺長:a,b 0.325λ[m] 素子間隔:d 0.664λ[m] 比誘電率:εr 2.27 アンテナ 送信アンテナ 0.2m四方 外形寸法 受信アンテナ 0.02m四方 アンテナの位置関係 正面のみ ワイヤレス給電用 送信機アンテナ ウェアラブル端末 アンテナ 素子アンテナ: 方形マイクロストリップ (パッチ)アンテナ 12 新技術の実現手段(1)(つづき) • 実装可能なアレーアンテナの素子数と周波数の関係 13 新技術の実現手段(1)(つづき) • 各伝送周波数における電力伝送効率と伝送距離の関係 アレーアンテナ間の伝送効率は周波数の二乗に比例して向上 ⇒ アンテナの利得向上には高周波化(ミリ波)が有利 14 新技術の実現手段(1)(つづき) • ミリ波を用いた給電におけるDC/AC変換、 AC/DC変換の高効率化 – ミリ波化による問題点: • 高周波化によるトランジスタ利得の低下 ⇒ 効率低下 – 解決策: • 高調波処理の導入(F級動作等)による電力増幅器 (DC/AC変換)、整流器(AC/DC変換)の高効率化 • ミリ波特性に優れた高速な半導体素子(GaN系トラ ンジスタ、InGaAs系トランジスタ等)の使用 15 新技術の実現手段(2) • 問題点(2): – ウェアラブル端末内通信用送信系中の電力増 幅器の電力効率が低い • 解決策(2): – 最も高効率(理論効率100%)なスイッチング電力増 幅器を使用 – 定振幅のスイッチング電力増幅器で線形増幅すること が必要 ⇒ 搬送波の包絡線(振幅)をオン・オフしパルス幅 変調(PWM)する方式のディジタル送信機を開発 16 新技術の実現手段(2)(つづき) • スイッチング電力増幅器(D級増幅器) 17 新技術の実現手段(2)(つづき) • ディジタル送信機(直交変調型包絡線パルス幅変調方式) U/C 出力 (I-ch) パルス幅変調 (PWM) “1”“-1”“0” ベースバンド 信号 t COS -COS t fs 3値 DSM U/C “1”“-1”“0” Q I-Q 交互出力 U/C t ベースバンド 信号 I I Q COS -SIN -COS SIN t アンテナ 送信 3値 DSM Q-ch 交互出力 fc I-ch t D級 PA fi BPF 増幅 fc ※DSM: Δ-Σ変調器 t パルス幅変調 (PWM) ※BPF: バンドパスフィルタ U/C 出力 (Q-ch) -SIN ※fs: DSM 標本化周波数 SIN t 16 ※fc:搬送波周波数 16 ※fi: 交互出力周波数 18 新技術の実現手段(2)(つづき) • 直交変調型包絡線パルス幅変調方式ディジタ ル送信機の効果 – 定振幅のRF信号を振幅に合わせてオン・オフ(包 絡線PWM) ⇒ 等価的に振幅を表現可能 • 高効率かつ高い線形性(低歪)で増幅が可能 – 電力増幅器を除き全ディジタル化が可能 • 耐環境性(ロバスト性)が高い • 均一性が高いため高歩留まり、低コスト化が可能 19 想定される用途 • ウェアラブル端末の常時ワイヤレス給電 • 携帯電子機器(携帯電話、スマートホン、タブ レット端末、ノートパソコン等)の常時ワイヤレ ス給電 • 電源を持たないセンサーシステム(センサー ネットワーク等)への常時ワイヤレス給電 • 一般に、低消費電力かつ耐環境性の要求さ れる無線通信端末・装置の送信系 20 研究開発の進捗状況 • ミリ波電波方式ワイヤレス給電: – 高周波化によるアンテナ効率向上の理論的予測 は完了 – ミリ波帯多素子アレーアンテナ、電力増幅器、整 流器の設計、試作、評価は今後実施予定 • 高効率ディジタル送信機: – ハードウェア規模の小さい構成を提案(特許1件)、 シミュレーションにより特性を評価済み – 試作による実験的検証は今後実施予定 21 実用化に向けた課題 • ミリ波電波方式ワイヤレス給電: – 高効率な多素子平面アレーアンテナの設計・製 造および制御 – ミリ波による被曝評価、EMC評価 • 高効率ディジタル送信機: – 量子化雑音の低減(アンテナ放射による与干渉 の低減、電力効率の向上) 22 企業への期待 • 下記のテーマについて研究開発(設計、試作、 評価)に共同で取り組んでいただける企業を 募集しています: • 高効率電波ビーム収束が可能なミリ波多素 子平面アレーアンテナ • ワイヤレス給電用高効率スイッチング電力 増幅器および高効率整流器 • 省電力通信用高効率ディジタル送信機 23 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 : 信号処理装置及び送信装置 : 特願2014−204904 : 学校法人東京理科大学 : 楳田洋太郎、野田昂志、 染谷和、飯倉祥晴 24 お問い合わせ先 東京理科大学 研究戦略・産学連携センター 担当URA 国本 幸紀 TEL 03−5228−7440 FAX 03−5228−7441 e-mail ura@admin.tus.ac.jp 25
© Copyright 2024 ExpyDoc