S7-3 S7-5 腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術におけるIPOM-Plusの メリットは何か? 1 1 1 腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術におけるヘルニア門閉鎖の工夫 浦上 淳、髙岡 宗徳、石田 尚正、林 次郎、磯田竜太郎、 吉田 将和、湯川 拓郎、平林 葉子、深澤 拓也、吉田 和弘、 山辻 知樹、中島 一毅、森田 一郎、羽井佐 実、猶本 良夫 1 諏訪 勝仁 、牛込 琢郎 、大津 将路 、成廣 哲史 、 1 1 2 下山 雄也 、岡本 友好 、矢永 勝彦 1 川崎医科大学附属川崎病院 総合外科 2 東京慈恵会医科大学附属第三病院外科、 東京慈恵会医科大学外科学講座 【目的】腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術(LIHR)におけるヘル ニア門閉鎖およびメッシュ補強(IPOM-Plus)の有用性を検証す る。 【方法】2011年10月から2016年8月までに慈恵医大第三病院で 行ったLIHR 38例についてIPOM-Plus(n=26)とヘルニア門を 閉鎖せずメッシュ補強のみの修復法(sIPOM)(n=12)の手術成 績を比較検討した。 【結果】IPOM-Plus、sIPOMについて、患者年齢中央値、性差(M : F)、BMI中 央 値、ASA(1 : 2 : 3)の 順 で 79(46-83)、76.5 (49-85)、16:10、8:4、25.26(19.1-25.67)、25.56(18.435.84)、1:12:5、0:5:0で 患 者 背 景 に 差 は な か っ た。 部 位 (umbilical : epigastric : infraumbilical : iliac : suprapubic : subcostal)、最大横径中央値はそれぞれ13 : 4 : 6 : 2 : 1、5 : 0 : 1 : 4 : 1 : 1、6(2-15)、6.5(2-187)でヘルニア性質にも 差はなかった。手術時間中央値、術後在院日数、合併症発生率、 mesh bulge発生率、再発率はそれぞれ119.5(65-265)、119 (80-301)分、は6(1-34)、7(2-18)日、3(12%)、2(17%)例、 2(17%)、0例(p=0.0325)、1(8%)、0例でmesh bulgeのみ IPOM-Plusで抑制されていた。 【結語】われわれのLIHRの成績では、IPOM-PlusはsIPOMと比 較しmesh bulge抑制の点で優れていた。 【はじめに】当科では2013年からIPOMを行っていたが、最近は ヘルニア門閉鎖を加えたIPOM-plusを行うようにしている。ヘ ルニア門閉鎖に対する工夫を報告する。 【手術手技】最初にヘルニア門縁より5-10cm離れた左下腹部ま たは左季肋部を小切開し5mmまたは12mmポートを挿入し、気 腹する。腹腔内観察後に5mmポート2-3本をメッシュより外側 となる部位に挿入。腸管や大網の癒着を離した後にヘルニア門 を確認する。ヘルニア門周囲の筋膜約1cmをとるように、非吸 収性モノフィラメント糸とEndCloseを用いて、腹腔内でヘルニ ア門閉鎖を行う。メッシュをヘルニア門閉鎖部より約3cmのマー ジンを覆う大きさにトリミングする。これを4-8点の非吸収性 モノフィラメント糸にて筋膜に固定し、さらに全周性に吸収性 タッカーでDouble Crown法で固定する。 【 結 果 】IPOM-plusを、 腹 壁 瘢 痕 ヘ ル ニ ア 8例、 臍 ヘ ル ニ ア 1 例、白線ヘルニア1例に行った。メッシュはPCO Mesh 3例、 VENTRALIGHT 7例。男女比3:7、平均年齢73歳であった。 局在部位は上腹部3例、下腹部6例、臍部1例で、平均のヘルニ ア門の最大径は6.8cm。平均手術時間150分、平均出血量少量、 平均術後在院日数7.8日。ファーストポート部分でのポートサイ トヘルニアを1例に認めた。 【結語】IPOM-plusはseromaやbulgingを防止し、再発率を低下 させると期待される。術者と助手を固定し、定型化することで、 大きな合併症無く施行できている。 S7-4 S8-1 腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術におけるヘルニア門閉鎖はメッ シュバルジの発生を予防する 無床クリニックにおける日帰り単孔式TEP法の治療成績 中林 幸夫、小山 能徹、百瀬 匡亨、平本 悠樹、飯田 智憲、 船水 尚武 岡山そけいヘルニア日帰り手術 Gi外科クリニック 川口市立医療センター 消化器外科 【目的】IPOMおよびIPOM-Plusにおける治療成績、メッシュバルジの発生 状況を検討し、IPOM-Plusの意義を明らかにする。 【対象】2007年6月以後、腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した45 例(IPOM 22、IPOM-Plus 23)。 【検討項目】 1. ヘルニア門横径、手術時間、出血量、鎮痛薬使用量、術後在院期間、再 発、メッシュ感染、seroma、メッシュバルジ。 2. 術前後にCTを施行した正中腹壁瘢痕ヘルニア30例の腹直筋横径、縦径、 腹直筋間離開の改善状況、メッシュ筋膜固定の有無とメッシュバルジの発生 を検討。 3. IPOMを施行した正中腹壁瘢痕ヘルニア14例に対し、ヘルニア門横径、 年齢、BMI、性差、原疾患からメッシュバルジの危険因子を検討。 【結果】 1.<IPOM:IPOM-Plus> ヘ ル ニ ア 門 横 径(cm)(5.1:5.1; 最 大 12:14)、術後在院日数(4.2:3.7日)、再発(1:0例)、メッシュ感染(0:0 例)、seroma形成には差なし。平均手術時間(172:218分)、平均出血量 (3.6:7.9ml)、鎮痛薬使用量(1.1:2.0回)は増加(p<0.05 )。 2. 正中腹壁瘢痕ヘルニア;平均腹直筋横径(5.4:6.1cm)(p<0.05 )、平均 腹直筋縦径(1.0:0.9cm)(N.S. )、腹直筋間(4.6:2.5cm)(p<0.01 )、メッ シュバルジの発生(6/14:1/16例)はメッシュ固定法に差なく(N.S. )、ヘル ニア門閉鎖の有無が関与(p<0.05 )。 3. IPOMにおけるメッシュバルジは性(男/女) (0/5:6/9) (p<0.05 )のみ関与。 【結語】IPOM-Plusはメッシュバルジを減少させ、腹壁機能改善の可能性が 示唆される。 池田 義博 【目的】当院は無床クリニックとして、単孔式腹腔鏡下鼠径ヘル ニア修復術(単孔式totally extraperitoneal repair;以下単孔式 TEP法)を日帰り手術で提供している。これまでの症例を検討し、 今後の展望を考察する。 【方法】2015年4月開院から2016年7月までに施行された成人鼠 径ヘルニア316例について患者背景、術式、術後データ、合併 症について検討した。術後データとしては、術後在院時間、術 翌日の痛みスケール、術後1週間坐薬使用量と社会復帰日数を分 析した。 【 結 果 】316例 中301例 が 単 孔 式TEP法、Lichtenstein法 が15 例であった。301例中243例に膨潤局所麻酔(以下膨潤麻酔)を 併用した。単孔式TEP法において、術翌日の痛みスケールでは 『痛くない』が全体で38.3%、膨潤麻酔併用群で44.0%、膨潤 麻酔非併用群で13.8%であった。術後1週間坐薬使用量では、 78.3%で3個以内の使用であった。坐薬使用量に膨潤麻酔併用 群、非併用群間の有意差は認められなかった。社会復帰日数は 全例7日までに復帰し、80.6%は術後3日目までに復帰していた。 合併症は16例に漿液腫を認めた。 【結語】単孔式TEP法に膨潤麻酔を併用することで、術後早期の 疼痛を軽減できた。無床クリニックおいても、工夫を重ねるこ とで、より一層安全で、患者のニーズを満たす日帰り手術が可 能と考える。 - 26 - S8-2 S8-4 静脈麻酔、自発呼吸下のTEP法による日帰り手術の経験 腹腔鏡下ヘルニア修復術TEP法の日帰り手術への導入 高島 格、長浜 雄志、北村 雅也 長浜 雄志 、高島 格 1 1 新宿外科クリニック 当院は、日帰り手術専門の無床診療所として2007年開院、そけ いヘルニアの外来手術を4280件(9年3か月間)行ってきました。 術式は全て前方アプローチによる手術で、主にプラグ法でした。 近年、国内ではそけいヘルニア手術を内視鏡下で行うことが増 えてきました。内視鏡のそけいヘルニア手は、前方アプローチ の手術に比べ、腹腔内の操作や腹膜前腔を広範囲な剥離など手 術侵襲が大きく、麻酔も深い麻酔が必要になり、日帰り手術に は不向きと考えられます。今回、私たちは、前方アプローチの 日帰り手術で行っている麻酔に準じた麻酔で、内視鏡下そけい ヘルニア修復術を日帰り手術で行ったので報告します。 術 式 は、TAPP法 で は 筋 弛 緩 薬 の 投 与 無 し で は 困 難 な の で、 TEP法(単孔式)で行いました。麻酔は、静脈麻酔+局所麻酔に 笑気と少量のセボフルレンを使用しました。静脈麻酔は、プロ ポフォール、レミフェンタニルで導入維持を行いました。局所 麻酔は、step by step法で皮膚皮下組織、腹直筋、腹膜前腔、 内そけい輪に浸潤麻酔を行いました。 2015年11月から2016年7月までに89症例のTEP法によるそ けいヘルニアの日帰り手術を行いました。静脈麻酔による舌根 沈下は、前方アプローチでは問題無く操作できる程度のもので あっても、TEP法ではかなり操作がしづらくなりました。麻酔 を調整しながら、安定して手術を行えるようになってきたので、 症例を重ね発表したいと思います。 2 2 九段坂病院 外科、 新宿外科クリニック 【目的】TEP法による日帰りヘルニア修復術の成績、問題点につ いて検討し報告する。 【方法】2015年12月より日帰り単孔式TEP法を導入した。麻酔 は局所麻酔を併用したfacemaskによる全身麻酔(笑気、酸素、 sevoflurane、レミフェンタニル、プロポフォール)により行い、 呼吸状態によってlaryngeal maskを使用した。筋弛緩薬は使用 せず、手術終了後独歩で回復室に移動し1∼2時間の休息後に帰 宅した。 【成績】59例に対してTEP法による日帰り手術を施行した。内訳 は片側54例、両側5例、初発54例、再発5例。手術時間は24 ∼135分(平均45分)、再発例2例で広範な腹膜損傷により鼡径 部切開法への変更を要したがほか57例ではTEP法により手術を 完遂し得た。覚醒遅延はなく全例が独歩により回復室へ移動し、 当日中に帰宅し、次回外来通院日まで通常の在宅生活を送り得 た。 【考察】TEP法は筋弛緩薬を使用せずに施行可能であるため初発 例については両側例であっても問題なく、日帰り手術をとして 施行可能であった。一方再発例は鼡径部切開法術後のみを対象 としたが2例で広範な腹膜損傷を来たし、鼡径部切開法への変更 を要した。筋弛緩薬を使用していないため経腹腔的な腹膜修復 は困難で、今後適応の絞り込みや、広範な腹膜損傷を来した際 の経腹膜外的な修復術の導入も必要であると考えられた。 【結語】TEP法は初発例を対象に日帰りヘルニア修復術に導入可 能である。 S8-3 S8-5 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の日帰り/短期滞在手術の現状 と将来について 局所麻酔下TEP法による24時間入院手術 当間 宏樹、江口 徹、藤井 圭、佐藤 優、錦 建宏、 小原井朋成、成富 元、廣田伊千夫 慶應義塾大学医学部 外科学 和田 則仁、古川 俊治、北川 雄光 原三信病院 外科 【目的】当院では、平成10年に鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下 鼠径ヘルニア修復術(以下LIHR)の日帰り手術を開始して以来、 27年12月までに計313例を経験し、日帰り/短期滞在手術にお けるLIHRの有用性を報告してきた。今回、当院におけるLIHR の日帰り/短期滞在手術の現状を検討し、今後の展望について報 告する。 【対象と方法】2012年4月より2016年3月までの期間、当院で 施行した鼠径ヘルニア修復術519例中、日帰り/短期滞在手術を 施行した108例について、全体の治療成績をretrospectiveに検 討し、術式別の比較を試みた。 【結果】108例(初発104/再発4)中、LIHR81例、鼠径部切開法 27例に施行。術中偶発症は認めず、術後合併症は皮下血腫4例、 seroma6例、疼痛2例、再発1例であった。術直後の食事摂取、 鎮痛処置はLIHRが鼠径部切開法より有意に良好(p=0.0382、 p=0.0044)であった。 【考察・結論】当院における鼠径ヘルニアの日帰り/短期滞在手術 の治療成績は、術式に関わらず、良好であった。LIHRの治療成 績は、術後回復の観点からも、より良好であり、平成27年の短 期滞在手術等基本料の導入後、増加が見込まれる鼠径ヘルニア の日帰り/短期滞在手術において、LIHRは最適な術式と考えら れた。 腹腔鏡下ヘルニア手術は、鼠径ヘルニアに対する標準治療の一 つに位置づけられる。しかしながらopen surgeryと対比して腹 腔鏡手術固有の問題点として、ポート位置によるアプローチ方 向の制限、4自由度の動作制限、2次元画像による立体視の欠如、 力触覚の低下などが挙げられる。このような制限の中で、困難 症例(高度肥満、骨盤腔・腹膜前腔手術既往、再発、巨大ヘルニア、 非還納性ヘルニア、滑脱型ヘルニアなど)に対する手術適応は慎 重にならざるを得ない。しかし、腹腔鏡手術には拡大視効果に よる微細解剖の把握、出血が少ないことによる綺麗な術野、深 部での良好な視野展開など利点もあり、内視鏡外科手術に習熟 し、腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術に十分な経験を有する場合、困 難症例に立ち向かうことも許容されると考えられる。本発表で は、困難症例に対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術に必要な知識 と技術について、文献的考察を交えて概説する。 - 27 -
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