今さら聞けない資機材の使い方 〔第 4 3回〕ス タ ッ ク 若 井 勇 人 もんべつ おこっぺ (紋別地区消防組合消防署興部支署) 1 は じ め に オホーツク海 第35回「 都市型救助器具 」に引き続き、興部支署の若井 ● 興部町 ● 紋別市 が担当いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ・興部町の紹介 私が住んでいる興部町( おこっぺちょう)( 写真1)は ● 北海道のオホーツク海沿岸のほぼ中央に位置し、総面積 札幌市 362.45k㎡、人口約4,000人の漁業と酪農( 写真2)が盛んな ● 釧路市 町です。 四季折々の鮮やかな自然が特徴の町ですが、特に1月半 ばを過ぎ、冬の寒さが一段と厳しくなる頃に流氷( 写真3) がやってきます。 興部町を管轄する紋別地区消防組合消防署興部支署は、 写真1 興部町の位置図( 興部町ホームページより) 職員数が14名で、年間約4件の火災と約160件の救急に対 雪が「 降る」または「 積もっている」場合、それはスタ 応しています。 ックする可能性がある道路です。 さて、今回は『 スタック』のお話です。 スタック(stack)とは「 積み重ねる」という動詞/名詞 そんな道路を走る前に資機材( 写真4)を準備すること で、それが転じて雪の上に車が乗り上げてしまい動けなく が必要です。 なる状態を指します。北海道では「 雪にはまる」、それよ 今回は救急車を運転中に、雪道でスタックしてしまった り的確なのは方言で「 あずる」と言っています。 時の「 脱出方法 」を紹介します。 写真3 流 氷 写真2 興部町の特産品( 興部町ホームページより) 1 フォント換え資機材第43回_A.indd '16.11 1 '16.11 1 2016/09/13 17:54:59 アクセルは強く踏まずにゆっくりと踏みましょう。 それでも脱出できないときは、前後進を素早く繰り返 し、反動で脱出を試みましょう。 ※注意点 強く踏んでしまうとタイヤが空回り( タイヤを回転させ てしまうと雪がツルツルになり摩擦がなくなります)して 逆効果になることもあります。 ・雪道脱出具( 写真7、写真8、写真9) タイヤの周りの雪を除き、雪道脱出具を敷きましょう。 写真4 今回紹介する資機材 2 脱出方法 「 1.はじめに」で紹介した資機材も含め、簡易的な方 法から順次紹介します。 ・アクセル( 写真5、写真6) ハンドルをタイヤがまっすぐになるように戻し( まっす ぐに戻すことにより、進行方向へ力が伝わりやすくなりま す)、ギヤを「 L 」にしましょう。 写真7 雪道脱出具 写真5 雪に埋まったタイヤ 写真6 慎重なアクセル操作 2 フォント換え資機材第43回_A.indd ’16.11 2 写真8 雪道脱出具( 設定中 ) 写真9 雪道脱出具( 設定完了 ) ’16.11 2 2016/09/13 17:55:02 今さら聞けない資機材の使い方 脱出具をタイヤに噛ませことにより接地面に力が伝わり スコップなどで雪にはまった「 車の下の雪 」、「 タイヤ ます。 周りの雪 」を掘り出し、雪を取り除きましょう( 車体の下 脱出具がない場合は毛布なども有効です。 から雪を取り除くことにより、タイヤに車重がかかりま ※注意点 す)。 脱出具がタイヤに巻き込まれて飛ぶ可能性がありますの ※注意点 で周りに人がいる場合は注意しましょう。 スコップで車体及びタイヤを傷つけないようにしましょ う。 ・人 力( 写真10 ) 車体自体を人力で押しましょう。 もし周囲に協力者がいる場合は手伝ってもらいましょ う。 機関員は前段で紹介した「 アクセル」を応用しましょう。 そして、押して動いた場合はその勢いで雪の少ないところ まで走り続けましょう。 途中で止まるとせっかく動いたのにまたはまってしまい ます。 ※注意点 機関員は車体周囲の隊員をひかないように、車体を押し 写真12 雪を取り除く ている隊員はひかれないように気をつけましょう。 ・牽引フック、牽引ロープ 車体の牽引フックを「 探す」または「 取り付ける」、そ して牽引ロープ等をかけ、引いてもらいましょう。 ※注意点 牽引フック以外のところにロープをかけると、故障の原 因になります。 ( 車体によって牽引フックの位置に違いが あります。) ◎牽引フックの取り付け方 ①工具袋から牽引フックを取り出しましょう( 写真13 )。 写真10 救急車を人力で押す ・スコップ( 写真11、写真12 ) 写真13 牽引フックの収納状況 ②牽引フック取付けカバーを手前に引き、カバー離脱後は 目視で取り付け穴を確認しましょう( 写真14 )。 写真11 スコップ 3 フォント換え資機材第43回_A.indd ’16.11 3 ’16.11 3 2016/09/13 17:55:03 今さら聞けない資機材の使い方 写真14 牽引フックの取り付け部分 写真17 牽引フックに牽引ロープを掛ける ③取り付け方法については、ネジ状になっているので、回 リアの牽引についてはフックが元々ついているので、牽 しながらしっかりと差し込みましょう( 写真15 )。 引ロープを掛けて引いてもらいましょう( 写真18 )。 ※注意点 差込みが甘いと牽引した時に、抜けてしまうことがある ので、確実に締まっていることを確認しましょう。 ▲ ▲ 写真18 リアの牽引フックの位置 3 おわりに 写真15 牽引フックの緩みがないように締める 今回スタック状態からの脱出方法について紹介しました が、スタックしないように安全運転を心掛けることは大前 ④最後に牽引フックを救急車と救急車を牽引する車両に 提です。 かけ、ゆっくり引いてもらいましょう( 写真16、写真 しかし、緊急車両を取り扱う上で「 除雪されていない雪 17 )。 道 」や「 雨で緩んだ砂利道 」などといった、悪条件な路面 を走行することもあります。そんな路面を走行する際の、 アクシデントに備えておくべきだと思います。 最後になりますが、今回このような執筆の場を与えてい ただき本当にありがとうございました。 次回は「 ○○○○○○ 」の予定です。 著者 わかい ゆうと 名前:若井 勇人 所属:紋別地区消防組合消防署 興部支署 ところ 写真16 牽引ロープ 出身:北見市常呂町 消防士拝命:平成22年4月1日 趣味:空手道、ドライブ 4 フォント換え資機材第43回_A.indd ’16.11 4 ’16.11 4 2016/09/13 17:55:06
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