1 セルロース液晶エラストマーによる 応力センシング 東京理科大学 理学部第一部 応用化学科 准教授 古海 誓一 ふるみ せいいち 【本発明の概要】 本発明では、環境や人体に優しく低コストなセルロースの特徴 に着目して、独自の分子デザインによって全可視波長領域でブ ラッグ反射を示し、しかもゴム弾性も兼ね備えた新しいセルロ ース液晶エラストマーの開発に成功した。このセルロース液晶 エラストマー膜に機械的な圧縮力を加えると、圧縮した部分だ けブラッグ反射の反射色が可逆的に変化する特性があり、応力 センシングが可能であった。 2 【これまでの研究背景】 セルロースはβ-グルコースが直鎖状に重合 した天然高分子であり、木材、綿、紙の主 成分であるので、古くからわれわれの日常 生活において身近な高分子材料である。 ∼ セルロースによる液晶の発現 ∼ 3 【本研究のモチベーション】 本研究では、側鎖にアクリロイル基といった架橋性官能基を導 入した新しい架橋性セルロース誘導体を合成し、ブラッグ反射 特性とゴム弾性を兼ね備えたセルロース液晶エラストマー膜の 作製とともに、歪みセンサーとしての応用を目指す。 液晶性を示すセルロース誘導体の合成(HPC-Ac) 4 【HPC-Acの反射ピーク特性】 5 6 【液晶性とゴム弾性を示すセルロース誘導体(HPC-Bu/Ac)】 7 【HPC-Bu/Acによるフルカラーイメージング】 8 【ゴム弾性を利用した応力センシング】 HPC-Bu/Acを架橋した膜は、反射特性だけでなくゴム弾性も示すセルロース 液晶エラストマー膜になり、歪みセンサーとして機能することを発明した。 【想定される用途】 社会インフラセンサー 本セルロース液晶エラストマー膜を崩落の危険性のあるトンネ ルの外壁などに貼り付ける。構造物にクラックや歪みが生じた 場合、反射色が変化するので、いち早く危険性を検知できる。 ウェアラブルセンサー 本セルロース液晶エラストマー膜を人体の表面に貼り付ける。た とえば、手首に貼り付ければ、脈拍センサーとして応用できる 可能性がある。また、筋肉の伸縮状態や関節の屈曲状態を反射 色でモニターできる。 反射型ディスプレイ 簡便かつ低コストなカラー表示材料として応用できる。 9 【新技術の特徴】 原料であるセルロースは地球上に豊富に存在し、人体 や環境に優しい。 本発明では、セルロースを簡単な化学反応によって、 反射特性とゴム弾性を併せ持ったセルロース液晶エラス トマーを調製でき、しかも歪みセンサーとして応用でき ることを見出した。 従来、セルロース誘導体によるコレステリック液晶は 数多く合成されてきたが、ゴム弾性を兼ね備えたセル ロース誘導体は初めての発明である。 10 【実用化に向けた課題】 セルロース液晶エラストマー膜に圧縮もしくは延伸し た場合の反射波長のシフトについて定量的に評価されて いない。今後、実験を積み重ねて、データを蓄積する。 セルロース液晶エラストマー膜の特徴である膜の変形 率と反射波長のシフト量が不十分である。これらの特性 値が最大となる架橋性セルロース誘導体を合成する。 反射率の向上には、液晶の分子らせん構造を高配向に する必要があるので、配向処理の手法について最適化す る。 11 【企業への期待】 新しい架橋性セルロース誘導体の開発に協力して下さ る化学・材料関連の企業と共同研究を実施したい。 反射特性とゴム弾性を兼ね備えたセルロース液晶エラ ストマー膜の機械的特性評価について協力して下さる精 密機器関連の企業と共同研究を実施したい。 社会インフラセンサーの実用化研究について協力して 下さる建設関連の企業と共同研究を実施したい。 ウェアラブルセンサーの萌芽的研究について協力して 下さる医療機器関連の企業と共同研究を実施したい。 12 13 【本技術に関する知的財産権】 •発明の名称: “液晶材料、液晶フィルム及びその製造方法、 センサー、並びに、光学素子” •出願番号 :特願2016-186266 •出願人 :学校法人東京理科大学 •発明者 :古海 誓一・鈴木 花菜・石﨑 拓郎 【産学連携の経歴】 • 1998∼2001年 博士課程の時に、富士フイルム(株)と共同研究を実施. (東京工業大学大学院、指導教員: 市村 國宏 先生) • 2010∼2014年 JST・さきがけ「ナノシステムと機能創発」領域で研究に従事. (物質・材料研究機構、領域総括: 長田 義仁 先生) • 2010∼2013年 複数企業との共同研究を実施.(物質・材料研究機構) • 2014∼2015年 JST・研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) フィージビリティスタディ(FS)ステージ 探索タイプで研究に従事. (東京理科大学) 14 15 問い合わせ先 東京理科大学 研究戦略・産学連携センター 担当URA 中川 隆 TEL 03−5228−7440 FAX 03−5228−7441 e-mail ura@admin.tus.ac.jp
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