炎症誘導生理活性物質による皮膚発がんの仕組みを解明

【発信】国立大学法人
富山大学総務部広報グループ
News Release
(TEL)076-445-6028
(FAX)076-445-6063
平成 28 年 10 月 31 日
報 道 機 関
各位
炎症誘導生理活性物質による皮膚発がんの仕組みを解明
(環境ストレスによる皮膚がん治療への応用に期待)
国立大学法人富山大学大学院医学薬学研究部(医学)皮膚科学講座の吉久陽子(よ
しひさ・ようこ)特命助教、清水忠道 教授、放射線基礎医学講座の近藤隆 教授らの
グループは、マウスの表皮細胞を用いて、炎症誘導生理活性物質(炎症性サイトカイ
ン)のマクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor:MIF)
が、がん抑制遺伝子 p53 を制御してストレス誘導細胞死を抑制する仕組みを解明しま
した。本研究の成果は p53 を制御する唯一のサイトカインである MIF を標的とした皮
膚がんに対する新たな予防・治療法の開発に繋がることが期待できます。
このことについて、以下のとおりに報道発表いたします。つきましては、下記に
基づき取材・報道方よろしくお取り計らい願います。
記
1.
発表内容
別紙のとおり。
2.
報道解禁時間
2016 年 11 月 2 日(水)付朝刊
理由:米国連邦実験生物学会が発行する FASEB Journal において、
11 月 1 日(米国時間)に誌上公開予定のため。
本件の取り扱いについては、上記解禁時間以降でお願い申し上げます。
3.
研究に関する取材・問い合わせ先
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)皮膚科学講座
教授 清水忠道
TEL:076-434-7305
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別紙資料
炎症誘導生理活性物質による皮膚発がんの仕組みを解明
~環境ストレスによる皮膚がん治療への応用に期待~
1.
研究の概要
私たちの皮膚は体の最外層にあるため,常に紫外線や温熱などの物理的あるいは化学的刺激に
曝されて傷害を受けることにより,老化やがん化を引き起こす誘因となっています.このような
外界からの多様な刺激や炎症によって傷害を受けた表皮細胞は,自ら細胞死(アポトーシス)を
誘導してがん化を防御しています.
マクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor:MIF)は炎症や免疫
応答をはじめ,様々な生理的反応に密接に関与する炎症誘導生理活性物質(炎症性サイトカイン)
の一種です.一方で MIF は,炎症を誘導する機能以外に,がん抑制遺伝子である p53 を制御す
ることも,近年明らかとなりました.
私たちはこのたび,ストレス(温熱)刺激が誘導する表皮細胞のアポトーシスを MIF が抑制
するメカニズムを解明しました.すなわち,MIF は p53 と p53-dependent signal を抑制する系
と,JNK pathway を抑制する系を介して,アポトーシスの最終実行因子であるカスパーゼ 3 の
活性化を抑制することで温熱誘導アポトーシスを抑制することが明らかとなりました(模式図を
下に示す)
.
本研究の成果は今後,MIF を標的とした紫外線や温熱等の環境刺激による皮膚がんに対する新
たな予防および治療法開発に繋がることが期待できます.
模式図
ストレス(温熱)刺激
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※ この研究結果は,米国連邦実験生物学会 FASEB(Federation of American Societies for
Experimental Biology)が発行する FASEB Journal で 2016 年 11 月 1 日に誌上公開予定です.
2.
原論文情報
論文名:Role of macrophage migration inhibitory factor in heat-induced apoptosis in
keratinocytes.
著 者:Yoko Yoshihisa, Mati Ur Rehman, Takashi Kondo, Tadamichi Shimizu
掲載誌:FASEB J (The Journal of Federation of American Societies for Experimental Biology)
/ fj.201600408RR. Published online August 15, 2016
3.
用語の説明

マクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor:MIF)
炎症性サイトカインの一種で,炎症反応や免疫応答において多彩な生物学的作用を有する.サイ
トカインカスケードの上位に位置し,腫瘍抑制因子である p53 を抑制するという他のサイトカイ
ンにはない特徴的な作用を有する.

p53
第 17 染色体短腕上に座位し,細胞増殖を抑制するがん抑制遺伝子.通常,がん化した細胞では
アポトーシスが促進されるが,p53 が変異すると,がん細胞のアポトーシスが抑制され,さらに
がん化が進展することとなる.

アポトーシス
プログラム化された細胞死.発生過程や組織細胞の交替期において役目を終えた細胞の予定され
た死である.