第6回 主要百貨店93社の経営実態調査(2015年度)

2016/10/31
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画: 第 6 回 主要百貨店 93 社の経営実態調査(2015 年度)
消費増税の反動減から 2 年連続で売上減
2 年連続で減少
~ 地方百貨店の回復依然足踏み
~
はじめに
10 月 6 日、
(株)セブン&アイ・ホールディングス(東証 1 部)とエイチ・ツー・オーリテイリ
ング(株)
(東証 1 部)が資本業務提携に関する基本合意書を締結し、セブン傘下の百貨店 3 店舗
が譲渡される運びとなった。これは百貨店経営における両社の思惑が重なり実現したものだが、
今後も消費者の購買行動が大きく変化するなかで、各社生き残りを懸けた経営施策を打ち出すこ
とが予想される。
帝国データバンクでは、2016 年 10 月時点の企業概要データベース「COSMOS2」
(146 万
社収録)の中から、百貨店経営業者 93 社を抽出。総売上高の推移や、地域ごとの特性について分
析した。前回調査は 2013 年 10 月 24 日。
調査結果(要旨)
1. 百貨店経営業者は 93 社。この 93 社の売上高を合計した総売上高を見ると、2015 年度は 6 兆
6530 億円だった。2013 年度(6 兆 8058 億円)は消費増税前の駆け込み需要で前年度を上回っ
たが、2014 年度以降は 2 年連続で前年度を下回っている
2. 地域別で総売上高を見ると、
『近畿』はその他の地域と比べ、2013 年度の前年度比の増加幅(前
年度比 4.1%増)が最も大きく、2014 年
度は減少幅(同 1.6%減)が最も小さか
(億円)
った。また、同地域は 2015 年度に唯一
70,000
前年度比(同 0.6%増)が増加に転じた
66,000
68,000
3. 増収企業比率を見ると、2015 年度は 4
64,000
社中 3 社が増収を果たせておらず、厳
60,000
しい経営状況がうかがえる
66,630
66,530
2014年度
2015年度
58,000
56,000
54,000
80.6%)
、2014 年度(同 68.8%)
、2015
50,000
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
68,058
66,731
62,000
4. 黒字企業比率は、2013 年度(構成比
年度(同 65.6%)と縮小傾向にある
百貨店経営業者の総売上高推移
52,000
2012年度
2013年度
1
2016/10/31
特別企画: 第 6 回 主要百貨店 93 社の経営実態調査(2015 年度)
1. 総売上高の推移
~ 2014 年度以降は 2 年連続で減少
百貨店経営業者は 93 社。この 93 社の売上高を合計した総売上高を見ると、2012 年度が 6 兆
6731 億円だった。
2013 年度は、2014 年 4 月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要で前年度比 2.0%
増の 6 兆 8058 億円となった。しかし、2014 年度はその反動減で同 2.1%減の 6 兆 6630 億円。2015
年度は同 0.1%減の 6 兆 6530 億円となり、2 年連続で減少している。
(億円)
百貨店経営業者の総売上高推移
70,000
68,000
68,058
66,731
66,630
66,530
2014年度
2015年度
66,000
64,000
62,000
60,000
58,000
56,000
54,000
52,000
50,000
2012年度
2.地域別
総売上高の推移
2013年度
~ 近畿は 2015 年度に 0.6%増
地域別で総売上高を見ると、どの地域も消費増税の駆け込み需要があった 2013 年度に増加し、
その反動減の影響があった 2014 年度に減少するという傾向があったが、変動値に地域差が見られ
た。
『近畿』はその他の地域と比べ、2013 年度の前年度比の増加幅(前年度比 4.1%増)が最も大
きく、2014 年度は減少幅(同 1.6%減)が最も小さかった。一方、
『北陸』では 2013 年度は同 0.3%
の増加にとどまり、2014 年度は同 3.8%減少した。また、駆け込み需要の反動減を受けた 2014 年
度の落ち込み幅は『北海道』
(前年度比 4.6%減)、
『東北』
(同 4.0%減)が大きかった。2015 年度
は『近畿』
(同 0.6%増)のみが前年度をわずかに上回ったが、その他の地域では反動減からの回
復が見られない。
地域別 総売上高の推移
2012年度
北海道(5)
東北(11)
関東(24)
北陸(3)
中部(14)
近畿(8)
中国(10)
四国(4)
九州(14)
全国(93)
2013年度
総売上高
106,154
108,049
198,426
201,837
3,540,567
3,584,188
111,946
112,312
402,324
415,653
1,521,097
1,584,126
236,523
238,900
87,703
88,669
468,429
472,138
6,673,169 6,805,872
前年度比
1.8%
1.7%
1.2%
0.3%
3.3%
4.1%
1.0%
1.1%
0.8%
2.0%
2014年度
増減
総売上高
➚
➚
➚
➚
➚
➚
➚
➚
➚
➚
103,032
193,774
3,514,477
108,077
406,721
1,558,023
233,057
86,953
458,905
6,663,019
前年度比
-4.6%
-4.0%
-1.9%
-3.8%
-2.1%
-1.6%
-2.4%
-1.9%
-2.8%
-2.1%
2015年度
増減
総売上高
➘
➘
➘
➘
➘
➘
➘
➘
➘
➘
101,824
189,605
3,511,328
106,417
403,311
1,567,775
228,085
85,921
458,814
6,653,080
前年度比
-1.2%
-2.2%
-0.1%
-1.5%
-0.8%
0.6%
-2.1%
-1.2%
-0.02%
-0.1%
増減
➘
➘
➘
➘
➘
➚
➘
➘
➘
➘
※カッコ内は社数
※総売上高の単位は百万円
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特別企画: 第 6 回 主要百貨店 93 社の経営実態調査(2015 年度)
3.地域別 増収企業比率
~ 2015 年度は 4 社中 3 社が増収果たせず
増収企業比率を見ると、全体では、2013 年度が 48.4%、2014 年度が 14.0%、2015 年度が 25.8%
となった。2015 年度は、前年度比では大きく改善したものの、4 社中 3 社が増収を果たせておら
ず、厳しい経営状況がうかがえる。
地域別でみると、2015 年度の増収企業比率が
最 も 高 か っ た の が 、『 近 畿 』( 増 収 企 業 比 率
50.0%)
。次いで『関東』
(同 37.5%)
、
『北陸』
(同 33.3%)
、
『四国』
(同 25.0%)となった。
地域別 増収企業比率
2013年度 2014年度 2015年度
北海道(5)
60.0%
20.0%
20.0%
東北(11)
45.5%
0.0%
18.2%
関東(24)
41.7%
29.2%
37.5%
北陸(3)
33.3%
0.0%
33.3%
中部(14)
42.9%
7.1%
14.3%
近畿(8)
62.5%
12.5%
50.0%
中国(10)
70.0%
0.0%
10.0%
四国(4)
50.0%
25.0%
25.0%
九州(14)
42.9%
14.3%
21.4%
全国(93)
48.4%
14.0%
25.8%
※カッコ内は社数
4.年商規模別
~ 『1000 億円以上』では 75.0%が増収
年商規模別(2015 年度の年商規模)の増収企業比率を見ると、2015 年度は『1000 億円以上』が
75.0%でトップだった。次いで、
『500 億~1000 億円未満』
(増収企業比率 38.5%)、
『10 億~50 億
円未満』
(同 25.0%)となった。一方、
『10 億円未満』は増収企業ゼロであり、全体でみると事業
規模が大きいほど増収企業比
率が高まる傾向があった。
黒字決算が確認できた企業
の割合を見ると、全体では
2013 年度が 80.6%、2014 年度
が 68.8%、2015 年度が 65.6%
で縮小が続いた。
また、黒字企業比率を年商規
模別(2015 年度の年商規模)
でみると、年商 500 億円以上
では 2015 年度に前年度を上回
ったが、年商 500 億円未満で
は前年度を下回るか、もしく
は横ばいであった。
年商規模別 増収企業比率
2013年度 2014年度 2015年度
10億円未満(2)
100.0%
50.0%
0.0%
10億~50億円未満(8)
37.5%
25.0%
25.0%
50億~100億円未満(13)
46.2%
0.0%
7.7%
100億~500億円未満(45)
35.6%
13.3%
15.6%
500億~1000億円未満(13)
69.2%
7.7%
38.5%
1000億円以上(12)
75.0%
25.0%
75.0%
全体(93)
48.4%
14.0%
25.8%
※カッコ内は社数
年商規模別 黒字企業比率
10億円未満(2)
10億~50億円未満(8)
50億~100億円未満(13)
100億~500億円未満(45)
500億~1000億円未満(13)
1000億円以上(12)
全体(93)
2013年度 2014年度 2015年度
50.0%
50.0%
0.0%
50.0%
50.0%
50.0%
76.9%
46.2%
46.2%
82.2%
75.6%
64.4%
84.6%
76.9%
92.3%
100.0%
75.0%
83.3%
80.6%
68.8%
65.6%
※カッコ内は社数
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
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特別企画: 第 6 回 主要百貨店 93 社の経営実態調査(2015 年度)
5.まとめ
インターネット通販や大型ショッピングモールの台頭で、消費者の購買行動が大きく変化。そ
の影響を受ける百貨店業界の動向が注目されている。総売上高でみると、2014 年 4 月の消費税率
引き上げに向けた駆け込み需要で 2013 年度(総売上高 6 兆 8058 億円)は前年度を上回ったが、
翌年度以降は 2 年連続で前年度を下回った。業界全体としては、厳しい経営環境といえる。ただ
し、全体では減少傾向でも、地域ごとに深刻度は異なる。近畿地区は、エイチ・ツー・オーリテイ
リング(株)
(東証 1 部)が親会社となる阪急阪神百貨店をはじめとして、各社が積極的な経営改
革を実施した効果もあり、総売上高は 2015 年度(1 兆 5677 億円)に前年度(1 兆 5580 億円)を
若干 0.6%ながらも上回った。また、関東地区(2015 年度 3 兆 5113 億円、前年度比 0.1%減)や
九州地区(同 4588 億円、同 0.02%減)では、外国人観光客の増加などプラス要因もあり、横ばい
を維持した。一方、東北地区(同 1896 億円、同 2.2%減)
、中国地区(同 2280 億円、同 2.1%減)
などでは売上高の減少に歯止めがかからない状況がうかがえる。
また、年商規模別でみると大小の格差が鮮明に表れている。2015 年度に増収を果たしたのは全
体で 25.8%となっているが、年商規模『1000 億円以上』では 75.0%となっている。また、黒字計
上が確認できた企業の割合を見ても、全体では 65.6%であるのに対し、
『1000 億円以上』は 83.3%、
『500 億~1000 億円未満』では 92.3%となっている。
これまでは、経営不振に陥ったとしても大企業からの資本注入や地元金融機関の支援により事
業継続できたような百貨店があった。しかし、業界として先行きを不安視する声が高まるなかで
従前どおりの支援が得られるか否かは懐疑的に見ざるを得ない。これまで以上に、売り場や店舗
拠点の見直し、財務体質の改善、新たな稼ぎ口の開拓など経営課題に対する百貨店の危機感は高
まっていくだろう。
【 内容に関する問い合わせ先 】
(株)帝国データバンク 東京支社 情報部
綴木 猛(つづるき たける)
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FAX 03-5919-9348
E-mail [email protected]
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