公認会計士トピックス 第1回 公認会計士の信頼確保への取り組み

PwC’s
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特集 :
Vol.
人材開発とダイバーシティ
5
November 2016
www.pwc.com/jp
その他
公認会計士 トピックス
第1回 公認会計士の信頼の確保への取組み①
PwC’s View編集部
はじめに
昨今は一般の企業の作成する財務情報のみならず、地方
1
公共団体、非営利法人、社会福祉法人などの財務情報に対
する信頼性の担保が求められており、公認会計士に対する
公認会計士による
監査を取り巻く昨今の状況
公認会計士は、監査および会計の専門家として、独立し
期待は一層高まっているところです。
た立場において財務書類その他の財務に関する情報の信頼
一方で、新聞紙上をにぎわせている企業不祥事などの発
性を付与することを主な生業とする職業的専門家です。公
生に関連して、会計監査の在り方についても議論がされて
認会計士になるには、公認会計士試験に合格した後、所定
います。これを受けて公認会計士業界も、
「会長通牒」の公
の実務経験等を経る必要があります。
表、
「特別レビュー」の実施など、信頼回復に向けて一層の
財務諸表監査業務は、試験に合格して国家から資格を付
努力を重ねています。
与された公認会計士の独占業務であり、法に守られた業務
今号より、読者の皆さまに公認会計士という職業をよりご
であるともいえるのですが、一方で、昨今の会計不祥事を見
理解いただくとともに、社会への貢献に取り組む公認会計
抜けなかった事案が報道されるにつれ、公認会計士の存在
士および関係団体の活動状況をお伝えすべく、
「公認会計士
意義、会計監査の在り方に対してもいろいろな意見が交わ
トピックス」
を連載いたします。
されているところです。
このような状況を踏まえ、金融庁では 2015 年(平成 27
年)8 月に「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置し、有
識者等による議論を経て、2016 年(平成 28 年)3月に「会計
監査の在り方に関する懇談会 -会計監査の信頼性確保のた
めに」が公表されています。
一方で、日本公認会計士協会(以下「JICPA」)は、本来的
な機能として、こうした公認会計士の信頼性を確保し続ける
ための機能を有し、そのための取り組みを継続的に行って
きました。以下、今号より2 回にわたり、信頼性確保のため
の JICPAの機能(自主規制機能)および取り組みについてご
紹介します。
2
JICPAの取組み
JICPAは、日本における唯一の公認会計士による同業者
団体です。単なる同業者団体ではなく、公認会計士法の定
めによる特別民間法人(特別の法律により設立される民間法
人)です。
JICPAは、公認会計士法において、
「公認会計士の品位を
保持し、第二条第一項の業務(編注:
「監査業務」をいう)の
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その他
改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する
計士を拘束するものであるとともに、監査を受ける企業に
事務を行い、並びに公認会計士等の登録に関する事務を行
とっても、企業会計の実務や監査の実務にも影響を与えるこ
うことを目的とする」
とされています(公認会計士法第 43 条
とがあります。
第2 項)。
JICPAの会員である公認会計士が従事する業務は、一般
JICPAは、こうした目的に従い、会計プロフェッションの自
企業の会計監査のみならず、地方自治体や学校法人などの
主規制団体として透明性と中立性を持った組織運営を行っ
公的な機関に対する監査など多岐にわたることから、JICPA
ています。
では、それぞれの分野ごとに「委員会」を組成し、各分野の
理論および実務の調査研究を行い、実務指針を委員会報告
JICPAの自主規制機能
3
として公表し、監査・会計の実務に供しています。
③情報の提供、周知のための施策
上述の目的に従い、JICPAは自らで公認会計士業務の質
これらの倫理規則、実務指針などを周知させるため、分野
的な水準を維持し、向上を図っていき、社会的な信頼を確
ごとに「協議会」を設置し、会員である公認会計士に対する
保し続けるために、自主規制の取り組みを行っています。具
周知を図っています。また、JICPAでは各種相談窓口を設置
体的には、JICPAは、下に掲げるようなそれぞれの取り組み
し、個別の問題に対応しています。
を行っています。
(1)職業規範の整備
(2)継続的専門研修制度
(2)
継続的専門研修制度
(CPE)
公認会計士としての資質の維持・向上および公認会計士
(3)品質管理レビュー制度
の監査環境等の変化への適応のために、JICPAでは、会員
(4)監査業務審査、規律調査制度
である公認会計士に対して研修を受講することを義務付け
(5)綱紀審査制度
ており、この研修のことを継続的専門研修制度(CPE)
と言い
(1)
職業規範の整備
ます。
具体的には、JICPA主催の研修会への参加や自己学習・
JICPAは、会員である公認会計士が遵守すべき職業倫理
著書等執筆・研修会等講師等により、会員に当該事業年度
に関する規範、公認会計士業務を実施するに当たって遵守
を含む直前3 事業年度で合計120 単位以上(1 単位=1 時間
すべき実務指針やそれらを適用するに当たっての留意点、
程度の学習)の CPE単位を履修することを求めています。ま
具体的な適用方法の例示などの整備を行っています。また、
た、履修すべき単位の中に、表 1 に掲げる必須科目を所定
これらの情報の提供、周知のための施策を行っています。
の単位数含めることを求めています。
①職業倫理に関する規範の整備
表1:継続的専門研修制度で求める毎年毎の科目別単位数
職業倫理に関する規範は、法令および協会が規定する
「倫理規則」、
「独立性に関する指針」および「利益相反に関
する指針」等(以下「倫理規則等」)により規定されています。
これらの倫理規則等は、国際会計士連盟(IFAC)の国際会計
士倫理基準審議会(IESBA)が策定している Code of Ethics
職業倫理に関する研修
監査の品質及び不正リスク対応に関する研修 注1
(うち不正事例に関する研修)注2
税務に関する研修
2単位
6単位
(2単位)
2単位
注1)法定監査業務に従事する会員のみ
注2)昨今の不適切な会計処理への監査人の対応力の強化を図ることを目的として2016年度
(平成28年度)から追加
for Professional Accountants( IESBA倫理規程)を基に、
わが国の公認会計士法等の法令や、わが国に以前から存在
した倫理関係の規定等を考慮して作成されています。
公認会計士は、特別の事情がない限り年間平均 40 時間
程度を自己研さんのために充てることが求められています。
JICPAは、継続的な研修の履修義務を果たさない会員の氏
②実務指針等の整備
JICPAは、監査基準や会計基準に従って、業務上必要な
実務指針を策定しています。
JICPAが作成する実務指針は、監査基準や会計基準その
ものではありませんが、
「一般に公正妥当と認められる監査
の基準」や「公正な会計慣行」を構成するものであるとされて
います。このような実務指針は、JICPAの会員である公認会
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名を公示したり、金融庁に対してそのような会員への懲戒を
請求したりすることがあります。
(つづく)
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