Vol.556 平成 28 年 10 月 31 日 No.556 タワーマンションの相続税評価額の改正の動向 菅義偉官房長官は、10 月 24 日の記者会見で、20 階建て以上の高層マンションについて、 「実際の取引価格を踏まえた 固定資産税のあん分方法を検討している。今後の税制改正で検討する」と述べ、高層階の固定資産税と相続税を引き上げる ことを明確にしました。平成 30 年以降に引き渡す新築物件が対象とされ、低層階の税負担は軽くなります。 1. 改正の概要 (1)タワーマンションの定義 建築基準法第 20 条において、高さが 60m を超える建築物は「建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技 術的基準に適合するものであること」としています。このことから、超高層建築物として区分されています。そのため、目 安として 20 階以上のマンションを一般に「タワーマンション」と呼ぶようです。ちなみに、100m(30 階~33 階)以 上になると、非常用エレベーターに加えてヘリポート設置義務が課せられています(緊急離着陸場等設置指導基準) 。 (2)相続税評価額の改正 過大な評価差額の水準訂正が行われます。日本経済新聞社の記事によると、 「国税庁が全国の 20 階以上の住戸 343 物件 を調べたところ、評価額は平均すると市場価格の 3 分の 1 にとどまっていた」としています。固定資産税評価額は、マン ション一棟の評価額を部屋ごとの床面積で除して計算しているため、階層による差はなく、同じ床面積なら最上階と一階が 同じ評価額となります。そこで、高層階のマンションの評価額を段階的に引き上げ、低層階は段階的に引き下げることを検 討しています。 この改正は、 平成29 年度税制改正において創設し、 平成 30 年 1 月以降に引き渡す新築物件から適用を予定しています。 2. 建物の相続税評価額 財産評価基本通達によると、 「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により 財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得 の日又は地価税法第 2 条《定義》第 4 号に規定する課税時期をいう。以下同じ。 )において、それぞれの財産の現況に応じ、 不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定め によって評価した価額による。 」としています。 しかし、総則第 6 項において、 「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税 庁長官の指示を受けて評価する。 」としています。 3. マンション節税防止策に対する留意点 (1)否認事例(平成 23 年 7 月 1 日裁決(非公開裁決) ・最高裁判決(平成 5 年 10 月 28 日判決) )から検証 マンションを利用した相続税の節税が否認された主な理由については、以下のような事由があります。 ① 取得日と相続開始日が近い ② 相続開始後すぐに譲渡している ③ 利用する意思がみられない ④ 明らかに節税目的と推測される (2)対応策 タワーマンションに係る相続税の節税防止策が施行されても、財産評価基本通達の総則第 6 項の規定が適用される可能性 はありますので、タワーマンションを取得し、通常の相続税評価額によって申告する場合には、以下のような対応が求めら れます。 ① 贈与及び相続する場合に共通する事項 マンションの取得目的を明確にし、目的に従った利用をしておく(節税目的だけではないことを明確にしておく) ② 生前贈与 ・マンションを贈与する場合、取得してすぐの贈与は避ける ・受贈者は、贈与を受けたマンションを利用(自己使用又は賃貸)し、かつ、できる限り長期間保有し、活用を続ける ③ 相続した場合 相続税の税務調査は、申告してから 1 年くらい経過後に実施されると思われることから、税務調査が終了するまで利用し、 かつ、その後においても保有し、活用を続ける (担当:山本 和義)
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