2. RI内用療法の最新動向

放射線治療
最前線
Ⅵ 放射線治療の最新動向
2.RI 内用療法の最新動向
畑澤 順 / 下瀬川恵久 / 加藤 弘樹
渡部 直史 / 礒橋佳也子 大阪大学大学院医学系研究科核医学講座
放射性同位元素(以下,RI)で標識し
ンリンパ腫,去勢抵抗性前立腺がんを対
た薬剤を経口または静脈投与し,標的と
象に行われている。国外では,悪性褐色
なる臓器や悪性腫瘍に選択的に取り込ま
細胞腫,神経内分泌腫瘍を対象にした診
せ,体内で放射線照射を行う治療が RI 内
療が行われており,有用性が立証されて
図 1 に,日本アイソトープ協会が 5 年
用療法である。外照射放射線治療や密封
いる。
ごとに行っている全国核医学診療実態
小線源治療が局所治療であるのに対し,
今後の RI 内用療法の方向は,腫瘍特
調査 1)を基に RI 内用療法の実績をまと
RI 内用療法は全身に転移した悪性腫瘍も
異性の高い化合物や抗体の開発,殺細胞
めた。
治療対象となり,抗がん剤と同様に悪性
効果の高い α 線放出核種の利用,RI 内
腫瘍の全身治療と位置づけられている。
用療法を行う医療環境の整備,社会にお
わが国では,年間約 1 万件が行われている。
ける RI 内用療法の認知度向上である。ま
分化型甲状腺がんに対するヨウ化ナト
保険診療の RI 内用療法は,甲状腺疾
た,進行期の難治性悪性腫瘍に対して,
リウム(Na 131 I)内用療法は,甲状腺全
患(分化型甲状腺がん,バセドウ病)
,転
有用性が期待されている。
摘術後に行われる。遠隔転移の確認で
RI 内用療法の現状
1.甲状腺疾患
きない症例では,切除部の残存甲状腺
移性骨腫瘍,低悪性度 B 細胞性非ホジキ
の破壊(アブレーション)を目的に最大
1110 MBq を経口投与し,外来治療が可
能である。遠隔転移が確認された症例で
は,平均 3714 MBq(最大 5550 MBq)を
投与し,その後 RI 治療病室に入院して,
体内残留放射能量が退出基準以下に低
下するのを待って退院する。日本アイソ
トープ協会による調査では,分化型甲
状腺がんに対する Na 131 I 内用療法の実
12 , 000
10 , 000
年間治療件数
8 , 000
施件数は 4856 件(2015 年)であった。
■悪性リンパ腫の治療
■骨転移部位の疼痛緩和
■甲状腺がんまたは転移の治療
■甲状腺機能亢進症の治療
167
1 , 545
6 , 000
2 , 373
2 , 000
0
1 , 350
481
1 , 472
1987 年
2 , 955
1992 年
図 1 非密封 RI による治療件数 1)
52 INNERVISION (31・11) 2016
1 , 750
1997 年
放射能投与量は 337 MBq,77%は外来
4 , 146
4 , 634
3 , 347
2002 年
機能の抑制を目的に年間 5000 件近い
Na 131 I 内用療法が行われている。平均
1 , 647
1 , 008
となっている。
甲状腺機能亢進症に対して,甲状腺
3 , 354
4 , 000
外来治療が 1789 件,入院治療が 3067 件
治療が行われている。投与放射能量が
多い場合には,投与後 1,2 日の RI 治療
2007 年
2012 年
(中間報告)
病室への入院が必要になる。
2.転移性骨腫瘍の疼痛緩和
塩化ストロンチウム(以下,89 Sr)
〔販
〈0913-8919/16/¥300/ 論文 /JCOPY〉