ARM Cortex

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400MHz 級制御プロセッサ
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ARM Cortex-M7 初体験
第 2 回 高性能リアルタイム向け Cortex-M7 の演算性能
Networking
1
Telecom
1
Consumer
Autolndy
(DP FP)
Autolndy
(lnt)
1
1.1
Cortex-M7
1.3
1.5
1.2
単精度
データ
1.6
1.2
1.6
Cortex-R5
1
1
1.4
Cortex-M4
図 1 整数寄りの指標 EEMBC ベンチマーク(各カテゴリの幾何平
均)
を見るとCortex-M7の処理性能はCortex-M4の約1.5倍ある
(値
が大きいほど性能がよい)
今回は高性能リアルタイム向けコア ARM CortexM7(以下 Cortex-M7)の演算性能について,各種ベン
チマークを参照しつつ考察してみます.ちなみに前回
は,CPU コアの内部構造,そしてパイプライン動作
について解説しているので,興味がある方は参照して
みてください.
まずは公表性能ベンチマークから
位置付けを考察
■ その 1:高性能リアルタイム・プロセッサ
Cortex-R との比較
● 整数演算性能は Cortex-R5 の 1.3 倍
Cortex-M7 は,高性能リアルタイム・プロセッサ
ARM Cortex-R(以下 Cortex-R)シリーズと特徴が似
ています.Cortex-R シリーズと比較した性能が気に
な り ま す. … と 思 っ て い た と こ ろ,Cortex-M4,
Cortex-R5,Cortex-M7 の相対性能が公表されました(1).
図 1 に結果を示します.これは(CoreMark ではない通
常の)EEMBC ベンチマークの各カテゴリ別に結果の
幾何平均をとって比較をしたものです.比較は同一動
166
Cortex-R5
倍精度
データ
1
Cortex-M7
中森 章
0.0
Cortex-M4
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
図 2 浮動小数点演算のベンチマーク EEMBC FPMark による
性能比較(値が大きいほど性能がよい)
作周波数で行われています(つまり IPC,Instructions
Per Cycle の比較)
.
Cortex-M4 に対して Cortex-M7 は約 1.5 倍の性能で
予想(予定?)通りです.着目したいのは,Cortex-R5
に対しても Cortex-M7 は約 1.3 倍の性能を持っている
点です.
● 浮動小数点演算性能も Cortex-R5 の 1.4 倍
EEMBC ベンチマークはどちらかというと,整数性
能寄りの比較ですが,浮動小数点性能の比較も行われ
ています.それを図 2 に示します.これは EEMBC の
FPMark というベンチマークの結果です.例によって
同一動作周波数での比較です.FPMark とはあまり聞
かないベンチマークですが,2013 年 8 月に EEMBC に
よって提案された,浮動小数点性能を測定するベンチ
マークのようです.図 2 の説明書きには「スモール・
データ・セットによる結果」となっていますが,その
詳細は不明です.Cortex-R5 と Cortex-M7 を比べた場
合,単精度浮動小数点性能は同等,倍精度浮動小数点
性能は 1.4 倍です.
つまり,Cortex-M7 は,整数性能も浮動小数点性能
も(同一動作周波数なら)Cortex-R5 を上回っているよ
うです.すると,Cortex-R5 の存在意義は,高い動作
周波数という点しかなくなってしまいます(というの
は言い過ぎか).Cortex-R5 は最高で 1GHz 動作を想定
しています.Cortex-M7 は 400MHz 動作を想定してい
ます.ということは,同一動作周波数で 2.5 倍の性能
差 が つ か な け れ ば,Cortex-R5 に 分 が あ る の で す.
第 1 回 最新 ARM Cortex-M7 コア入門(2016 年 11 月号)
2016 年 12 月号