資料1-2

資料1-2
財政制度等審議会 財政投融資分科会
編 成 上 の 論 点
株式会社国際協力銀行
平 成 28 年 10 月 26 日
財 務 省 理 財 局
(機関名:株式会社国際協力銀行(JBIC))
[平成 29 年度要求の概要]
【JBIC 総括】
[編成上の論点]
(単位:億円)
28 年 度
計画額
(A)
28 年 度
改定額
29 年 度
要求額
(B)
増減(△)
額
(=B-A)
事業規模
20,600
32,600
26,100
5,500
財政投融資①
13,000
17,090
17,930
4,930
財政融資
4,670
5,670
4,840
170
産業投資
330
1,420
1,690
1,360
政府保証
8,000
10,000
11,400
3,400
自己資金等②
7,600
15,510
8,170
570
貸付回収金
12,622
12,622
14,625
2,003
再計(①+②)
20,600
32,600
26,100
5,500
区
分
※上記計数について、
「一般業務勘定」及び「特別業務勘定」の
勘定別内訳は別途後述。
論点1
「日本再興戦略 2016」等の政府方針を踏まえつつ、海外インフラ展開
支援を引き続き推進するとともに、「海外展開支援融資ファシリティ」
の延長等に対応していくにあたり、JBIC 両勘定(一般業務勘定、特別業
務勘定)の事業規模及び財投規模は適正な水準となっているか。
論点2
28 年 10 月から特別業務勘定を設置し、よりリスクの高い投融資業務
を開始することとなるが、29 年度における事業規模や財投規模の策定に
あたり、今後の対象案件の見込みやリスク管理態勢等の在り方をどのよ
うに考えるか。
論点3
事業規模の増加に伴い、特に一般業務勘定において外国為替特別会計
借入金及び政府保証外債の発行枠を増額しているが、JBIC の外貨調達構
造についてどのように考えるべきか。
― 1 ―
編 成 上 の 論 点
(機関名:株式会社国際協力銀行(JBIC))
要求の内容
[29 年度要求の概要]
【一般業務勘定】
28 年 度
区
分
計画額
(A)
論
28 年 度
改定額
29 年 度
要求額
(B)
増減(△)額
(=B-A)
事業規模
18,600
30,405
23,100
4,500
財政投融資①
12,500
16,200
14,930
2,430
財政融資
4,500
5,305
3,200
△1,300
産業投資
-
895
530
530
政府保証
8,000
10,000
11,200
3,200
自己資金等②
6,100
14,205
8,170
2,070
貸付回収金
12,622
12,622
14,625
2,003
再計(①+②)
18,600
30,405
23,100
4,500
1.
「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」
(平成 28 年 5 月 23 日経協
インフラ戦略会議決定)等の政府方針や、「海外展開支援融資ファシリテ
ィ」の延長等を踏まえて、事業規模 23,100 億円(対前年度+4,500 億円)
を計上。
点
論点1
「日本再興戦略 2016」等の政府方針を踏まえつつ、海外インフラ
展開支援を引き続き推進するとともに、「海外展開支援融資ファシリ
ティ」の延長等に対応していくにあたり、JBIC 両勘定(一般業務勘
定、特別業務勘定)の事業規模及び財投規模は適正な水準となってい
るか。
【論点に対する考え方】
○ 「日本再興戦略 2016」
(平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)においては、
「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」等の政府方針を受け、
「インフラシステム輸出の拡大」として、世界全体の資源を含むイン
フラ案件に対するリスクマネーの供給拡大(今後 5 年間に約 2,000
億ドルを目標)や、JBIC の体制・機能強化及び十分な財務基盤確保
が掲げられている。
○ JBIC は、28 年 5 月の JBIC 法改正により海外インフラ展開支援に
向けてリスクマネーの供給を行う「特別業務勘定」を設置し、同年
10 月 1 日から業務を開始している。
また、従来の業務を経理する「一般業務勘定」において、「海外展
開支援融資ファシリティ」を 28 年 7 月から 2 年間延長するなどの取
組みを行っている。
2.事業規模の増等に伴い、財政投融資 14,930 億円(対前年度+2,430 億
円)を要求。このうち産業投資については、アフリカ(TICAD Ⅵ)及び
○ これらを踏まえ、29 年度要求においては、JBIC 全体として事業規
― 2 ―
要求の内容
論
【一般業務勘定(続き)
】
アジア(CGIF)向け投融資に対応するものとして 530 億円(対前年度皆
増)としている。また、政府保証については、外債発行枠を 11,000 億円
(対前年度+3,000 億円)とするとともに、新たに外貨建ての長期借入枠
を+200 億円としている。
3.自己資金等のうち、外国為替特別会計からの借入金を 10,000 億円(対
前年度+2,000 億円)計上している。
(参考)「日本再興戦略 2016」(平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)
点
模の大幅な増加を見込み、2 兆 6,100 億円(対前年度+5,500 億円)
を計上。これが実需を伴うものであるか、必要な財務基盤や資金調達
の手当てとして財政投融資の要求は各勘定において適正な水準とな
っているか、について精査が必要。
○ 29 年度の産業投資については、合計 1,690 億円(一般業務勘定:
530 億円、特別業務勘定:1,160 億円)が要求されている。JBIC に対
する産業投資は、28 年度当初計画において 330 億円、28 年度 2 次補
正において 1,090 億円(「海外展開支援融資ファシリティ」の延長及
び「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」の策定を踏まえたリ
スクバッファ)を措置したところ。
〔JBIC 関係部分抜粋〕
第2
具体的施策
Ⅳ 海外の成長市場の取り込み
(2)新たに講ずべき具体的施策
ⅳ)インフラシステム輸出の拡大
・「インフラシステム輸出戦略」(平成 28 年度改訂版)(平成 28 年 5 月
○ 29 年度編成においては、要求の背景に海外インフラ展開支援など
政府の全体的な方針がある中、これまでの産投措置との関係も踏まえ
つつ、更なる産投措置が個々の案件について真に実需の見込みに見合
ったものであるか、積算の妥当性も含めて、精査していく必要。
23 日経協インフラ戦略会議決定)や「質の高いインフラパートナー
シップ」
(平成 27 年 5 月公表)とその具体策(昨年 11 月公表)に盛
り込まれた施策を着実かつ効果的に実施・活用するとともに、
「質の
高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」(本年 5 月公表)に基づき、
世界全体の資源を含むインフラ案件に対する今後 5 年間に約 2,000
億ドルを目標とするリスクマネー供給拡大及び更なる制度改善、並
びにそれらに資する JICA、JBIC、NEXI、JOGMEC その他の関係機関の
体制・機能強化及び十分な財務基盤確保を行う。
― 3 ―
要求の内容
[29 年度要求の概要]
【特別業務勘定】
28 年 度
区
分
計画額
(A)
論
28 年 度
改定額
29 年 度
要求額
(B)
増減(△)額
(=B-A)
2,000
2,195
3,000
1,000
財政投融資①
500
890
3,000
2,500
財政融資
170
365
1,640
1,470
産業投資
330
525
1,160
830
政府保証
-
-
200
200
自己資金等②
1,500
1,305
-
△1,500
再計(①+②)
2,000
2,195
3,000
1,000
事業規模
1.
「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」等の政府方針を踏まえて、
点
論点2
28 年 10 月から特別業務勘定を設置し、よりリスクの高い投融資業
務を開始することとなるが、29 年度における事業規模や財投規模の
策定にあたり、今後の対象案件の見込みやリスク管理態勢等の在り方
をどのように考えるか。
【論点に対する考え方】
○ JBIC は、28 年 5 月の JBIC 法改正により、海外インフラ展開支援
に向けたリスクマネーの供給を行う「特別業務勘定」を設置し、同年
10 月から業務を開始。
○ 29 年度要求では、「質の高いインフラ輸出イニシアティブ」への
対応を含めて、事業規模を 3,000 億円(対前年度当初計画比+1,000
億円)としており、審査に当たっては、今後の対象案件の選定やその
見込み、特別業務勘定のリスク管理態勢等を注視していく必要。
事業規模 3,000 億円(対前年度+1,000 億円)を計上。
○ 特別業務勘定は、個別案件毎にみて償還確実性が確保されない海
外インフラ案件を対象とする一方、勘定全体としては収支相償を満た
2.事業規模の増等に伴い、財政投融資 3,000 億円(対前年度+2,500 億円)
すこととされている。
を要求。
こうした勘定の特性も加味しつつ、JBIC 特別業務指針では、
「会社
このうち産業投資については、海外インフラ展開支援のための財務基
による適切なリスクコントロールが可能であると認められる」事業を
盤強化として 1,160 億円(対前年度+830 億円)としている。また、政府
対象とすることとされているが;
保証については、新たに外貨建の長期借入枠を+200 億円としている。
(1)(i)「適切なリスクコントロールが可能」とは具体的にどのよ
うな意味であり、(ii)これをどのような枠組み(体制・手続・
3.自己資金等については、28 年 10 月の勘定創設・業務開始から間もなく
プロセス等)で担保するか。
回収金等が具体的に見込まれないことから、ゼロ計上としている。
― 4 ―
要求の内容
論
点
(2)
(1)との関係で、金融機関として取るべきリスクはどこまで
か。テール事象まで全てカバーするのか。
といった点に関して、精査が必要。
○ 特に、(JBIC は、特別業務勘定を通じてより積極的にリスク・テ
イクが行えるようになるが、
)財務の健全性を確保していく観点から
は、ストレステスト等の実施を含め、より強固かつ高度なリスク管理
態勢・ガバナンス態勢を構築すべきではないか。
(参考)JBIC 特別業務指針(財務省告示)[抜粋]
一 (2)貸付け等を行うに当たって留意すべき事項
① 我が国の公的金融機関としての地位や、その知識、経験及び専門性等を
活用し、案件が実施される国の政府等と緊密な対話を行うこと等を通じ
て、会社による適切なリスクコントロールが可能であると認められる対
象事業に対して貸付け等を行うこと。
― 5 ―
要求の内容
論
論点3
事業規模の増加に伴い、特に一般業務勘定において、外国為替特
別会計借入金及び政府保証外債の発行枠を増額しているが、JBIC
の外貨調達構造について、どのように考えるか。
(参考 1)JBIC の外貨建融資等の推移
(億ドル)
1,200
1,056 1,000
800
709 580
(54.9%) 600
400
200
外為借入金
【論点に対する考え方】
○ 29 年度要求においては、JBIC の自己資金等のうち外国為替特別
会計借入金(外為資金借入)10,000 億円(対前年度+2,000 億円)
が計上され、財政投融資のうち政府保証外債は、それを上回る
11,000 億円(対前年度+3,000 億円)が要求されている。
外貨建融資
188
(26.5%) 0
23年度末
点
27年度末
(注) 米ドル以外の通貨(ユーロ等)については期末レートで米ドル換算。
○ JBIC の外貨調達構造は、29 年度要求時点のフロー・ベース、スト
ック・ベース(残高)でそれぞれ見た場合、概ね以下のとおり。
フロー
(参考 2)JBIC 外為資金借入の推移(計画・実績)
25年度
計 画
12,231
26年度
12,500
27年度
28年度
(億円)
29年度
10,000
17,000
10,000
実 績
15,813
12,733
15,959
※28年度の実績欄は、上半期実績(4~9月末)。
9,622
-
⇒ 外為資金:政府保証:財政融資= 38.1%:43.4%:18.4%
ストック⇒ 外為資金:政府保証:財政融資= 54.0%:24.2%:21.8%
○ 外為資金は、23 年度から足下に至るまでに、対前年度比で平均
して約 33%増のペース(24 年 3 月末:188 億ドル → 28 年 3 月末:
580 億ドル)で急速に増加を続けており、
「円高対応緊急ファシリテ
ィ」
「海外展開支援融資ファシリティ」の拡大(24 年 3 月末:29 億
ドル⇒28 年 3 月末:559 億ドル)を含む JBIC の外貨建融資の拡大
(24 年 3 月末:709 億ドル⇒28 年 3 月末:1,056 億ドル)を支えて
きた。
― 6 ―
要求の内容
論
点
○ 今後、JBIC が長期・外貨建ての融資を拡大していくこと等も踏
まえ、中期的な JBIC の外貨調達がどのような構造で行われるべき
か、以下の観点から検討が必要。
(1) デュレーション・ギャップの問題
今後、中長期的にも JBIC が長期の融資を拡大していくことが
見込まれる中、財源もそれに見合ったデュレーションで調達して
いくことが合理的であるが、介入の原資となる外為資金の借入に
は早期償還条項(1 年以内の返済義務)が附される関係から、デ
ュレーションのミスマッチを拡大するリスクを伴う。
(参考 3)JBIC の外貨建資産・負債の平均償還期限(試算、27 年度末時点)
外貨建
外貨建
貸付
負債
政保外債(注)
外為借入
財融借入
5.85 年
3.30 年
3.86 年
2.97 年
3.54 年
(注)政府保証外債は、引き続き 5 年・10 年債を発行しつつ、新たに 2 年・3 年
債及び 10 年超の債券(例えば 15 年債)を発行することにより、全体のデ
ュレーションを維持することが可能となり、長期の融資に見合ったデュレ
ーションでの調達が可能。
(2)
外貨調達コストの問題
政府保証外債の調達コストは、世界的な金利低下による運用難
を反映し、その投資需要が強まったこと等を受けて、足下で大き
く低下。政府保証外債の発行は、外為資金借入と比較しても低コ
ストの外貨調達手段となっている。
― 7 ―
要求の内容
論
点
(参考 4)JBIC の外貨調達コスト(6 ヶ月ドル LIBOR からのスプレッド)
政府保証外債
通貨スワップ
2年
-0.04%
+0.60%
3年
+0.06%
+0.66%
5年
+0.17%
+0.73%
10 年
+0.38%
+0.54%
外為資金借入
最長 5 年
+0.40%
(注1)9/30 時点の市場金利及び引下げ後の財政融資資金借入金利 0.01%に基づ
いて作成。政府保証外債は、政府保証外債支払金利+ドル金利スワップ固定
金利の合計値。
(注2)新たに 2 年・3 年と 10 年超(例えば 15 年)の政府保証外債を発行する
ことにより、全体のデュレーションを維持しつつ、調達コストを抑制するこ
とが可能。
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