算数科学習指導案

平成28年度 長野県視覚・放送・情報教育研究大会(上小大会)
算数科学習指導案
日 時
平成28年11月10日(木曜日) 第2校時(9:50~10:35)
単元名
「いろいろな三角形・四角形の面積を求めよう」
授業学級 5年2組 男子12名 女子15名 計27名
指導者
池田 勇作 教諭
授業会場 視聴覚室
指導者
東信教育事務所 学校教育課 指導主事
宮崎 桂子 先生
上田市立西小学校
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
学校教育目標
「進んで学び 豊かな心をもって たくましく生きる子ども」
全校研究テーマ 「自己の高まりを感じながら 喜びをもって学び続ける子どもの育成」
算数科で目指す子どもの姿
◯主体的にかかわりながら課題を見つけ,既習を基に考え,問題を解決していこうとする子ども
◯基礎・基本を身につけた子ども
◯自分の考えを伝えたり他の意見についてじっくり考えられたりすることができる子ども
Ⅳ
算数科研究テーマ及び研究テーマ設定の理由
「主体的にかかわりながら 自己の数理を高め 自ら学び続ける子どもの育成」
― 多面的に考えられる指導のあり方 ―
ここ数年,特別支援教育の視点を活かす指導を大切にしながら授業改善に取り組んでいる。とくに
次の3点を授業改善を進める方策として位置づけている。「『みがきタイム』の実施」,「ねらい・
めりはり・見とどけの3観点を生かしたわかる授業の展開」「1時間の授業の中に話し合いの場や,
説明・表現の学習活動の設定」である。年度当初に実施しているNRT結果を経年変化で追った場合
,各学年,向上していることが明らかになった。こうした取組が成果になってあらわれてきたのでは
ないかと考えている。一方,一つの解決方法で満足してしまいがちな傾向や異なった視点の考えが出
されても,それを自ら取り入れ,より多面的に考えようとする姿がやや乏しい面も見られる。
多面的な視点で問題事象を捉えていこうとする態度や能力は,この変化の著しい現代にとって重要
な態度や能力であると考える。前述のような実態が見られる中,主体的にかかわりながら多面的に考
えながら自己の数理を高められる指導のあり方を探ろうと考え,本テーマを設定した。
また,授業の中で視聴覚機器の活用は特別支援教育の視点からも効果ある手立てとなる。例えば,
電子黒板に拡大提示した資料への子どもたちの集中は高い。しかし,本校はそうした機器が十分活用
されてこなかった現状もある。今回,本テーマに迫るための有効利用も併せて検討していこうと考え
た。
Ⅴ 算数学習における本校の実態
Ⅵ 教師の振り返り(教育メデイアの視点も含め)
○基礎・基本的な内容の定着が向上してき ◯学習問題設定が教師主導であり,前時までの子ども
ている。
の意識の流れを大切にしてこなかったのではないか。
○友だちと相談したり質問し合ったりし
○考えていくべき課題の見極めが十分ではなかったの
て課題解決に取り組む。
ではないか。
○一つの解決方法で満足してしまいがち
○全体追究では一部の子の反応で進めてしまい,一人
な傾向や異なった視点の考えが出されて
ひとりの素直な反応を引き出し,どうかかわらせ深めて
も,それを自ら取り入れ,より深より多面 いくか手だてが乏しかったのではないか。
的に考えようとする姿がやや乏しい面が
○様々な考えを提示することが主となってしまい,子
見られる。
どもたちのこだわりを位置づけたり,あるいは,それら
○操作や立式などを説明するのが苦手で
を統合的に捉えさせせたりする点が弱かったのでない
ある面が見られる。
か。
○聴覚からの情報だけでは課題を把握し
○視聴覚機器を使用することに意識が向きすぎ,この
づらかったり,友だちや教師の説明がわか 場面でいかなる教育メデイアが適切なのかの検討が足
りにくかったりする子がいる。
りなかったのではないか。
Ⅶ 研究テーマ具現化への視点
○子どもの意識の流れを大切にした学習課題の見極め
○一人ひとりの素直な反応を引き出しつなげながらそれぞれの考えを位置づけていく教師の出
○目的に応じた教育メデイアの吟味
授業学級 5 年 2 組(男子 12 名・女子 15 名 計 27 名)
第 5 学年 単元名「いろいろな三角形・四角形の面積を求めよう」
1.児童の実態と指導の手だて
児童の実態
○友だちと話し合って課題解決に取り組むことが好きである。
○自分なりの方法で課題を解決しようと熱心に課題に取り組む。
●自分の考えた図形の操作や立式について,自信を持って説明できる子が少ない。
●解決の方法を,多面的に探ろうとする子が少ない。
●聴覚からの情報だけで課題把握をしたり説明を理解したりすること
が苦手な子がいる。
手だて
①グループ追究によって,意欲的に課題解決に向かったり自分の考えに自信をもたせたりする。
②出された考えを比べられるように提示することで,似ているところや違うところを考えさせる。
③順序良く説明しやすくするために,「はじめに」
,
「次に」などの説明するための言葉を例示する。
④図や式を提示して,相手に分かりやすく伝えたり,相手の意図を汲み取ったりする。
⑤大型テレビに,学習問題,手元での図形操作の様子,図形変形のアニメーション,まとめなどを拡
大提示することで,視覚情報による支援を行う。
授業者
池田 勇作
本単元を通して願う子どもの姿
・友だちとともに,いきいきと課題解決に向かう子ども。
・言葉,図表,式などを使って,相手に分かりやすく伝えよ
うと,工夫する子ども。
・多面的な考え方や,解決方法の多様さを楽しみ,数学的な
よさを追究する子ども。
2.目標
(1)単元の目標
三角形や平行四辺形などの面積の公式を理解し,公式を使って面積を求めることができる。また,四角形の面積を三角形分割の考えで求めることができる。
(2)具体目標 ・既習の面積公式をもとに,三角形や平行四辺形などの面積を求め ・既習の面積公式をもとに,三角形や平行四辺形などの面積を工夫し ・三角形や平行四辺形などの面積を求める公式 ・三角形や平行四辺形などの面積の
(評価規準)
る公式を,進んで見出そうとしている。(関心・意欲・態度)
て求めたり,公式をつくったりすることができる。
(数学的な考え方) を用いて,面積を求めることができる。
(技能) 求め方を理解する。
(知識・理解)
3.単元展開の大要
時
三
角
形
の
面
積
平
行
四
辺
形
の
面
積
い
ろ
い
ろ
な
三
角
形
,
四
角
形
の
面
積
面
積
と
比
例
1
~
4
5
~
6
7
~
1
0
学習活動
・長方形や正方形の面
積の求め方から,直
角三角形の面積の求
め方を考える。
・長方形や直角三角形
の面積の求め方か
ら,一般の三角形の
面積の求め方を考え
る。
・三角形の面積を求め
る公式について考
え,公式にまとめる。
・三角形の面積の求め
方をもとに,四角形
の面積を求める。
・三角形の面積の求め
方や等積変形を使っ
て,平行四辺形の面
積の求め方を考え
る。(本時)
・平行四辺形の面積の
求め方について考え
公式にまとめる。
・高さが外にある三角
形や平行四辺形を変
形させて面積を求め
る公式が適用できる
ことを理解する。
・これまでの学習をも
とに,台形の面積の
求め方を考える。
・これまでの学習をも
とに,ひし形の面積
の求め方を考える。
・底辺一定で高さが変
化したり,高さ一定
1
で底辺が変化したり
1
する場合の面積の変
化の様子を調べる。
・基本的な学習内容の
たしかめをする。
1
2
主な評価規準
技 直角三角形の面積
を求めることができる。
考 一般の三角形の
面積の求め方を考え,
説明することができ
る。
技・知 三角形の面
積の求め方の公式を
理解し,求めることが
できる。
考・技 四角形を三
角形に分割する考え
方を用いて,四角形の
面積を求めることが
できる。
考 平行四辺形の面
積の求め方を考え,説
明することができる。
技・知 平行四辺形
の面積の求め方の公
式を理解し,面積を求
めることができる。
考・技 高さが外に
ある三角形や平行四
辺形について,公式を
用いて面積を求める
ことができる。
技・知 台形の面積
の求め方の公式を理
解し,面積を求めるこ
とができる。
技・知 ひし形の面
積の求め方の公式を
理解し,面積を求める
ことができる。
考・技 三角形の高
さや底辺と面積の関
係を考えることがで
きる。
4.本時案
(1)主眼
三角形分割の考え方を用いて四角形の面積を求めた子どもたちが,平行四辺形の面積を求める場面で,長方形や三角形の求積公式を利用できるよう図形の形を変えて面積を求めるこ
とを通して,平行四辺形の面積を求め,求め方を説明することができる。
(2)評価規準
・平行四辺形の求め方を考え,説明することができる。
(数学的な考え方)
・既習の求積公式を利用して,平行四辺形の面積を求めることができる。
(技能)
(3)指導上の留意点
・長方形や三角形の求積公式を利用できるように,平行四辺形を切ったり移動したりして形を変えられるか考えさえる。
・学習問題の把握や相手の考えの理解をしやすくするために,大型テレビや実物投影機を使って,図形や児童の操作活動,ノートを拡大提示する。
(4)展開
段
階
学習活動
1学習問題を知る。
課
題
把
握
追
究
ま
と
め
・予想される児童の反応
○指導【評価】
○三角形の求積の方法をふり返り,平行四辺形の求積でも既習の求積公式
を利用できないか,考えさせる。
・平行四辺形の面積は初めてだ。
○平行四辺形を切ったり移動させたりすることで,長方形や三角形になる
・長方形や,三角形に形を変えられれば面積が求められそうだ。
ことをおさえる。
学習課題:平行四辺形を,三角形に分けたり長方形に形を変えたりして,面積の求め方を説明しよう。
学習問題:この平行四辺形の面積を求め,求め方を説明しよう。
時
間
5
2一人一人,面積を求め,求 ・どうやって形を変えたらいいのだろう。
ア
め 方 の 説 明 を ノ ー ト に 書 ・対角線を引くと,二つの合同な三角形に分かれるぞ。○
イ
く。
・A と C から縦に線を引くと,三角形2つと長方形に分かれるぞ。○
ア
イ
○
○
・A から縦に引いた線でできた三角形を辺 DC の方に移動させると長方形に
ウ
なるぞ。○
エ
・辺の真ん中辺りから分けて左右を入れ替えれば長方形になるな。○
ウ
エ
○
○
・周りの長方形から,左右の三角形を引けば,平行四辺形が残るぞ。
・他にもやり方がありそうだ。
○説明の仕方は,「はじめに」「次に」「すると」「最後に」「答えは」などの
言葉を使って,順に説明させる。
○どうしていいか分からず困っている児童には,補助線を引くことで三角
形や長方形ができないか助言する。
○図形に補助線をかいたり紙を切ったりするなど,具体的な操作を促す。
○言葉,式,図を用いて説明できるよう,ノートに書かせる。
10
3近くの席の友だちと自信の
ないことや困っていること
を相談し合ったり教え合っ
たりする。
4全体で考えを説明し合う。
○自分の考えに自信をもって全体追究に入れるよう,困っていることや自
信のないことを相談するよう促す。
○図や式を使って説明し合ったり質問し合ったりさせる。
5
5まとめの問題を
解き,面積の求
め方を友だちに
説明する。
・僕の求めた面積はあっているのかな。
・友だちはどんな求め方をしているんだろう。
・こんな図形の変え方があるのか。おもしろいな。
・友だちも似た求め方だった。みんなの前で発表してみよう。
・対角線で三角形2つに分けると,三角形の面積を2倍するから分かりや
すいな。
・切り分けた図形を移動させることは,思いつかなかったな。
・式を比べると,どの考え方も8×5や5×8が同じだ。
・三角形や長方形になるように切ったり並べたりすると,簡単に面積が分
かるんだな。
・○○さんのやり方でやってみよう。
・三角形に分けるより,長方形にした方が,簡単に計算できそうだった。
この方法でやってみよう。
・隣の友だちに,図形を移動させながら説明してみよう。
備考
デジタル教
科書
大型テレビ
学習カード
説明の言葉
カード(「は
じめに」「次
に」
「すると」
「最後に」
「答えは」な
ど)
○実物投影機で,ノートの図や式,実際の操作を拡大提示し,説明させる。 15
○必要に応じて,教師がデジタル教科書で児童の説明を補足する。
○それぞれの考えにどのように既習の求積方法を使っているのか注目さ
せ,教師が分類していく。
実物投影機
大型テレビ
デジタル教
科書
○自分がやってみたいと思った方法で平行四辺形の面積を求めるよう, 10
考えさせる。
【平行四辺形の求め方を考え,説明文を書いたり,説明したりすること
がでたか。(発言・ノート)】
学習カード
実物投影機
大型テレビ
5.授業の見どころ
①既習の求積公式を利用できるよう図形の形を変えて面積を求めようとしたことは,平行四辺形の求め方を自分なりに考え,説明することにつながったか。
②大型テレビや実物投影機を使って,学習問題,児童の操作活動やノート,デジタル教科書の図形操作を拡大提示したことは,意欲的な学習への取り組みや理解のしやすさにつながったか。
6. 教育メディアとしての ICT 機器の活用について
(1)ICT 機器の特徴と期待される学習効果
①実物投影機(書画カメラ)・・・本時使用
教科書や資料をそのまま画面やスクリーンに映し出す機器である。操作が簡便であり,立体物もそのまま立体的
に映し出すことができる。プロジェクタとスクリーンがあれば使用できるが,デジタルテレビや大型ディスプレイ
に直接接続して使用することもできる。
書写での筆の運び,彫刻刀での彫り方,裁縫での針と手の動きなど,カメラの前で実際の作業を行い,それを拡
大提示することが可能である。写真と違い,連続性のある映像を一度に大勢に提示することができる。子どもの書
いたノートをそのまま画面に写すことで,子どもたちの意欲的な発表や表現,思考や理解の深まりが期待できる。
②大型ディスプレイ(デジタルテレビ)・・・本時使用
デジタルテレビは従来のアナログテレビでは表現できなかった,高画質高精彩の映像や,高音質での音響を表現
することができるため,よりいっそう子どもたちの興味関心を高めることが期待できる。
コンピューターや実物投影機を接続して,コンピューター画面上の教材や教科書,資料をそのまま大画面に映し
出すことができる。インターネットを利用できるコンピューターを接続すれば,ウェブサイトの画面を映し出した
り,カメラを用いることで離れた場所とのテレビ会議をしたりすることもできる。
③電子黒板
コンピューターの画面上の教材をスクリーンやディスプレイに映し出し,それらの上で直接操作して,文字や絵
の書き込み,移動,拡大,縮小,保存などの操作ができる。ペン型マウスを使って画面に直接書き込むことで子ど
もの発言や気づきを,映し出した教材上に書き込むことができる。保存した画面を後で呼び出し,振り返ったり,
いくつかの場面を呼び出し,まとめたりすることもできる。
電子黒板の大きな特徴は出入力装置であることだ。デジタルテレビや大型ディスプレイは画面に大きく映し出す
(出力)のみで,そこに使用者が字をかいたり操作したり働きかけること(入力)はできない。出力された教材映
像に子どもたちの考えや気づきを入力し,それを全員で共有したり学習記録として保存したりしていくことで,子
どもたちの思考や理解をより深めることが期待できる。
④デジタルカメラ
撮影した写真や動画をデジタル教材としてコンピューターに取り込み,教材として提示したり,子どもたちが観
察,撮影した資料として使用したりすることができる。子どもたちの体験的な学習などと結びつけながら,思考や
理解を深めたり,表現したりするなど,情報活用能力の育成が期待できる。また動画を利用し,体育,音楽,図工
などの技能の追究に利用することもできる。撮影した写真や動画を大型ディスプレイに映し出すことでグループや
全体での表現,鑑賞に利用することもできる。
⑤デジタル教科書・・・本時使用
子どもの使用している教科書の映像をディスプレイに映し出し,拡大提示する。また,図や表の操作,グラフな
どの増減の動きなどをアニメーションや動画として見ることもできる。またペン,スタンプ,スクリーンショット
などツールにより画面編集ができることが多く,子どもの考えを書き込んだり,まとめたりすることもできる。教
科書の内容がそのままディスプレイ上で扱うことができるため,日常の授業で効果的に ICT 機器を活用できる。
参考資料:情報教育研修講座テキスト「ICT 機器を活用した授業実践に向けて~教育の情報化の現状と今後の動向~」研修資料 平成 28 年 長野県総合教育センター
(2)本単元の ICT 機器の利用の意図
①意欲的に課題解決に向かえるようにするために・・・・本時の手だて⑤
大型のディスプレイに学習問題や図形を拡大提示し,注目しやすくし,課題把握をしやすくする。またどの図形
について話し合っているのか,図形のどの部分について話し合っているのか,全員が同じ画面を見ながら考え会え
るようにする。
②友だちの考えと自分の考えを比べて考えるために・・・本時の手だて②
電子黒板を用いて,自分の作図したものと友だちの作図したものを,同時に見られるようにする。同じ図形の求
積について考える場面で,求積の仕方の違いを画面上で比べられるようにする。
③相手に自分の考えを分かりやすく伝えるために・・・・本時の手だて④
ノートに書いた考えや図形,式を,実物投影機で大型ディスプレイ上に映し出して,発表を行う。自分の書いた
ものを全体に見せながら話すことができるので,指さしなどのジェスチャーを交えて,説明がしやすくなると考え
られる。また,見ている側も,ノートの映像を見ながら説明を聞けるので,理解しやすくなると考えられる。
④視覚情報による支援のために・・・・・・・・・・・・本時の手だて⑤
説明を聞いているだけでは,理解しにくい場面が存在する。また,聴覚のみの情報理解が苦手な子どもも多い。
大型ディスプレイなどは注目するところが分かりやすく集中しやすい。また説明を聞きながら教材映像が見られる
ことで,説明を聞いているだけよりも,理解しやすくなると考えられる。