硬軟自在の集団形状を形成し移動する 群ロボットシステム 東京電機大学 工学部 情報通信工学科 教授 鈴木 剛 東京電機大学大学院 工学研究科 情報通信工学専攻 1年 山岸航平 1 提案技術の背景と目的 群ロボットシステム[Swarm Robotics,E.Sahinら,2008] 多数のロボットによる協調作業,並列処理 ⇒広い環境での作業に応用 ・搬送作業 ・環境探索 など [Kilobot,K-TERM,2014] [BionicANTs,Festo,2015] 集団移動が基本技術 多数のロボットを同時に移動 <移動時>移動環境が変化する可能性 課題 環境に応じて集団形状が変化する集団移動手法が必要 2 提案技術の背景と目的 集団移動モデルの特徴比較 制御モデル 分散制御 既存モデルの応用 フォーメーション制御 [M.Rubensteinら,2014] × ○ 生物模倣モデル [R.Oikawaら,2015] ○ × 力学系モデル [R.C.A.Pimentaら,2008] ○ ○ 力学系モデルの利点 力学系モデルを組み合わせることで 複数の作業・制御を統一して表現可能 3 力学系モデルを用いた関連研究 流体力学を用いた集団移動モデル ・流体力学(SPH法)を応用したモデル[R.C.A.Pimentaら,2008] ・ストークシアンダイナミクスを応用したモデル[清水ら,2005] システムを流体に見立てた制御 ・環境の変化に対する柔軟な形状変化が可能 ⇒<問題点>集団の形状を凝固に維持できない 研究目的 流体(液体)を扱える熱力学に基づく 強硬性と柔軟性を両立する集団移動モデルの提案 ※強硬性:任意の形状を保持する状態 柔軟性:環境に合う形状に変化する状態 4 熱力学モデル1/2 内部エネルギー 各分子が潜在的にもつエネルギー 分子間に働くポテンシャル ( )と,外部から伝わる熱エネルギー ( )の和 W φ( r ) K (T ) (集団形成の作用+状態変化の作用) 分子A :直径 分子間の 釣り合う距離 1 r0 分子B 26 r :分子間距離 T :分子温度( ≥ ) (r ) :レナード=ジョーンズ・ポテンシャル(分子間力) K (T ) :熱エネルギー (ブラウン運動) 熱エネルギー(温度)の変化によって, “固相・液相・気相”に相転移 5 熱力学モデル2/2 各相の分子構造と各エネルギーの比 :分子 ・固相(固体) ≫ ( ) ポテンシャルのみが働くため 分子間の距離が一定となる →強硬性のある集合 ・液相(液体) ≒ ( ) ポテンシャルと熱エネルギーの双方が働き、 分子間の距離に個体差が生じる →柔 軟性のある集合 ・気相(気体) ≪ ( ) 熱エネルギーのみが働き、 固相・液相と相転移を群ロボットの集団移動に応用 相互に衝突が起こり、離散状態になる →個体 強硬性・柔軟性を両立する集団移動モデルの構築が可能 6 提案手法1/3 -集団形成モデル 概要集団の状態が変化する集団形成モデル 障害物がない環境:任意の形状に固定する集団形成 ;強硬性 障害物がある環境:環境の形状に合わせた集団形成 ;柔軟性 ril 障害物 l (仮想熱源) Qi rij , Ti ril ,t rij Tmax ロボット i ロボット単体 j 集団 エネルギーモデル 6 Qi rij , Ti ril ,t ロボット j 1 .2 ε RS 0.2 σ rij 近接するロボット間の距 離を一定に保つ作用 6 σ rij 5 Ti ril ,t 2 2 障害物から離れる 作用 創発 ○集団形成 ・形状固定 ・形状変化 ×集団移動 7 提案手法2/3 -集団移動モデル 概要集団移動モデル フォロワ機:リーダ機方向に分子間力を増大,逆方向に減少させるモデル ⇒形状を保持した集団移動 リーダ機 ・外部からの移動指令,自律的な移動 Nj=1 ⇒集団全体の移動を担う Nj=2 フォロワ機 Ni=1 Q 'i rij ,Ti ril ,t , ( N i , N j ) 6 j RS 1 .2 (Ni , N j ) ε 0.2 2 (Ni , N j ) Nj=0 σ rij 6 ; Ni σ rij 5 Nj Ti ril ,t 2 1 1 ; Ni N j 0 .5 ; N i N j , N j 1 2 Nj=2 Nj=1 Nj=2 フォロワ機に, 動的なリーダ機推定手法が必要 8 提案手法3/3 -集団移動モデル 概要近接するロボットによる,リーダ機の方向推定手法 リーダ機を中心に円周順で番号付ける再帰的アルゴリズム ⇒番号が小さい方向にリーダ機が存在すると推定可能 リーダ機 2 ・番号の基準N=0 2 フォロワ機 ・周囲の番号から自身の番号を 推定するアルゴリズム Ni min N j | j 2 2 RS 1 フォロワ機の番号付けが再帰し,全 体に番号付け可能 2 1 1 1 2 2 0 1 1 2 1 2 2 2 2 9 熱力学モデルの群ロボットへの応用 近年の動向 1999年 相転移を応用した群ロボットの系の双発的制御の試み 湯浅氏によって,熱力学における相転移が搬送や,荷物回収に 応用可能であると解説 2003年 熱力学に基づく群ロボットシステムのマクロ制御:ロ ボットの振舞い制御 村田らによるエントロピーの統計学的処理により,その振舞いを 制御する研究 2016年 熱力学モデルに基づく群ロボットの集団移動(未発表) 山岸が発表予定 熱力学モデルを群ロボットへ応用する研究 ↓ 近年,国内・海外ともに,研究されていない 10 集団移動モデルの比較 比較要素 制御モデル ・フォーメーション制御モデル ・生物模倣モデル ・力学系モデル ←本提案手法 など 制御・通信形態 ・集中型ネットワーク ・分散型ネットワーク など ←本提案手法 制御モデルと通信形態の組み合わせによる差別化が可能 11 集団移動モデルの比較 -形態制御・通信形態 形態 集中型ネットワーク 分散型ネットワーク フォーメーション制御モデル 生物模倣モデル 力学系モデル 生物模倣モデル 力学系モデル 制御形態 制御モデル 力学系モデルの利点 両形態で制御可能 12 集団移動モデルの比較 力学系モデル 多くの研究では流体力学モデルや気体力学モデルに着目 ⇒ 本技術は熱力学モデルに着目.集団形状状態の変化を 同じモデルで制御. 制御・通信形態 ⇒ 本技術は,集中型ネットワークと分散型ネットワーク の両形態を利用. ×指令 指令 ×指令 13 ロボットへ提案モデルの実装 本提案手法の転用方法 ロボットの基本的なハードウェア機構パラメータから設定可能 ;ロボットの直径 Vmax ;最大移動速度 fs ;サンプリング周波数 rmin ;最小測距可能距離 rmax ;最大測距可能距離 rmin rmax Vmax ロボットの簡単な特徴からロ ボットに合う設計が可能 14 集団移動シミュレーション1/2 集団移動実験 :移動方向 :強硬性移動範囲 :柔軟性移動範囲 目的 相転移による強硬性と柔軟性を両立した 集団移動の確認 条件 ・リーダ機の移動速度 VL=0.6 Vmax ・フォロワ機の移動速度 VF=0.8 Vmax 手法 強硬性→柔軟性と柔軟性→強硬性を 必要とする環境で集団移動の確認 群 障害物 実験環境 15 集団移動シミュレーション2/2 動作結果 相転移に基づく双方向への状態変化を確認 ⇒強硬性と柔軟性が両立 :強硬性移動範囲 :柔軟性移動範囲 16 まとめ 本技術のまとめ – 熱力学モデルに基づく集団移動手法の提案 – 提案手法のロボットシステムへの適用 – シミュレーションによる動作検証 モデル シミュレーション Q 'i rij ,Ti ril ,t , ( N i , N j ) j RS 1 .2 6 (Ni , N j ) ε 0.2 (Ni , N j ) σ rij 6 σ rij 5 Ti ril ,t 2 2 ; Ni N j 1 1 ; Ni N j 0 .5 ; N i N j , N j 1 2 実 験 新規の集団移動モデルとしての有用性が示唆 17 想定される用途 • 複数のロボットを要する作業における移動動作など 例) 広域環境における並列/協調作業 – 監視作業 – 探索作業 – 物品搬送作業 • 一人の操作者による,複数ロボットの一斉制御など 18 実用化に向けた課題 • 要素技術の開発 – 簡便なロボット間の近接通信 – 小型かつ非干渉の測距センサ • 移動ロボットの開発と量産 • 実ロボットを用いた多台数での技術の検証 19 企業への期待 • アプリケーションの相談 • 要素技術の開発 – 測距と局所的通信が同時に可能なセンサ,など • アプリケーションに適用可能,かつ,メンテナンスが容易な ロボットの開発と量産 20 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称: 群ロボットおよび群ロボットの集団移動制御方法 • 出願番号 : 特願2016-113085 • 出願人 : 東京電機大学 • 発明者 : 山岸航平,鈴木 剛 21 お問い合わせ先 東京電機大学 産学連携コーディネーター 許斐信介 TEL 03−5284−5225 FAX 03−5284−5242 e-mail crc@jim.dendai.ac.jp 22
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