「大学・専門学校等卒業後の在留資格の切り替えのルールと手続き」 法務省入国管理局総務課企画室 法務専門官 梅原 義裕 本日はお招きいただきましてありがとうございます。私、法務省の入国管理局の総務課 企画室で法務専門官をしております梅原と申します。 今回、『大学・専門学校等卒業後の在留資格の切り替えのルールと手続き』というテーマ で説明させていただく予定でございますが、何を話そうかと色々思案しておりました。実 はこのテーマ自体昨年と全く同じものでございます。講演の依頼を 4 月の初めぐらいにい ただき、4 月に着任をした私は、昨年と同じでいいかなと思案しながらも、同じテーマ設定 をいたしました。しかし、講演日が近づくにつれてどういう話をしたほうがいいのかなと か、面白いのがいいのかなとかいろいろ考え、まず、昨年の前任者がどういう話をしたか を調べようと思いました。記録が残っており、確認いたしましたところ、統計的な話とか かなり基礎的な話が多く、いまひとつ皆様の心に刺さらないのではないかと、また、面白 くないのではないかと考え、もう少し皆さんに聞いていただけるような、お持ち帰りいた だきメリットがあるような内容の話をさせていただきたいと思いました。 結局、本日何をお話しするのかということですが、お配りした資料の2ページ目の右上 に、資料1と記載があり、カラフルなパンフレットが両面印刷で 1 枚ペラで付いているも のがございます。これに基づいて「高度人材ポイント制」の説明をさせていただこうと考 えております。テーマとはかなりずれてしまいますが、これを中心に説明させていただく 予定でございます。 この制度自体、学生さんのみならず採用される企業の方々にもメリットがあるもので、 制度の詳細自体は後程説明しようと考えておりますが、まずなぜこれを選ぼうとしたのか を簡単に紹介させていただきます。 簡単に申し上げますと、実は私、入管局でこの高度人材ポイント制の PR の担当をしてい まして、これだけ非常に多くの留学生の就職ですとか採用に携わっていらっしゃる方々に こういったお話ができる機会というのがなかなかなく、ぜひこれを機会に PR させていただ こうと思ったのが一つ。 あと、もう一つは、先ほどの文科省の成相様のお話でもございましたが、先日、日本政 府の成長戦略が閣議決定されまして、ここに優秀な外国人、高度な技術ですとか、専門知 識を持った外国人を積極的に受け入れて、日本の経済を活性化していこうというようなこ とが書かれました。合わせまして、この成長戦略の中で、今回紹介するこの高度人材ポイ ント制の対象となる外国人を 2020 年末までに 1 万人受け入れるという数値目標が定められ ました。このような形で PR をしながらこの目標を達成して、日本経済を促し、経済を盛り 上げるということでございます。 この制度自体、もしかしたらあまり知られていないかもしれませんので、ぜひ皆さまに 知っていただいて、日本の経済成長に資する人材の受け入れにご協力いただきたいという ふうに考えております。 このような理由から、本日、高度人材ポイント制の説明をさせていただく予定でござい ます。前置きが長くなり、そもそものこのポイント制の周知がおろそかになっては、PR 担 当としては問題なので、早速説明に移ってまいります。 時間も限られておりますので、できる限りポイントを絞って、特に、この制度にどんな メリットが、留学生の方ですとか、外国人を雇用・採用される方々にあるのかということ を中心に、説明をさせていただく予定でございます。 繰り返しにはなりますが、本日の講演で使うのは資料 1 だけですので、資料 2 から 5 に つきましては適宜お読みいただき、お持ち帰りいただければと考えております。 資料 1 をまずご覧いただきながら説明させていただくのですが、まずこの制度を使って どういうメリットがあるのかというと、この資料 1 の下のほうにオレンジ色の部分がござ いますが、ぜひこちらをご覧ください。ここにメリットが書かれております。 高度専門職 1 号の場合・2 号の場合ということで分けてメリットが記載されておりますが、 高度専門職 2 号という方は 1 号を経て 3 年以上活動を行った方が対象になりますので、ま ずはこの左側の高度専門職 1 号の場合というところのメリットを見ていただくのが良いと 思います。 まず、その 1 号のほうのメリットで、特にご覧いただきたいなと思っているのが、この ⑦の入国・在留手続きの優先処理ということです。どういうことかというと、入管に書類 を出して申請を行いますが、普通だと大体留学から切り替えて就労ということで外国人が 日本で働きたい場合、在留資格を取るために 1 カ月ぐらいかかりますが、それを5日以内 に行います。それだけ日本としても、そういう優秀な人材については、積極的に受け入れ ていきますということになります。これは、現場に通達を出して、申請に応じて 10 日以内 あるいは 5 日以内で行う様に指示を出していますので、非常にスピーディーに結果が出る ということです。採用される企業の方も「1 カ月ぐらい待ってこの人採用できるかなあ」と いうような不安なところがあると思うのですが、この制度を利用して高度人材に当たると いうことであれば、5 日なり 10 日という形ですぐ処理をしますということで、その不安定 な期間が非常に短くて済む、ということでございます。 また、採用される外国人にとっては、留学生ということで非常に日本になじんでおり、 引き続き、できる限り安定的にこの日本に在留したいと考えられると思います。先ほどの お話でも日本に在留したい、在留したいけれども就職できなかったという方が 50 パーセン トぐらいいらっしゃいましたが、できる限り長く日本に安定的に在留したいという思いが あると考えております。 そういうふうに見ていくと、例えばこの高度専門職 1 号の場合ということで、この②の 所を見てください。普通は日本で働くというと、1年又は3年の許可をするのが一般的で す。一方、この制度に則って優秀な外国人と認定されれば、すぐに 5 年間の許可が与えら れ、その間、定期的に入管で更新手続きをしなくてもいいというメリットがあります。 続いて③在留歴に係る永住許可要件の緩和です。日本での永住権を取るためには、基本 的に一つ目安として日本に 10 年間住んでいないといけないというルールがございます。こ れを緩和して、この制度に当てはまる人は 5 年間いれば永住の申請が可能であるという特 別な待遇をしているということです。 この他、④、⑤、⑥で、配偶者の就労ですとか、一定の要件を満たさなければいけない のですが、親の帯同、家事使用人の帯同といった、普通の在留資格、普通の外国人労働者 では認められないような優遇措置も付いてくるということで、非常に外国人の方には、メ リットが大きいということです。 このように雇用する側・される側、双方にとってメリットがある制度ということでござ います。そもそも、どういう人がこの制度の対象になるのかというと、それは今ご覧いた だいたオレンジの上の、高度人材が行う3つの活動類型という青い部分がございます。 このポイント制というのは主に三つのカテゴリーの外国人を念頭に置いています。一番 左、「高度専門職 1 号(イ)」と記載がございますが、その絵の横に、『本邦の公私の機関と の契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動』ということで書いてありま す。平たく言えば、研究所とかで研究する研究者の方のことでございます。隣の「高度専 門職 1 号(ロ)」というのは、企業に採用されて働いている外国人の方をイメージしてくだ さい。さらに隣の「高度専門職 1 号(ハ)」でございますが、会社の経営ですとか、マネジ メントをやる管理職をされている方のイメージでございます。 こういう3つの活動類型というものを定めて、こういう人たちを受け入れていこうとい う制度になっています。 それでは、この人たちをどういうふうに高度人材だと認めるかというところなのですが、 ポイント計算表というふうに書いてある裏の表をご覧ください。今申し上げた三つのカテ ゴリーごとにポイント計算表というものがあります。左から順番に先ほどの研究者の方、 真ん中が企業で働く外国人の方、一番右が経営者、マネジメントをやる管理職の外国人の 方でございます。おそらく一般的な留学生の方というのは、真ん中の高度専門・技術分野 に当たると思います。 説明し忘れましたが、ポイントで 70 点を取ると、めでたく高度人材になるというシステ ムです。立て付け自体はできるだけシンプルにしようとしておりまして、合計 70 点を取れ ば高度人材になるということでございます。 特に、今申し上げた真ん中の高度専門・技術分野が、留学生が一般的に企業に就職する 際に当てはまるカテゴリーですので、このポイントについて簡単に見ていきますと、 『学歴』 では博士号を持っていると 30 点、大学を卒業していれば 10 点で、『職歴』は 10 年以上働 いていれば 20 点でございます。『年収』については左下の紫色の「②年収配点表」にて年 齢と年収に応じて与えられる点数が決まっております。こういう形で下まで見ていくと、 一通り計算ができるということでございます。 特に、説明しておくべきところは、この真ん中の高度専門・技術分野のボーナス③と④ でございます。イノベーションを促進する、ボーナス③ですけれども、イノベーションを 促進するための支援措置を受けている機関における就労であれば、ボーナス点 10 点あげま すということです。④というのは、試験研究費等比率が3%を超える中小企業における就 労、この場合は 5 点あげますということです。これはどちらも、中小企業の方に加点があ るという意味で取り上げました。ボーナス③ですと右の下のほうに(注 1)で、『就労する 機関が中小企業である場合には別途 10 点の加点』というふうに書いてあって、上乗せ点が あるという制度になっています。要は、大変優秀な外国人というイメージだと、やはり大 企業しか採用できないのではと思われがちですが、中小企業の方にもこういった底上げ措 置を取ることで採用がしやすくなっているということを知っていただき、ぜひ優秀な外国 人をどんどん雇っていただきたい、というふうに考えております。 最後に、具体的にポイント計算してみて、どうすれば 70 点にいくのかということを簡単 にシミュレーションしてみたいと思います。 まず一般的な外国人で想定されるのが、日本の大学を出て、20 代で、年収 400 万円で、 日本語が得意という方、こういうありそうなパターンをイメージしながらポイント計算表 を見ていきます。まず『学歴』のところで、大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育 を受けた者、ということで 10 点がもらえるわけです。まずは 10 点です。次に、 『職歴』。 この人は職歴がないというふうに仮定してゼロなので、ここはポイントなしですね。本国 から来て日本に留学して特段働いたことがないということです。『年収』では、先ほどの左 下の「②年収配点表」で見ていくと、20 代の方で、年収 400 万円ぐらいもらえるという仮 定で 10 点です。 『年齢』は 29 歳以下なので、15 点がもらえる。最後だいぶ下の方を見てい くと、ボーナス⑥という所で『本邦の高等教育機関において学位を取得』ということで、 日本の大学を出ていれば 10 点もらえるということです。それなので、ここも当てはまる、 ということですね。 最後に補足して言いますが、日本語が非常に得意という外国人であれば、ボーナス⑦の 所で、『日本語能力試験N1取得者』などの条件を満たせば 15 点がもらえるということで す。これをどんどん足していくと、今のところ 60 点が取れているという状況ですね。 そうしますと残り 10 点をどこでフォローするかというと、例えばボーナス②の今後働こ うと考えている『職務に関連する日本の国家資格の保有』 、あるいはボーナス⑤『職務に関 連する外国の資格等』というところを見ていきますと、その大学生が学生時代にしっかり 頑張って、日本の IT 系の資格を取りましたとか、関連する資格を取りましたということで あれば、ここで 5 点がもらえたりしますので、こういったところのポイントを加算してい くことです。あるいは、先ほど説明をした、受け入れる企業側がボーナス③、ですとか④ で、『イノベーションを促進するための支援措置を受けている』などといったところに該当 すれば、プラス 10 点ないしは 5 点になって 70 点にたどり着きます。 さらに言えば、年収のところで、さっき 400 万円ということで説明しましたけれども、 もうちょっと 500 万円ぐらいもらえるということであれば、さらに 5 点プラスされて、70 点に近づくということです。 今申し上げたように、資格を学生のときにしっかりと勉強して取っているようであれば、 そういうところを見ていくということです。大学など教育機関の関係者の方であれば、こ ういうポイントのあることをぜひ理解していただいた上で、日本語をしっかり勉強するよ う指導しつつ、さらに今後、将来のビジョンがあるようであれば、それに関連する資格も しっかり取っておいたほうが、こういうポイント制度の適用を受けやすいといった指導も できると思います。 このように、あながちそこまでハードルが高くはないというふうに考えております。是 非、この制度の、このポイント表の、今説明したような内容を頭に描きながら、 「この人は こういうのがあれば、もうちょっと入管の審査も早く行くのにな。」とか、「安定的に 5 年 間日本にいられるのにな。」、さらには「永住もしやすくなるんだよな。」ということをイメ ージしながら、採用活動なり就職支援なりをしていただくと良いのではと考えております。 私の説明は以上でございまして、是非この制度をしっかり知っていただいて、高度人材 を確保、さらには日本の経済成長に資する人材を確保していくということにご協力いただ ければというふうに思っています。ありがとうございました。
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