シャッター・イズ・ヒム2

シャッター・イズ・ヒム2
夏みかん 作
大丈夫、怖くないよ。
「盗撮されました」「またあんたか」俺は
警官にため息を吐かれた。
さて、あのツイッター炎上、猥褻物陳列罪によりしばらく刑務所暮らし
をした俺だが、俺達褌侍は牢屋の中でもアットホームな歓迎を受け、暗
に本物の犯罪者たちから「お前らの人生、まだまだこれからだ」と激励
され、三か月後に出所した。
俺はその後、就職活動にも一発で合格し、「君褌侍だよね」と喜んで声
を掛けられる中、ツイッターからは追放され、今度はフェイスブックに
て活動し、その後も褌を晒し続け、親には怒られ、友人らとは語らいな
がら、何気に楽しく暮らしていた。
さて、会社も休みのとある日である。
俺は便所の窓を軽く開けて、換気しながら便座に座っていた。
今日のは、大物だな。
やはり昨日の婆ちゃんが送ってきたえのきが効いたか、と俺はいきんで、
50センチは繋がっていそうな獲物を見て、ふふんと笑って尻を拭くた
め腰を浮かした。
と。
「カシャ」
ん?と思ったときには遅かった。
裏の家の窓が開いており、その家のヤンキーな奥さんがカメラを向けて
いた。
目と目が合う。
にや、と笑ってぱたんと窓を閉めた。
えーっと。
俺は考えた。考えて、警察に電話した。
「盗撮されました」「またお前か」
交番のおっちゃんは俺には懲りている。
はーあとため息吐かれ、で、どこで何を撮られたの、と聞かれ、俺はか
くかくしかじかと話した。
「それもういんじゃね?あんた男だし」
そう言われ、でもネット炎上したら怖いんで、ちょっと消すように注意
してくださいよ、と頼むと、「わかったわかった」とおっちゃんは言い、
そして「身から出た錆だぞ」と怖い声を出した。
はは、はい。俺は笑って電話を切った。
さて、その後、奥さんとおっちゃんが二人で来て形ばかりの挨拶と謝罪
をし、俺はいえいえ、俺も悪かったんです、油断してたから、と言うと
奥さんが「ふっ!」と笑い、おっちゃんに睨まれていた。
「とりあえず、これ」
と奥さんはこの地で有名な直産物、えのきの束を差し出し、俺は「かは
っ!」と思いながら、「ありがとうございます」と慇懃に受け取った。
これでお相子。手打ちと来た。
俺はそのえのきを鍋に入れ、仲間たちと語らいながら食べた。
どいつもこいつも、今日も褌を履いている。
俺達は鍋の前で褌一丁になり、「いーいーなーいーいーなー、にーんげ
んっていーいーなー」と歌った動画をユーチューブにアップした。
褌侍は、今日も健在である。
シャッター・イズ・ヒム2
なんだか思いついたので。
シャッター・イズ・ヒム2
愉快な奴らは、今日も行く。
作
夏みかん
更新日
2016-10-20
登録日
2016-10-20
形式
小説
文章量
掌編(1,051文字)
レーティング
全年齢対象
言語
ja
管轄地
JP
権利
Copyrighted (JP)
著作権法内での利用のみを許可します。
発行
星空文庫