両側同時人工膝関節全置換術術前評価の有効性を探る

P2-A11
九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
両側同時人工膝関節全置換術術前評価の有効性を探る
野里美江子(PT),松尾のぞみ(PT) ,中松 典子(OT),比嘉 誠伍(PT)
社会医療法人仁愛会 浦添総合病院
Key Words
両側同時人工膝関節全置換術・術前評価・入院日数
【目的】
ア 60.0±13.78(点)
,
JOA各自スコア疼痛・歩行能力
近年ライフスタイルの変化や QOL 改善を求め人工膝
17.8±6.57,階 段 昇 降 9.7±5.91,屈 曲 角 度
関節全置換術(以下 TKA)を希望する患者の年齢層が
24.7±3.86,腫脹 7.8±3.15 であった。入院日数に
拡大傾向にある。当院ではそのニーズや医療費負担軽減
関連する独立変数のうち TUG(P<0.01)と JOA スコ
も含め両側同時 TKA を推奨しており,昨年より両側
ア (P<0.05) に有意差がみられた。入院日数と TUG,
TKA:14 日,片側 TKA:10 日とプロトコルを改定し,
JOA スコアに関連があることから,術前評価の有効性が
術後のケアの充実,早期退院に向けチームで取り組んで
確認できた。
きた。急性期病院である当院では外来体制がなく,TKA
【考察】 対象患者のほとんどは近隣でリハビリ通院し,手術の経緯
両側同時 TKA 後の入院日数に対して有意な因子を重
となる。そのため術前の身体情報が乏しく,術後リハビリ
回帰分析で求めた。有意差があった TUG ,JOA スコア
進行把握,対策が後手にまわる現状があった。術前から
結果より,入院日数が短い患者の特性として,屋外外出
術後の予測ができれば臨床的意義は大きいと考え,プロ
可能かつ JOA スコア平均 60 点で膝機能が維持されて
トコル改定に伴い術前評価を導入した。今回,その術前
いることが推測できた。TKA 後の予後予測について能村
評価より術後リハビリの進行,入院日数に関連する要因を
らは TKA 患者において術前の大腿四頭筋と歩行能力が
調査し,報告する。
術後の歩行能力に影響を与えるとし,先行文献や今回の
【対象と方法】
結果より当院で採用した術前評価の意義や妥当性が確認
2015 年 10 月から 2016 年 3 月までに当院で変形
できた。さらに当院で採用した術前評価は点数化でき,
性膝関節症に対して両側同時 TKA を施行し,術前評価
基準値が定められている事から経験年数に左右されにくく
を実施された 16 例(男性 5 例,女性 11 例)
を対象とした。
客観性も高いと考えた。今後はさらなるデータを蓄積し,
術前評価未実施や術後合併症ある患者は除外する。
術後リハビリ進行遅延を判断する基準値を検討することが
術前評価は Timed Up & Go test(以下 TUG),変
課題である。
形性膝関節症膝治療成績判定基準(以下 JOA スコア)
【結語】
を導入した。
入院日数と関連する有意な因子として術前評価 JOA ス
入院日数に対する有意な要因を求めるため Stepwise
コア,TUG に有意差がみられた。
重回帰分析を用いて解析を行った。従属変数を入院日数
今後も急性期病院として,安全に早期退院に向けたリ
とし,独立変数には TUG,JOA スコア,JOA 各項目ス
コ ア,年 齢,BMI,膝 伸 展 角 度 を 採 用 し た。ま た
ハビリ提供を考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
Stepwise 重回帰分析で有意にあった変数から標準回帰
この研究で得られたデータは匿名化し,個人情報が特
係数を求めた。統計処理には R2 .8.1 を採用し,全ての
定できないように配慮した。
検定において有意水準は 5%とした。
【結果】
対
象
の
入
院
日
数 13.6±2.25(日),
BMI27.5±3.49,年 齢 68.9±7.98(歳)
,男 女 比
5:11(例),膝 伸 展 角 度(右 / 左)-5.6±8.56,
-2.3±3.43(°
),TUG11.3±4.33(秒),JOA ス コ