Market View #29 生産性が大事!!

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コラム
2016年10月17日
Market View
#29 生産性が大事!!
皆さま こんにちは。
アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。
10月4日に国際通貨基金(IMF)は、「世界経済見通し」の中で、2016年、及び2017年の成長率予想を
公開しました。
端的に結論を述べると、2016年の世界経済成長率は3.1%、2017年は3.4%とされ(7月公表分同じ)、来年
に向けて成長率は若干ながら回復するとの予測です(図表1ご参照)。
図表1:IMFによる成長率予測
2016年(予想)
地域/国
2016年10月
見通し
(%)
2017年(予想)
2016年7月
対比
2016年10月
見通し
2016年7月
対比
世界
3.1
0.0
3.4
0.0
先進国
1.6
▲ 0.2
1.8
0.0
新興国
4.2
0.1
4.6
0.0
米国
1.6
▲ 0.6
2.2
▲ 0.3
ユーロ圏
1.7
0.1
1.5
0.1
日本
0.5
0.2
0.6
0.5
出所:IMF "World Economic Outlook,October 2016"およびUpdate,July 2016のデータを基にアセットマネジメントOneが作成
なお、7月公表、10月公表分の少数点以下一位データを基に計算したもの。
※上記は、将来における各地域および国の実質GDP成長率を示唆、保証するものではありません。
今回の世界経済見通しでは、(世界見通しの概要(第1章)に続く、)第2章で、「貿易自由化措置の勢いが
弱まっていること、一部の保護主義的措置の復活」が国際貿易量の伸びの最近の減速に「大きく影響している」とし
ており、「生産性」の伸びを低下させ、成長の阻害要因となることへの懸念が述べられています。
本コラムの2016年9月6日号(#26)では、同様の趣旨で、反グローバリゼーションの流れが経済や市場環境に与
える影響について、述べさせていただきました。ごく簡単にいうと、自由貿易との仕組みは、「効率的に成果」を得ること
に貢献するため、成長率を向上させることをご説明した上、自由貿易を妨げる保護主義的な動きが政治的に一定
の支持を集めつつある現状をご説明しました。
今回のコラムでは、「成長はどのようにもたらされるか」を改めて考えたいと思います。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
商 号 等 / アセットマネジメントOne株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号
加入協会/ 一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
1
唐突な仮定で恐縮ですが、私が銀細工の職人であったとします。
私は、1,000円の銀地金を仕入れてきて、一人で黙々と手作業で一日に1個のアクセサリーを作り、これを1,200円
で販売します。この場合、私が1日働いて銀地金に付け加えた価値は200円(=1,200-1,000)です。
それでは、この付加価値を増やすためには、どのような方法が考えられるのでしょうか。
私が銀地金の加工の速度をあげ、1日に2個のアクセサリーを作れるようになれば、(銀地金の仕入れ代は2,000
円になるのですが、)2,400円の売上げを得ることができます。この場合、付加価値は400円(=2,400-2,000)とな
るため、「柏原」国は、前期比100%(倍)の成長を成し遂げたことになります。
これが、いわゆる「生産性の改善」です。
これ以外にも付加価値を増やすためには、「働く人を増やす」、「お金を掛け、現状の手作業を機械で代替する」等
の手段が考えられます。
一般的には、「①生産性の改善」、「②労働投入量の増加」、「③資本投入量の増加」などが成長の源泉になると
いわれます。
先進国の多くの国、特に日本では、成熟化に伴う高齢化や少子化等の要因で、(人口に占める)働く人の割合
の減少が懸念されています。加えて、一般的に企業経営者は、労働コストの低い国(労働者の賃金が低い国)に
工場を作りたがるので、先進国は新興国と比較するとお金の投資先(直接投資先)にはなりにくい傾向があります。
したがって、先進国が成長の加速を目指すためには、「生産性の改善」が有力な手段となります。しかしながら、大
部分の先進国は、工業化との分かり易い「生産性の改善」手段が、既にある程度進展済みであるため、「生産性の
改善」を簡単に成し遂げることができません。
通常は、先進国、新興国等の区別は、一人当たりGDPで判別されます。一人当たりGDPが低い場合は、「(原
始的な手法による)農業」等から、「(安価な労働コストを生かした)工業」へ産業構造を転換するとの政策を採
用すれば、成長への道筋が見える場合が多いと考えられます(もちろん、インフラ投資が必要になります。ここにアジア
開発銀行等の大きな存在意義があります)。
しかしながら、経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後では発展パターンや戦略を
転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷するとの現象がみられます。これが、いわゆる「中所得国の
罠」です。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
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図表2は、日本の一人当たりGDPを折れ線グラフとした上で、BRIC’sと呼ばれる、ブラジル、ロシア、インド、中国
がどの位置にあるかを示したものです。
この中では、図表2で高位中所得国に分類されるブラジル、ロシア、中国の成長率は、(資源価格の影響もあ
り)減速、或いはマイナス成長等の不安定な状況に陥っていることと、低位中所得国のインドの成長は、比較的順
調であることが分かります(図表3ご参照)。
(米ドル)
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
図表2:日本の一人当たりGDPの推移
日本:1955年~1999年(年次)、BRIC’s:2015年(IMF予測)
◆必要な要素
・外国主導
・基礎学力を備えた労働力
・政府主導の産業政策
(保護主義も)
・軽工業
15,000
◆必要な要素
・外国主導
・資本蓄積
・インフラ整備
・裾野産業の拡大
中所得国の罠?
10,000
◆必要な要素
・透明な制度構築
・高度人材、技術
・自由競争
・民間によるイノベー
ションの創出
ブラジル
中国
ロシア
インド
5,000
◆必要な要素
・技術や経営の習得・自
前化
・加工組立製品の高度化
0
55
58
61
64
67
70
73
76
79
82
85
88
91
94
97(年)
高位中所得
低所得
低位中所得
高所得
(初期の外資導入) (部品の現地化)(技能・技術の現地化)
(創造的開発能力)
出所:内閣府、IMF、NEEDS-FinancialQUESTのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※上記は、将来における日本および各国の一人当たりGDPの推移を示唆、保証するものではありません。
図表3:IMF世界経済見通し(BRIC’s)
2016年(予想)
国
2016年10月
見通し
(%)
2017年(予想)
2016年7月
対比
2016年10月
見通し
2016年7月
対比
ブラジル
-3.3
0.0
0.5
0.0
ロシア
-0.8
0.4
1.1
0.1
中国
6.6
0.0
6.2
0.0
インド
7.6
0.2
7.6
0.2
出所:IMF "World Economic Outlook,October 2016"およびUpdate,July 2016のデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
なお、7月公表、10月公表分の少数点以下1位データを基に計算したもの。
※上記は、将来における各国の実質GDP成長率を示唆、保証するものではありません。
2016年6月に発表された「日本再興戦略2016」の副題は、「―第4次産業革命に向けて―」とされています。蒸
気機関等の(第一次)産業革命により、生産性は大きく改善しました。成熟化する日本においては、「生産性の改
善」が成長へのポイントになると思われます(ただし、時間が掛かります)。
新しいアセットマネジメントOneでは、業界No1の質と量を実現する積極的な情報発信に努めたいと考えます。
是非、弊社の新しいホームページ等をご覧いただければと考えます。
なお、コラムの過去分に関しては、以下をご参照ください。
http://www.mizuho-am.co.jp/report/column-list/ctg/041
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
(2016年10月17日9:00執筆)
3
投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項
【投資信託に係るリスクと費用】
● 投資信託に係るリスクについて
投資信託は、株式、債券および不動産投資信託証券(リート)などの値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替リ
スクもあります。)に投資をしますので、市場環境、組入有価証券の発行者に係る信用状況等の変化により基準価額は
変動します。このため、購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
● 投資信託に係る費用について
[ご投資いただくお客さまには以下の費用をご負担いただきます。]
■お客さまが直接的に負担する費用
購入時手数料 :上限4.104%(税込)
信託財産留保額:上限0.5%
公社債投信およびグリーン公社債投信の換金時手数料:取得年月日により、1万口につき上限108円(税込)
その他の投資信託の換金時手数料:ありません
■お客さまが信託財産で間接的に負担する費用
運用管理費用(信託報酬):上限 年率2.6824%(税込)
※ 上記は基本的な料率の状況を示したものであり、成功報酬制を採用するファンドについては、成功報酬額の加算
によってご負担いただく費用が上記の上限を超過する場合があります。成功報酬額は基準価額の水準等により変
動するため、あらかじめ上限の額等を示すことができません。
■その他費用・手数料
上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)等でご確認ください。
※上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。
費用の料率につきましては、アセットマネジメントOne株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれ
の費用における最高の料率を記載しております。
※税法が改正された場合等には、税込手数料等が変更となることがあります。
【ご注意事項】
●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。
●当資料は、情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。
●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が信頼できると判断したデータにより作成しておりますが、その内容の完
全性、正確性について、同社が保証するものではありません。また掲載データは過去の実績であり、将来の運用成果を保
証するものではありません。
●当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
●投資信託は、
1.預金等や保険契約ではありません。また、預金保険機構および保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。加
えて、証券会社を通して購入していない場合には投資者保護基金の対象ではありません。
2.購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
3.投資した資産の価値が減少して購入金額を下回る場合がありますが、これによる損失は購入者が負担することとなり
ます。
【当資料で使用している指数について】
●ございません。
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