補足1 Gミニマムとは (身の回りの例で考える 課題1) 物質の状態変化は自由エネルギーが減少する方向,平衡状態はある種のGミニマム (ギブズの自由エネルギーG)=(エンタルピーH)ー温度T (エントロピーS ) Gを減少させるにはエンタルピーを小さくするか,エントロピーを大きくするか ということ 温度変化に伴う状態変化の場合,高温ではエントロピーの大きくする方が,低温ではエンタル ピーを小さくする方が有利となる。 固体 液体 気体 いくつかの例を考えてみる。 大 さらに大 H 小 物質の相変態 ◎固体⇄液体⇄気体 小 大 極端に大 S 固体,液体,気体となるに従って,エンタルピー, G=H-TSをTの1次関数とみてグラフに描くとす エントロピーともに増加する。しっかり認識する れば,Hは切片で,Sが傾きということになる。 べきは,結合すればするほど(固く結合する程) G エンタルピーが小さくなるということ。結合エネ 固体のG 気体のG ルギーの分だけエンタルピーは低くなる。 固体で 液体のG G=HTSで簡単のためにTの1次関数でHが切片 Gミニマム 液体で Sが傾きとすれば,3つの相で右のようにGの直線 Gミニマム 気体 が描かれる。ここでGミニマム(平衡状態)を考え T 融点 沸点 る。それぞれの直線が交わった点を融点,沸点と すると,融点より低温では固体のGが最小であり,固相が選択される。同様に考えれば,融点 と沸点の間の温度では液相が,沸点より高温で気相が選択されることがわかる。 正しい表現は,高温では,原子(分子)がバラバラになってエントロピーを増加させる方が 自由エネルギーGを最小になるので,液体(気体)になる。低温では,原子(分子)が結合し てエンタルピーを小さくする方が自由エネルギーGを最小にするので,固体(液体)になる。 凝固点降下 高校で習った凝固点降下とは,溶媒に溶質が混ざると凝固点が下がるというもので,式ばっかり を憶えていた人も多いと思いますが,大学では式を憶える必要はありません。意味を理解する。特 に熱力学では本質を理解することが重要!! 凝固点(融点)は上の説明からも理解できるように,エンタルピーとエントロピーのバランスで決 まるものであり,純粋な液体と溶質が混ざった溶液ではエントロピーが違う値となり,乱雑さを示 すエントロピーは溶液の方が大きくなる。つまり,溶液ではエントロピーが大きくなり,純粋な状 態の融点よりも低い温度でも液体の自由エネルギーが固体よりも小さくなる。すなわち,融点が下 がることになる。 高温で溶質が溶けやすくなるというのも同様の理由で考えてもよい。高温ではエントロピーを大き くする方がGを小さくするのに有利なので,溶質が混ざった状態が選択される。という記述でだい たいは良い。しかし,溶解度が高温で増加するという現象の本質は別にあるので要注意! ◎磁気変態 鉄等の強磁性体はある温度以上になると,強磁性を失ってしまう。 強磁性は内側の電子(自由電子でない電子)のスピンが揃っている状 態,すなわちエンタルピーが低くなっている状態,高温になるとスピン の向きがバラバラになってエントロピーを大きくする方が自由エネル ギーを最小にできることになり,磁性を失う。 スピンの向き 電子 低温で強磁性 高温で常磁性 スピンの向きがバラバラ
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