謎のスパーを解明する: DDC のせいじゃない!

謎のスパーを解明する: DDC のせいじゃない!
最近、デジタル・ダウンコンバータ(DDC)
機能を搭載したアナログ・デバイセズの
高速 ADC で出力スペクトルを評価
していたら、奇妙な現象が発生しました。
謎のスパーの存在を解明してください。
DDC にはデシメーション・フィルタが組み込まれ
ており、従来の入力アンチエイリアシング(折返し誤差
防止)フィルタを必要とせずに、対象のベースバンド
信号をデジタルで抽出し、処理すべきデータのペイ
ロードを小さくすることができます。質問頂いている
方は、周波数プランをテストして、DDC の通過帯域と
遷移帯域の外にある入力周波数が実際に 100 dB 以
上 減 衰されるか 確 認しようとしました( 下 の 図を参
照)。デシメーション・フィルタをイネーブルして A/D
コンバータ
(ADC)の出力データの FFT を実行した結
果、その出力スペクトルにスパーが見られ、減衰は期
待した 100 dB 以上ではなく、わずか 90 dBだった。そ
して、入力信号を除去したら、スパーは消えてしまっ
た。このスパーはどこから来ているのか?とお聞きに
なりたいのでしょう。なぜ、阻止帯域に十分入ってい
る信号が通過帯域内にスパーを発生させるのでしょ
うか?
質問者のテスト構成には、
アナログ入力のアンチエイ
リアシング・フィルタはなかったということでした。
し
たがって、謎のスパーの根本原因についての回答は、
デジタル・フィルタはアナログ側のスペクトル成分を
除去することはできないということになります。これ
は、高いサンプル・レートのコンバータを使えばアナ
ログ入力のフィルタリング要件を緩和できますが、そ
れでもサンプリング・システムのエイリアシングの法
則を無視することはできないことがわかります。高い
サンプリング・レートと DDC により、フロント・エンド
に強力なアナログ・フィルタがなくても、fS/4 と f S/2 の
筆者紹介:
David Buchananは、
1987年にヴァージニア
大学でBSEE(電気工学
士)を取得しました。
アナ
ロ グ・デ バ イ セ ズ 、
Adaptec、STMicroelectronics 社においてマー
ケティングとアプリケー
ション・エンジニアリン
グを担当。
さまざまな高性能アナロ
グ半導体製品を扱いま
した。現在は、
ノースキャ
ロライナ州グリーンズボ
ロにあるアナログ・デバ
イセズの高速コンバー
タ製品ラインの上級アプ
リケーション・エンジニ
アです。
間のブロッカを処理できました。
もっと弱いフィルタで
も、3fS/4 以降のスプリアスを除去できるでしょう。
ADC に搭載されている DSP オプションについて考え
るとき、ADCがどのように動作するか考えるのを忘れ
てしまいがちです。上の図では、ベースバンドのナイ
キスト領域のデシメーション・フィルタの応答を正確
に表していますが、コンバータの他のナイキスト領域
で起きることはカバーしていません。
この場合、
フィル
タ応答は他の全ての高次ナイキスト領域にエイリア
スを生じます。下の図では、最初の 5 つのナイキスト
領域の応答を見ることができます。また、謎のスパー
も確認できます。
これは、帯域外の入力トーンの 2 次
高調波がエイリアスを生じたものです。
参考文献
技術資料:
Ian Beavers 著「Understanding Spurious-Free
Dynamic Range in Wideband GSPS ADCs」、
アナログ・
デバイセズ、2014 年
アナログ・デバイセズの EngineerZone® コミュニティ
のブログ:
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs̶Part 2
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs̶Part 3
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs̶Part 4
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs̶Part 6
その他のRAQについては、
www.analog.com/jp/raqs
をご覧ください。
www.analog.com/jp