プロセスシステム工学特論 第二回 1.吸光度測定による分光分析(復習) 分光分析法では、試料溶液が光源からの電磁波(光)を吸収し、吸光量と溶液中 の分析成分濃度との間に関係があることを利用している。 分光光度計( spectrophotometer ) 分光吸光光度計は、単色光を作り出して、これを試料に照射し、透過した光の量 を測定して、試料の、その波長における吸光度を求める。 光源 190~400 nm 350~2500 nm 重水素ランプ D2 タングステンランプ W モノクロメーター 広範囲の波長の光を空間的に分散させ、それをスリットなどで狭い範囲の波長の みを取り出す分光器である。例:プリズム、回折格子 回折格子(かいせつこうし、Grating:グレーティング) 種々の波長が混ざった光(白色光)を波長ごとにわける (分散)光学素子。最も単純な回折格子は、多数の平行 スリットが等間隔で配列した構造をしている。白色光が 回折格子に入射すると、波長ごとに決まったある角度で 光が強め合い(回折)、この強め合った光を取り出すこと で波長選択が可能。右図のように隣り合う開口に入射し た平行光線について、その光路差が波長の整数倍になる とき光は強め合う。同様に、すべての開口からの光もこ の方向に強め合い、この強め合った光を回折光と呼ぶ。 シングルビームとダブルビーム シングルビーム ダブルビーム 検出器 1 検出器面に入った光の電磁気的エネルギーを電流、電圧に変えるものです。 代表例 190~1100nm で強い感度を示す Si フォトダイオード検出器 1000~3200nm の広い波長域に感度を示す PbS 検出器 900~1800nm に強い感度を示す InGaAs 検出器 185~900nm に強い感度を示す光電子増倍管 光電子増倍管で、光電面に光が当たると、真 空中に光電子が放出し、集束電極によって電 子増倍部に導かれる。電子増倍部で生じる 2 次電子放出効果によって光電子を増倍し、100 万倍~1000 万倍に増幅することが可能。 光電子増倍管 2.色相環と補色 銅水溶液が青く見えるのは、白色光から補色の黄色を吸収し、残りの青色光を透過 させるから。 可視光領域 吸収波長/ nm 380 ~ 440 表 1 吸収波長と色の関係 吸収される色 透過する色(補色、見える色) 紫 黄緑 440 ~ 490 青 黄 490 ~ 500 青緑 赤 500 ~ 560 緑 赤紫 560 ~ 580 黄緑 紫 580 ~ 595 黄 青 595 ~ 620 橙 緑青 620 ~ 750 赤 青緑 図 1 色相環 3.吸光現象 図2 三原色光の加算 2 図3 光の種類と色の関係 電子が基底状態から励起状態に遷移するエネルギー順位の差に応じた波長の光を 吸収。分子衝突などの熱としてエネルギーを放出する、あるいは分子間エネルギー移 動によるエネルギー放出。 2-1.有機化合物の吸収スペクトル 電子、電子および非共有電子対(n 電子)の励起 我々が測定するのはほとんど電子の励起。 (最長波長吸収帯) ベンゼン環(一個) 255 nm ナフタレン 312 nm アントラセン 375 nm スチレン 282 nm in ethanol アニリン 280 nm in water ヘム 405 nm あたり in water *吸収帯は溶媒によって移動する。 H2N 2-2.金属錯体の吸収スペクトル 金属錯体の電子遷移: d-d 遷移吸収帯、配位子吸収帯、電荷移動吸収帯 3-(2-Pyridyl)-5,6-bis(4-sulfophenyl)-1,2,4-triazine, salt (PDTS or Ferrozine) 比色試薬として Co2+, Cu+, Fe2+, Os8+, Ru3+ 4.Lambert-Beer の法則 吸光度 A c l log( I ) I0 I は透過光強度 c: 溶質濃度 [M] l: セル光路長 [cm] : モル吸光係数 [M─1·cm─1] 混合物に関しては、加成性が成り立つ。 A ( M cM N cN ) l 3 disodium ヘム b の構造 5.溶液セル ガラスセル(可視光)、石英セル(紫外・可視兼用)+プラスチック 図 図 PYREX ガラスと石英ガラスの光透過性 石英セルの光透過率(200 nm 以下) 石英セルにもいろいろある。 精度の高い測定をするために 毎回、セルを使用する向きを揃える セルホルダ内の同じ位置で測定する 6.吸収スペクトル 横軸に波長、縦軸に吸光度(または透過率)を 取る測定方法 図 4 ゼイン(トウモロコシタンパク質)の吸収 スペクトル どれくらい少量まで測定可能か? 数l でも測定可能 図 青色 1 号と赤色 102 号の吸収スペクトル 4 7.溶媒のスペクトル測定 試料セルに溶媒、参照セルに空セル 参照セルに 10mm、試料セルに 20mm のセルを置いて測定 光路長の差である 10mm で測定した場合と同様の結果が得られる。 8.分光光度計におけるバンド幅 9.ストップトフロー法 2種の溶液を①急速に流れを開始し ②混合し, ③液の流れを停止し,記録開始。信号を送出, ④反応セル内で進行する反応に伴う物理量を高速記録する。 測定は、可視・紫外・近赤外領域の吸収スペクトル・蛍光、CD スペクトル、 伝導度、界面張力などの変化を高速に測定する方法 どれくらい高速で測れるか? ミリ秒 おまけ 日焼け止めクリームの性能 昔は、被験者による皮膚パッチテストで評価し ていた。日焼け止めクリームの効果の表示方法と して、SPF 値(280~320nm の赤くなる日焼け に対する効果)と PA 値(320~400nm の黒くな る日焼けに対する効果)の二つがある。 波長の 異なる SPF 値、PA 値の算出に、紫外可視分光光 度計を活用するというニーズに対し、 試料を専 用セルに塗布して測定し、SPF 値・PA 値の算出 が可能に。 5 病気の名前を覚えよう インフルエンザ flu [flúː] 糖尿病 diabetes [dàiəbíːtiːz] 肺炎 pneumonia [njuːmóuniə] 気管支炎 bronchitis [brɑŋkáitis] ぜんそく asthma [ǽ zm ə] はしか measles [míːzlz] 風疹 rubella [ruːbélɑ] 花粉症 発作 pollen allergy [pɑ́lən ǽlərdʒ] attack 内科医 外科医 physician surgeon 皮膚科医 歯科医 dermatologist dentist [də̀ːrmətɑ́lədʒist] 6
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