経済協力(ODA)

資料2
経済協力(ODA)
平成28年10月20日
【目 次】
1.ODAを取り巻く最近の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.二国間ODA・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
3.国際機関等への拠出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
4.その他(PDCA・成果目標に関する課題)・・・・・・・27
1.ODAを取り巻く最近の状況
2
1-(1)一般会計ODA予算(当初)の推移
日本の「一般会計ODA予算(当初)」は、ピーク時の1兆1,687億円(1997年度)から趨勢的に減少し
てきたが、2016年度は、5,519億円と対前年度1.8%の増。
(億円)
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
11,452 11,061 10,634 11,687 10,489 10,473 10,466 10,152 10,144 9,522 3,733 3,865 9,106 3,354 3,501 8,831 8,578 3,219 3,126 8,175 8,169 3,115 3,063 7,862 7,597 2,962 2,845 7,293 7,822 2,191 7,002 2,730 2,003 6,722 7,719 7,403 2,255 1,866 6,187 7,707 1,744 7,307 7,363 5,727 1,659 5,612 5,573 7,415 6,972 1,591 6,915 5,519 5,502 5,422 1,495 7,029 6,575 1,273 有償
6,560 1,044 644 569 506 485 6,303 483 444 6,101 6,118 5,920 5,938 技協・
無償・
その他
5,702 5,507 2,000
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
3
1990
0
2009
5,449 5,143 5,075 5,083 5,067 5,043 5,017 4,939 1-(2)ODA事業量(グロス)見込の推移
近年のODA事業量は有償資金を中心に増加傾向。
(億円)
20,000
17,709 18,037
16,247
15,000
14,785
14,493
7,009
18,829
19,375
10,030
10,079
20,241
15,725
8,299
7,808
18,128 18,518
19,558
8,018
8,798
8,916
9,236
10,611
有償
7,812
7,833
技協
10,000
2,697
2,904
3,000
3,087
5,000
1,682
2,632
1,608
2,970
1,765
1,542
2,927
2,569
2,550
2,561
1,519
1,616
1,642
2,542
2,462
2,508
1,667
1,605
1,629
無償
1,588
1,636
4,896
3,757
2,347
5,781
5,242
5,436
5,390
5,136
5,411
出資・
5,493 拠出等
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
3,397
0
JICA有償資金の原資内訳
合計
出資金
財政投融資
自己資金
(うち回収金
(うち借入返済
2005
6,900
1,744
4,470
686
(4,474)
(△ 5,240)
2006
7,700
1,659
4,815
1,226
(4,785)
(△ 5,001)
2007
7,700
1,591
4,246
1,863
(5,136)
(△ 4,671)
2008
7,700
1,495
2,923
3,282
(5,645)
(△ 4,050)
2009
8,200
1,273
3,056
3,871
(6,199)
(△ 4,030)
7,910
1,044
2,949
3,917
(5,898)
(△ 3,948)
8,500
644
3,380
4,476
(5,858)
(△ 3,181)
(注1)リーマンショックを踏まえた時限措置(緊急財政円借款(2009~2011年度)を除く。
(注2)事業量の有償とJICA有償資金の原資が一致しないのは、海外漁業協力財団が含まれるため。
8,800
569
4,270
3,961
(5,939)
(△ 3,232)
9,150
506
3,844
4,800
(6,399)
(△ 3,171)
9,885
485
4,820
4,580
(6,360)
(△ 2,759)
9,885
483
4,366
5,036
(6,583)
(△ 2,444)
10,525
444
4,680
5,401
(6,781)
(△ 2,192)
4
1-(3)民間資金による直接投資
途上国向け民間直接投資が2000年代に入り趨勢的に増加。
途上国向け民間直接投資(ネット)
途上国向け資金(ODA+OOF+FDI、ネット)
(百万ドル)
90,000
(百万ドル)
60,000
米国
日本
50,000
80,000
ドイツ
フランス
70,000
カナダ
40,000
イタリア
60,000
英国
米国
日本
ドイツ
フランス
カナダ
イタリア
英国
50,000
30,000
40,000
30,000
20,000
20,000
10,000
10,000
1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013
5
(出所)OECD DAC
(注)英国については2013年以降のデータが公表されていない。
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
0
0
1-(4)日本の途上国向け資金(グロス)
途上国向けの民間資金(PF)は、政府資金(ODA・OOF)を大きく上回っている。特に直接投資
(FDI)は、10年間で政府資金の半分程度から政府資金を超える規模にまで増加。
日本の途上国向け資金(グロス)
(百万ドル)
120,000
117,705 (%)
160
116,062 109,786 103,895 100,000
95,688 91,835 87,974 78,869 80,000
60,000
140
その他PF
135 77,555 120
PFのうち直接投資
(FDI)
OOF (その他
59,067 政府資金)
100
ODA
40,000
80
20,000
60
直接投資
÷(ODA+OOF)
56 40
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(出所)ODA・OOFはOECD DAC, それ以外(民間資金のうち直接投資,輸出信用等)は財務省
6
1-(5)最近のODA施策を巡る政策決定等
2015年2月
開発協力大綱
(閣議決定)
目的
●平和国家として、国際社会の平和、安定、繁栄に積極的に貢献。それを通じて国益も確保。
●民間企業等の多様な資金・主体と連携しつつ、ODAを多様な力を結集する触媒・原動力にする。
重点課題
●「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅。
●普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現。
●地球規模解題への取組を通じた持続可能で強靭な国際社会の構築。
2015年5月
質の高いインフラ
パートナーシップ
(外務省・財務省・経
産省・国交省)
「質の高いインフラ投資」の提唱
●一見、値段が高く見えるものの、使いやすく、長持ちし、そして、環境に優しく災害の備えにもなるため、
長期的に見れば安上がり。
民間資金動員を通じた「質と量」双方の追求
●「質の高いインフラ投資」を推進するに当たり、「量より質」という発想ではなく、「質も量も」追求。
2015年9月
持続可能な開発目標
(国連サミット)
●ミレニアム開発目標で達成できなかった課題(教育・母子保健・衛生等)に加え、新たな開発課題に対応
するため、17の目標の下、更に細分化された169のターゲットを設定。
●新たな課題には「インフラ・産業・イノベーション」、「経済成長・雇用」や「平和」等が含まれる。
2016年5月
●世界全体に対するインフラ案件向けリスクマネーの供給拡大。
G7伊勢志摩サミット
●質の高いインフラ輸出のための更なる制度改善。
【平成27年度予算の編成等に関する建議】
「質の高いインフラ輸
(1)迅速化の更なる推進、(2)民間企業の投融資奨励 等。
出拡大イニシアティ
開発協力を効果的に実施していくためには、国際機関向け拠出金についても外交上の意義等の
⇒ 日本は、今後5年間の目標として、世界全体のインフラ案件向けに約2,000億ドルの資金等
【平成26年度秋のレビュー
】
ブ」(経協インフラ戦略
を供給。
観点から厳格な評価をしなければならない。その上で、説明責任を果たし、優先度が低いものや意
会議)
我が国の国際協力の基本的な戦略・重点分野を踏まえ、評価の基準・指標を明らかにした上で、
義が認められないものについては拠出の停止・拠出額の圧縮を実施するなど、ODAの戦略性・効
拠出を行っている国際機関全般に対して、多面的・定量的な評価を行うとともに、その評価結果を
2016年8月
●経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進。
率性を高めるための不断の努力が必要である。
●質の高い生活のための強靱な保健システム促進。
ナイロビ宣言(TICAD
活用し、行政事業レビュー等を通じ拠出の妥当性を論理的に説明すべきではないか。
Ⅵ)
7
●繁栄の共有のための社会安定化促進。
⇒ 日本は、今後3年間で、官民総額300億ドル規模の質の高いインフラ整備や強靭な保健システム促進、
平和と安定の基礎作り等のアフリカの未来への投資を行う。
1-(6)開発協力大綱(抄:平成27年2月閣議決定)①
Ⅲ実施
(1)実施上の原則
開発協力の実施に際しては,前述の理念の実現と重点政策推進にとって最大限
の効果が得られるよう,開発効果向上等の国際的な議論も踏まえつつ,効果的・
効率的な開発協力推進に努めるとともに,当該国・社会に与える影響や協力の適
正性確保等に十分な配慮を行うことが必要である。この観点から,以下の諸点を
実施上の原則として開発協力を行う。
ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則
(ア)戦略性の強化
我が国の開発協力の効果を最大化するためには,政府・実施機関が一体となり,
様々な関係主体とも連携しつつ,我が国の有する様々な資源を結集して,開発協
力の政策立案,実施,評価のサイクルに一貫して取り組むという戦略性を確保す
ることが重要である。
政策立案に際しては,開発協力が刻々と変化する国際情勢を踏まえた戦略的か
つ機動的対応が要求される外交政策の最も重要な手段の一つであることを十分
認識する必要がある。この観点から,開発途上国を始めとする国際社会の状況,
開発途上国自身の開発政策や開発計画及び支援対象となる国や課題の我が国
にとっての戦略的重要性を十分踏まえ,必要な重点化を図りつつ,我が国の外交
政策に基づいた戦略的かつ効果的な開発協力方針の策定・目標設定を行う。また,
開発協力方針の明確化のため,本大綱の下に,課題別政策,地域別政策,国別
政策等を位置付ける。
開発協力の実施に際しては,政府及び政府関係機関が有する資源を最大限に
活用すべく,ODAとODA以外の資金・協力との連携を図ることで相乗効果を高め
る。また,外交政策上の観点及び開発協力の効果・効率性の向上のため,技術協
力,有償資金協力,無償資金協力を有機的に組み合わせるとともに,迅速性の向
上や協力のための諸制度の改善,柔軟な運用に努める。
評価については,協力の効果・効率性の向上に加え,国民への説明責任を果た
す観点からも重要であることを踏まえ,政策や事業レベルでの評価を行い,評価
結果を政策決定過程や事業実施に適切にフィードバックする。その際,成果を重
視しつつも,対象の特殊性やそれぞれの事情を考慮した上で評価を行う。また,外
交的視点からの評価の実施にも努める。
(中略)
(2)実施体制
国際社会において開発課題が多様化・複雑化・広範化し,開発に携わる主体や開発
に関係する資金が多様化していることを踏まえ,政府・実施機関の実施体制整備,各
種の連携強化及び開発協力の持続的実施のための基盤の強化に努めていく。
(中略)
イ 連携の強化
(中略)
(ア)官民連携,自治体連携
開発途上国の開発推進にとって,ODAを始めとする公的資金は引き続き重要な役
割を担うが,開発途上国への民間資金の流入が公的資金を大きく凌いでいる現状を
踏まえれば,民間部門の活動が開発途上国の経済成長を促す大きな原動力となって
いることを十分考慮する必要がある。また,アジアにおいては,開発協力によってハー
ド・ソフトの基礎インフラを整備したことで投資環境が改善し,また,開発協力が触媒的
役割を果たすことにより,民間企業の投資を促し,それが当該国の成長と貧困削減に
つながっている。この過程を通じて,アジアが我が国民間企業の重要な市場,投資先
として成長し,日本経済にとって極めて重要な存在となったという事実を再認識するこ
とも重要である。さらに,我が国の地方自治体が有する独自の経験や知見が,開発途
上国の抱える課題の解決にとって重要な役割を果たすようになっている。
以上を踏まえ,民間部門や地方自治体の資源を取り込むとともに,民間部門主導の
成長を促進することで開発途上国の経済発展を一層力強くかつ効果的に推進し,また
そのことが日本経済の力強い成長にもつながるよう,官民連携,自治体連携による開
発協力を推進する。具体的には,我が国の中小企業を含む企業や地方自治体,大学・
研究機関等との連携を強化し,人づくり,法・制度構築,インフラシステム整備等,貿
易・投資促進のための環境整備を始めとした取組を計画策定から事業実施まで一貫し
て進める。
なお,官民連携の推進に当たっては,我が国の開発協力が,民間部門が自らの優れ
た技術・ノウハウや豊富な資金を開発途上国の課題解決に役立てつつ,経済活動を
拡大するための触媒としての機能を果たすよう努める。また,開発協力と共に実施され
る民間投資が相手国の「質の高い成長」につながるよう,上述の我が国開発協力の重
点政策を十分に踏まえ,包摂性,持続可能性,強靱性,能力構築の促進等を確保する
よう留意する。
(中略)
8
1-(6)開発協力大綱(抄:平成27年2月閣議決定)②
(ウ)国際機関,地域機関等との連携
独自の専門性,中立性,幅広いネットワークを有する国際機関は,二国間協力
ではアクセス困難な分野・地域への協力やその独自性を活かした効果的・効率的
な協力を行うことができる。また,二国間協力と組み合わせることで相乗効果が期
待できる。これらを踏まえ,人道支援,平和構築やガバナンス,地球規模課題への
取組を始めとして引き続き国際機関と積極的に連携する。また,国際機関は,国
際的な開発協力の理念と潮流を形成する役割も担うことから,責任ある国際社会
の一員として,国際的な規範の形成を主導する上でも,国際機関及び国際社会に
おける我が国の発言力・プレゼンスの強化を図る。さらに,各国際機関との政策協
議を定期的に実施し,政策調整を行っていくことで,二国間協力との相乗効果を実
現するよう努める。また,国際機関を通じた開発協力の効果や評価については,
国民への説明責任の確保に特に留意する。
また,地域統合の動きや地域レベルでの広域的取組の重要性を踏まえ,地域機
関・準地域機関との連携を強化する。
(エ)他ドナー・新興国等との連携
我が国と同様,他ドナーには長年の開発協力で培われた経験と知見が蓄積され
ており,開発効果をより向上させるためには,ドナー間の連携を強化し,協調・協
働することが必要である。この観点から,我が国は,外交的観点も踏まえながら,
引き続き他ドナーとの開発協力における協調を推進し,開発協力の効果の一層の
向上を目指していく。
また,開発協力の実施に当たっては,我が国の長年の協力により相手国に蓄積さ
れたノウハウや人的資源,人材ネットワーク等を有効に活用することが重要であ
る。新興国を始めとする諸国と連携した三角協力は,これらを有効に活用した協力
として,国際社会からも高い評価を得ているところ,引き続きこの取組を継続して
いく。
(中略)
9
ウ 実施基盤の強化
(ア)情報公開,国民及び国際社会の理解促進
開発協力は,国民の税金を原資としている。したがって,開発協力に必要な資金
を確保し,持続的に開発協力を実施していくためには,国民の理解と支持を得るこ
とが不可欠である。この観点から,開発協力に係る効果的な国内広報の積極的な
実施に努め,国民に対して,開発協力の実施状況や評価等に関する情報を幅広
く,迅速に十分な透明性をもって公開するとともに,政策,意義,成果,国際社会か
らの評価等を国民に分かりやすい形で丁寧に説明する。また,開発途上国を含め
た国際社会において,日本の開発協力とその成果の認知度・理解度を高めること
も重要であり,そのための海外広報にも積極的に取り組む。
(後略)
2.二国間ODA
10
2-(1)これまでのニ国間ODAに関する指摘
【平成28年度予算の編成等に関する建議】
●開発途上国の経済発展への我が国の貢献を評価するに当たっては、単に一般会計の ODA予
算額(当初)の多寡を論じるのではなく、円借款も含めたODAの事業規模、OOF及び民間資金に
着目すべきであり、とりわけ民間の海外直接投資は、成長や雇用に貢献し開発途上国との関係
強化に重要な役割を果たすものであり、重視すべきである。
●無駄・非効率な事業を徹底して排除し、(中略)真に開発途上国の発展に資する事業に重点化す
るべきである。
【平成27年度予算執行調査(「日本方式」の普及(無償資金協力))】
具体的な成果目標を設定するとともに、フォローアップを実施し、これらを公表するなど、「調達代
理方式無償資金協力」についても、透明性の確保やPDCA サイクル確立のための取組みを進める
べき。
【平成25年度行政事業レビュー(貧困農民支援(無償資金協力))】
援助の目標設定や効果測定が不十分であり、PDCAサイクルの確立を含めた有効な援助の仕
組みを整備すべく、援助のあり方を抜本的に見直すべき。
11
2-(2)ODAとFDI:タイ東部臨海地域の開発
●1980年代前半~後半、東部臨海地域の開発計画策定に係る技術協力を実施。
●策定した計画を基に、1980年代~1990年代に港湾開発(479.4億円)、道路建設(723.4億円)、導送水管(工業用水) 敷設
(204.6億円)、工業団地造成(91.3億円)等に係る円借款を供与。
●1980年代後半より、同地域に対する日本の直接投資額が急増。
■円借款
技術協力による工学系人材育成など(タイ全国)
(億円)
• モンクット王工科大学 創設支援
(1960年~1965年、1978年~1983年、1988年~1993年、計20.5億円)
• 工業標準化試験研修センター創設支援(1989年~1994年、2.8億円)
• タマサート大学工学部創設支援(1994年~2001年、11.7億円)
• 国家計量標準機関支援(2002年~2004年、2004~2007年、計4.8億円)
• 自動車裾野産業人材育成(2006年~2011年、3.0億円)
・(非ODA)泰日工業大学設立(盤谷日本人商工会議所等の支援、2006年)
円借款による施設建設(東部)
■技協(億円)
技協による開発調査(東部)
20
10
0
(認可件数)
ラヨン県(左軸)
タイにおける
生産開始
1962年:日産
1964年:トヨタ
1966年:いすゞ
(百万ドル)
東部臨海地域での生産開始
1987年:三菱
1994年:いすゞ
1989年:トヨタ
1998年:マツダ
チョンブリ県(左軸)
チャチュンサオ県(左軸)
東部臨海3県で日本企業
の進出(認可件数)が急増
タイ全土への
日本企業の
直接投資額
(右軸)
参考: 全国GDPに占める東部臨海3県の割合の増加
●1995年から2010年でタイ全国
GDPは2.56倍へと増加。
●その間東部臨海3県のGDPは
3.81倍増加。全国GDPのシェア
も 9.87%から14.67%へと増加。
(備考)JICA、JETRO、日本総研、タイ国家経済社会開発庁公表資料より財務省作成。
12
2-(2)触媒としてのODA①:バンコク大量輸送網整備事業(パープルライン)
ODAでは、民間部門の技術や資金を開発途上国の課題解決に役立てつつ、経済活力を拡大するた
めに触媒機能の発揮が期待。
バンコク大量輸送網整備事業(パープルライン)の例
事業概要
●バンコク首都圏における大量輸送網(パープルライン)を整
備する事業。円借款(借款供与総額:790億円)支援によ
り、
タオプーン~バンヤイ間において、いわゆる下物(高架、駅
舎、軌道、車両基地等)を整備。日本企業では東急建設が
一部受注。
●円借款対象外事業では、丸紅・東芝・JR東日本が10年間
の維持管理契約等を受注。
事業概略図
総事業費:約2,100億円(うち円借款:790億円)
<下物(土木事業) >
<上物(鉄道システム等) >
JICA
コンセッション契約(25年)
(運賃収入リスクはMRTA)
①鉄道システム整備
②運行
③維持管理
円借款
タイ高速度
交通公社
(MRTA)
土木工事事業者
①高架
②車両基地
③軌道
(①は一部東急建設
が受注)
13
(注)鉄道システムは丸紅・東芝のJVが受注し、JR東日
本の子会社(総合車両製作所)が車両を納入、維持管理
契約は丸紅・東芝・JR東日本のJVが受注。
バンコクメトロ社
(BMCL)
(民間企業)
鉄道システム
維持管理事業
(10年)の契約
共同事業体(注)
(丸紅・東芝・JR東
日本)
2-(2)触媒としてのODA②:
ミャンマー・ティラワ経済特区開発支援
事業・運営権対応型無償資金協力
ミャンマー・ティラワ経済特区開発(SEZ)支援
事業概要
●2012年12月に日・ミャンマー両政府間でティラワSEZ
を協力して開発することについて覚書締結。以降、JI
CAは下記の経済協力を実施。
・2013年6月:周辺港湾・電力等整備事業への円借款(200億円)
・2014年4月:Myanmar Japan Thilawa Development Ltdへ出資
承諾(海外投融資)
・2014年9月:周辺道路・水道等整備事業への円借款(282億円)
SEZ管理委員会能力向上支援(技協:3.4億円)
・2015年4月:港湾電子情報処理システム整備(無償:17.2億円)
・2015年6月:周辺港湾・電力等整備事業への円借款(148億円)
●現在、63社が当該特区に進出(うち日本企業33社
(2016年9月末現在))
事業・運営権対応型無償資金協力
スキーム概要
●民間企業が関与して施設建設から運営・維持管理まで
を包括的に実施する公共事業に無償資金協力を行う
ことを通じ、日本企業の事業権・運営権の獲得を促進
し,我が国の優れた技術・ノウハウを途上国の開発に
役立てることが目的。
●開発途上国が実施するインフラ事業のうち、商業資金
<下物(土木事業)
>
<下物(土木事業) >
のみではファイナンスが困難な場合に、当該事業に必
要な施設・機材・その他サービスに必要な資金を供与
する。資金は途上国政府を通じ、事業を担う特別目的
会社等に支払われる。
事業概略図
ミャンマー
政府
現地企業
等出資会社
三菱商事・丸紅・住友商事
の共同出資会社
JICA
海外投融資
ミャンマー側51%出資
日本側49%出資
(うちJICA10%出資)
Myanmar Japan Thilawa
Development Ltd.
工業団地開発等
土地リース等
入居企業
ティラワSEZ
円借款・
技術協力等
・電力・水道・道路整備、
・SEZ管理委員会能力
向上 等の支援
(上記スキームの事業例)
・ミャンマー「ヤンゴン市無収水削減計画」
・ケニア「ナイロビ市医療・有害廃棄物適正処理施設建設計画」
14
2-(2)ベトナム国別評価(第三者評価)報告書(抄)① (参考)
3.3 プロセスの適切性
3.3.1 援助政策の立案と実施
(3)民間連携・自治体連携による新たな支援スキームへの取組
(ア)民間連携
日本の民間企業が開発途上国で様々な事業を行うことは,相手国におけ
る雇用機会の創出,当該国の税収増加,貿易投資の拡大,外貨の獲得,
日本の優れた技術の移転など,多様な成果をもたらすことができる。この
ような民間企業の開発途上国における活動を推進するために,2008年4月
にODA等と日本企業との連携強化のための新たな施策「成長加速化のた
めの官民パートナーシップ」が発表された。これによって政府は,民間企業
からの開発途上国の経済成長や,貧困削減に役立つ民間企業の活動と
ODA との官民連携案件に関する相談や提案を受けている。民間連携のス
キームは多様であるが,本評価においては官民連携(PPP)インフラ事業
の協力準備調査,中小企業支援,海外投融資,REDD+について検討した。
(a)PPP インフラ事業協力準備調査
PPPインフラ事業の協力準備調査とは,優れた技術や知識・経験を持ち,
海外展開に関心を持つ日本企業の開発への参加を促すため,民間からの
提案に基づいて実施されている協力準備調査である。従来,公共事業とし
て建設,運営・維持・管理が行われてきた開発途上国のインフラ事業に,
官民の適切な役割分担の下,民間活力を導入し,更に高い効果と効率性
を目指すPPP形態での実施の動きが拡大している。このような動きを背景
に,PPPインフラ事業への参画を計画している日本企業からの提案に基づ
き,円借款または海外投融資を活用したプロジェクト実施を前提として,
PPP インフラ事業の基本事業計画を策定し,当該提案事業の妥当性・効
率性等の確認を行う,フィージビリティ調査(F/S)を2010年から実施してお
り,2015年までに合計10回,64件の調査が実施されている。ベトナムにお
ける実施回数は,この調査が開始された2010年以降23件と最も多く,2位
のインドネシアの13件とは10件の差がある。
15
(b)中小企業海外展開支援事業
日本のODA を活用した中小企業海外展開支援事業の案件化のための基礎
調査も実施されている。新興国や開発途上国の経済成長を取り込むことは,
日本企業の今後の成長にとって重要な要素となっている。特に,日本の中小
企業は世界に誇れる多くの優れた製品・技術を有しているが,海外展開のた
めの人材や知識・経験が不足している場合がある。一方で,開発途上国にお
いては,こうした日本の中小企業の製品・技術が活用され,その国の経済社会
的課題の解決に役立つことも期待されている。
2-(2)ベトナム国別評価(第三者評価)報告書(抄)② (参考)
このような状況を受け,外務省から,2012年度からODAを活用して,開発
途上国における日本の中小企業の製品・技術等のニーズ調査,ODA案件
化のための調査,ODAによる現地への製品・技術等の普及につながる委
託事業が開始された。これによって開発途上国の開発課題の解決を図り
つつ日本企業の海外展開に貢献することが期待されている。
また,経済産業省によって,中小企業の海外展開に必要なグローバル人
材の育成に役立つ取組として,若手人材の海外インターンシップ派遣事業
が新たに開始され,2012年11月にはJICA・経済産業省の共催でグローバ
ル人材育成に関するシンポジウムが開催されるなど,日本の中小企業の
海外展開が支援されている。ベトナムにおける実施回数は50 件と最も多く,
調査の種類ごとに見ても全種類において最多件数となっている。
(c)海外投融資
日本はJICA海外投融資によって,開発途上国において民間企業が実施
する開発事業を直接の出資・融資によって支援している。海外投融資につ
いては,2001年12月に発表された「特殊法人等整理合理化計画」において,
それ以後の融資を廃止することが決定されていた。しかし,民間セクターを
通じ,開発効果の高い新しい需要に対応する必要性が高まったことから,
2010年6月に再開が決定され,2011年3月にJICAによる民間企業に対する
海外投融資が試行的に再開された。2011年には,第一号案件としてベトナ
ムにおける産業人材育成事業の政府部内の審査が終了し,2013年には,
ベトナムにおけるロンアン省環境配慮型工業団地関連事業について,本
格再開後,初の融資契約が調印された。
ロンアン省環境配慮型工業団地関連事業は,ベトナム,ホーチミン市西
部のロンアン省において,産業発展及び環境保全の両立を目的として,日
越両国の企業が合弁で特別目的会社を設立し,工業団地向け排水処理
施設等のユーテイリティサービス,表流水(河川)を利用した浄水施設の建
設及び運営を行う事業である。融資は,ベトナムの地場銀行であるVietin
Bank を経由した融資である。
これによって,ベトナム民間企業は特別目的会社を通じて迅速な融資が
受けられるという利益を享受することが可能となる。同時に,日本企業が参
16
2-(2)ベトナム国別評価(第三者評価)報告書(抄)③ (参考)
画するため,日本企業の技術・ノウハウを事業に活用することが可能と
なっている点は,日越双方の利益となる。また,本事業においては,神戸
市が公社を通じて出資参加し,初めて海外水ビジネスに参加しており,自
治体連携の事例でもある。
(d)REDD+
日本は,REDD+の枠組み構築に積極的に貢献するため,ODA を通じて,
ベトナムのディエンビエン省REDD+パイロット・プロジェクトを実施した。農
地拡大や野焼きによって森林減少が進むディエンビエン省において,2012
年3月から2013年12月(附帯事業を除く)まで,JICA と住友林業が連携して
REDD+実証活動に取組,省レベルのREDD+行動計画の策定,森林管理,
地域住民の生計向上のための技術協力を実施してきた。
(イ)自治体連携
日本は,より効果的なODAの実施のため,地方自治体の実務的な知識,
日本の地域社会の知識・経験を活用し,ODA事業の質的向上,援助を行う
人材の育成などについて連携を行い,地方発の海外協力事業がより活発
に展開できることを推進している。また,海外において国際協力を行うこと
で,国内において実施が困難な拡張事業に係るOJTを行い,将来の大規
模更新事業を担う人材の確保が出来,さらには日本の人口減少に伴う国
内事業減収分を海外事業でカバーすることが可能となり,自治体にとって
もメリットがある。
(a)草の根技術協力
横浜市水道局は,フエ省水道公社を対象とした草の根技術協力(2003~
2005),技術協力プロジェクト(2006年~2007年)を実施した。これまで培っ
てきた水道技術を,プロジェクトを通じてフエ水道公社へ伝え,蛇口から直
接水を飲むことができる「安全な水宣言」が実現した。またフエ水道公社の
技術力・経営力の向上と人材育成に寄与した。さらに2010年度からは,こ
れまでフエ省に伝えた技術を,フエ周辺のベトナム中部地域に広めるべく,
都市の水道事業体の人材育成のための技術協力プロジェクトが開始し,
2013年6月まで3年間実施された。
17
(b)協力準備調査・草の根技術協力
北九州市は,2010年から2012年まで,草の根技術協力事業として姉妹都
市であるハイフォン市に,水道水質の安全性の向上に役立ち,かつ,運転
費用が低廉である上向流式生物接触ろ過装置(U-BCF)(北九州市が特許
を所有)の実証プラントを設置した。一年間の実証実験の結果,U-BCFの
有効性が確認されたため,ハイフォン市は,自己資金でU-BCFを導入した
小規模浄水場・ビンバオ浄水場を整備することを決定し,2013年12月に完
成した。その後,北九州市は,2014年にハイフォン市の主力浄水場である
アンズオン浄水場の改善計画準備調査を実施した。この計画準備調査の
結果を基に,アンズオンU-BCF 整備事業に係る詳細計画に関係する無償
資金協力について2015年にベトナム側から発注を受け,2016年2月26日に
「ハイフォン市アンズオン浄水場改善計画」を対象とした21億9,600万円を
限度とする無償資金協力の贈与契約が締結された。この計画により,アン
ズオン浄水場のU-BCFは2017年の運用開始を目指している。
(c)埼玉県とJICA との共同投融資事業
埼玉県は,JICAが2015年8月に,ベトナム投資開発銀行との間で貸付契
約を結んだ中小企業・小規模事業者向けレンタル工業団地開発事業に必
要な資金を,JICAと共同して投融資するスキームに参加している(総事業
費42 億円)。これは,日本企業の現地進出に活用するODAの枠組みを,
自治体の地方創生戦略に結びつけるものである。
過去にも埼玉県は2002年から2005年の間に,フィリピンの初中等理数科
教員研修強化計画に専門家派遣等で参画したほか,2012年から2017年の
間に,ラオス国で実施する水道公社事業管理能力向上プロジェクトに短期
専門家として派遣等を行っている。
2-(3)外務省の二国間ODA評価の実施体制・方法①
●政策レベル評価(国別評価、重点課題別評価)、プログラム・レベル評価(セクター別評価、ス
キーム別評価)は、外務省において随時第三者評価を実施し、結果を公表。
●プロジェクト・レベルの評価はJICAを中心に実施、公表。
-ODA評価の枠組-
評価の種類
概
要
具体的な評価例
政策レベル評価: 国の基本的な方針(開発協力大綱、ODA中期政策、国別援助方針など)を実現することを目的とする、複数のプログラムやプロ
ジェクトから成る集合体を対象とする評価
国別評価
国・地域別の援助政策全般を評価対象とする評価。
外務省が作成する国別援助方針を主な対象とする。
「ケニア国別評価」、「パキスタン国別評価」など
重点課題別評価
開発協力大綱の重点課題・分野や重要な国際会議で日
本が発表する分野別のイニシアティブなどを対象とする
評価
「法制度整備支援の評価」、「緊急事態における人道支援の評
価」、「保健関連MDGs達成に向けた日本の取組の評価」など
プログラム・レベル評価: 共通の目的を持った複数の案件などの集合体を対象とする評価。特定のテーマや開発目標を切り口として総合的に評
価・分析を行う。
セクター別評価
特定の国・地域における特定の開発分野についての
ODA活動全体を対象とする評価。
「ベトナム都市交通セクターへの支援の評価」、「カンボジア保健
医療分野支援の評価」など
スキーム別評価
個別の援助形態(スキーム)を対象とする評価
「相対的に所得水準の高い国に対する無償資金協力の評価」、
「草の根技術協力に関する評価」など
プロジェクト・レベル評価: 個々のODA事業(プロジェクト)を対象とした評価(主にJICA) (注)
プロジェクト評価
個々の開発援助プロジェクトを対象とする評価
(注)2億円以上のプロジェクトが対象。
「フィリピン ミンダナオ・ダバオ地域地方行政・地域社会強化プ
ロジェクト」、「モロッコ地方部中学校拡充事業」(いずれもJICA)
18
2-(3)外務省の二国間ODA評価の実施体制・方法②
JICA事業評価におけるPDCAサイクル
事前評価
事業進捗促進
(モニタリング)
事後評価
フィードバック
事業の実施
前に、妥当性、
計画内容、想
定する効果、
指標などを検
証
案件計画段階で
策定した計画に
基づく定期的なモ
ニタリングを通じ
た事業進捗促進
および事業終了
時点での協力成
果の確認
事業の終了後
に、有効性、イ
ンパクト、効率
性、持続性など
を検証。事後評
価後は教訓・提
言への対応など
を確認
評価結果は、当
該事業の改善の
みならず、類似
の事業の計画・
実施に反映
外務省自身が行う無償資金協力(経済社会開発計画等)の
フォローアップ評価の仕組
●評価においては、
①途上国の経済社会開発への貢献
②供与機材の認知度、継続的需要の創出、
日本企業の海外展開促進
③外交的評価
について、被供与国関係者からのヒアリング等
を通じ、在外公館による評価。
●「事前評価」は、 3スキーム(無償・技協・有償)共通の評価で、2億円以
上の事業に対して内部評価を行い、特に事業の必要性や予想される事業
効果を確認するとともに、策定した事業計画を検証。
●「事後評価」は、3スキーム(無償・技協・有償)共通の評価で、外部評価
(原則10億円以上の事業を対象・外部評価者が実施)と内部評価(2~10
億円の事業を対象・在外事務所が実施)の2種類があり、いずれも事業完
成後の段階で、総合的な評価を実施。
平成27年度無償資金協力・技術協力実績
無償資金協力
19
技術協力
JICA実施分
外務省実施分
JICA
1,182億円
667億円
1,610億円
※無償資金協力は閣議決定ベース
※技術協力は決算額ベース
3.国際機関等に対する拠出
20
3-(1)これまでの国際機関等に対する拠出に関する指摘
【平成28年度予算の編成等に関する建議】
国際機関向けの拠出金等については、当審議会の建議も踏まえ、外務省において、本年より重
要外交課題遂行上の有用性等の観点から国際機関をAからDの4段階で評価する取組が始められ
たところである。このこと自体一定の評価に値するが、評価結果がA、Bに偏在しており、D評価は該
当無しとの結果になっている。内部職員のみではなく、外部有識者を評価に参画させることや定量
的な評価をよりきめ細かく行うこと等により、透明性、客観性及び精度を上げていくべきである。
【平成27年度予算の編成等に関する建議】
開発協力を効果的に実施していくためには、国際機関向け拠出金についても外交上の意義等の
観点から厳格な評価をしなければならない。その上で、説明責任を果たし、優先度が低いものや意
義が認められないものについては拠出の停止・拠出額の圧縮を実施するなど、ODAの戦略性・効
率性を高めるための不断の努力が必要である。
【平成26年度秋のレビュー 】
我が国の国際協力の基本的な戦略・重点分野を踏まえ、評価の基準・指標を明らかにした上で、
拠出を行っている国際機関全般に対して、多面的・定量的な評価を行うとともに、その評価結果を
活用し、行政事業レビュー等を通じ拠出の妥当性を論理的に説明すべきではないか。
21
3-(2)海外における国際機関の評価①:英国国際開発省(DFID)の多国間援助レビュー(MAR)
2011年に最初のMARを公表し、2013年にアップデート版を公表。
英国国際開発省マルチ支援報告書
(Multilateral Aid Review:MAR)
<評価の概要>
自国が拠出する国際機関について、
①英国の開発目的への貢献度
②組織の強靭性
を定量的を評価。
<評価方法>
(1)個別分野の評価
成果指標に基づき12分野(開発目的の達成度、環境・女性・低
所得国への重点度、組織のマネジメント等)の達成度を点数化
(1~4点:高い点数ほど効果が高い)。
評価に当たっては、被支援国、国際機関、NGO、MOPAN(国際
機関評価ネットワーク)等に対して調査を実施。
(2)組織全体の総合評価
各分野の点数を踏まえ、予め定められた計算方法に基づき、
4つの評価(非常に良い、良い、適切、脆弱)に格付け。
<評価の結果>
●2011年版MARでは、9つの機関に対して最低格付け(脆弱)
を付与。このうちHABITAT(国連人間居住計画)、UNIDO(国連
工業開発機関)、ISDR(国連国際防災戦 略)、ILO(国際労働
機関)の4機関のコア基金に対する拠出を停止。
●現在、2013年版のアップデートを実施中。
◆:非常に良い
▲:良い
■:適切
●:脆弱
:2011年から一つ以上の個別分野で改善が見られた
国際機関。
22
3-(2)海外における国際機関の評価②:英国国際開発省(DFID)の多国間援助レビュー(MAR)
国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)2011年評価
英国の開発目的への貢献度
組織への強靭性
①プラス評価
・マラリアへの注力や母子保健への貢献は、DFIDの戦略的優先順
位と整合的。
①プラス評価
・UNITAIDの活動が、薬価や診療価格の低下に寄与し、手に入りやすくし
ている。それなりに高い費用対効果となっている。
・価格の引き下げは重要であり、各国・ドナー・国際機関への安定し
た利益。
・出資者や受益者の視点が、UNITAIDの決定過程に組み込まれている。
・プロジェクトレベルでのモニタリングや評価から合理的な好事例な
証拠が得られる。
・高い能力を持った職員を採用したことにより財政運営は改善。
②マイナス評価
・脆弱な国での活動に関する明確な方針はないが、それでも脆弱な
国家へフォーカスしている。
・費用対効果の適用は一様には行われていない。
②マイナス評価
・援助活動の停止をした際に、当該国での医療への安全なアクセス
を可能ならしめるガイドラインの作成が必要。
・つい最近まで、 UNITAIDは達成すべき明確な戦略無しに、無条件に業
務を遂行していた。これは、財政上の選択肢が戦略的に整理されていな
いか、必ずしも最も費用対効果が高くなる配分がなされていないことを
意味している。
・積極的な結果を得るための管理について、形跡がほとんどみられ
ない。
③総評
十分な成果が得られている。
(4段階のうち最上位の評
価(※))
23
・UNITAIDの支援が終了した際の配慮が不十分である。
・UNITAIDは、事業提案があった際にどうすべきかの、明確な判定基準を
有していない。
・公表資料の内容に不十分な点が多く、公表時期も遅い。
③総評
全体的に満足であるより、十分
な成果が得られていないに近い。
(4段階のうち下から2番目の
評価(※))
3-(2)海外における国際機関の評価③:英国国際開発省(DFID)の多国間援助レビュー(MAR)
国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)2013年評価
2011年で「脆弱」と評価を受けた「組織の強靭性」について、当
該機関の優先改革分野である「戦略・業績管理」、「財政運営」、
「費用対効果」、「透明性と説明責任」に重点を置いて評価を実
施。
項目
評価
戦略性・業績管
理
5年評価では、合理的な業務モデルや留意点が確認されている。理事会及び事務局と
もに、事業に健全なツールを利用しており、新戦略では優先順位付けの定義に利用され
ると思料。リーダシップは改善されている。いくつかの課題が見受けられるものの、改革
ペースは適度と判断。
財政運営
費用対効果
透明性と説明責
任
内部システム及び事業方針に関する進捗は良いと評価。例えば、ポートフォリオ管理の
ような課題が残っているにも関わらず、他機関への助成金交付問題は大部分が解決。
優先順位付けのツールは改善されたものの、ドナー支援は予測可能ではない。
内部評価の利用や測定が改善されているなど、既に良い評価を得ているものもある。5
年評価では、UNITAIDのパフォーマンス面については評価されているものの、理事会は
最も費用対効果が高いものを探し求めている。
ウェブサイトの徹底的な見直し等は評価できるものの、利害関係者の関与が強く、一貫
した事業資料の公表やアクセスの簡易性は改善の余地がある。改革の進捗は遅い。
※▲:十分進捗 ▲:適度な進捗 ▲:ある程度進捗 ▲:ほとんど進捗なし
2011年の評
価
進捗
評価(※)
評価点数
の変更
評
価
点
数
の
変
更
は
な
し
24
3-(3)外務省による国際機関等に対する拠出の評価①
外務省による国際機関等に対する拠出の重点化に向けた取組み:
●2014年10月:日本のMOPAN参加
●2015年8月:「国際機関等に対する拠出の評価(第1回)」の実施
●2016年8月:「国際機関等に対する拠出の評価(第2回)」の実施
1.評価方法の概要
●当審議会の建議を踏まえ、外務省において、分担金・義務的拠出金、任意拠出金を拠出する全ての国際機関等
を対象としてA~Dの4段階評価を行い、結果を公表。
●評価の基準
① 当該機関等の専門分野における影響力・貢献
② 我が国重要外交課題遂行における当該機関等の有用性(意思決定における我が国のプレゼンスを含む)
③ 当該機関等の組織・財政マネジメント
④ 当該機関等における邦人職員の状況
⑤ 我が国拠出の執行管理、PDCAサイクルの確保
●評価の意味
A:期待する成果を超える実績をあげている
B:期待する成果を着実にあげている
C:期待する成果はあげているが、一部改善が必要な部分がある
D:期待する成果に対する実績が不十分
(注) 分担金・義務的拠出金、任意拠出金について
①分担金:国際機関等の設立条約等により加盟国等が定められた額を義務的に支出するもの。
② 義務的拠出金:国際機関等の設立条約等には直接定められていないが,当該国際機関等の総会決議等により加盟国等が負担を
求められた額を義務的に支出するもの。
③任意拠出金:国際機関等の実施する事業等のうち,我が国が重視する特定国・地域又は特定分野の事業等,我が国が有益と認
め,支援すべきと判断した事業等に対して自発的に支出するもの。
2.評価の課題
外務省の「国際機関等に対する拠出の評価」については、一昨年より取り組みが始まったばかりのこともあり、①個別の評価基準の達成状況と国際
機関の全体の評価との関係や、②同一国際機関の評価の経年変化の理由等の透明性・客観性について、向上の余地あり。
25
3-(3)外務省による国際機関等に対する拠出の評価②
3.評価結果と予算要求への反映状況
(1) 該当する国際機関等の評価結果の内訳は次のとおり。(2015年8月→2016年8月)
分担金・義務的拠出金
任意拠出金
A
B
C
D
合計
4 → 8
52 → 40
8 → 19
0 → 0
64 → 67
22 → 22
39 → 47
12 → 5
0 → 0
73 → 74
(2) 評価結果のうち74の任意拠出金について、29年度予算要求に反映(評価の高い機関に対しては重点的に予算
配分)。 ただし、C評価とされた機関等も、今年度は微増の要求。
(単位:億円)
A
28’要求
B
29’要求
28’要求
C
29’要求
28’要求
合計
29’要求
28’要求
29’要求
平均額
10.1
(+21.4%)
11.5
(+48.4%)
1.2
(+0.1%)
2.6
(+15.7%)
0.2
(▲10.1%)
0.1
(0.0%)
3.7
(+16.6%)
5.1
(+35.8%)
総額
222.2
(+21.4%)
253.9
(+48.4%)
47.6
(+0.1%)
123.3
(+15.7%)
2.9
(▲10.1%)
0.7
(0.0%)
272.6
(+16.6.%)
377.8
(+35.8%)
(注)括弧内の伸び率は、前年度当初予算比。
26
4.その他(PDCA・成果目標に係る課題)
27
4 その他のPDCA :外務省在外公館文化事業
「平成25年度『秋のレビュー』」の指摘を踏まえ、外務省では、PDCAサイクルに基づく評価の事業
への適切な反映、事業の目的に応じた評価モデルを研究中。
1.平成25年度「秋のレビュー」の指摘事項
適切な成果指標を設定するとともに、個々の事業の評価については、例えば、米国の様々な評価手法を参考にすることや事前
と事後のアンケートは5段階程度にして中央値を評価に含めないこと等の取り組みが必要ではないか。
また、一定の規模以上のイベントについては、参加者等に対し次回開催に向けた寄付を集めることや、次回有料化しても参加
したいかのアンケートを行う等の工夫を検討することが必要ではないか。
2.在外公館文化事業概要
外交活動の一環として現地事情を踏まえて、日本文化紹介事業を行い、海外に我が国の多様な魅力を示すことで対日理解の
促進等を図る。
3.外務省における評価の現状
●事業実施後、事業実施報告で公館による評価を義務づけており、総事業件数に対するA評価とB評価となった事業の割合が
95%となることを成果指標とする。((A評価+B評価)/総件数)(注)
●平成27年度評価では、在外公館が実施した約2,300件の文化事業のうち99%の事業がAまたはB評価(注)。
(注)A:効果が特に大、B:相当の効果あり、C:効果が少ない、D:効果がなく今回限り。
4.評価の現状
「平成25年度『秋のレビュー』」の指摘を踏まえ、外務省では、PDCAサイクルに基づく評価の次年度事業への適切な反映、事業
の目的に応じた評価モデルを研究中。
28
主な論点
【ODA】
●我が国の開発協力では、民間部門の技術や資金を開発途上国の課題解決に役立てつつ、経済
活動を拡大するため、開発協力の触媒機能の重要性が高まっている。このような観点からは、従
来ODAで行っていた事業への民間参入を促進し、ODAの効率的使用を進めるとともに、開発途上
国に対する民間部門からの息の長い直接投資につなげていくことが期待される。このような観点
を重視する事業については、二国間ODA事業がこうした直接的・間接的な民間部門の活動につな
がるものとなっているか、評価・検証を充実していくべきではないか。
●国際機関等への拠出金・出資金について、各評価項目と全体評価との関係や評価の経年変化等
について更なる透明性・客観性の向上に努めるとともに、外務省が行う無償資金協力について、
求められる機動性等を確保しつつ、一層の効率的かつ効果的な実施に向けて、評価方法の高度
化を図るべきではないか。
主な論点
【その他】
●現在検討中の在外公館文化事業に対する新しい評価手法について検討を着実に進め、PDCA
サイクルの確立に努めるべきではないか。
29