疾患特異的な ADAM10 によるシェディングの基質タンパク同定 による網状肢端色素沈着症の病態解明に関する研究 ○ 河野 通浩 名古屋大学大学院医学系研究科皮膚病態学分野 申請者らは 2013 年に網状肢端色素沈着症(reticulate acropigmentation of Kitamura; RAK)の原因遺伝子が ADAM10 であることを明らかにした(Kono M et al. Hum Mol Genet. 2013)。原因遺伝子の ADAM10 は A Disintegrin and Metalloproteinase Domain 10 (ADAM10)蛋白をコードする。ADAM10 はさまざまな膜タ ンパクの細胞外ドメインを shedding する(一部を切断する)ことにより、shedding を受け た基質タンパク質の働きを調整する。皮膚における基質タンパクとして、いくつか明ら かになっているが、RAK の病態に関係する基質タンパクは今のところ不明である。そこ で、RAK の疾患関連基質タンパクの同定を目標とし、研究を開始した。 ADAM10 の減少によって shedding される量が大きく影響を受ける基質タンパクを明 らかにするため、培養ヒト色素細胞の NHEM で ADAM10 siRNA を用いて ADAM10 の 発現抑制を行った。ADAM10 発現抑制の前後で、培養液中の基質タンパクの shedding された細胞外ドメイン量を ELISA 法にて測定し、shedding 効率に変化がある かどうか検討した。結果として、今回の検討では siRNA による ADAM10 の抑制により、 NOTCH1 の shedding 効率に有意な差は認められなかった。今後、細胞や基質タンパ クの種類を広げて検索し、さらに抗体アレイによる網羅的なタンパク解析も進めたい。 本研究助成期間には RAK と Dowling-Degos disease (DDD)の臨床および病理学的 検討にも行った。DDD は RAK と酷似した皮疹が間擦部に出現する疾患で、2 つの疾 患の異同が長年議論されていた。RAK と DDD の原因遺伝子が明らかになったため、 我々は遺伝子診断により確定した患者の臨床および病理学的な検討を行い、 (1) 発 症年齢の違い、 (2) 初発病変部位の違い、(3) 面疱様の毛包一致性丘疹、(4) 病 理組織学的には表皮の形態の違いから RAK と DDD は臨床および病理学的に異 なる疾患であることが明らかにした(Kono M et al. Br J Dermatol. 2015)。
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