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続 バケラッタ
今度は少し重め
︻ 実例② 女子中学生と赤ちゃん ︼
それは
人でごった返す朝の駅
この日は
早朝に家を出たときから
あちこちの曲がり門の影に
一瞬
(
うずくま
)
人が踞っている
そんな見間違いを繰り返し
見返すと誰も居ない
そんな感じの朝でした。
そして
いつも通り
使用している電車のホームへ
エスカレーターを降りると
マチミサキ 作
3∼4人ほどの
可愛らしい
今どきの女子中学生が
キャッキャと
はしゃいでいました
別に珍しくもない
いつもの風景
明るく若い矯声に
チラリと
中学生へと
思わず視線を向けると
その中の1人の肩に
赤ん坊が
中学生少女の肩に半分、
顔を埋め込まれた様な・・
まるで肩の一部と同化している様に
見えました
これは今迄の体験の中でも
あまりにもハッキリクッキリと
見えてしまったので
私は直感的に眼を反らし
赤ん坊に気付かれてはマズイ
見えている事を気付かれてはマズイ
そう思いました
誰にも見えていないのか?
次に私がした行動は
周囲の人間の視線や挙動を
確認すること
そういえば
時折ある
あの不可思議な感覚が
朝っぱらから
冴え渡ってしまっている⋮
やはり
あの数々の見間違いは
見間違いではなかったか⋮
女子中学生の居た
乗り場から
少し距離をとり
もういちど
確認
人間、見たくないくせに
見えたときは
見ずにはいられない
うん、
おそらく
もう居ない
あれも
やっぱり
きっと
たぶん
見間違い
だよ
そう考え
チラリと
女子中学生を確認
さっきより
クッキリ見えてしまう
なによ
お約束?
そういうのやめて下さい・・・
しかも
キョロキョロしてる!
誰か気付いてくれるのを
探っている感じの・・
これは本気で
見えている事に気付かれたら
面倒なことになりそう
自然に
自然に
私はそちらなど
見ていませんよ
私は
女子中学生の先にやがて
くるであろう
電車を見据えて
線路の先を見ているんだから
あなたなど
まったく見えていませんよ
そんな感じで
腕時計を確認し
ため息をつき
まだ電車こない!
早くしてくれないと
遅れちゃう!
・・・感を
過剰に演出してみました。
別に急いでなど
いませんし
電車も遅れていません
そちら
(
)
赤子に
まったく気付いていない事を
アピールする事が重要なのです
勿論
周囲の生身の人間達も
誰ひとり
(
くだん
)
件の女子中学生に
奇異の視線など
向けていません
いくらなんでも
肩に赤ん坊の顔が
めり込んだ少女がいたら
後ろで列をなしている者たちの
1人、2人は
驚くはず
やはり
誰にも
見えていないのか
それとも
見えてはいるが
必死で
何事もないように
挙動を隠しているのか
それは
わかりません
ここで
見知らぬ第三者を掴まえ
┃┃アレ!見えます!?
などと尋ねれば
私のほうが奇異の視線に晒され
下手をすれば
病院直行となりかねません
なので
真偽はわからず終い
それにしても
昭和の昔に流行ったという
キツネの襟巻き
これですら
動物愛護団体から
悪趣味である、とされ
廃れていったというのに
赤ん坊の襟巻き、とは
若いのになかなか
ハードな趣味をしていらっしゃる・・・
私は霊能者でもエクソシストでも
ありませんので
その赤ん坊の正体は
判りませんが
直感で感じたのは
おそらく
いわゆる水子ではなかろうか
ということ
あとで色々と調べましたが
おそらく
間違いありません
あんなに
若く明るい少女が・・・
人は見掛けでは
わからないものです
いえ、
本当にそうであれば、
の話なのですけどね
若者の性の乱れとは
恐ろしいものですな
それにしても
あの赤ん坊は
やはり寂しい思いをしているのだろうか
誰かに可愛がって
もらいたいのだろうか
そしてその思いは
宿主にどう影響して
いくのだろうか
そう考えると切ないものです
しかし
私には
どうにも出来ないのです
遠い異国の悲劇をニュースで見て
胸を痛める状態と似ているかも
しれませんね
人間の勝手な取り返しのつかない過ち
とは
表面上は
どうにか手を尽くして
取り繕ったとしても
やはり
してしまった事は
けして
消える事はないのだ
それが
過失であろうと
若気の至りであろうと⋮
そう考え込まずには
いられない
嫌な出来事でした。
ではまた。
続 バケラッタ
掌編︵2,206文字︶
随筆・エッセイ
2016−10−13
2016−10−13
マチミサキ
続 バケラッタ
作
更新日
登録日
形式
文章量
星空文庫
Copyrighted ︵JP︶
著作権法内での利用のみを許可します。
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